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溶けて変わる

夏至のあたりから、なぜか自分の内側が大荒れで、イモムシが成虫になる前にサナギの中でドロドロに溶けるみたいに、自分が一旦バラバラになったような気がした。

夫ともぶつかって何度か話し合い、長年世話になってきた古い価値観を手放すこともした。
今は嘘みたいにすっきりしているけれど、あれは一体何だったんだろう。

気象の影響もあったと思う。
私は思っていた以上に、月や天気の影響を受けやすいようで、梅雨の湿度や蒸し暑さが全く無関係だったとは言えない。
でも、それより何より一番の原因は、娘が私のそば以外の居場所を見つけ始めたことだろう。

私は娘を産んでからずっと、彼女のことで頭がいっぱいだった。
もともと器用ではないから、人に頼ったり、自分の時間を割り切って楽しんだりすることがうまくできなくて、不安や心配がなかった日はほとんどなかった。

それが、娘が成長し、仲の良い友達や先生方との人間関係をつくり、自ら楽しんで幼稚園へ通うようになったのを見て、急に、少しだけ肩の力が抜けた。
「私が一人で頑張んなくていいんだな」「先生たちを信じていいんだな」と思えるようになり、「子どもはたくさんの人から愛情をもらって育つんだよ」と、前に妹が言ってくれた言葉をそのまま受け入れられるようになった。
活発でひょうきん者の娘に救われている部分も大きい。

ぎゅっと握りしめていたこぶしを、少しずつ開いていく。

そこに、ぽっかりとできた「自分の時間」。
子どもを産んでからずっと後回しにしてきた自分と、もう一度ちゃんと向き合う。

私は何者であるのか
何がしたいのか

答えは聞くまでもなく、ずっと私の中にあって、もうそろそろ外に出してくれと、窮屈そうに喚いていた。

変わるのは、いつだって不格好でしんどい。
でも一番しんどいところを抜けると、その先は、梅雨明けの青空みたいに澄みきっている。

またここから、少しずつ動き出そう。


©︎綿草ひろこ

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