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ChatGPTを統合した新しいBingと開発中のライバル達

 今年(2023年)1月23日、Microsoftは、GPT-3やChatGPTを開発するOpenAIに数十億ドル規模の出資を行い、長期的なパートナーシップを締結すると発表しました。この時、MicrosoftがGoogleに対抗して、ChatGPTを自社の検索エンジンのBingに統合することを検討していると報道されましたが、近い内にそれが現実のものとなりそうです。
 MicrosoftがChatGPTより高速なGPT-4を統合した新しいBingを数週間のうちに提供するだろうという報道があり、また、新しいBingのプレビュー版を確認したとの情報が流れています。


1.新しいBingに関する情報

 ChatGPTを統合した新しいBingのプレビュー版に関する情報を公開したOwen Yin氏は、短時間でシャットダウンされる前にこのプレビュー版を確認し、その内容について、いくつかの調査を行うことができたそうです。

 ChatGPTを統合したBingは、new Bing(新しいBing)と呼ばれており、Microsoftは、これを検索エンジンの進化形であるリサーチアシスタントと位置付けています。この統合には、ChatGPTのより高速なバージョンであるGPT-4が用いられています。
 検索バーは、大きなテキストボックスに変更され、自分の要求に合った回答を得るために、質問と合わせてコンテクスト(文脈)や具体的手順や例をBingに与えることができます。なお、入力文字数は1,000文字までとなっています。

出典:@owen_yin

 2021年までに収集されたデータでトレーニングされたChatGPTと異なり、新しいBingは現在までの新しい情報にアクセスできるようになります。最新の情報に対応できないことがChatGPTの最大の弱点だったので、これは大きな進化です。
 ユーザーが質問を入力すると、Bingはその内容を解釈して、関連事項の検索を行います。そして、検索結果を編集して、その要約を出力します。
 Bingは、回答中の複数のフレーズをハイライトし、それらのフレーズが参考にしたサイトのリンク先を回答の最後に表示して、情報源を確認できるようにしています。一見もっともらしい嘘(ハルシネーション)を作り出してしまうこともChatGPTの大きな欠点でしたが、検索した情報を基に回答し、すぐに情報源を確認できることは、この欠点の改善につながります。

出典:@owen_yin

 新しいBingは、チャットボットのようにユーザーと対話することができます。
 さらに、以下の図に表示された例のように、Bingは、質問に対していくつかの選択肢で回答を示した後でユーザーに意見を求めてくることもあります。Bingは、一方通行の対話だけではなく、ユーザーに質問することもできるようです。

出典:@owen_yin

 新しいBingは、ユーザーが時間、場所、予算、食事の好みなどの個人的な要件を入力することによって、食事プランや旅行の日程を作成することもできます。また、オリジナルの詩や短い物語を作成することもできます。
 ユーザーが従来の形式の検索エンジンを使用したい場合は、ツールバーから検索とチャットを切り替えることができます。

 新しいBingの機能が公開されたら、利用したいユーザーは、Bingのサイトにアクセスして、ウェイティングリストに登録し、アクセス権の付与を知らせるメールを待つことになります。
 このように新しいBingの利用を登録制にするのは、将来的に有料にしたり、利用回数に制限をかけたりすることを考えているからなのかもしれません。


2.開発中のライバル達

(1) Apprentice Bard

 ChatGPTの大ヒットを受けて、Googleコードレッド(緊急事態)を発動し、急ピッチでChatGPTに対抗するチャット型AIの開発を進めているようです。
 このチャット型AIは、Apprentice Bard(見習い吟遊詩人)と呼ばれており、LaMDAの技術をベースにしています。なお、LaMDAは、以前、開発に携わったエンジニアが「AIに意識が芽生えた」と主張する騒動があったほど自然な文章を作成できるGoogle独自の対話用言語モデルです。

 Apprentice Bardの外観や機能はChatGPTと似ていますが、Google経営陣は、ChatGPTより精度が高いと自信を持っており、また、現在のChatGPTには対応できない、最近発生した出来事を回答に含めることもできるそうです。
 Googleは、さらに、Apprentice Bardを検索エンジンに組み込む可能性も検討しているとのことです。

(2) Sparrow

Googleは、Apprentice Bard以外にも、チャット型AIの公開を検討しています。
 Google傘下のDeepMindデミス・ハサビスCEOは、TIMEのインタビューの中で、ChatGPTのライバルとなるチャット型AIのSparrowを開発中であると述べました。

 Sparrowは、ネット検索を行うことによって回答した内容の証拠となる出典を示し、また、ChatGPTと同様に人間によるフィードバックを用いた強化学習(RLHF)を採用して、嘘やなりすましのようなリスクを抑制する工夫をしています。DeepMindは、Sparrowのプライベートベータ版を2023年中に公開することを検討しているようです。

(3) Open Assistant

 LAIONがオープンソース版のChatGPTと言われるOpen Assistantを開発しています。LAIONは、大規模な機械学習モデル、データセット及び関連コードを一般公開するという目標を掲げたドイツの非営利団体で、Stable Diffusion や Imagen などが画像生成AIのトレーニングに同団体が保有するデータセットを使用したことで知られています。

 Open Assistantは、タスクの内容を理解して、サードパーティのシステムと連携し、動的に情報を取得することができるチャットベースのアシスタントで、簡単に拡張やパーソナライズが可能な無償のオープンソースソフトウェアです。
 また、LAIONは、「私達は、ChatGPTの複製で留まるつもりはない。メールや送り状を書くだけではなく、有意義な仕事をし、APIを使い、情報を動的に調査し、さらに誰もがカスタマイズして拡張できるような未来のアシスタントを作りたい。」と述べています。そして、コンシューマー向けのハードウェアで動作するような小型で効率的なものとすることを目指しています。

 現在は、データを収集中で、Open Assistantのサイトを通じてタスクに参加することにより、プロジェクトに貢献することができます。
 与えられるタスクには、一連の会話の中の回答で、どの回答が優れているかを順位づけするものなどがあります。

データ収集用フロントエンドのダッシュボード

(4) Baidu

 中国最大の検索エンジンを開発・運用するBaidu(百度)が今年3月にChatGPTのようなチャット型AIを発表し、自社の検索エンジンにもその機能を導入することを計画しているとBloombergが報道しました。

 Baiduは、従来から2,600億のパラメーターを持つ大規模言語モデルのERNIE 3.0 Titanや拡散モデル画像生成AIのERNIE-ViLG 2.0を開発するなどAIシステムの開発に熱心で、今回のチャット型AIもこうしたERNIEシリーズの大規模言語モデルがベースになると予想されています。

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