分断の時代に聴く「第九」。ベートーヴェン「第九」初演200周年(2024年)
ベートーヴェンの交響曲第9番、通称「第九」は1824年5月7日、ウィーンのケルントナートーア劇場(今は存在しない)で初演された。
この記事を書いている今日でちょうど200年前のことである。
毎年5月7日、忘れることがなければ、わたしは「第九」を聴くことにしている。
「今年はどのディスクで聴こうか?」と悩むことも毎年のことなのだが、「やっぱりこれかな」と選んだのがこれである。
現在の世の中は、再び分断の世界へと進んでいる。その環境において聴く必要があるディスクだろう。
ベルリンの壁の崩壊は、それまで当たりまえであったものが、それも「こんなに簡単に」崩れ去るという、わたしにとってはとても信じられない、そして何か不思議に感じた出来事であった。
その後は東西世界の分断は薄いものになり、自由な雰囲気が満ち溢れていった。
それからすでに35年。
やはり歴史は繰り返すのであろうか?
不安定な世界が再びやってきている。
この演奏会を指揮した翌年に、バーンスタインは亡くなっている。
すでに体調が悪い中、最後の最後の力がを振り絞っている姿、まさにこの演奏会を指揮するために、命をつないできとでも言える姿は感動的だ。
オーケストラも東西ドイツだけでなく、アメリカ、イギリス、フランス、そしてソビエト連邦(当時)のメンバーが一堂に会して同じ「第九」を奏でているという事実も心を打つ。
まさにベルリンの壁崩壊を表すようなということだが、今現在時点では残念ながら叶わないことだ。
演奏自体は、そろわないところも多くあるのだが、そんなことよりも、こ
のような、当時においては奇跡的な出来事が行われ、記録され、今になってもみる事ができることが大きな価値である。
「すべての人類はみな兄弟となる」
この演奏を見ながら、再び、世界が穏やかになり、それを祝う「第九」が再び演奏されることを、切に願いたい。
DVDの解説を書いていらっしゃる山崎浩太郎氏の記事も大変参考になる。
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