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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第13節 いわきFC対ジェフユナイテッド千葉

2024年明治安田J2リーグ第13節。いわきFCは5月3日(金・祝)、ハワイアンズスタジアムいわきにジェフユナイテッド千葉を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ジェフユナイテッド千葉とは

ジェフユナイテッド千葉は、千葉県市原市、千葉市をホームタウンとするプロサッカークラブ。Jリーグ創設当初の10チーム「オリジナル10」の一つである。

オリジンは、1946年創部の古河電気工業サッカー部。日本サッカーリーグ(JSL)に1965年の発足時から参加し、2度の優勝。天皇杯全日本サッカー選手権大会優勝4回、JSLカップ優勝3回の成績を誇る名門だ。

1991年、古河電気工業とJR東日本が共同出資して「株式会社東日本ジェイアール古河サッカークラブ」を設立し「ジェフユナイテッド」の名称で1993年開幕のJリーグに参戦。その後2009年までJ1に在籍した後、2010年から現在までJ2での戦いが続く。

昨年は開幕戦勝利もその後8戦勝ちなしで下位に低迷し、前半戦を17位で折り返した。だが夏場から徐々に復調。第31節からクラブタイ記録の7連勝を挙げてJ1参入プレーオフ圏内に浮上。最終的に19勝10分13敗で6位に入り、J1昇格プレーオフ出場を果たした。

プレーオフでは3位東京ヴェルディに敗れ、残念ながら15年ぶりのJ1昇格はならず。だからこそ、今季の目標が16年ぶりのJ1復帰、そしてJ2制覇であることは言うまでもない。

■いわきFCとジェフユナイテッド千葉

両チームは昨年に2度対戦している。初対決は2023年6月18日のJ2第21節。降格圏内に沈んでいたいわきにとって、この試合は田村雄三監督の再就任初戦だった。

結果はスコアレスドロー。だがいわきはこの試合を持ち前の躍動感を取り戻すきっかけとし、降格圏を脱していった。

そして二度目の対戦は同年10月29日のJ2第40節。アウェーのフクダ電子アリーナで、いわきは気迫のこもった戦いを見せる。

力強く攻め立てる千葉と、アグレッシブな守備からのカウンターに勝機を見出すいわき。前半終盤までは互角の展開も前半44分にDF遠藤凌(現・アルビレックス新潟)が退場処分。10人での戦いを強いられてしまう。後半は千葉が主導権を握るが、10人のいわきもGK田中謙吾が再三のファインセーブを見せ、必死で食らいつく。

試合は0対0のまま終盤へ突入。だが86分、ロングスローの流れから千葉FW小森飛絢に決勝点をねじ込まれ、0対1で無念のタイムアップ。いわきは死力を尽くした戦いに敗れ、19位に順位を下げた。

一方、千葉はこの試合の後もザスパクサツ群馬に勝利するなど好調を維持。プレーオフ圏内の6位でシーズンを終えた。この日の結果により、両チームの明暗ははっきりと分かれた。

そんな、まだ一度も勝利を挙げられていない難敵・ジェフユナイテッド千葉。今節も間違いなく、昨年同様の激闘となるだろう。

■2024年戦力分析~ジェフユナイテッド千葉

小林慶行監督体制2年目の千葉。今オフは中心選手が残留し、アカデミーからの昇格に加え、アルビレックス新潟から栃木SCに期限付き移籍していたGK藤田和輝、ジュビロ磐田からMFエドゥアルド(千葉入りに伴いドゥドゥから登録名を変更)、藤枝MYFCからMF横山暁之、そして昨年いわきFCで25試合に出場したGK高木和徹ら、J2で実績のある有力選手が加入。バランスの取れたスカッドを組む。

今季の戦績は、5勝2分け5敗の勝ち点17で10位。開幕から2勝1敗でスタート。その後は鹿児島ユナイテッドFC、清水エスパルス、ロアッソ熊本に敗れるなど低調も、第8節で栃木SCに8対0で完勝。第11節で退場者を出した10人のブラウブリッツ秋田に1対2で敗れたが、至近の第12節でベガルタ仙台に2対0で勝利。秋田戦の嫌なムードをしっかりと払拭し、いわきとの一戦に臨む。

フォーメーションは4-3-3。至近の仙台戦のスターティングメンバーはGK1藤田和輝、DF67日高大/13鈴木大輔/52久保庭良太/2髙橋壱晟、MF44品田愛斗/4田口泰士/16横山暁之、FW7田中和樹/14椿直起、FW10小森飛絢。

GK藤田和輝はアルビレックス新潟の下部組織出身。サイズと足元の技術に優れるパリ五輪世代の守護神候補。CBはベテラン鈴木大輔と久保庭良太のコンビ。守備の核・鈴木はロンドン五輪日本代表でスペインでのプレー経験を持つ。2018年にはいわきFCの練習に参加したことがあり、フィロソフィーをよく知る存在。今季は得意のヘディングで3点を挙げている。

攻撃力が魅力の左SB日高大はHonda FCから2019年にいわきFC入り。2022年まで在籍し、いわきの東北社会人リーグからJFL、そしてJ3での躍進を左サイドから支え続けた。今節は2年連続のいわき凱旋となる。

2019年から2022年までいわきの躍進を支えた日高大は昨年に続き2度目のいわき凱旋。

中盤は開幕直前にFC東京から期限付き移籍したMF品田愛斗、ゲームコントロールに長ける万能型セントラルMF田口泰士、昨年は藤枝MYFCで背番号10を背負い、6得点をマークした横山暁之。

前線の注目選手は3トップ中央に構えるFW小森飛絢。小森はボックス内で能力を発揮するストライカーで大卒1年目の昨季は13ゴールをマークしてJ2ベストイレブン選出。今季もすでに6ゴールを記録している。

いわきとしてはエースストライカーのFW小森飛絢、2試合連続でゴールを挙げているMF田口泰士ら、攻撃を仕上げる選手を抑えるのは当然のこと。大切になるのはそのお膳立てをする7田中和樹(またはDF19岡庭愁人)、14椿直起(またはFW77ドゥドゥ)の両SHを自由にプレーさせないことだろう。

千葉のサイド攻撃には若干の左右差がある。SB髙橋壱晟とFW7田中和樹のいる右サイドは、高橋のアーリークロスなどシンプルな組み立てが特徴。そして攻撃力の高いSB日高大と14椿直起、ドゥドゥが絡む左サイドは日高の深い位置からのマイナスのクロスなど、多彩な攻撃が特徴。いわきは左右の攻撃の個性を理解した上で、起点となる両サイドをしっかり押し込んでいきたい。

千葉の特徴は何と言っても現在25点とリーグトップの攻撃力。ただし、それだけのチームではない。相手ボールになれば素早く攻守を切り替え、前線からアグレッシブにボールを奪いに来る。前から奪ってのカウンターを常に狙っており、少しでも気を抜けば簡単にやられてしまう。ただしその反面、中盤にスペースが生まれることも確か。いわきは普段通りしっかりとボールを保持し、90分間足を止めずに走り続けたい。

■ルヴァン杯を経て存在感を示すさまざまな選手達

いわきFCは第10節・清水エスパルス戦の惜敗後、中3日で2024JリーグYBCルヴァンカップ2回戦・アルビレックス新潟戦を迎えた。ミッドウィーク開催にもかかわらず、ハワイアンズスタジアムいわきには3600名を超える両チームのファンが詰めかけた。

いわきはGK鹿野修平、DF生駒仁、石田侑資、MF下田栄祐、鏑木瑞生、杉山怜央、FW白輪地敬大ら、ここまでの出場時間が短い選手達を中心に先発メンバーを編成。試合はいわきが前線からのハイプレスと積極的なスプリントを見せ、ペースを握る展開となった。

試合は開始6分と終盤の失点により、0対2で惜しくも敗戦。だが開幕戦以来の出場となったMF下田栄祐、脳震盪により無念の交代となった杉山伶央に代わって出場したMF加藤悠馬、臆することなくボールを持ち出し再三の好守を見せた石田侑資など、多くの選手達が存在感を示したことは好材料といえる。

そしてルヴァンカップを終え、中3日で迎えたアウェーの大分トリニータ戦。

いわきは序盤から競り合いで優位に立ち、MF山口、西川らが積極的にゴールに迫る。大分も前半途中から盛り返すがペースを渡すことなく試合は進み、59分にMF大迫塁のFKからFW近藤慶一がゴール。74分にはDF照山颯人がヘッドで追加点。

いわきはボール保持で大分を上回り、試合をドミネート。後半は大分をシュ-ト1本に封じ込める完勝で、リーグ戦3試合ぶりの勝ち点3を拾った。

そして翌12節は再びアウェー、対戦相手は栃木SC。この日は最高気温29度。厳しい暑さの中、強さを武器にする堅守速攻の栃木に対し、いわきは前半から走力や球際の強さを発揮。奪ったボールをしっかりと動かしていく。

試合はいわきペースで進み28分、この日右WBに入ったMF五十嵐聖己の左足のクロスをFW谷村海那がダイレクトで決めて先制。後半は暑さも手伝い、受けに回る時間帯が増え追加点を奪えなかったことは、今後に向けた大きな課題といえる。それでも選手達は身体を張ってゴールを死守。大分戦に続き、貴重な勝ち点3をもぎ取った。

ここまでシーズン約3分の1となる12試合を消化し、5勝4分け3敗の勝ち点19。開幕から1分け1敗でスタートしたチームは、着実に力をつけている。

6ゴールを挙げ好調を維持し続けるFW谷村海那、復調したMF山口大輝といったリーダー格の選手に加え、卓越したテクニックに加え力強さと守備力を上げてきたMF西川潤、非凡なパスセンスを示す守備の核・DF照山颯人、デュエル王・MF大西悠介、特別指定選手ながらCBとWBの両ポジションで存在感を示す五十嵐聖己、正確無比なキックで左WBのポジションを奪ったMF大迫塁など、今季新加入の選手達が成長。そして2年目の石田侑資が恵まれたスピードと前へのパワー、左足の精度で3バックの一角に食い込み、いよいよポテンシャルを発揮し始めた。

彼らの台頭によりチームが活性化される一方、虎視眈々とスタメン奪取を狙うのは、ルヴァン杯で好パフォーマンスを見せたMF下田栄祐、鏑木瑞生、加藤悠馬、そして大分戦で悔しいメンバー外を経験した6年目のMF山下優人ら。山下は千葉県出身で中学時代にジェフユナイテッド市原・千葉U-15に在籍。地元のなじみ深いクラブであり、2019年から東北社会人~JFL~J3をともに戦った日高も在籍する強敵・千葉との一戦だけに、期するものがあるはずだ。

■「課題を克服し、今できることをしっかりと」田村雄三監督

「前節で得られた感触として、できることが多くなっているのは確か。課題としていた決定力不足も、少しずつ改善されつつあります。

栃木SCさんのプレースタイルに対し、ある程度ボールを握れたことは予想通りでした。ただ、ボール保持者を追い越す動きがもっとほしかった。それができれば追加点を取れていたでしょうし、もっといい試合展開に持って行けたと感じています。今週は千葉戦に向け、そのあたりを重点的にトレーニングしてきました。

栃木戦で追い越す動きが少なく、DFラインもやや低かった理由の一つが暑さ。ただし、それは言い訳になりません。暑さがあろうと、90分間止まらず倒れないプレースタイルを示すのがいわきFC。今後の暑さへの順応は一つのポイントになると思います。

ジェフユナイテッド千葉さんは現在、トップスコアの25点を取っている攻撃力のあるチーム。失点もそれほどなく、前から積極的にボールを奪いにきますし、攻守の切り替えも早く、最後までしっかりと守ってきます。とはいえ、つけ入る隙がないわけではない。DFラインや中盤のウィークポイントをしっかりとついていきます。

今節はゴールデンウィーク中の試合で、サッカーが好きな子ども達もたくさん来場してくださると思いますので、いいゲームをして勝ちをつかみたい。相手の千葉さんをしっかりとリスペクトしつつ、自分達の課題を克服し、今できることをしっかりと体現していきます」

■いよいよ始まる「もう一つの敵」との戦い

第12節を終えた今年のJ2。現在、首位を走る4連勝中の清水エスパルスを、勝ち点差1で5連勝中のV・ファーレン長崎が追う展開となっている。

いわきFCは大分トリニータ、栃木SCに連勝。5勝4分け3敗の勝ち点19で、プレーオフ圏内となる5位への浮上を果たした。

とはいえ、喜ぶのはまだまだ時期尚早だろう。歯車が狂い一つでも敗れれば、あっという間に下位に転落するのがJ2というカテゴリーの恐ろしさ。油断は禁物である。

前節、栃木戦の展開を難しくした要因の一つが暑さ。幸い、今節の千葉戦は16時キックオフで予想最高気温24度。栃木戦ほどの厳しい暑さはないと思われる。ただし今年は猛暑が予想され、暑さというもう一つの敵との戦いもいよいよ始まる。

多くの選手が入れ替わった今シーズン。チームが掲げる「90分間止まらない、倒れない」魂の息吹くフットボールを磨き上げるにはスムーズな暑熱順化、そしてフィジカル向上の継続が大きなテーマとなるだろう。

2024明治安田J2リーグ第13節 ジェフユナイテッド千葉戦は5月3日(金・祝)16時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

勝利を目指してひたむきに戦ういわきFCの若き選手達に、熱きご声援を!

(終わり)

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