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COCOAのオープンプロセス化の現状と、今後について

以前、note にて、「オープンプロセスによって、COCOAの信頼を再構築する」という記事を書かせていただきました。本来、その内容の趣旨からしても、もっと早く取り組みの推移等をお伝えすべきではありましたが、まずは事態の把握や今後の見通しの策定のほか、様々な事情から流動的な状況が続き、なかなかそれも容易には叶わず、結果として皆様への情報や状況の共有等ができておりませんでした。誠に申し訳ありません。

本記事では、進捗状況や今後の見通しなどについてご報告させていただきます。

これまでの経緯

2月18日:厚生労働省、内閣官房IT総合戦略室(IT室)との連携チームが発足される
平井大臣の指示で、私がチームの一員としてCOCOAに関する事態の収拾のためにIT室のCIO補佐官として正式に関わることになりました。それを受けて、今後の進め方について書いたのが前述の私の note 記事です。

2月26日:GitHub の運用方針を変更
その後開催された連携チームのキックオフの場で、「GitHub の運用についてはIT室側が担当となり、CIO補佐官の責任で双方向のやり取りを始めていく」という方向性の調整を行いました。これを受けて公開したのが、下記の「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) への貢献についてのガイドライン」等の文書です。

ここでは、COCOAの運用主体が、引き続き厚生労働省である関係上、正式な問い合わせやご要望窓口は厚生労働省が担当することとし、GitHubでは技術的な内容のみ取り扱う、という形にしています。

また、この時点では開発会社側のコードベースとGitHubのコードベースは別物となっていました。アップデート版のリリースのタイミングでGitHubに変更を反映させる取り扱いをしていたため、GitHub から直接提案を取り込む(Pull Request をマージする)ことはできませんでした。加えて、GitHub で提案されている内容を既に内部で進んでいる開発順位に対してどのように取り込んでいくのか、という点については、そもそも関係者間での協議が必要でした。

したがって、この時点ではまだ、ドキュメント修正等の、直接的には機能に影響を与えないような提案しか取り込めていません。

とはいえ、開発会社側とも協議を進める中で、GitHubの内容の取り込みについて前向きに検討をいただけるようになっていきました。

3月11日:有山氏が厚生労働省の技術参与として参加
GitHub 側のコミュニティと開発側の現場をつなげるため、COCOAのオープンソースコミュニティで実際に手を動かし、協力を申し出ていただいた有山氏らに、厚生労働省の技術参与としてご参加いただくことになりました。現在、GitHub で上がってきた内容を整理し、開発側とも調整しながらどのように取り込んでいくかを決める「コラボレーター」として関わっていただいており、のみならず、IT室ではなく厚生労働省側の参与としてご参加いただくことで、より直接的に開発チームとの調整が可能となりました。これにより、GitHub 上のテクニカルな議論も一気に進んでいます。

並行して、新年度の契約から盛り込むべき仕様を、補佐官メンバーを中心に詰めていきました(GitHubへの対応や、テスト体制等について盛り込んでいます。)。

3月31日:機能に関わる提案の取り込みも開始
開発会社との調整がつき、開発プロセスの中に、GitHub からの取り込みプロセスを入れることができるようになりました。

国の事業につき、そもそもの契約に含まれていない作業を、年度末の契約終了間際の時期に調整するということの難しさはありつつも、開発会社には柔軟にご対応いただけました。4月以降はさらに、GitHub活用を前提としたプロセスを構築していくよう進めており、今後はもっとスムーズに進んでいくのではないかと考えています。

現状の課題

これまでの経緯についての概要は以上のとおりで、我々としても、常に先の展開や様々な可能性を見据えながら、現段階で可能な限りの対応を実施してきたつもりではありますが、もちろん、課題はまだまだたくさん残っています。特に、「オープンにすすめていく」と言及した以上、皆様の不安を解消し、それをさらに信頼や期待に変えていくためには、もっとタイムリーに情報を公開していくべきだったという反省があります。

また、例えば、コントリビュータの一人である、@zipperpull さんからは、私の冒頭の記事を引用する形で、以下のような的を射た問いかけとご提案を頂いています。

主体的な問題意識と専門性をもって、このように具体的なご指摘をいただけるコントリビュータがおられるというのは、大変ありがたいことだと思っています(対応リソースが限られており、優先順位をつけて、作業を行う価値とリスク等を慎重に検討する必要があるという状況が続く中では尚更です。)。

前述したように、今のところは、GitHub ではあくまで技術的な内容を中心に取り扱うこととなっていますので、それ以外のご要望については厚生労働省側の窓口にお送りいただく必要はありますが、ただ、シビックテックを推進する私の立場としては、技術的な面以外の仕様もGitHub で議論されるようになると素晴らしいと思っていますので、この点については引き続き、調整を進めてまいりたいと考えています。

なお、GitHub に上がっている内容は、これまでも整理して厚生労働省側に伝えていますが、今後も引き続き、致命的な不具合などがあれば優先度を上げて検討するよう厚生労働省に伝えてまいります。

今後の見通し等について

不具合の解消版のリリース時期や、別ブランチ管理の理由などのご指摘は、主として、情報共有の不足に起因しているものと考えていますが、ただ、今後の見通しなどはもっと積極的に開示していくべきでした。
実際のところは、我々の中でも、リリースブランチを作る議論や、今後のマイルストーンを示す議論、2重管理になっているGitHubブランチを統一するためにどうすべきかといった議論を進めてはいたのですが、以後はそういった方針に関わる部分も、可能な限り適時適切に情報を公開していければと考えています。

最後に、IT室のCIO補佐官ではなく、民間のCode for Japan を運営する立場として今回のプロジェクトを俯瞰してみると、(平時は、行政側ではなく参加者側の立場であることが多いということもあり)参加者をもっと信頼すべきだというご意見は、実感とともにとても理解できます。であるにもかかわらず、プロジェクトの特殊性や様々な事情から流動的な状況が続く中で、調整が済むまで不確かな情報を出すべきではない、という思いが私の中で少なからず大きくなってしまっていたことは、ある意味では、それはコミュニティへの甘えだったのかもしれません。

せめて「今はこういう状況だ」という進捗の共有や、あるいは難しい部分があるということだけでも順次お伝えしていくべきでした。心理的安全性を守り、信頼を構築するために必要な、そういったプロセスについての丁寧なコミュニケーションの姿勢が不十分だったその結果として、現状のGitHub 内の一部やり取りに、COCOAに関する対応全般への疑心暗鬼な状況が未だ反映されてしまっているようにも感じます。

普段、Code for Japan の運営の中で、プロセスの透明性による信頼の構築を標榜していたにもかかわらず、意識的にプロセスを公開していく姿勢を通じて環境を整備していくことが未だできていないことは、個人的な反省点の一つです。

以上、現状を共有させていただいた上で、(皆様のご期待に比べるとスピード感は物足りないかもしれませんが)マイルストーンの共有や、GitHubのリポジトリ管理の改善についての具体的な内容が決まり次第、順次共有させていただく予定です。

COCOA を良くしようとして集まったメンバーは、同時に、皆様からのご指摘に愚直に耳を傾け、信頼や期待に応えられるメンバーであると、少なくとも私は考えておりますので、今後は、我々の間だけでなく、皆様との間にもおいても徐々に、これまで以上に互いを尊重し、鼓舞し合うやり取りを重ねていけるととても嬉しいなと思っています。引き続き、ご理解、ご協力をいただけると幸いです。

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