村田製作所【6981】成長が停滞する現状と一定の業績回復が期待できる理由

日経平均に採用されている銘柄を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのは株式会社村田製作所です。

総合電子部品メーカーとして知られている企業です。

事業内容と業績のポイント

それでは早速事業内容を見ていきましょう。

村田製作所の事業セグメントは①コンポーネント(標準品)②デバイス・モジュール(用途特化型)の2つです。

各事業についてもう少し詳しく見ていきましょう。

①コンポーネント事業の内訳を見ていくと以下の2事業があります。
 (1)コンデンサ
 (2)インダクタ・EMIフィルタ

(1)コンデンサの主力製品は積層セラミックコンデンサです。
電子回路の基本となる部品で、電気の蓄積と放出、ノイズの吸収といった役割を担っており、ほぼ全ての電子機器で利用される部品です。

続いて(2)インダクタ・EMIフィルタの主力のインダクタはこちらも電子回路の基本となる部品で、電圧の変換や電流の安定のために利用されます。
なのでこちらもほぼ全ての電子機器で活用されます。

続いて②デバイス・モジュールの内訳を見ていくと以下の3事業があります。
 (1)高周波・通信
 (2)エナジー・パワー
 (3)機能デバイス

(1)高周波通信の主力製品には表面波フィルタがあります。
これはスムーズな通信に必要な部品で、特定の周波数帯の電気信号を取り出す事に使われ、スマートフォンなどの通信機器に利用されます。

その他の主力製品には樹脂多層基板があります。
これは電子機器の小型化・薄型化のキーとなる部品です。
小型化が進むスマートフォンなどで活用されています。

高周波・通信事業はスマートフォンなどの通信機器の市場の影響を受けやすいという事ですね。

続いて(2)エナジー・パワーの主力製品はリチウムイオン二次電池となっています。
電子機器に電力を供給するための電池で、家電に活用される他にも産業機器にも活用されています。特にパワーツールと呼ばれる電動工具向けの規模が大きい事業です。

(3)機能デバイスはセンサが主力です。
通信機器の他にも自動車などへも活用されており、今後のIOT化や自動運転化の変化の中で成長が期待されます。

①コンポーネント事業の製品は電子回路の基本となるような標準製品で②デバイス・モジュール事業は特定の用途で活用されるような製品となっています。

ビジネスモデルとしては垂直統合型となっています。

電子回路の基本となる電子部品や、通信関連の電子部品、その他にもリチウムイオン電池やセンサなどを垂直統合で展開している企業だという事です。

そして、チップ積層セラミックコンデンサ、表面波フィルタ、多層LCフィルタなど多数の製品で世界のトップシェアとなっています。
電子機器の基礎となるような製品でトップのシェアを持っており、非常に強い企業だと分かります。

続いて2023年3月期時点でのセグメント別の売上構成を見ていくと以下の通りです。
①コンポーネント:54.2%
 (1)コンデンサ:(43.8%)
 (2)インダクタ・EMIフィルタ:(10.4%)
②デバイス・モジュール:45.1%
 (1)高周波・通信:(26.9%)
 (2)エナジー・パワー:(12.7%)
 (3)機能デバイス:(5.5%)
売上は両事業とも分散した構成ですが、製品別だと特に規模が大きいのはコンデンサとなっています。

セグメント別の営業利益の額は以下の通りです。
①コンポーネント:2801億円
②デバイス・モジュール:206億円
利益面は①コンポーネント事業が主力です。

用途別の売上高を見てみると以下の通りです。
①通信:39.1%
②モビリティ:23.1%
③コンピュータ:13.3%
④家電:11.7%
⑤産業・その他:12.8%

通信やモビリティ向けのシェアが大きいです。

電子回路の基本となる部品が事業の主力で、特にスマートフォンなどの通信機器や自動車などの市場に業績が左右されやすいという事ですね。

また、地域別の売上構成は以下の通りです。
①中華圏:50.0%
②南北アメリカ:15.0%
③ヨーロッパ:10.3%
④日本:9.0%
⑤アジア・その他:15.7%
世界各国の多くの電子機器メーカーの工場を抱えている中華圏が主力市場で国内比率はわずか9%です。

海外比率の高さもあり、2023年度のドル円の1円の変動による営業利益への影響は50億円となっています。
2024年3月期以降も、大きな円安が続いていますから好影響が期待されます。

事業内容が分かったところで、続いて業績の推移を見ていきましょう。

長期的な推移を見ていくと多少の増減はありますが、基本的には右肩上がりで大きな成長を遂げています。

近年特に成長を支えてきたのが標準品を取り扱うコンポーネント事業(1層目)です。

2Gの登場以降、携帯電話やスマートフォン、タブレットなど急速に電子機器が増え、さらに小型化や複雑化も進む中で電子機器に搭載する部品点数も増加してきました。

電子機器の量的な増加に加えて質的な面でも電子部品の需要が拡大してきたという事ですね。

そういった市場拡大と共に村田製作所も大きな成長を遂げています。

現在も、スマートフォンの高機能化や小型化は進んでいますし、自動車も電動化が進んでおり電子部品の需要が増しています。
さらに自動運転や安全性能を高めるために、センサも需要が拡大しています。

今後に関してもAIの進歩やロボットの成長などが期待されており、長期的にも電子部品の市場の大きな拡大が期待されます。

それに伴って今後の村田製作所の成長も期待できるという事ですね。

そのような市場の成長が期待される環境の中で、ポートフォリオを3層に分けて取り組みを進めています。

1層目のポートフォリオは標準品を取り扱うコンポーネント事業の取り組みで、供給力の強化による成長を進めていこうとしています。

市場の拡大に追いつくだけの供給力を確保するのが重要だという事ですね。
特に電気自動車化で成長が期待できる車載向けでは、タイでの新工場も建設しています。
成長市場で、それに見合った供給力の拡大が進むかに注目です。

2層目は用途特化品のデバイス・モジュール事業で、成長市場での事業拡大を積極的に進めていこうとしています。

通信関連では無線通信技術でM&Aを活用しつつ取り組みを進めており、自動車向けでは、自動運転化などが進む中で需要が増すセンサのラインアップ拡充と生産能力強化を進めています。

データセンタやサーバーなどの市場拡大が期待される中で電源モジュール事業の拡大も進めています。

技術力を高めつつ成長領域でも拡大が続くかに注目です。

そして3層目は新規事業です。

2層目までの既存事業の拡大に加えて、3層目として新規事業での上積みを進めています。

現在注力しているのが、ソリューションビジネスやヘルスケア機器、機器製作などです。

新規事業でも大きな拡大が期待できるような事業が出てくるかにも注目です。

さて、大きな成長を見せており今後の成長も期待される村田製作所ですが、2019年3月期~2023年3月期の業績を見ていくと2023年3月期は前期比で減収減益となっており苦戦しています。

円安が進み好影響が期待されますが、それでも業績は一時的な停滞を見せています。

2023年3月期の用途別の売上高を見てみると、市況悪化を受けてスマートフォンなどの通信向けが▲15.4%、コンピュータ向けが▲24.5%となっています。
スマートフォンやPCなどの電子機器の需要低迷の影響を受けたという事ですね。

その結果、営業利益の変動要因を見てみると為替の影響+1160億円はありつつも、操業度が低下による影響が▲2150億円と非常に大きく、業績の悪化に繋がっています。

村田製作所のような企業は大きな設備を抱えているため、需要が低迷して工場などの稼働が十分に出来なくなると設備が過剰となり、そのコストでの業績悪化が大きいという事です。

2024年3月期以降はインフレが続き消費も低迷傾向にある国や地域が多いです。
長期的な成長は期待されるものの、短期的には業績の低迷が続く可能性が高いという事ですね。

まずは需要低迷の悪影響がどの程度出ているのか、今後の市況回復がいつになるのかが注目です。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回見ていくのは2024年3月期の通期の業績です。

売上高:1兆6402億円(▲2.8%)
営業利益:2154億円(▲27.8%)
純利益:1808億円(▲26.9%)
減収で減益で苦戦した状況が続いています。

営業利益の変動要因を見ると、合理化の効果が+360億円、為替の影響が+460億円など、合理化や円安の好影響は見られますが、操業度低下による影響が▲1290億円、値下げによる影響が▲670億円となっています。

需要低迷によって操業度が下がり、売値も下がった事で苦戦しています。
市況低迷が続いている事が分かります。

もう少し詳しく用途別の売上を見ていくと、前期比でコンピュータが▲9.6%、家電が▲25.0%、産業・その他が▲16.5%と苦戦しています。

主力の通信向けは+2.6%で前期比では増加していますが、前期が大きく落ち込んでいましたから、低迷傾向が続いています。

消費の低迷傾向が続く中で全体的に需要低迷が続いているという事ですね。

また、前期比で▲25.0%と苦戦していた家電向けでは、パワーツール(電動工具など)向けのリチウムイオン二次電池が特に苦戦したとしており、リチウムイオン二次電池の事業で495億円の減損を計上しています。

リチウムイオン二次電池の事業は、パワーツール(電動工具など)市場に注力しており、この市場がDIY需要などを捉えコロナ禍の巣ごもり需要で急激に拡大しました。

そして、市場成長も見込み近年は積極的な生産能力の増強投資を進めてきましたが、巣ごもり需要は低迷しましたし、中国を中心に建築市場の低迷も起き2023年度は需要が大きく低迷しています。

その結果、在庫調整の長期化が見込まれ、今後の苦戦も想定される中で減損まで行ったという状況です。

投資の失敗も業績悪化に繋がっていたという事ですね。
巣ごもり需要の再拡大は期待できませんし、リチウムイオン二次電池の事業は苦戦が続く可能性が高そうです。

とはいえ、大きな減損を行いましたから2025年3月期以降の業績に関しては一定の改善が期待されます。

続いて、受注高と受注残高の推移を見ていくと低迷傾向は続いていますが、受注高は2023年3月期の4Qを底に改善傾向にあります。

受注残高は2024年3月期の3Qまで減少が続いていましたが、4Qは円安による評価替えの影響があってですが、前四半期比で増加に転じています。

底打ちの傾向は見られるという事ですね。

そういった中で、2025年3月期の通期予想を見てみると以下の通りです。
売上高:1兆7000億円(+3.6%)
営業利益:3000億円(+39.2%)
純利益:3130億円(+30.0%)

増収で大幅増益と業績の改善を見込んでいます。

用途別では、リチウムイオン二次電池の苦戦が見込まれる中で家電は悪化を見込むものの、モビリティ向けと、コンピュータ向けで増加を見込んでいます。

5G端末の増加によるスマートフォン市場の拡大や、PCの在庫調整からの回復、xEV市場の拡大による需要増加を見込んでいます。
一定の需要回復による業績回復を見込んでいるという事ですね。

とはいえ消費低迷の影響などは考えられますから、想定通りの市況回復を見せるか景気動向に注目です。

という事で直近では減収減益と苦戦しています。
消費の低迷も見られる中で全体的に需要の低迷が続いており、特にリチウムイオン二次電池の事業は投資の失敗もあり特に苦戦した状況です。

とはいえ受注面も底打ち傾向が見られますし、リチウムイオン二次電池に関しても大きな減損を計上した事による業績改善は期待されます。
なので2025年3月期は一定の業績改善が期待されると考えられます。

とはいえ消費低迷の影響など、悪影響が続く事は考えられますから市況や景気動向には注目です。

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