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拝啓 中山泰秀副防衛相

こんにちは、はじめまして。中東イスラム研究をしている飯山陽と申します。

毎日新聞の「中山泰秀副防衛相のツイッター『炎上』 中東衝突めぐる投稿で」というタイトルの記事を読みました。

僭越ながら申し上げます。

中山副防衛相の発言されたことは、実に合理的であり、正しいと思います。

なぜなら中山副防衛相は紛争当事者について、一方はイスラエルという「国」であり、もう一方はハマスという「テロ組織」であると正しく認識してらっしゃる。そしてイスラエルには国民が存在する以上、当然その国民と国土を防衛する自衛権がある、という国際法上の当然の権利に立脚してらっしゃる。だから、正しいと申し上げたのです。

しかし日本のメディアや言論の場で、このような主張を目にすることはほとんどありません。

なぜならメディアや中東業界、知識人の中では、パレスチナ問題をイスラエルという悪の帝国主義抑圧国家と、パレスチナという抑圧された弱き正義の戦士の、いわば「正義と悪との戦い」「道徳劇」として描かねばならない、と決まっているからです。

彼らはハマスという「テロ組織」をパレスチナという「弱き正義の味方」にすり替え、「テロ攻撃」を帝国主義に対する「抵抗運動」にすり替えることにより、ハマスを擁護します。その証拠に、彼らはハマスを決して「テロ組織」とは呼びません。「イスラム組織」などと呼んで誤魔化しています。毎日の当該記事も然り。

彼らはハマスが多くの国によってテロ組織指定されている事実だけでなく、ハマスがガザ市民に対する国際的な支援金、支援物資を横領し、学校や病院や道路がつくられるはずの鉄やセメントを使ってイスラエルを攻撃するためのトンネルやロケット弾の発射施設を作ったり、幹部が豪邸を建て贅沢な暮らしをしていることを伝えません。

また、ハマスはわざと学校や病院を攻撃の基地や拠点とし、そこをイスラエルが空爆するよう仕向け、イスラエルは無辜の市民を虐殺したと主張し、その映像を大手メディアに撮影させ、世界に配信させることにより、世界中の人々にイスラエルに対する嫌悪、敵意を広め、ハマスはかわいそうなパレスチナ人を守る正義の戦士なのだというイメージを広めさせています。

ハマスはメディアのやり方を熟知し、それを戦略の一環として利用しているのです。

このやり方は、実にうまく機能しています。実際、毎日新聞など日本のメディアはハマスの思う通りの「イスラエルが悪い、イスラエルこそ諸悪の根源」という報道をし続け、それしか知らない日本人もそのイメージを固定化させています。

毎日の記事には、中山副防衛相のツイートに「やられたイスラエルは無差別に空爆しても良いということでしょうか?」「やられたらやり返していいというお考えですか」「『私達』ってなんだよ。勝手に数に入れんな」などの返信が相次いでいる、とありました。

これは日本の一般の人々が、日本のメディアの偏向報道に洗脳されていることの証です。

メディアのイスラエル・パレスチナ紛争報道が偏向しているのは、日本だけではありません。欧米もそうです。

2018年、アメリカのトランプ大統領がイスラエルにある米大使館をエルサレムに移転した際の、アメリカのリベラル・メディアの報道があまりにも偏向していることに怒った当時の在イスラエル米大使のディヴィッド・フリードマン氏は、次のように書いています。

彼ら(ハマスの戦闘員として自爆テロをした60人のガザのパレスチナ人)は英雄でもなければ、宣伝されていたような平和的な抗議者でもない。少なくともリベラル・メディアが登場する前はそうではなかった。リベラル・メディアは、大使館をエルサレムに移転するという大統領の決定を否定するためのシナリオを必死に考え、開会式を分割画面で放送し、同時にガザの暴動を映し出し、テレビでは隣にあるように見えても実際には60マイル離れた場所で起きている大虐殺に対して、式典の参加者が無神経だと非難した。

ここにはメディアの欺瞞と偏向が如実に現れています。テロリストを英雄や平和的抗議者というオブラートにくるんで一般人に提示して見せているのはメディアなのです。

またイスラエルの自衛権については次のようにも書いています。

世界のどの国も、外国人が自国の国境を襲撃することを許さない。その通りだ。 自国の国民を殺すことが目的であると宣言されているのであれば、強制的な反応が起こらないと考えるのはおかしなことである。

これはハマスが1988年に発表した「ハマス憲章」において、ジハード(神の名における敵との戦い)によってイスラエルを殲滅させることを目標にする、と明言していることを前提としています。

イスラエルが自衛をやめる時。それはイスラエルという国がテロリストによって殲滅させられる時なのです。

今回の紛争に際しても先週、ハマス幹部のファトヒ・ハンマードはエルサレムのパレスチナ人に対し、「ユダヤ人の頭をナイフで切り落としてほしい。あなたの手で、彼らの動脈を切るのだ。ナイフはたったの5シェケルだ。 ナイフを買って、研いで、ただ(首を)切り落とせばいい。たったの5シェケルであなたはユダヤ人国家に恥をかかせることができるのだ」と呼びかけました。

これが正義の戦士、平和的抗議者の実態です。

ハマスがテロを続けるのは、テロを続けることで世界のメディアがハマスを称賛し、世界中の人々のパレスチナへの同情とイスラエルへの非難を強めることができると熟知しているからです。

パレスチナ問題は領土問題です。テロでこれを解決することはできません。ハマスにそれを理解させない限り、ハマスはテロをやめません。

いくら「イスラエルによる占領」をもちだそうと、それによってテロを正当化することあってはなりません。ハマスのテロ行為を非難せず、暗に擁護するメディアは、ハマスのテロの共犯者です。

これは単にイスラエルに味方せよ、という問題でもありません。

もちろんイスラエルには自衛権があります。しかし同時に、ハマスによって「人間の盾」として利用されているパレスチナの人々を解放し、領土問題を解決に導くためにも、メディアはハマスを擁護すること、偏向報道をやめるべきなのです。

最後になりましたが、中山副防衛相のような認識をお持ちの国会議員がいらっしゃることを知ることができ、とても嬉しかったです。今後のますますのご活躍をお祈りすると共に、応援しております。


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