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新人デザイナーを成長に導く23のヒント

webサイトのディレクションとデザイン歴22年。新人デザイナーがチームに加入した際、成長を促すために意識している心構え、作業、デザイン、フィードバックのコツについて、これまで実践してきたことを23のヒントとしてまとめてみました。新人を指導する立場のディレクターさんやデザイナーさんの参考になれば幸いです。


1. 最初が肝心

最初は「心構え」から。

最初は先輩のサポートや小さい仕事をお願いすることも多いと思いますが、「これは簡単な(楽な)仕事だから」という説明はNG。どんな小さな仕事でも、「簡単だから」「楽だから」という理由は不要で、それよりも「大事な仕事である」ということを、しっかり伝えましょう

なお、ものごとの最初に満足感や安心感、納得感が得られると、その後までずっとその心持ちが持続するのが「初頭効果」です。指導側が最初に何を言うか。ここでしっかり伝えられれば、新人だけでなく、関わる人すべてがその恩恵を受けられるでしょう。

2. 「知っている」と「わかっている」は違う

新人さん本人は一生懸命予習や自習してるかもしれませんが(エライです!)、基本的には何も知らない前提で教えていいと思います。自分もそうでした。「知っている」と「わかっている」は違いますし、「わかっている」人からもらう言葉は大きいです。

3. 「正確さ」と「確認」で信頼を勝ち取る

最初は時間がかかってもいいから正確さを重視&チェックを徹底させます。工程の多い仕事なのでどうしても抜け漏れは出るし、それは仕方ありません。ただ、チェックを徹底しようという意識がある人は「信頼」を早く獲得できます。その心構えに、経験はほとんど関係ありません。

4. デザイナー以外の人も手本にする

職場で同職種の人が持ってるスキルをお手本にするのはもちろん、職能が全く違う人でも、例えば受け答えや立ち回りが上手な人の言動や行動もお手本になります。周囲の人のアクションにアンテナを張っている人は吸収が早いです。周りの人はみなメンターとして、緩やかな関わりを持たせるのもよいと思います。

5. 「なぜ」を問い、繰り返す

新人デザイナーが自分で制作したデザインについて、「なぜここをこうしたの?」と聞くと、ちゃんと答えられないケースも多いです。センスよくデザインされているようでも、しっかり言語化できていなかったり、デザインの背景を捉えていなくて、単に「見た目がかっこいい」とか、他所で見たのを真似した、ということであればデザインの力はついていないことになります。しっかり「なぜ」を問い、その根本にたどり着けるよう「なぜ」を繰り返させるとよいです。

6. 「腕上げたね」と褒める

最初のうちはどうしても直しの量が多いです。ただ、いいところや、前よりもできているところが必ずあるはず。成長が見られたらしっかり伝えてあげることも大切です。「いいね」もいいけど、「腕上げたね」と成長を評価してあげる言葉は、プロセスを評価するだけでなく、同時に未来の伸びしろに期待することにもなるから、より大きな成長を促します。

それから、デザイン案出したとき、「いいね!」と言ってもらえるとすごく嬉しいものですが、「〇〇なところがいいね!」と理由つきで感想もらえると、もっと嬉しいですね。マイナスの感想はすぐ言語化できるけど、プラスの感想は省略しがちなので「なぜいいか」も伝えたいものです。

7. 先読みさせる

常に次の人のことを考えるように。誰もが理解しやすいデータづくりしたり、事務処理は後回しにしないなど。まずは自分の接点からでいいから、仕事は「点」ではなく「線」にいることを早めに意識させていくとよいでしょう。こういう気配りの積み重ねで、全体を俯瞰できる人材になれるはずです。


続いて、作業に関すること。

8. 作業しているところを見てもらう

制作スピードなど、プロとして目指すべきレベルを把握してもらいます。すぐにできなくても、目標にするには一番効果的。目の前で実践することはもちろん、リモートで画面共有しながら作業の様子を見せたり、ラフ描きの清書を描く様子を動画に撮って送るといったことを実践しています。

9. すぐ覚えさせる

手順を正確かつ丁寧に教えると同時に、キーボードショートカットもセットで教えるようにします。すぐに覚えれば、反復しているうちに身体が勝手に反応するようになり、後々の効率にかなり影響してくるはずです。丁寧さとスピードを同時に身につけてもらいましょう。

10. 制限を与える

じっくり丁寧にひとつのデザインを完成させたら、同じものを今度は時間制限与えて手早く作ってもらいます。復習、反復、段取り、正確さ、スピード、緊張感、集中力、定着。制限がある中で成果を出すのがプロ。すぐに手早くは無理かもしれませんが、意識付けだけでもはやめにしておくとよいでしょう。

11. 基準を持つ

「なんとなく置きました」を排除させます。正確なガイドを引いて、オブジェクトのサイズや座標、フォントサイズが端数にならないよう整数値=「自分の意志」で配置させます。数字で把握することは、自分の中の価値基準を持つ第一歩です。

12. きれいなデータをつくってもらい、チェックする

デザインはきれいだけど、作り方が汚い人っていますよね。誰にも迷惑かけなければ(自分以外データ触らなければ)いいのかもしれませんが、きれいに越したことはないですし、webの場合はコーダーさんがスムーズに取り掛かれるし、はじめにきれいなデータを作る癖をつけさせることはメリットしかありません。
・不要なデータがないか
・マージンは整ってるか
・行揃え正しいか
・座標やサイズの整数値化
・無駄なアンカーポイントがないか
・レイヤー名が適切かどうか
など。
これらは見た目でわかりにくいので、データをチェックして確認します。「見た目が中央揃えなのに、データでは左揃えのまま」はよくあることですが、こういった状態で放置するのは避けたいですね。

13. 定着させる

最初は覚えることばかりなので、早く覚えるには反復が大事。ただ繰り返すだけでなく、「書く」と「話す」という二重のアウトプットで定着力と要約力アップさせると効果的です。
1. ノートにメモ(インプット)
2. 日報にまとめる:「書く」アウトプット
3. 翌朝のMTGで発表:「話す」アウトプット


つづいて、デザイン編。

14. 参考デザインの見方

他所のデザインを参考にするとき、単に手段・表層をなぞるだけだとなんの発展性もなく、取ってつけたような仕上がりになってしまいます。なぜそのデザインになったかを考え、目的ー着想ー表現をしっかり紐づけます。そうすれば自分のアイデアをくっつけたときにいくつもの展開が生まれてくるはずです。

街を歩いていたり、デザインポータル見たり、Pinterest見たりするとき、自分の好きなジャンル、得意なジャンルしか目に入ってこないようだと、結局自分の得意なところでしか勝負できなくなります。「見る目」のモードをちゃんと切り替えさせるとよいでしょう。

15. テンプレートは自分で作らせる

デザイン会社にはいろいろなガイドライン、テンプレートがあると思いますが、私の会社では会社・先輩が用意したデザインテンプレートを配布するのではなく自ら模写してもらいます。アプリケーションの使い方、デザインのルール、心構えなどをまんべんなく網羅し、技術と文化両方を学んでもらえるので、最初の研修で実施しています。

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これを経験することで、普段webサイト見るときに構造やグリッドを意識することができるようになり、「見る目」も飛躍的に向上すると思います。

16. デザインの変遷は残しておく

デザインは思考と行動の積み重ね。ブラッシュアップしていく過程で、前回までのデザイン・レイアウトは別保存で残しておくとよいです。あとで振り返ったときにその思考と行動の変遷が手に取るようにわかるので、反省点や成長過程が一目瞭然。完成版(成功版)しか残ってないと何も学べません。

17. 手描きは大事

アナログは消すのが面倒なのでアイデアをどんどん出すことに集中できます。対して、デジタルはすぐデリートできるので、アイデアの源泉の段階でつまらない編集をしてしまうという落とし穴があります。手描きに込められた線にはより強い意思があって、それが結果的にデザインに宿ると思うのです。

18. 模写、その後

模写についてはいろいろなやり方があるので割愛しますが、webサイトを模写すると、デザインが上手くなったような気がします。しかし、上手く模写するのが目的ではなく、そこで「何を得たか」を理解しないとあまり意味がありません。模写したら、そこで得たものでオリジナルを作ってみるのがいいと思います。

19. 「ダミー」は思考停止

デザインするとき、たとえ素材が揃っていない段階でも、テキストのところを「ダミーダミーダミー」みたいにしたり、アタリ写真が適当だったりをよしとしてしまうと、肝心な部分を「誰かに委ねる」という思考に陥ってしまいます。顧客のことを理解しようとしていれば、たとえ仮の素材でも、できうるリアルなレベルまでもっていけるはずです。


最後に、デザインのフィードバックについて。

20. 思考のエンジンを回してあげる

デザインフィードバックするとき「ここの文字を大きく(小さく)」みたいな指示だけだと、ただの修正“作業”になってしまいます。全体の相関関係を意識させて、なぜ大きく(小さく)するのかという理由を考えてもらい、しっかりと思考のエンジン回してあげる必要があります。

デザインのフィードバックにはすべて理由があります。「つぶせばいい」と思って作業するだけだときっと次も同じ指摘を受けるだろうし、理由をちゃんと考えて修正すればそれがすべて血肉となり成長するはずです。この差は大きいです。

21. 自分で考えさせる

デザインフィードバックのほとんどが自分が感じる「違和感」への指摘で、ほぼデザイン四原則「整列」「近接」「反復」「対比」のどれかです。ただ、どの原則に当てはまるかは敢えて言わず、自分で考えてもらいます。そうすることで理論と実践が同時に身につきます。

また、デザインは技術だけで身につくものでもないので、理論やお作法だけじゃなく遠回りの教育も必要。自分が答えを持っていても直接助言せず、「クライアントなんて言ってたっけ?」と本人が自分で気づけるように導いてあげることも大事です。

22. 現場を知る

デザインの基礎学習は教科書的に進めつつ、現場で実際に使われたデザインフィードバックの校正紙も見てもらうとよいです。赤字にはデザインルールに対する指摘・調整が多分に含まれているので、リアリティがあってよいですね。

23. フィードバックで気をつけていること

自社デザインの品質管理として、アートディレクター/先輩デザイナーの基準でしっかり添削するのは当然です。ただ、新人デザイナーのチャレンジを、完成度が高くないからといってなにもかも自分の物差しの中に寄せてしまうのもどうかな…とも思います。減点だけでなく加点の視点で、活かす方法を一緒に考えたら、お互いの成長につながると思います。

さいごに

私の場合、デザインフィードバックは手描きで指示することが多いのですが、大事なこと・伝えたいことがあれば隅に書いて返します。赤ペン先生。

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教えるのは大変ですし時間もかかりますが、成長して手が離れるのは嬉しいです。自分の指導力もあがるし、チーム力もあがるはず。愛情をもって指導したいものですね。

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