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「若者よ、物流センターを目指せ」雑記 2022/4/4〜4/10

・1週間ごとの雑記、2週目です。今週はいろいろあったので長め。

 に、する予定だったんだけど、書くのがめんどくさくて色々削った。


・5日の火曜日、ちょっとした一人旅をした。

 3月末に旅行に行ったときに買った青春18きっぷが、一回分余っていた。入学式の前日だったけれど、18きっぷの期限が4月10日までなので、実質この日に行くしかなかった。

 直前まで行き先で迷っていた。静岡に行って、富士山を見たりさわやかでハンバーグを食べたりしようかなと漠然と思っていたのだけれど、前日の寝る前になって急に千葉に行きたくなった。迷ったので、Twitterで投票を募った。

 寝て起きると結果が出ていて、静岡が優勢だった。千葉に行くことにした。寝て起きたら完全に千葉の気分になっていたから。

 JR線を乗り継ぎ、五井駅に着く。乗車券に2千円を払い、小湊鐵道というローカル私鉄に乗り換える。なんのための旅だったっけ?

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 小湊鐵道は、3年前に僕が『夏が終わる前に』というドット絵を描いたときに、車体の参考にした鉄道だ。

 赤とオレンジの車体で、いかにもローカル鉄道という感じの趣がある。この季節に菜の花の中を走るのが有名だったらしく、鉄オタと老人が大勢乗っていた。

 窓から見える景色まで『夏が終わる前に』に似ている。景色まではまったく参考にしていないので、これは偶然だ。まあ日本の田園風景なんてどこも同じようなものかもしれないけど。

 鉄オタらしき人がおもむろに、靴下を脱ぎ座席に立ち上がって、何かの機材を手に掲げ始めた。なんだろうと思って機材を向けている先をよく見ると車内スピーカーがある。「車内アナウンス録音鉄」的な存在なのかな。

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桜と菜の花がちょうど満開で、めちゃめちゃ綺麗だった

 どこで降りるか迷ってるうちに上総中野駅に着いた。ここでいすみ鉄道に乗り換える。こちらも同じようなローカル鉄道だ。しばらく乗っていると大多喜駅で人が大勢降りて行ったので、僕もそこで降りることにした。次かその次の電車が来るまで大多喜を散歩することにする。

 駅を出ると観光案内所があった。レンタルサイクルを借りられるらしい。借りるしかない。自転車は楽しいので。

 ここでカメラの充電が切れた。

 かなしい……。カメラは散歩の楽しさを倍増させるアイテムなので。

昼食のとんかつ

 大多喜は、古くから城下町として栄えた町で、「房総の小江戸」ともいわれる場所らしい。この前行った高山は「飛騨の小京都」だった。

 古い町並みを自転車で走っていく。ずいぶん小さな町だ。小さいので、レンタルサイクルのモデルコースを外れ、川を渡って町の外側まで走った。

 ふたたびいすみ鉄道に乗り、終点の大原駅で降りた。降りたころにはもう日が暮れ始めていた。大原駅から近くの海まで歩く。

 砂浜。めちゃめちゃ幻想的な雰囲気でびっくりした。幻想的すぎて死んだかと思った。もしくは記憶を失って流れ着いたか。


・水曜日、大学の入学式に行った。

 学長の祝辞。あまり印象にない。大学側のなんらかの人の祝辞。演説みたいだった。校友会代表の祝辞。坂の話をしていた。新入生代表の宣誓。坂の話をしていた。在校生代表の祝辞。坂の話をしていた。

 多摩美はそれくらい急な坂が多い。


・休憩時間を挟んで午後から学科ごとのオリエンテーションだった。天気がよかったので、校内をふらふら散歩して休憩時間を過ごした。陽キャはたぶんこの時間にコミュニケーションを取っているのだろう。Twitterの大学垢でもそのとき「〜〜さんどこにいますか?」「〜〜の格好をして〜〜にいる人が自分です!見かけたら話しかけてください」というようなツイートがたくさん流れてきた。

 僕も便乗してツイートした。たぶんこのツイートを見てもこの人に話しかけようとは思わない気がする。

キャンパスの桜が綺麗だった


・話は前後するけど、先週amazonで写ルンですを買ってみた。世代じゃないので使ったことは一度もない、気がする。それを火曜日の日帰り旅行に持って行って、入学式の行きしなに現像に出して、入学式の帰りに取りに行った。

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 こんな感じの写真が撮れた。なかなかいいね。


・翌日は2時半からオリエンテーションだった。サークル紹介もやっていたので、早めに行ってそれも見てみることにした。

 広場の周りに、サークルごとの机がぐるりと並んでいる。ジャズ研。コーラス部。テクノ研。ジャンベ民族楽器部。サッカー部。バスケ部。相生道部。版画部。彫金部。特殊撮影技術研究会。ポケモン大好きクラ部。

 いちばん目を引くのはオカルト研だ。

 いいね。

 デジタル研、誰もいない机の上に古いゲームハードが置いてある。

 何? そういう現代アート?


・オリエンテーションのあと、いつもとは違う駅まで歩いてみることにした。普段は最寄りの橋本駅を使っているが、その手前の多摩境駅でもそこまで距離は変わらないらしい。

 多摩美のすぐ隣に工事現場が見える。ここは数ヶ月前まで、なにもない空き地だった。


・高校1年生のころ、オープンキャンパスかなにかで多摩美に足を運んだことがある。行きはバスに乗ったが帰りは歩いて駅まで帰ることにして、キャンパスの門を出ると、道を挟んだ隣に、一面に背の高い草の生えた空き地が広がっていた。

もっとちゃんとした写真があるはずなんだけど、データを失くしました

 広い。たぶん、キャンパスの敷地とそこまで大差ないくらいの広さがある。街でも田園でも山でもない広大な「虚無」の空間が僕には珍しくて、その空虚な雰囲気や、それによって多摩美自体が外界と隔絶されているような感覚が好きだった。角を曲がって多摩美から離れると急に普通の街並みになって、まるでキャンパスの周りだけが異世界みたいだなと思った。たぶん、僕が多摩美に進学を決めた理由のひとつとしてこの空き地は確実にあると思う。


・多摩美を志望し予備校に通い始めてから1年ほど経ったころ、多摩美の隣に大きな商業施設ができるという噂を耳に、もとい目にした。あの空き地にである。ビバモールというショッピングモールと、それから物流センターかなにかができるらしい。

 受験が始まり度々多摩美に通うようになったころには、すでに工事が始まっていた。今ではあのまるでこの世の果てみたいな趣のある風景は面影もなくなって、土が剥き出しの殺風景な工事現場になっている(側からみればもとから殺風景なんだろうけど……)。物流センターはほぼほぼ完成していて、ショッピングモールも骨組みはできあがっている。今年の秋に開業するらしい。


・入学式のあとの学科ごとののオリエンテーションで、教授のひとりがこんな話をしていた。

「今は半地下の講義室でこうやってオリエンテーションをしていますけど、去年までは2階の講義室でやっていたんです。そうすると、窓から隣の空き地が見えるんですね。だから毎年『若者よ、荒野を目指せ』なんてことを言ったりしていたんですけど。
 今は物流センターができたみたいですね。まあ『若者よ、物流センターを目指せ』というわけにもいきませんから……」


・話は戻って、多摩境駅までの道中である。歩いていると、意外に新しい家が多い。というか新しい家しかない。工事現場もいくつか見かけて、要するに、現在進行形で開発が進んでいる場所なのである。意外だと思ったのは、なんとなく、多摩地域の開発というと多摩ニュータウンで、多摩ニュータウンといえば開発されていたのは昔のことであり、今は老朽化・高齢化が進んでいるという思い込みがあったからだ。

 そういえば、オリエンテーションでも「昔は多摩美の周辺はなにもない場所でしたが、最近は開発が進んで住宅も増えたので、騒ぎすぎると苦情が来ます」という話があった。

 wikipediaを読んでみるとどうやら、多摩ニュータウンの開発計画は60〜70年代に永山のあたりから始まり、開発が進むにつれ西へ西へと進んでいったらしい。だから、高齢化の進む地区と新しく開発された活気のある地区がグラデーションのようになっている。

 開発よりも前から存在していた多摩美は、開発が進むのに伴って多摩ニュータウンに取り囲まれる形になった。ニュータウンの西端近くに位置し、未開発の区域が残る多摩美周辺は、今なお開発が現在進行形で進められている場所であるらしい。あのショッピングモールや物流センターもその一端なのだろう。

 というようなことを考えながら多摩境駅までの道を歩いていく。嘘です。そのときは立ち止まってちらっとだけ調べながら漠然と「多摩ニュータウンってなんだっけ。今も開発されてるんだな〜」みたいなことを思っていた。ところで、多摩ニュータウンの境だから多摩境というのかな。


・「好きだった場所が開発によって消えていく」ということを自分が体験しているのは不思議な感覚だ。なんとなく、そういうのって20世紀で終わったと思っていて、僕が生まれたあとの世界はほとんどなにも変わらず停滞しているという感覚があった。たぶん、僕はまだ短い間しか生きていないからそういう錯覚をしているだけなんだろうけど。

多摩境駅


・大学、がんばっていきます。

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