看取りは独りも抜ければひとつ
『最期は孤独なもんや』
「わたしおるやん」
『・・・日真晴。いままでありがとな』
「らしゅうない事いわんといて。っもう、泣きたなるやん」
駆け抜けたー。
ダンナの陽蒔の人生はそんなイメージ。一時は死亡フラグの立っていたわたしからすれば、一緒になる人と出逢えただけでとてつもない奇跡みたいなもの。
意固地なトコもあるけど、誰に対しても面倒見のいい陽蒔は、女性からだけでなく、男性からもモテるような人だった。そんなゆとりあるトコにわたしはしぜんと惹かれ、癌が治ってからの十年ほどを彼と一緒に過ごした。
普通に喧嘩もして。
愛し合って。
幸せな毎日だったー。
『会社のこと、頼んだで』
「心配せんと。いける」
大きくはないけど、陽蒔の経営してた外壁工事会社をわたしが当面の間、継ぐこととなった。快活で楽しい社員たちに支えられながらこれまでもやってきたから不安は少なかった。
『もっと日真晴といろんなトコ行っとけばよかった。人間てなんやろ。生まれたトキも逝くトキも独りや』
「そないなことあれへん。みんなある。最初から最後までみんなあるさけ生きてこれてんで」
二時間後ー。
陽蒔は空に還ったー。
作業現場の足場倒壊に巻き込まれてから二日後だった。
時間はもう戻らないけどー。
いつも陽蒔はわたしと聖心にある。
ひと月くらいしてからかな。
意識だけになった陽蒔のコエが聴こえたー。
それってとても不思議なことやけど、
そのときのわたしは普通に会話していた。
『あいつがめっさやさしくなってんねんで』
「だれなん?」
『タツや』
タツー。というのは陽蒔が唯一ウマが合わなかった人で、急性心不全で逝く直前まで陽蒔や会社にちょっかいを出してきていた男。わたしもタツさんだけは苦手やった。
「そうなん・・。いまはどういう感じなん?」
『なんやろ。自分っちゅう枠やなくて万物とつながった状態っちゅうか・・温かな光ん中におる。なるがままでめっさ自由や。愛っちゅうんか・・わしに愛が注がれててわしが愛の一部ちゅうか』
陽蒔のいうことはハッキリと理解できた。きっとあのトキわたしが病院で空とつながったのとおなじ感覚だー。
と。
「そやさかいいうたやん。独りやあれへん、みんなあるって」
『なんで身体あるときにソレに気づかへんかったんやろ』
「・・なんでやろうな」
そういいながら、わたしは陽蒔が陽蒔の役割を完璧に全うしてくれたことに感謝していた。
「きっと陽蒔は自分を味わいたかってんで」
『やろうな。生まられへんと体験できんことばっかしやった』
わたしたちの実体は光。
救われて。
すべてとここにあることに。
いつの日も。
地球に立つ。
いついつまでも。
存在に生かされながらー。
ぜんぶ愛やったんや。
by.陽蒔
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