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生き物

メダカ、アマガエル、バッタ、アゲハの幼虫…

昔から生き物が好きだ。
私に似たのか娘も最近やたらと捕まえてくるので、リビングが虫籠で溢れかえっている。
「生き物を飼うことは責任の伴うこと」と伝えてはいるけど、幼稚園児にはやはり難しいのか、とにかくいじり回したくてしょうがない。
「そんなことをしたら弱っちゃうでしょ〜!」と言いながら、自分も昔はさんざん同じことをしたなと反省する。

虫や植物、魚、両生類…生き物がすごいのは、環境さえ整えば誰の手も借りずに自立して生きていく、ということではないだろうか。
そのたくましさというか、頼もしさが昔から好きで、自由を奪って申し訳ないと思いつつ、近くでその生き様を見せてもらうのが喜びだった。

つい最近、私は食べることも眠ることも外に出ることも満足にできない状態になってしまい、暗いトンネルの中にいるような日々がしばらく続いた。
出口が見えないこともつらかったけど、何より、心が動かない、喜びが感じられないことがとてもつらくて、「何のために生きているんだろう」と本気で思った。

そんなどん詰まりの私を最初に動かしてくれたのは、生き物たちだった。
スズメガの幼虫がもそもそ葉を食べているのを見ていると、癒された。メダカたちが水草の間を気持ちよさそうに泳いでいるのを見て、私も少しだけ気分がよくなった。
こちらの状態とは無関係に、ただ自分の命を純粋に生きている彼らの姿は、私に勇気と力をくれた。

飼わせていただいている手前、どんなに体が重くても世話をしないわけにはいかず、虫籠の掃除をし、エサを取り換え、水分を補給してやる。
その作業をしている間は、言い知れない不安や恐怖はどこかへ飛んでいき、無心でいられた。

-環境さえ整えれば、自立して生きていく-
人間も、本来はそうなんじゃないだろうか。同じ生き物だもの。
でもなんだか、ちょっと複雑になっちゃってるんだよなぁ。まったくなぁ。

そんな日々を過ごすうち、いつの間にか私は回復に向かっていた。

久しぶりに外に出る。
夕暮れ時のお天気雨。振り返れば、東の空にくっきりとした半円形の虹。
世界が色彩を取り戻していく。

どんな命も、生きてさえいれば必ず前に進める。
そう信じたいな、と改めて思った。

金木犀の香りがしていました

©︎綿草ひろこ

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