優性思想の危険性

はじめに


このnoteは2021年8月12日、とあるメンタリストを名乗る男性がyoutubeに上げた動画内で、優性思想にもとづく発言を行ったことから記しました。
まず最初にはっきりと申し上げておくと、すべての人には「内心の自由」があり、どのような醜悪・醜穢な考えを抱く権利はあります。しかしながら、インフルエンサーである氏が公共の場で、「優勢思想を肯定するような発言」を行うことは内心の自由から逸脱した行為であると考え、批判目的で私の個人的な意見を表明することにいたしました。

優勢思想とは?


優生学とは、「人類の遺伝的素質を改善することを目的とし、悪質の遺伝的形質を淘汰し、優良なものを保存することを研究する学問」である(『広辞苑 第6版』岩波書店)。

つまり身体的・精神的(遺伝的)に優れた人間を残すために、劣っているとされる人間の遺伝子を排除して、優秀な人間の遺伝子のみを後世に残そうとする思想のことです。さらにいうならばこの思想は「命の選択」を行う極めて危険なものです。

問題の発言

僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。 生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救って欲しいと僕は思うんで。 生活保護の人生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで。 猫が道端で伸びてたらかわいいもんだけど、ホームレスのおっさんが伸びてるとさ、なんでこいつ我が物顔でダンボール引いて寝てんだろうなって思うもんね。 人間の命と猫の命、人間の命の方が重いなんて全く思ってないからね。自分にとって必要ない命は軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい、どちらかっていうといない方がよくない? ホームレスって、言っちゃ悪いけど、いない方がよくない? みんな確かに命は大事って思ってるよ、人権もあるから一応形上大事ですよ、でもいない方がよくない? 正直。 邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ、ねぇ、治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。 猫はでもかわいいじゃんって思うけどね僕はね。 もともと人間は自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてるんですよ。犯罪者殺すのだって同じですよ。犯罪者が社会にいるのは問題だしみんなに害があるでしょ、だから殺すんですよ、同じですよ
(引用元 https://www.youtube.com/watch?v=6k6hDVD5Emc)

と氏は発言をしました。これは優生思想にもとづいた発言であり、ホームレス状態に陥った人々を差別し、偏見を助長させるものです。命の重さに序列はなく、比較するようなものではありません。
税金とは社会に暮らす様々な人たちが暮らしやすいように使われるものであって、そこに福祉=生活保護が含まれます。またホームレスがダンボールを道にしいて寝ているのは、家がないために仕方なくそうしているのです。
ねこの命もホームレスの命も、等しく大切なものです。
人間は差別をする生き物であり、法で縛られないとどんどん強いものが弱いものを淘汰して弱肉強食の社会になってしまいます。合理化・利益優先を追い求めた結果、人命が奪われることになった痛ましい事故や事件は歴史上、いくつも起きています。
そのため、人命・人権を守るために法整備がなされ、法改正がされ、社会に不要とされるような人達でも人権を持ち、生きていけるようにとされて来た歴史があります。
生活保護受給者、ホームレス、犯罪者にも当然、人権があり、みだりに殺されたり迫害されないような社会構造となっています。

役に立たない人は死んでもいい?

さて、くだんの氏が動画で語ったような優勢思想はこれまで数多くの尊い人命を奪って来ました。
第二次世界大戦、ナチス支配下のドイツでは優勢思想にもとづき、多くのユダヤ人や障がい者が強制収容所送りになり、罪もないのにガス室で殺されました。
最近では相模原障害者施設殺傷事件で、多くの障がい者や職員が殺傷されました。
劣っている、役に立たない、社会の利益にならない。このような判断で、人が迫害されたり殺されたりすることが正しいはずがありません。間違っています。
今でも「社会のゴミ」と呼ばれてホームレスが襲撃に遭い、殺されています。その殺害動画を面白がってネットに流出させるような犯人もいます。
どのような人にも生きる権利はあり、迫害されたり殺されたりするいわれはありません。たとえその人がどれほど役に立たない人物であろうとも、生きる権利は憲法で保障されています。
また、他者を「役に立たないから」という理由で中傷したり差別的な言動を行うことは非常に愚かで醜い行為です。思うのは自由ですが、それは内心に留めて公共の場で出すのは控えるべきものです。
そしてインフルエンサーとして影響力のある人が優性思想を肯定するような発言を行うことは、ホームレスや生活保護受給者への偏見・差別を助長する極めて危険な行為です。
命に優劣などありません。役に立つ人だけしか生きられないような社会は、とてもではないですが文明的な人間社会といえるものではありません。弱肉強食を望むのならば、一人で素っ裸で野生でサバイバルして暮らせばいい。
私たちの住む日本国は、基本的人権を憲法に記した文明社会です。
役に立たない、利益を生まない、社会的な弱者でも生存権は守られるべきですし、何よりそういう人たちを差別したり迫害する権利こそありません。


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