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#海外文学のススメ

おすすめの作品や作家、注目している国や地域を教えてください!

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ソクラテス~プラトンの入口『ソクラテスの弁明』他(改訂)

①「西洋哲学の祖」ソクラテス 時は紀元前400年頃の古代ギリシャに遡ります。 この時代の哲学は、プロタゴラスに代表される「相対主義」が主流でした。 「世の中に絶対的なことなどないのだ」「価値観は人それぞれであり、状況次第で変わるものなのだ」という考え方です。 それはある面において柔軟な考え方であると言えます。 しかし一方で、何でも「時と場合による」で済ませてしまっては「高い理想(イデア→後述)や真理を求める」という姿勢が欠落してしまうという一面があります。 民主主義

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永遠の今~『シッダールタ』ヘルマン・ヘッセ(改訂)

ヘッセは、詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する作家です。 「シッダールタ」(1922)は、あるインドの求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品です。 ヘルマン・ヘッセ(1877- 1962 ドイツ・小説家、詩人) 様々な職に就きながら著述活動を行い、穏やかな人間の生き方を描いた作品を数多く残した。代表作は他に「車輪の下」(1906)「デミアン」(1919) 「シッダールタ」(1922)「荒野のおおかみ」(1927)など。1946年にノーベル

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♡今日のひと言♡ジョン・アーヴィング

ジョン・アーヴィング(1942- アメリカ・小説家) 現代アメリカ文学を代表する作家です。 1965年より大学の創作科でカート・ヴォネガットに師事、フィクションの可能性を継承し拡大させました。 1968年に「熊を放つ」でデビュー。その後、「ガープの世界」(1978)が世界的ベストセラーになりました。 映画化された「サイダーハウス・ルール」(1985)では自ら脚本を手がけ、アカデミー賞最優秀脚色賞を受賞。 その他「ホテル・ニューハンプシャー」(1981)「オウエンのた

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デカダンス文学の入口~引きこもり小説『さかしま』 J.K.ユイスマンス(改訂)

デカダンスとは「退廃」「衰退」を意味するフランス語です。 19世紀半ばを過ぎると、ヨーロッパ文学はロマン派に対抗した写実主義、自然主義が主流となりました。 科学・技術・産業、さらにはジャーナリズムの発展により、社会問題や事実・現実をありのままに描写することが要求されたのです。 しかし、そのさらなる反動として、19世紀末に向けて主にフランスで起きたのがデカダンス芸術でした。 その特徴は、伝統的な規範や道徳に背を向け、病的な趣味を重んじ、退廃的で人為的な美を追求する傾

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「母の日」に、ジョージ・エリオット『サイラス・マーナー』(改訂)

ディケンズと並び称される、19世紀イギリス文学を代表する女流作家です。 彼女の代表作のひとつ「サイラス・マーナー」は、「大人のためのおとぎ話」として海外では広く読まれている作品です。 「他人への愛」や「因果応報」をテーマとしたシンプルな内容ですが、端役にいたるまでの緻密な人物描写・心理描写が感情移入を促します。 読後感がこの上なく素晴らしい物語です。 女性が愚かであるということを 私は否定しませんが 全能の神は 男性につりあうように 女性を作られたのです

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決して手が届くことのない「美」~ウラジミール・ナボコフ 『夢に生きる人』(改訂)

ナボコフは、19世紀末に帝政ロシアで生まれました。 しかし、革命後の1919年にイギリスへ亡命、ベルリンやパリへの移住を経て1940にアメリカに帰化しました。 「ロリータ」(1955)であまりにも有名ですが、他の長編・短編・詩ともに多くの作品を残しています。 また、レールモントフの「現代の英雄」の英訳や「不思議の国のアリス」のロシア語訳など、翻訳の分野でも功績を残しています。 チョウの研究者としても知られ、4000もの標本を欧米の博物館に残しています。 小説は難解な作品

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♡今日のひと言♡カート・ヴォネガット

カート・ヴォネガット(1922-2007~アメリカ・小説家) 「プレイヤー・ピアノ」(1952)や「タイタンの妖女」(1959)などの作品でSF作家として出発。第2次世界大戦中にドイツ軍捕虜となった経験をもとにした「スローターハウス5」(1969)が世界的に人気を博し、ジョージ・ロイ・ヒル監督によって映画化もされた。淡々とした語り口と、辛辣ながら温かみのあるユーモアを身上とする。本邦では村上春樹に大きな影響を与えたとされる。 人は何かのふりをすると そのものになってしまう

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♡今日のひと言♡ミゲル・デ・セルバンテス

私たちが第一に 戦わねばならない厄介な敵は 私たちの内部にあります 流れに逆らおうとしても それは無駄なことで 流れに身を任せていれば、誰でも 港にたどり着くことが出来るのです ミゲル・デ・セルバンテス(1547-1616~スペイン・小説家、劇作家) 世界中で愛されている彼の名作「ドン・キホーテ」(1605)は、中世騎士物語の「パロディ」として、近代の娯楽小説に道を開きました。騎士道に憧れ、その理想へひたすら進むドン・キホーテと、現実主義者の従士サンチョのコンビが、風刺と

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♡今日のひと言♡ヘルマン・ヘッセ

ヘルマン・ヘッセ(1877- 1962~ドイツ・小説家、詩人) 様々な職に就きながら著述活動を行い、穏やかな人間の生き方を描いた作品を数多く残した。代表作は「車輪の下」(1906)「デミアン」(1919)「シッダールタ」(1922)「荒野のおおかみ」(1927)など。1946年にノーベル文学賞を受賞。 https://www.amazon.co.jp/dp/4102001115/

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ジョニ・ミッチェル『サークル・ゲーム』と映画「いちご白書」(改訂)

ジョニ・ミッチェル(1943- カナダ・音楽家) ニューヨークに出て、「サークル・ゲーム」(1967)や「Both Sides Now(青春の光と影)」(1968)、「ウッドストック」(1970)などでシンガーソングライターとしての地位を確立した。メッセージ色の強い歌詞と透明感あるヴォーカルで根強い人気を持つ。 この「サークル・ゲーム」は、日本でもよく知られている、1960年代の学生闘争を描いた映画「いちご白書」The Strawberry Statement(1970)の

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♡今日のひと言♡サマセット・モーム

サマセット・モーム(1874 – 1965~イギリス・小説家、劇作家) 画家ゴーギャンの生涯をもとにした小説「月と六ペンス」(1919)などで大きな注目を集めた。読みやすくわかりやすい文体とストーリーの面白さで大衆の人気を獲得した。⇒「人間の絆」に続く 勝負事ほど 人間の性格を暴露するものはない。 Nothing exposes human character as much as a game.

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♡今日のひと言♡ヘンリー・ヴァン・ダイク

ヘンリー・ヴァン・ダイク(1852-1933~アメリカ・作家、教育者、牧師)父のあとを継ぎ、聖職者の道を進みながら、詩や小説を書いた。代表的な小説は「もう一人の博士」(1896)「The First Christmas Tree」(1897)など。1910年にニューヨークの長老派教会で行われたマーク・トウェインの葬儀は、ヴァン・ダイクが司祭を務めた。また、詩「Time is」も有名で、ダイアナ妃の葬儀で読まれた。 あなたは死ぬ時に 自分が世界のほんの 一部であったことに気づ

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♡今日のひと言♡アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900- 1944~フランス・作家) 自身の飛行士としての体験に基づく「夜間飛行」(1931)や「人間の土地」(1939)など人間愛に満ちた作品を発表。その後、「星の王子さま」(1943)がベストセラーを記録し、世界的に知られる作家となった。

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言葉の森をさまよう -小説『森のバルコニー』の美しさ

【水曜日は文学の日】 小説というのは、現実の体験から、現実を超えた何かを味合わせてくれるゆえに美しい。そんな風に思っている人は多いと思います。 フランスの小説家、ジュリアン・グラックの1958年の小説『森のバルコニー』は、そんな美しさを持つ小説の一つであり、私の偏愛する作品の一つです。 ジュリアン・グラックは1910年、フランスのロワール川近くのロワール県生まれ。ナントで歴史の教師をしながら、小説『アルゴールの城にて』を出版。これが、ブルトンに絶賛され、彼の

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愛のない庭~ジュール・ルナール『にんじん』(改訂)

ジュール・ルナール(1864- 1910~フランス・小説家、詩人、劇作家) 小説「にんじん」(1894)が有名。簡素で日常的な言葉を使って、鋭い観察による様々な傑作を生み出した。「にんじん」は後にルナール自身によって戯曲家され、日本の戯曲界にも影響を与えた。他に「ぶどう畑のぶどう作り」(1894)「博物誌」(1896)等。 「にんじん」 ルナールによる有名な「にんじん」について、ざっくりとですが紹介しておきます。さまざまな解釈ができる作品かと思います。 「にんじん」は、

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♡今日のひと言♡ブレーズ・パスカル

ブレーズ・パスカル(1623- 1662~フランス・哲学者、数学者、神学者) 「人間は考える葦である」など数々の名言で知られる。 「パスカルの定理」などをはじめとした数学での功績なども後世に大きな影響を与えた。 代表作は遺稿集「パンセ」(1669)。 人間のむなしさを 知ろうとするなら 恋愛の原因と結果とを よく眺めるがよい Vanity is illustrated in the cause and effect of love.

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星の王子さま(図書係の思い出)

小学5年の2学期に入ってすぐ、班替えがあって島田さんと同じ班になった。男子2人、女子3人の班で、班長は私だった。 学活のとき、どの班がなんの係活動をするのかを決めることになった。 まず班ごとに話し合いが行われ、私は班員に「お楽しみ係がええんじゃないん」とすすめた。お楽しみ係とは、お楽しみ会を企画・運営する係で、男子のあいだで人気があった。 「読書の秋じゃけ、図書係にしようや」 さっそく島田さんが立ちはだかった。図書係の仕事といえば、学級文庫の整理くらいだ。 「いやじゃ

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素直な心のうた -小説『車輪の下』の美しさ

【水曜日は文学の日】 以前『三四郎』について、ある種の途上で移行期だからこそ小説として美しいということを書きました。それとは別に、不定形な素の姿だからこそ、美しい青春小説もあります。 ヘルマン・ヘッセの高名な『車輪の下』は、そんな魅力的な小説の一つです。 田舎の秀才少年、ハンス・ギーベンラートは、神学校に優秀な成績で合格します。 しかし、厳しい学校での勉強や、反抗的な少年ハイルナー等、周囲の影響を受け、徐々に学校についていけなくなります。ドロップアウトして、何と

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幻想を報告せよ -公務員カフカの冒険

【水曜日は文学の日】 ある朝、普通のサラリーマンが毒虫になってしまう小説『変身』で名高い小説家フランツ・カフカは、本当に不思議な「ありよう」の作家です。 個人的に興味深い作品は何個かあれど、なぜここまで研究者から読者まで、惹きつけてやまないのか、ちょっと驚くようなところがあります。 私が今興味があるのは、彼の「生き方」と「書き方」です。 それは、一見新奇なようでいて、実は、文学史のある種の伝統に即しています。だからこそ、彼の作品がここまで受け入れられて

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♡今日のひと言♡D.H. ローレンス

D.H. ローレンス(1885-1930~イギリス・小説家、詩人) 欧米を転々としながら、現代の文明と人間を性の視点から深く掘り下げた作品を残した。日本では「チャタレー夫人の恋人」(1928)が有名。他に「虹」「恋する女たち」「アーロンの杖」「カンガルー」「翼ある蛇」等。 子供を父や母に結びつけていた絆は 決して切れることはない。 ゆるむのである。

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