北の音り - Kita no Tayori - Vol.1 シュガーシスターズ

 「北の音り - Kita no Tayori ‐」は、様々な方面で活躍されている北音会同窓生をご紹介し、山形県立山形北高等学校音楽科の魅力を広く知っていただくためのインタビュー記事になります。
 第1回である今回は、姉妹ユニット「シュガーシスターズ」として日本のみならず世界的に活躍されている、歌手の佐藤容子さん、寛子さんのお二人にお話をお聞きしました。

配信ライブ(西麻布・霞町音楽堂)

 シュガーシスターズのお二人(左:容子さん 右:寛子さん)

 シュガーシスターズのお二人は、山形県山辺町のご出身で、現在は東京に拠点を置き活動されています。主に日本語の童謡や唱歌などの「日本の抒情歌」をレパートリーとして、それらを日本や世界に広める演奏活動をされており、2019年にはオーストリアのウィーンで日本の抒情歌を取り扱った演奏会を開催されたそうです。
 また、お二人は「やまがた特命観光・つや姫大使」に任命され、全国に山形の魅力を発信する活動をされています。

 そんなお二人から色々なお話をお伺いしました。


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〇北高を目指すきっかけは何ですか?

容子さん:
 私はもともと小さい頃はとても大人しい性格で、幼稚園の頃に名前を呼ばれてもお返事をしないくらいでした(笑)。でも歌うことだけは大好きで、歌の時だけは大きな声を出す、そんな幼少期だったそうです。そんな私を見て両親がピアノを習わせてくれましたが、ずっと「歌を歌いたい」という気持ちを強く持っていたのを覚えています。小学生の頃、母が所属しているママさんコーラスの先生が小学校に来てくれて、そこでの体験がとても楽しく、その歌の先生に声楽を習い始めたのが、歌を始めるきっかけでした。中学生に入学する前にはすでに「声楽家になりたい!」と山形北高の音楽科への進学を決意しました。

寛子さん:
 私は、姉が歌のレッスンを受け始めるタイミングで、姉と一緒に歌を習い始めました。「歌を習いに行く」というよりは「遊びに行く」感覚でした(笑)。山辺中学校に進学し、合唱部に入部して歌は続けていたのですが、「みんなで」歌うことが好きだったことと、音楽療法にも興味があったため、普通高校に進学して一般教養を中心に学びつつ音楽を学んでいこうか、とても悩んだことを覚えています。ですが、山形北高音楽科は県立高校であり、音楽を専門的に思いっきり学びつつ、一般的な教科もしっかり学べることを知って、進学を決めました。

 ―姉妹お二人とも音楽科に進学することになって、ご両親からの反対はありませんでしたか?―

寛子さん:
 両親は特に音楽を仕事にしていたわけではありませんが、母親がコーラスをしていたこともあり、両親とも音楽が好きだったので、応援してくれていました。今も私たちの活動について応援してくれています。

山形交響楽団との共演

山形交響楽団との共演


〇山形北高での3年間の思い出は何ですか?

容子さん:
 今では新しいきれいな音楽棟が建っていますが、私は実は旧音楽棟で学んだ最後の学年で、新音楽棟が建っていくのを見ながら卒業しました。旧音楽棟は、隣の部屋との間の壁も薄く、隣で練習している音が筒抜け状態なので、その音を聞いて「私も負けてられない!」と思いながら、朝、昼、放課後もずっと練習室に籠って必死に練習していました(笑)。でも、ある意味それが切磋琢磨できる環境だったと思います。そうした環境だったからこそ、先輩や後輩の縦の繋がりがとても強く、色々な濃い話ができたことが何より財産です。 そして、何より2泊3日の合宿ですね(笑)!あの“濃密”な時間は絶対に忘れられない時間です!このことについて話し始めると、それだけで時間いっぱいになっちゃうのでこの辺で…(笑)

寛子さん:
 私は3年間クラス替えが無いということが一番大きかったように感じます。3年間ずっと同じメンバーで学んでいくので、仲も良かった反面、たくさん喧嘩もしました。でもクラス対抗競技とか、やるべきことへの団結力はとても強かったように感じます!今でももちろん連絡は取りあってますし、「何年経っても助け合える一生の仲間がいる」というのは財産だなと思います。そして、担任の先生との関係も私にとっては宝物で、毎日の日誌に「寛子たるんでるぞ~!」とか、一日も欠かさずに何か一言を書いてくれました。先生が気にかけてくれているっていう安心感や信頼関係があったように思います。

ウィーン・モーツァルトハウスにて

ウィーン・モーツァルトハウスにて


〇北高で学んだということが今のお二人にどのように繋がっていると感じていますか?

容子さん:
 私が感じる北高の魅力は、何と言っても北高で出会った同級生はもちろん、先輩・後輩方との縦と横の繋がりが深いことだと感じています。また、おそらく普通高校より色々な楽器の先生方やたくさんの大人と関わることが多いので、目上の人への礼儀作法や、言葉遣い、色々な人と関わることへの対応力が自然と身に付いたと思います。今思うと、社会に出た時、どんな場面でもこういう力はとても大切になると感じています。

寛子さん:
 音楽科でもありますが、県立高校の進学校ということで、音大の附属高校より一般科目が充実しているので、一般の基礎知識とともに音楽を専門的に学ぶことができたと思っています。また、当たり前ですが舞台で演奏する機会が多く、高校3年間でかなりの舞台数を踏めたと思っています。そのことがもちろん演奏の技術の向上にも繋がっていますし、ステージマナーや自分の演奏への向き合い方を身に付けられた気がします。


らららクラシック出演時

NHK-Eテレ「ららら♪クラシック」出演時


〇音楽をやっていて良かったと感じることを教えてください。

容子さん:
 何と言っても、ステージの上からお客さんの笑顔が見られたり、演奏後に喜んでもらえたりすることが何よりの喜びです。「自分に音楽や歌が無かったら」ということが全く想像できません(笑)。そして、大好きでたまらない音楽を仕事にできて、ご飯を食べていけるということが、どれだけ幸せなことか…。身に沁みて感じています。

寛子さん:
 私も姉と同じです(笑)。歌は音楽の中で唯一、音と一緒に「言葉」を発信できる芸術です。歌を通して詩やその歴史的な背景を知ることができ、音楽は本当に奥深いと感じています。「職業となっても一生勉強が続けられる」ということは一番の幸せです。その勉強の土台ができたのは北高での3年間があったからで、勉強の仕方、音楽に対して一途に向き合って、心ゆくまで学べたことは人生の宝だと感じています。


〇北高音楽科現役生にメッセージをお願いします。

容子さん:
 人生の中で高校生の時が一番勉強したと感じています。自分が勉強したいことをとにかく勉強できて、たくさんの時間を使うことができました。コールユーブンゲンやコンコーネなどの歌の基礎にとことん向き合った結果、楽譜がどんどん汚れていき、コールユーブンゲンに至っては3冊も買い直しました。でもそれが自分の誇りになっています。職業になると自分の歌いたい曲ばかり歌えるわけではないので、あの時間は本当に宝物だったと感じます。現役生の皆さん!とにかく練習!家でするのも良いけど、仲間が近くにいるところで練習できるのは特別な時間です。ぜひ「学校で」練習を!

寛子さん:
 とにかく北高音楽科は素晴らしい環境です。学んでいくうちに、時には音楽が嫌になってしまう時があるかもしれませんが、とにかく一途に、がむしゃらに練習をするというエネルギーは高校生にしかないものだと思います。色々な悩みは仲間と共有して、豊かな学生生活を送ってください!


〇北高音楽科に受験を考えている中学生へメッセージをお願いします。

容子さん:
 北高音楽科の卒業生には、音楽の世界の第一線で活躍している人がたくさんいます。一方で、音楽の世界以外のところで輝いている人もたくさんいます。北高は、本当に明るくて伸びやかな校風で、その中で育ててもらえることは大人になってから強みになると感じています。北高音楽科は音楽を通して「心の豊かさ」や「人生の心の支え」が培える、そんな素敵な学校です。

寛子さん:
 北高の音楽科は、音楽に特化した授業内容のため音大や国公立の音楽系大学への進学に有利で、もちろん音楽系の道に進む人は多いですが、音楽科に進学したから音楽の道に行かなければいけないわけではなく、様々な学びができる学校だと思います。教員になった人や、美容系などの一般職に進んだ人も多くいますし、様々な進路選択ができます。とにかく、今「音楽を深く学びたい」と思っているのであれば、ぜひ北高音楽科を考えてみてください!


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シュガーシスターズ プロフィール

シュガーシスターズ プロフィール写真

佐藤 容子(ソプラノ)佐藤 寛子(メゾ・ソプラノ)
山形県山辺町出身。ともに東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院修士課程独唱科修了。日本歌曲の分野で互いに最高峰の評価を受ける実力派姉妹ユニット。
<日本のうた>の魅力を伝え、文化として発信していきたいという思いから<美しく響く日本のうた 心のハーモニー>をテーマに姉妹ユニット“シュガーシスターズ”を結成。童謡唱歌から歌謡曲まで色鮮やかに、息のあった艶やかなデュエットで歩みを進めている。
2014年11月ファーストアルバム「わすれがたき ふるさと」リリース。
2017年9月キングレコードよりメジャーデビューアルバム「Megumi〜未来へつなぐ日本のうた〜」リリース。
2017年ミャンマーにて初の海外演奏を行う。海外でも<日本のうた>の魅力を伝えたいと文化親善にも意欲的。2019年10月 在オーストリア日本大使館後援によりシュガーシスターズウィーン公演を開催。(モーツァルトハウス内ベーゼンドルファーホール)
オーケストラ共演多数、NHK-Eテレ「ららら♪クラシック」をはじめTVやラジオへの出演などメディアでも活躍中。やまがた特命観光つや姫大使。

公式ホームページ http://sugarsis.com
Facebookページ「シュガーシスターズ」



姉:容子(ソプラノ)
2010年3月東京藝術大学大学院博士後期課程修了。
團伊玖磨の歌曲研究において博士号を取得。音楽博士。
第17回奏楽堂日本歌曲コンクール第2位。
第75回日本音楽コンクール入選、併せて「木下賞」(日本歌曲最優秀歌唱賞)受賞。
2008年日中首脳晩餐会の席で日本歌曲を披露。
2010年「三菱地所賞」受賞。
2020年7月より新潮社「新潮講座」の講師として〈読んで歌おう!美しい日本語!!〉を開講中。

妹:寛子(メゾ・ソプラノ)
第54回全日本学生音楽コンクール声楽部門高等学校の部全国大会第1位。
第73回全国選抜高校野球開会式で「君が代」独唱。
第20回奏楽堂日本歌曲コンクール声楽部門第1位。併せて中田喜直賞受賞。
2020年より佐藤寛子リサイタル「いまを生きる作曲家日本のうたシリーズ」を展開。
今年は作曲家・伊藤康英氏にスポットを当て文翔館議場ホールにて2021年7月25日(日)14時開演で山形公演を開催。
FMしながわ/ FMサルース『クラシック・パラダイス!』(毎週日曜17:00〜18:00)ラジオパーソナリティー。


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