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おSUSHI劇場 第一幕

はじめに(注意事項)

このnoteは、ここ数日の仮想通貨界隈で起こっていたおSUSHIにまつわる物語を、私目線でまとめたものです。
平易に説明するため、厳密な定義ではなく意訳的に説明しています。明らかに異なるよ、もしくは誤解を生むよ、というご指摘は筆者twitterまでご連絡ください。
また、おSUSHI自体は値動きの激しく、かつ派生商品によってレバレッジもかけることも可能な危険な代物ですので、お取扱いには十二分にご注意ください。

※このnoteは値動きについて助言をするものではありません。
※本稿で掲載されているSUSHIの価格チャートを、うっかり現物ではなくSUSHI-PERP(無期限先物。似たような値動きをする)のものをスクショしてしまいました。ご容赦ください。

第一章 おSUSHI登場

DeFi(分散型金融)バブルと言われて久しい2020年8月の下旬、最大の分散型取引所と謳われる「Uniswap」をコピーして作られた「SushiSwap」が誕生しました。

SushiSwapとは
最近話題の「分散型取引所(=DEX)」になる予定のものです。

DEX(Decentralized Exchanges)とは、手数料を取るような「中央集権者」のいない取引所と思ってください。
あらかじめ「流動性提供者」がその取引所に通貨①と通貨②のペアを入れておく(=プールしておく)と、その取引所を利用する人たちによって勝手に交換されて、その分の手数料が入ってくる感じです(利用者が手数料を払う)。

数日のうちにSushiSwap上での取引が開始されます。本来は9月12日前後の予定でしたが、コミュニティの意向で早まる予定です。

取引を開始するには、SushiSwapの中に流動性(≒通貨ペア)が貯まっていないといけません。
SushiSwapでは、この課題を以下のようにして解決を試みています。

①取引開始までは、Uniswapのような既存の取引所で流動性を提供してもらう(通貨ペアをプールしてもらう)。
そのインセンティブとして、プールした通貨や量に応じてSUSHIトークンを配布する(界隈ではこれを「握る」と表現している)。
※9月12日前後から、もらえる量が1/10になります。
②取引開始直前に、①で提供してもらった流動性を、SushiSwapに移行させる(このイベントをLiquidity Migration™といいます。本noteでは単にMigrationとします)。

プールするだけでおSUSHIをもらえる、そしておSUSHIに値段がついてる!という事実に加え、おSUSHIには先行者利益の仕組みが備わっていたので、我先におSUSHIを握りたい!というSUSHI職人たちがUniswap上に溢れかえったのでした。

SUSHIの上手な握り方

・Uniswapに指定された通貨ペアをたくさんプールすることで、SUSHIを速く握れます。
・中でもSUSHI-ETHペアをプールすることで、さらに2倍速く握れます。

全体で握れるSUSHIの量は、1ブロック(約10~15秒)あたり1000貫(1000 SUSHI)と決まっています。
そして、個人が握れる量は、プールした通貨ペアの種類や量に応じて決まります。

ですので、たくさんSUSHIが欲しい人は、以下の行動が合理的となります。

・なるべく早い段階でSUSHI職人になること
・SUSHI-ETHペアになるべくたくさんプールしてSUSHIを握ること。
・握ったSUSHIをプールに再投入すること。

危険な香りがプンプンしますね!

おSUSHIの価値とは
おSUSHIには、主に3つの用途があります。

①売ってお金に換える
・SUSHIを扱う各取引所では、SUSHIペアが上場されていますので、売って他の通貨に換えることができます。
②おSUSHI握りの道具として使う
・握ったおSUSHIを再度プールすることで、さらにおSUSHIを握れます。
③おSUSHIを持っておくだけでいいことが…
・おSUSHIを持っておくと保有量に応じて、将来SushiSwap上で取引が開始されたときに発生する取引手数料の一部(0.05%)が分配されます。

用途は様々です。おSUSHIを自ら握る者もいれば、市場で買い集めてプールする者もいる…。
こうして皆がおSUSHIを欲しがり、「Uniswapにプールされている流動性のうち大半が、おSUSHI握りのためにプールされている」という状況が起こったのでした。

順調に握られていくおSUSHI。幸せな結末は訪れるのでしょうか?


第二章 時代の寵児へ

SUSHIの生産は、8月29日の0:30ごろから開始されました。
当時は私は全くチェックしていなかったのですが、誕生と同時に3ドルをつける華やかな登場だったようです。

当時はわずかなSUSHI職人しかいなかったわけですが、握れるSUSHIの数が1ブロックあたり1000貫というのは変わりません。
最初の職人が100人だったと仮定するならば、1人あたりで10~15秒につき、10貫(30ドル分)握れたという計算になります。驚きですね。

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図1. 生まれたばかりのSUSHIへの値付け

まさしく先行者利益というわけですが、このような猛烈な生産スピードは価格の下落を引き起こします。
SUSHIも多分にもれず、乱高下した後に24時間後の8月30日0時すぎごろには、0.7ドルの底値をつけます。

しかし、SUSHIの価格はSUSHI職人の急増によってグイグイ伸びてゆきます。初日にSushiSwapのためにプールされた流動性は$150M(約160億円)以上、2日目までに$400M(約425億円)を超えました。

全てはSUSHIを握るためです。

そして、より多くのSUSHIを握るために、握ったSUSHIは再度プールに回されて市場に出回らず、また市場のSUSHIは買い集められてプールされるという循環が発生し、価格が次第に高騰していきました。

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図2. 高騰するSUSHI

生産開始から48時間を経過した9月1日0時すぎごろ、最高値を更新してSUSHI 1貫あたり5ドル以上の値をつけます。
SUSHIはバブルに湧くDeFi界隈において、わずか48時間で時代の寵児として躍り出たのです。

同日6:45、海外取引所の雄FTXのCEO SBF(通称アフロ)が、FTXでのSUSHIの取り扱いを電撃発表します。
CEX(中央集権型取引所)を巻き込んだ本格的なSUSHIバブルの始まりです。

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図3. FTX上場直後のSUSHI

その日の夜には続伸し、上場来+100%超となる12.48ドルをつけ、10ドル前後の価格に落ち着きます。

SUSHIコミュニティは歓喜の渦に包まれます。いまやSUSHIの時価総額は$300M(約318億円)超。全てのSUSHI職人とSUSHIホルダーが報われた瞬間です。

一方その裏では、着々と新しいSUSHIが生産され続けていたのでした。


第三章 波乱の値動き

一夜明けた9月2日の朝9時前後、SUSHIの価格に調整が入りました。急激に価格が上がりすぎた反動でしょう。
未明に10ドル台だった価格は6ドル台まで下落した後、7.5ドル前後で小康状態となります。

その間にもプールの量は着実に増え続け、SushiSwapのためにプールされた流動性の総量は$1B(約1060億円)を突破。
SUSHIは生産量を伸ばし、9月2日の12時ごろには合計で約3200万貫のSUSHIが生産されています。

9月2日の20時前後、ビットコインの価格に調整が入りました。7月以降堅調だったビットコイン価格は11800ドル台から11300ドル台へと約500ドル幅の下落。仮想通貨界隈全体に暗雲が立ち込めます。これに引きずられる形でSUSHIの価格も下落。5.9ドル近辺まで下落した後、6ドル台で落ち着きます。

翌日9月3日の午前7時ごろ、コミュニティにうれしいニュースが舞い込みます。Quantstamp社がSushiSwapのコード監査を無事に完了したとのこと。
SushiSwapのコントラクトにバグや悪意あるコードが見つからなかったことで安心感が広まり、SUSHIは一転して強気ムードに。
一時は8.9ドル近辺まで戻しました。

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図4. 9月2日から9月3日にかけてのSUSHIの値動き

しかし、その後は力尽きて7ドルまで後退。

さらに同日20時前後、二夜連続のビットコイン価格の下落に見舞われます。
ビットコインは前日を上回る下げ幅で、10600ドル~10700ドルまで下落。
つられてSUSHIの価格も5ドル台まで下落しました。

ビットコイン価格に翻弄されるSUSHIとコミュニティ。しかしまだまだコミュニティはSUSHIに懸ける夢を諦めません。

SUSHI握りのために蓄えられた流動性はUniswap全体の流動性の総量を押し上げ、とうとうUniswapはDeFi関連プラットフォームのTVLランキングで1位に躍り出ます。

そして留まることを知らないSUSHI。生産量は21時の時点で約4200万貫と増え続けています。

「何かがおかしい。」

そう思ったとしても、その疑問に確信をもって答えることができる人は、この時点ではわずかでした。


第四章 奈落の底

その夜(9月3日23時)、コミュニティに対して「Migrationを前倒しにして、SushiSwap上での取引開始を早く始めよう」という主旨の投票が始まりました。

コミュニティの意見の大半は「Yes」。流動性を早めに確保して手数料収入による期待感を上げるためには、当然の選択です。

ですが翌日の9月4日も、ビットコイン価格が冴えません。9時ごろには10200ドル前後まで下落。16時ごろの反発もむなしく、24時前には10000ドルの抵抗ラインを一時的に割ってしまいました。

SUSHIの価格もFTX上場時の初値を割り、4ドル台へと下落します。
異変の前兆はその夜ごろから顕著になりました。

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図5(上). 9月4日から9月5日早朝にかけてのSUSHIの値動き
図6(下). 9月4日から9月5日早朝にかけてのビットコインの値動き

下がった後の反発が、明らかにビットコインよりも鈍いのです。
そして、投票から24時間経った9月4日23時、正式にMigrationの前倒しが可決されました。

そして9月5日。
この日の12時時点までに生産されたSUSHIは累計約5400万貫。価格は約5ドルをつけていました。

このとき、大きく膨れ上がったSUSHIのプールは限界を迎えました。
SUSHI-ETHのプールが減少に転じたのです。

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図7. 9月5日6時~18時のSUSHI-ETHペアのTVL

SUSHI握りに使っていたはずのSUSHIをプールから引き出す理由は、1つしかありません。売ってお金に換えるのです。

価格下落に耐えきれないと判断されたSUSHI。ここからは、誰もが我先にSUSHIを売りたがります。崩壊の始まりです。

①早く売りたいからプールからSUSHIを引き出す。
②売る。SUSHIの価格が下がる。
③するとSUSHI握り自体の価値が下がる。
 また、価格変動によってプールしている資金が棄損する。
 (詳しく知りたい人はきょろナッツさんのこちらの記事を参考)
④さらにプールからSUSHIが引き出される。

デス・スパイラルに陥ったSUSHIは、急激かつ持続的な下落となり、22時手前には2ドルを割り込む悲惨な状況に。
多少の反発もむなしく、翌9月6日未明には最安値の1.2ドルをつけたのでした。

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図8. 崩壊するSUSHI価格

さらに、開発者が事前に高値でSUSHIをすべて売っていたことも判明。非難が集中します。


一貫の終わりに見えたSUSHI。
このときは、誰もがSUSHIバブルは終焉を迎えると思っていたでしょう。しかし、ここから意外な結末を迎えます。


終章 救世主登場~復活へ

9月6日、前日のSUSHIの崩壊と開発者の売り抜けを見かねたアフロが苦言を呈します。

そして、一連のツイートで、
「開発者がSushiSwapのコントロールを明け渡すなら、開発者が売った分のSUSHIをコミュニティに寄付する」
と申し出ます(※意訳です。正確な表現は元ツイートを参照してください)。

これが14:08ごろの出来事です。
直前に1.05ドルの最安値を付けていたSUSHIはここから上昇に転換。

そして、この提案が実現します。

このツイートまでに2ドルまで回復していたSUSHIは、この事実を受けさらに暴騰。30分後の17時までに3.3ドル弱をつけました。

底値をつけてからわずか3時間弱で約+230%。
奇跡的な値動きとなり、瀕死だったSUSHIコミュニティは救われたのでした。

その後は、翌日9月7日の朝にかけて続伸しています。

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SUSHIコミュニティは、再び歓喜の渦に包まれます。
新しいリーダーを迎えた新生SUSHI。プールから出ていったSUSHIたちは再び市場で買い集められ、プールに続々と戻ってきました。

そして、SUSHI職人たちはまたせっせとSUSHIを握り始めたのでした…。



ここで、第一幕は閉幕です。
アフロを迎えたSUSHIとSUSHIコミュニティに未来はあるのか?今後の展開に目が離せません。

第二幕に、乞うご期待!


(第二幕はもう面倒くさくてたぶん書きませんので、興味を持った人はぜひご自身でウォッチしてみてください…笑)


おSUSHI劇場 第二幕をリアルタイムで観劇するなら

以下のリンク先をウォッチしてください。

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・各取引所のSUSHIチャート FTX Binance Uniswap(USDC換算)





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