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【読書感想文】アステリズムに花束を

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百合SFアンソロジー。
惹かれる言葉しかないです。百合でSFでアンソロジー。
例えるなら、ケーキとコーヒーのセットを更に食べ比べできますみたいな。
甘いケーキを堪能しつつ、コーヒーで気分をリセット。批評家気分で次々とつまみ食いするような消費行動を、私は楽しめる人類となっております。
それを一冊の本で経験できます。
読書でケーキとコーヒーの食べ比べセットを頂けちゃいます。これはまさにハイブリット読書体験。
そう遠くない未来には、読書という知的行為へ様々な付加価値が足され、「読書で栄養摂取」とか「読書で有酸素運動」とか多機能な読書体験が生まれるに違いありません。
こいつはその先駆けといえましょう。「読書でケーキ&コーヒーセット」。 
なんともSFっぽい導入になりましたね。

本作ですが、別のSF×百合ものを探している最中にたまたま書棚で発見しました。別の百合ものというと

これらです。百合路線のラインナップ豊富です。いいぞハヤ○ワ文庫。やるな○ヤカワ文庫。もっとやれハ○カワ文庫。気に入ったらこれらのレビューも書きます。

さてSFというと、定義にやたらうるさいオタクがいますが私はライト層なのでこだわりません。
また百合というと、定義にやたらうるさいオタクがいますが私はライト層なのでこだわりません。
と各方面へ万全に予防線をはるファインプレーのうえで、内容に触れていきたいと思います。
全体的な傾向としては「あれ? 終わり?」みたいな終わり方が多かったです。
SFな世界観は各作家様々で、人類が突如消えてしまった世界とか死者にメールが送れるようになった世界とか吸血鬼に支配された世界とか。
……こう列挙してみるとSFとオカルトって紙一重な感じがありますね。
それらの不思議な世界観にずっぷり入り込ませてくれたり、意味不明の前後不覚にさせられたりするんですが、終わり方が突き放し気味です。
投げたボールが跳ね返ってこない、というか。一を知って百まで想像してくれや、というか。
SFというジャンル上、特異な世界観があってそれを読者に説明する必要があります。
同時に短編という形式上、物語に没入してもらうために世界観説明がギュッと圧縮されています。
なので、読者としてはギュッと圧縮されて密度の高くなった世界観説明を飲み込んだあと、物語が膨らんだまま余白いっぱいに終わるのでなんか物足りなく感じてしまう……という変なギャップが生まれてるのかもしれません。
たぶんSFじゃない短編アンソロジーとかに一作だけ混じってたら、いい終わり方だと思えるのではないかと……。
全体の傾向としてはそんな感じ。

個別に見ると好きなストーリーは多かったです。
お気に入りは「四十九日恋文」と「彼岸花」、「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」。
「四十九日恋文」はすごく短編に向いてるし、短編としてまとまってて短編の完成度として好き。星新一に百合要素を混ぜた感じ。
「彼岸花」は吸血鬼に支配された世界で、吸血鬼のお姫様と、人間の女の子が文通するという物語でして、使い古された設定ながらやっぱ王道っていいよね……っていうか。結ばれぬ乙女の結末はそうだよね……エモいねっていうか。
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」。これは短編集のトリを飾っているのですが、SFパワーも百合パワーもモリモリのマッチョマッチョでパワー!されます。「今まで長旅ご苦労だったな。こういうの好きだろ?(モリッ」って筋肉隆々のコックがステーキをお出ししてくるので、私のような逆張りオタクとしては「いや締めはコーヒーを頂こう。ブラックで」とクールにお断りしたいところなんですが、芳醇なステーキを食卓にドカンと置かれると「くー!この大味感は嫌いになれねーー!!俺はほろ苦いコーヒーと甘いケーキを堪能してたのに!!!でもやっぱステーキ好き!!!」みたいなね。
そういうことなんですね。固有名詞バッキバキの一見読みづらい物語ではあるんですが、まぁキャラと勢いで引き込まれちゃったね。
こちらは何やら長編として出てるようなので気になった方はチェックしてみください。私も予算があれば買います。


以上です。
百合を味変したいという時、調味棚からギャラクシーな小瓶をとる皆さんにオススメの本の紹介でした。

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