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論文紹介:核酸ワクチン接種の関節炎への影響

今日は国内の報告から、リウマチ患者へのワクチン接種の影響を見てみたい。論文は以下のものである。

「Impact of SARS-CoV-2 mRNA vaccine on arthritis condition in rheumatoid arthritis」
(Front Immunol. 2023 Aug 25;14:1256655.)

よく見ると過去に同じグループの論文を紹介したことがあった。この長崎大学のグループは核酸ワクチンが自己免疫疾患に対してリスクになるという基本的な概念を精力的に訴えているということだろう。

さて、今回の論文はリウマチ患者における核酸ワクチン接種の影響、特に関節炎症状の悪化などについて、健常人との比較も交えながら解析したものとなっている。ポイントとなる関節炎の悪化に関しては、ワクチン接種を受けた1198人のRA患者のうち、37人(3.1%)に関節痛がみられたとなっており、これは健常人(医療従事者)と比較すると発症する頻度が高かった(医療従事者1,117人のうち関節痛を報告したのは9人(0.8%)のみ)。ワクチン接種後に関節痛を呈したRA患者37人のうち31人のデータをさらに解析すると、これらの患者では、疾患活動性は2ヵ月後に最も高くなり、10人が6ヵ月以内に抗リウマチ薬の追加投与を必要としたとなっている。

今回の結果は、一部のリウマチ患者にとって、核酸ワクチンが健常者と比較して関節炎を増悪させる引き金となる可能性があることを示唆している。この様な核酸ワクチン接種をRA患者に安全に使用するためには、免疫の状態というのは患者はもちろん健常人であっても多岐に渡り、今後より大規模な研究を実施して、どの様な免疫学的状態において炎症性疾患のリスクが高くなるのかを検証する必要がある。今回の研究では、興味深いことに、ワクチン接種前にすでに生物学的または分子標的抗リウマチ薬を使用していた患者では、追加投与が必要な患者はいなかったという点だ。以前にも示唆した事があるが、既に強力な免疫抑制剤を投与されている場合には核酸ワクチンによる炎症反応の増悪が予防される可能性が改めて示された。一方で、この場合にはむしろワクチン効果の方を気にしなければならない。

論文も以下の結論で締めくくられている。

結論として、本研究はリウマチ患者がSARS-CoV-2ワクチン接種の結果、関節痛をより頻繁に、より長く持続させるという証拠を示すものである。ほとんどのRA患者は安全にワクチン接種を受けることができた。しかし、ワクチン接種後に関節痛を起こしたリウマチ患者の約3分の1は、その後6ヵ月以内に追加の抗リウマチ薬を必要とした。リウマチ患者への使用においては、一般集団と比較して、関節痛が長期化・頻発する傾向があることを覚悟しなければならないし、一部の患者では疾患活動性の増加に対処するために、ワクチン接種後に抗リウマチ薬を追加処方する必要があるかもしれない。リウマチ患者において関節痛を最小限に抑え、ワクチン接種の結果を最適化するための戦略を探るために、さらなる研究と大規模な研究が必要である。

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