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努力至上主義の課題

「自分らしく生きる」
「成長型マインドセットで常に努力で全てが変えられると信じた方が成功しやすい」
「ガチャといって環境のせいにしている人は一生犠牲者として生きていくことになる」
「当事者意識つまり自責思考で自分ごと化して行動していくことが大事」
現代は良くも悪くも個人主義が加速している

これらは全て至極真っ当な意見だし、共感するが暴力的な側面を持っているように思う

僕は小学生のときから陸上クラブに入り、中長距離を走っていた

当時は1500mとか3000mという種目だったが、個人種目なので「あいつのミスで負けた」などという言い訳は一切できない
レースの位置どりも、ペース配分も、体調管理も全て自分の責任である

中学1年から2年あたりの成績は良かったが、3年生ごろから記録が伸び悩んだ
練習量が足りないと自分を責めてより走るようになった
当然のように全ては自分の練習、精神が問題だと思っていた

また当時将来はオリンピックに出るんじゃないかと思っていたとてつもなく速かった選手たちもいつの間にか陸上界からは姿を消したり、たまに世界大会に出る人がいてもアフリカ勢には全く歯が立たない

では、日本の長距離界はアフリカの選手に比べて練習量が足りていないとか練習の質が悪いとか、全体的に技術レベルが低いとかそういうことか?というとそんなことは決してないと思う

シンプルに骨格、筋肉、肺活量全てが根本的に違うことに尽きる

日本人でも短距離走向きの筋肉と長距離走向けの筋肉は先天的に決まっているらしい
短距離走向けの筋肉の人がどれだけ練習しても長距離走向けの筋肉をしている人に勝てないというのは当然ありえる話だと思う

この陸上の話で何が言いたいかというと、公平と平等という2つは両立しえないということだ

マラソン大会でスタート地点を同じにすることは公平なルールである
一方で国籍や選手の持ちタイムによってスタート地点を変えることは不公平だ

ところがスタート地点を同じにして「よーいドン」でスタートして競うと当然勝ち負けが発生する
勝った選手には賞金が支払われ、負けた選手には支払われないことは不平等だから、走った人には平等にみんな同じ額だけの賞金を払いましょうとなってはスポーツの面白さはそこにはない

公平にこだわると不平等が待っていて
平等にこだわると不公平になる

それなのに「平等で公平な社会を!」という主張には無理がある

性別や国籍など自分ではどうしようもないことで不当な扱いを受けることはまさに不公平で差別と言われたりするが、ここで考えるべきは何が自分ではどうしようもないことで何が自分でどうにかできるのかということだ

部落差別やヒトラーの選民思想の歴史から生まれで差別することはとんでもなく悪になっているが
最近遺伝学の本を色々と読んで、IQは遺伝するし、鬱も遺伝するみたいな話にびっくりした

「あなたなら成功する」
「努力すればいつか夢は叶う」
というメッセージに自分自身励まされて頑張ってきたし、夢を持つ人には僕自身もそういうメッセージを伝えてきたが

「いや、それ以上頑張ったら遺伝的に鬱になる可能性跳ね上がるからやめた方がいいよ」ということが世の中にはあるんだと学んだ

そんな時にとある経営者の話を思い出した
その人は家系的に鬱になりやすいということで自分が1つだけの収入源やコミュニティに依存していると何かあった時に自分の精神をうまく保てる自信がないから、複数の収入源を持つようにしているし、事業も複数やるようにしている、目標も非現実的なことを掲げると大変なことが起きるので高い目標は掲げない、コミュニティも複数属するようにしているというものだった

自分の遺伝子のことを理解し、自分がどうなったらやばいのか?を徹底的にリスク管理して、それでもってものすごく毎日を楽しんでいた
話を聞いていて、鬱になるなんて想像もつかないような人だったが、その人の考えではそうらしい

そして今回、いろんな本を読んで考えてその人の生き方は改めて素晴らしいなと考えさせられた

諦めること、逃げることはダメなことだと僕自身思っていたが、諦める力/逃げる力というのは重要なスキルの1つだと思うようになった

自分自身の遺伝、特性を正しく理解した上で、どういったところで自分が人生を謳歌するのか?を見定める力こそが現代に求められる力なんじゃないだろうか

教育では不公平はダメなこと、不平等はダメなことと教えるのではなく
不公平で不平等な世の中の中で、自分がどのような位置に現在いるのか?を理解した上で、その環境でどう立ち回るのか、別の評価をされる環境に移動を促すのかそういった方向性の教育をしていくことが現実に則していていいんじゃないかなと

自分は何を諦めた方が良くて何から逃げた方がいいのか?を理解することはそれこそ何らかの分野での成功確率を一気に跳ね上げることなんだと思う

僕自身、コーチングという仕事を生業にしている中で「目の前の人の人生がどうやったらより良くなるか?」を支援する仕事をしているわけだが子どもから大人まで対象にしている中でアプローチの幅が広がった気がする

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