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完敗につながった「戦い方の目」の差〜2024J1第10節 vsジュビロ磐田【FC町田ゼルビア】

こんにちはこんばんわ、ひだりです。

負けた試合こそ大事の心で、子どもたちも遊び疲れてもう寝てくれたのでGWということで雑感程度にレビューを置いておきます。

どうぞよろしくお願いいたします。


https://www.jleague.jp/match/j1/2024/042703/live より引用
https://www.jleague.jp/match/j1/2024/042703/live より引用

前半

序盤の印象、ただただこれだった。

磐田は非保持時に自陣リトリート+FW2枚を前残し気味に、DF・MF2ライン間の縦高さもコンパクトに保った守備ブロックを構成していた。

従来、磐田のボール非保持守備ブロックは基本的にやや縦長に伸びた形の442を形成していた。守備体制としてはやや間延びした構えにも見えるが、強度高い前向きなスプリントで相手から奪取し、そのまま縦長の配置を活かした速攻を繰り出せる形を取っていた。

それが、今日前半の磐田は、まず縦にコンパクトな守備で自陣を固め、町田に対してある程度ボールを持たせる戦い方を取ってきた。
自陣ゴールに対して縦に狭く、横の幅も広く取ることで町田の左右サイド攻撃を妨害できる、かつクロスを上げられてもゴールエリア内の人数を多くできる布陣を取っていた。

ジャーメイン・ペイショットへのロングフィードや、サイドのMF or SBに充てFWがサポートに絡む形など、ボール保持時の前進の仕方は過去の試合と比べてもそこまで大きな違いはなかった。
だが非保持では、かなりシンプルにペナルティエリア幅に中盤後衛44で人数をかけた守り方を見せた。今季リーグ初出場の奪取系ボランチ鹿沼のリスク予測の高いプレイもかなり効いていた。

磐田がボールを奪い町田陣内に持ち込めたタイミングでは、相当に高速のカウンターを仕掛けた。このボール保持と非保持の切り替えについては、福岡戦・名古屋戦と比べても、よりクッキリとメリハリを効かせてきた印象があった。

ジュビロの「ジャーメインへの信頼」と「ペイショットの献身」

この試合、やはり目立ったのはジャーメイン良の収める力とポストプレーでの判断の柔軟性だった。

もちろん町田側もジャーメインへのケアは厚く、昌子にドレシェビッチが前に出て、仙頭・宇野が守備に戻る、後ろに流れたボールは谷も高めの位置まで上がってサポートし、そう簡単にゴール前には近づけさせない。
ましてやこの日の磐田は守備ブロックをやや深めに取っている。その分、攻撃に押し込みたい町田の守備ラインもかなり高めを取っていたので、結果、磐田FWはおおよそセンターサークルを越えたあたり〜バイタルエリアの手前あたりまでに位置取る形が多かった。

前半から、クリアボールであれ、サイドからのパスを内レーンで受けるにしても、ジャーメインにはまあボールが収まる。
町田の守備が即座に寄せても、当たり負けしないフィジカル+ボールを隠す身体の使い方も巧みで簡単には失わない。
ジャーメインの存在感だけで町田守備は前方を隠さざるを得ない。本人も前進をチラつかせながらもよく回りが見えていて、サイドを上がってくる松原后や松本昌也などに効果的な展開を見せていた。

またジャーメインと縦関係になった際、ペイショットが最前線での守備や前線の潰れ役となることで、ジャーメインに1.5列目あたりの位置でプレイの自由を与えていた。

ある種「ゴール過程ではジャーメインが絡む」ことを約束事として、チーム全体としてボールを失わないジャーメインに躊躇せずパスを出し続けた。
同時に、ペイショットが最前線で攻守、サブのポスト役としても機能することで、ジャーメインが受ける負担を一定下げる役割を果たしていた。

裏のスペースを消され、攻略に苦しむ町田

本来使いたい最終ライン裏を磐田の低めのブロック守備で消され、ボールを保持して試合の主導権を握るも、なかなかそこから先を崩せない町田。

ターゲット役であるオセフンはともかく、藤本もナサンホも本来は裏のスペースを突くことに特徴がある選手である。望月ヘンリー海輝の攻め上がりも前節東京戦のように縦でのかけっここそ強みが出るシチュエーション。

だがこの試合、磐田は後ろにブロックを引いているので裏のスペースがあまりない。

左サイド:林・藤本によるクロス・ポケット攻略

左サイドは林と藤本が連携してクロス〜ポケット攻略狙うも、ゴール前の人が多いことを嫌がってか、どうしてもゴールから離れたサイドライン際に逃げて打開を図るケースが多く、より速く強くゴールに迫るアタックにはなかなか結び付けられなかった。

右サイド:望月ヘンリーと松原后のマッチアップ

右サイドは松原后と望月ヘンリーのマッチアップ。前半序盤こそ縦の仕掛けがそこそこ効いていたが、時間を追うごとに松原との経験値の差が現れていった。
サイドでボール保持しようとしてもうまく足を出されて磐田ボールのスローインにされたり、クロスもはじいて望月の体に当ててゴールキックに持ち込まれる等、純粋なサイドでの攻防でなかなか勝ちきれなかった。
望月も攻撃で一定の脅威にはなっていたし、自陣に戻っての守備でも良い仕事をしていたが、足下には怪しさがある。技術の高い高橋大悟と連携しても内にいるFWがオセフンとの絡みはどこかぎこちなく、多くの場面で鋭くペナルティエリアに切り込むことができないまま磐田の守備体制は整った。

ボランチによる攻撃停滞打開

相手に引かれた状況ではボランチの攻撃関与が重要になってくる。実際、仙頭・宇野もシュートを狙ったが、そのほとんどが枠を外れる。
磐田の中盤守備ではじかれた何回かはロングボールでジャーメインやペイショット、松本昌也に渡り、ロングカウンターを発動されかけるシーンも何度かあった。

町田、前半で最大のチャンスは33分。林の裏を抜けた藤本のクロスを逆サイドの高橋大悟が後ろに落として望月ヘンリーがダイレクトでシュート。ゴールポストを叩くも高橋大悟が回収して再びクロス上げるもジュビロ森岡がクリア。

クリアボールを川島が対応しようと出てくるがナサンホがボールとの間へ先に身体を入れ、ヘディングでサイドの高橋大悟に戻す。高橋大悟はそのまま望月にボールを落とし、この局面三度目のクロスを上げるも、リカルドグラッサがヘディングでクリアし局面終了。

ここで点を取れなかったことが本当に悔やまれる。望月のポジションを内に取っての好プレーながら、この決定機逸はこの日の町田の拙攻を象徴するようでもあった。

前半終了

ナサンホのFK〜CK獲得するも仙頭の蹴ったボールをペイショットにクリアされ前半終了。

守備ライン低めで町田を自陣に誘い込みカウンター一閃狙いの磐田に対し、ロングスローやコーナーキックも含め、ボール保持して分厚いサイドアタックで攻勢をかけ続けられたこと自体はある種想定通りではあったろうし、決定機を決めきれなかった点を除けば、そこまで試合の運びが悪いものとは思わない。

だが、両チーム、後半の修正で大きな差が出てしまった。

後半

後半、自軍ボールのキックオフも活かし、磐田は初手から一気の攻勢を仕掛ける。

後半の入りで磐田が見せたのは、縦をコンパクトに締めた前半とは異なる、むしろこれまでのリーグ戦で磐田が多くやってきたデフォルトの縦長ポジションのパターンだった。
キックオフ直後からジャーメイン、ペイショットは前線に駆け上がり、後衛中盤の選手は縦方向に前半よりも長めの距離を取る。サイドも高い位置を取り、二重三重のカウンターアタックを仕掛けられる形。

川島からのロングボールをジャーメインが競り松原が回収、サイドの平川と内外レーンを入れ替え前進し、対面する町田守備者の揺動を計りつつジャストなタイミングで中央のジャーメインにパス。ジャーメインは松原からのパス軌道をそのまま活かした巧みな身のこなしで左右から囲い込みにかかる町田ボランチの間を一気に突破、ゴール前にパスを通し松本昌也がシュート。真正面に距離を詰めた谷が弾いたものの、こぼれ球をゴールエリアに侵入した松原がここしかないニア上へフィニッシュ。
下には谷、ニア・ファーにも町田の守備者が混んでいる合間を越える一撃も、とても簡単なものではない。松原の見事なゴールだった。

横内監督にとっては奇策ではない先制点

町田対策を色濃く意識して打って出た前半からこの後半冒頭の変化は、90分の作り方として画策したものなのか、前半の課題をふまえた修正として実行されたものなのかは定かではないものの、横内監督にとっては決して奇策ではない。

そもそもこの1点目のやり方は磐田がカウンター攻撃時にこれまでも多用している形である。いつもの自分たちのやり方を再確認して実行しただけで、磐田にとっては真っ当なゲームの改善。

一方で、前半耐えに耐え、後半開始から一気に前に出る、という急変を織り混ぜ一瞬の混乱を突く戦いは、どこか横内監督がヘッドコーチとして体験した日本代表カタールW杯ドイツ戦の成功体験とも重なる。

決め切り方としてもペナ角付近〜バイタルエリアにかけてを人数と幅を使って分厚く攻め立て守備のギャップを突く、鳥栖・広島が狙った町田の守備の弱点をピンポイントで突く攻撃でもあった。

後半開始1分の失点が全てでした。サッカーにおいて、立ち上がりと終了間際は精神的にも難しい状況とはいえ、チームを引き締めて後半に送り出したのですが、フワっと入ってしまったこと自体、まだまだ甘いと思います。

https://www.zelvia.co.jp/match/game/255699/#report

フワッと入ってしまった、は一面の真実でありますが、選手たちが個々で磐田の出方を強く警戒していたからこそ、選手の磐田を「塞ぐ」意識が強まり、一気にきた磐田の人の動きに対して「付いていく」対応の出足が遅れた向きはありそうにも感じる。

端的に、黒田さんの想定・与えた準備を、今回は横内さんの策がシンプルに上回った1失点目だったようにも見える。

失点後、攻勢を強める町田

後半1分の失点後、前傾姿勢で磐田を攻め立てる町田。林・望月のクロスを中心にこぼれをナサンホや宇野のシュートも交えるが、先制によりゴール前を前半同様にゴール前を分厚く守り切る体制を取る磐田の前にクリア、ブロックされ続ける。

後半16分、望月に代えて鈴木、髙橋大悟に代えてバスケス・バイロンを投入。鈴木のキック精度を活かしバスケス・バイロンで右ペナ角の打開を図る形でサイド攻略の目を変えた。

鈴木の速いロングボール、バイロンの内に外に切り替えられるアタッキングサード侵入など雰囲気の変化は感じられたものの、最後のところで決められないまま、磐田CKの局面でリカルド・グラッサのシュートを防いだ昌子のプレイがVARによりPK判定となった。

2節連続のハンドPK

今回はCK対応からだったが、前節東京戦と同様、ゴールエリア内混戦で昌子がPKを与える形となった。

過去、ジェフ相手の3連続ハンドPKの後、数年はゴールエリア内でのハンドにはかなり意識が高まり、対応が改善した経験もある。

ゴール前で戦う姿勢を見せ続けるメンタリティ、マネジメントとどう折り合うかが問題になるが、ハンドPKはかなり勿体無いためボールへのアタック時のなにかしら改善方針は立てたいところ。

攻撃全振りもゴールに到達できず終戦

2失点の後、後半31分 ピッチに座り込み負傷の様子を見せた松原に代わり小川大貴、後半37分、松本昌也に代えて藤川虎太郎と、この日結果を出した磐田の攻撃の二の手・三の手を下げ、攻め立てる町田に対し守備強度を担保する。

町田は後半39分に宇野禅斗に代えて安井を投入。町田はボランチに荒木・安井、前線にバイロン・オセフン・デューク・藤本、鈴木のクロスと合わせて攻撃全振りモード。
ひたすらの町田が猛攻をかけ続ける。

Jリーグ公式の速報 https://www.jleague.jp/match/j1/2024/042703/live#livetxt でも後半終盤はほぼ町田のアクション以外記録されていない程の猛攻。

が、そのまま磐田が守り切り、試合終了。
磐田2ー0町田、今季初の無得点敗戦となった。

課題

「自陣守備を引いてボールを持たせる」町田対策への対策

「守備を自陣深く引いて町田にボールを持たせる」対策は、昨年J2ではシーズン折り返しとなったアウェイ水戸戦(23/6/24)あたりから顕著に顕れはじめ、暑さの増していく気候もあいまり、実際、そこから少し勝ち点を落とす機会が増えかかった。

対戦一巡を待たない第10節時点でこうした形で明らかになってくるのは、やはりJ1とJ2の対戦相手のクオリティという面もあるが、昨年から対戦を繰り返しておりジャーメインが覚醒状態にある磐田だからこそできたという部分も小さくないと思う。

オセフンの想像以上なブレイクを軸に、今シーズンはここまでロングボール一本槍な攻め手を主軸としてきたが、今後を考えると、相手に引かれても崩し切るための取り組みを実際の試合で組み込んでいく必要がある。

昨年は、天皇杯金沢戦で活躍した松井蓮之の台頭で中盤でのボール奪取と止める蹴る精度向上を成し、中央とサイドでの攻撃の連動性をアップさせて夏の序盤の一山を越えた。

人で解決していくのが基本にはなるものと思われるが、磐田戦後半、交代を進めるにつれチャンスの雰囲気が増したところからも、2023J2優勝組からの抜擢も連携面では有効なのでは、とも感じる。(磐田が守備固めに入ったのももちろんありますが)

※特に、試合終盤デュークのゴールへ向かう姿勢・味方を信じて2mでも3mでも前へボールを送ろうと競り合う姿勢にはかなり伝わるものがあり、ゴールゲッターとしての本能・熱量がだいぶ戻ってきたなと感じた。

平河・藤尾不在でも戦える形

前節・FC東京戦ではナサンホ・オセフンのコンビが輝き、藤本・望月といった新戦力の登場も見えてきたが、やはり攻守両面にわたる影響・対応力で言うと平河・藤尾ほどには達さないのが現状である。

U23アジアカップでの仕事を見ても、両者が得点に絡もうが絡むまいがチームを助ける部分で大きなクオリティを持っているのは明らか。万一の怪我や急な欧州行きチケット到着など不測の事態に備える必要もある。

エリキの帰還やバイロンの更なる復調など今後期待したいリソースもあるが、その他のメンバーも含め現有戦力の個性の掛け合わせで戦える形をどうにか取りたいところ。

クロス攻撃は強力だが、真の目的はゴールを落とすこと

今節の磐田戦では、藤本がボールを持った際、彼がタメを作る動きの合間に、どうしてもゴール前に人数が揃ってしまうことが多発した。

中央をがっちり塞がれているが故に、後半はボールを持ってもつけ入る口がなく、やむなく外に運ぶシーンが多々あり、結果的に非常にワンパターンなプレイに見えてしまった。磐田からすれば、藤本サイドで持つ度、ひとりが対応につけば中央の体制は整えられると、計算できる状況が生まれていたことだろう。

藤本に限らないが、クロス攻撃を攻め手の中心とすることは良いのだが、膠着が続く中でクロスを上げれずサイド方向や後ろに逃げ続けてもゴール前が開くことはないので、多少強引にでも内に切り込んでほしかった。

特に藤本は、大分時代も多少強引でも突破を仕掛け、ゴールに直線的に向かっていくプレーが脅威だった選手。本来は平河や藤尾などではなく、エリキに連なるドリブラー・ストライカーの方向が特徴に思える。

チーム内の約束事としてクロスを上げる役割を担いつつも、もっと貪欲にゴールを狙う姿勢をプレイで見せてほしいところ。

まとめ

結局、試合の勝負を決めたのは

  • ジャーメインに収めたボールをどうゴールへ持ち込むか、チーム全体が目を揃えて連動した磐田

  • サイド侵入・クロスを上げた先どうフィニッシュするのか、チーム全体でも攻撃ユニット単位でも共通するビジョンを描けなかった町田

この「戦い方の目」の差だったのかなと思います。

もちろん、

・ジャーメインの好調ぶり・収まり力が今季J1得点王級→だから戦い方を信じやすい
・スーパーエース不在、攻守の影響力クソデカな2人のU23日本代表選手を欠く→戦い方の構築レベルでアンバランス

という彼我の状況の違いの影響も大きかったでしょう。まあ、どこも大なり小なり課題は抱えているので条件は同じですが。

今節の敗戦を強く反省し、改善を進め、チームはさらに強くなってくれると信じています。

そして、なんかツキがある今節。うちが負けたりするとヨソも負けるやつ、去年もちょいちょいあったんですよね。この風はまだまだ続く。続かせなければ。

「あらためて自分たちの戦いを見つめ直す」という意味では、次節、柏とのホーム戦は、意外と良い対戦相手なのかな、ときょう鳥栖との試合を軽く見ていて少し感じました。良い対戦相手というのは、もちろん、勝ちやすいという意味ではありません。絶対しんどい試合になる、という意味です。

連戦のため軽めにするかもしれませんが、プレビューも少し書く予定です。また次節に向け、楽しんで、がんばっていきましょう。共闘🔥

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