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秋津島

推しの根本凪は、茨城放送のラジオパーソナリティである。

月替わりのテーマでメールを募集するのだが、5月は「子供に戻りたいと思ったとき」であった。


今が一番楽しいぜ!と思って生きているため、お題が難しい。
うーんうーんと考えていたら、思い出す風景があった。




自宅のすぐそばに母の実家があり、長い休みには従兄弟が祖父母に会いに来た。
一人っ子の当方には、待ちわびた時間である。
兄従兄弟は10個上、姉従姉妹2人は10上と6上。
当方は足手まといでしか無いが、よく遊んでもらった


その日は、ヤクルトと書いた緑の虫かごに、トンボを集めた。4人で採ると、すぐいっぱいになる。
祖父母宅では叱られると思ったのか、当方の家の応接間に、トンボを放すことになった。

集めては放し、集めては放し。

すぐに6畳間はトンボまみれになる。
レースのカーテンに、シオカラトンボの黒いフリル。ソファも絨毯も、トンボだらけ。

おそらく、がっつり怒られたはずである。
一番チビだった当方には、後始末の記憶がない。


10上の兄姉には、もう何年も会っていない。
6上だった姉は、もういない。

なんの屈託もなく、トンボを追いかけていたあの頃に、戻りたいとは思わない。

戻りたいわけではないが、無邪気な4人の子供が走る姿を見てみたいな、と思うのである。




去年あたりに気づいたのだが、付けておくと蚊に刺されないらしいと、オニヤンマのブローチやらキーホルダーやらが店頭に並んでいた。
害虫を食べるというのは本当らしい。


トンボの和名「秋津」は、日本の古名であったそうな。
日本がトンボの細長い姿に似ていると、古代の人はどうして知ったのだろうか。



当方が子供だった縄文時代より、トンボの数は減っているだろう。
秋津島から秋津がいなくなりませんようにと、思い出を記しておく。



☆ヘッダー写真、お借りしました。ありがとうございます。

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