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韓国映画「スウィング・キッズ」(およびアメリカ映画「Swing Kids」)

主演:D.O.(EXO)、ジャレッド・グライムス、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミノ
2018年 2時間13分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=© 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS)
(2022年3月29日 リンク修正)

少し前に、フォローしているじゅんぷうさんの記事でこの映画のことを知り、『モダン・ラブ』がどういうふうに使われているのか興味あったし、ちょうどEXOディオの新しいアルバムを聴いているところだったので、アマプラにあったので早速視聴。

全く関係ない4人が集まってタップダンスに挑戦

朝鮮戦争当時、半島最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所で結成された戦争捕虜たちによるダンスチームの物語。南北両方の朝鮮人、中国人がアフリカ系アメリカ人のリーダーのもとで、タップダンスを覚え、みんなの前で披露するために一生懸命練習する。

そんな物語だが、詳しくはじゅんぷうさんの記事を読んでいただくとして、この韓国映画(以下「本作」)に関して動画や色々なサイトを見ていたら、同名の1993年のアメリカ映画『スウィング・キッズ/引き裂かれた青春』(以下「SK」)があることを知った。本作は韓国のミュージカルを原作としているので、SKとは一応関係ないと理解した。古い映画で配信では見つからなかったが、YouTubeに画質と音声が悪いもののフルバージョンがあったのでこちらも視聴。非常に多くの共通点があったので、ちょっとこれについて書いてみようと思う。

ドイツのスウィング・キッズたち

SKの物語はナチス支配下にあった、1930年代のドイツのハンブルクが舞台。当時「スウィングユーゲント(Swingjugend、英語Swing Kids)」といって、中産階級層の若者を中心に、アメリカのジャズに傾倒し、広がりつつあるナチスに反抗する運動が起こった。彼らは定期的にダンスパーティーを開催し、見かけ上はドイツ音楽を演奏、しかし見張りを立てて大丈夫な時はジャズを演奏して、みんなでダンスを楽しんでいた。

主人公はスウィングユーゲントでありながら、ふとしたハプニングでヒトラーユーゲント(ヒトラー青少年団)に加入させられたピーターとトーマス。昼間はヒトラー、夜はスウィングという二重生活をした青年達の運命を描いた物語である。

ダンスがハイライトとなる両作品

本作の魅力はなんといってもタップダンス。全く共通点のなかった者たちがタップダンスに惹かれて、少しずつ心を通い合わせていくところがとても良く描かれていた。
特にギス(EXOディオ演)が寝ていても起きていても、全ての音がタップダンスはのリズムに聞こえてしまうシーンはよく出来ていた。アイドルのタップダンスというと、私はすぐニノを思い浮かべてしまうが、ディオも相当練習したのではないだろうか。

逆に、SKではジャズ、そしてダンスで結ばれていた仲間達の絆が、立場上、この時代の特殊性から少しずつ壊れていく。
スウィングユーゲント達は、ナチスに対抗するためにアメリカ、それも黒人の音楽であるジャズを崇拝していた。そしてそれを演奏していたのは、大半がユダヤ系であったのである。ピーターとトーマスの友人アーヴィッドもユダヤ系で、足を怪我して踊れないため、バンドメンバーの一人として活躍していた。

父親がユダヤ系であったピーターは、あまり深く考えずにヒトラーユーゲントに参加していたが、純ドイツ人のトーマスは少しずつそのイデオロギーに傾倒していってしまう。そしていくつかの出来事が重なり、3人の友情は決定的に壊れてしまった。

分断された国家ならではの物語か

SKは第二次世界大戦、本作では朝鮮戦争という時代を舞台にしていて、戦争において「イデオロギー」とは何なのかを、ある意味ダンスを通して考えさせられる。特にダンスシーンがとても素敵で、楽しいものなので、尚更だ。

資本主義、共産主義、それを知らなければ 殺し合いもなかったのに
本作中のセリフより

本作中のセリフで出てくるものだが、今でも世界のどこかで行われている戦争や民族間の紛争も、政治的、宗教的なものなど、何らかのイデオロギーを掲げているものばかりだ。

ドイツは統一されたが、北朝鮮と韓国はまだ。若者たちの運命が、これらの映画の結末にならないように、ダンスというものを純粋に楽しめる世界になればいいのにと思うが、なかなかそうはいかないんだろうな。

「ファッキン・イデオロギー!」
「スウィング・ハイル!」

こんな彼らの叫びが色々なところに届きますように。
なんか両作品を見て、結構落ち込み、しんみりしてしまったが、本作の方は現在アマプラで視聴可能。
ナチス関連、第二次世界大戦をテーマとした映画作品はたくさんあり、私も色々と観たことがあるが、スウィングユーゲントというのは知らなかったので、とても興味深かったが、SKの方は残念ながらDVDしかない模様。入手できて興味のある方にはこちらもオススメである。レビューサイトなどでコメントを読んでみたが、歴史の授業で観た、なんて書いている人もいたので、大ヒットしたのかはちょっとわからないが、評価されている作品のようである。

ここではSKのハイライトとなるダンスシーンをリンク。この曲の作曲家のベニー・グッドマンもユダヤ系。本作の「モダンラブ」や予告編はじゅんぷうさんの記事でお楽しみください〜。

(2022年3月29日 リンク修正)
別の歌のリンクを貼っていたが、ファンメイドだったので、案の定非公開になってしまったので、『Rose』の公式MVをリンク♫


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