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「ジェンダー目線の広告観察/小林美香」を読んだ感想

今回は、小林美香さんの「ジェンダー目線の広告観察」を読んだ感想を投稿していきます!

ジェンダー目線の広告観察 小林美香

コンプレックスを刺激する脱毛・美容広告、
バリエーションの少ない「デキる男」像。
公共空間にあふれる広告を読み解き、
「らしさ」の呪縛に抵抗する。

広告と経済の関係を考え、私たちのものの見方が、どれほどそれらのイメージから影響を受けているかを理解することは、消費社会の中で私たちがどのように生活しているのか振り返ることにつながるはずです。

まえがきより

ジェンダー目線で広告について考えていくという内容。
実際の広告の例がたくさん挙げられていて分かりやすかったです。

広告をよく見てみると、社会的に期待される「ジェンダー規範」が反映されているものが結構あることが分かりました。

特に美容系の広告には、

「ビーチに出る体の準備はできてる?」(ダイエット用サプリメント広告)
→痩せていないとビーチに行ってはいけない?

「魅せ肌は、女子の武器(ミカタ)」(脱毛広告)
→女子の武器とは?

「男は肌も強いって思ってる?」(脱毛広告)
→「男は強い」ことが前提?

「たった3年の高校生活。1秒でも長くカワイイ私で過ごしたい。」(二重手術広告)
→二重じゃなければ可愛くない?

のように、「こうあるべき」と思わせるような、コンプレックスを刺激するキャッチコピーが使われているものもあって確かにモヤっとします。

ほかにも、
「デキる男」像の呪縛について、世界各地の性感染症予防啓発広告と比較したときの日本の広告における問題、広告業界とジェンダーバランスなどのテーマもあって、様々な観点から広告について考えることができました。

日常的に視界に入ってくるテレビCM、街の看板やWEB広告などから、無意識のうちに価値観を刷り込まれてきたのかと思うと少し怖くなりました。

個人的には最後の章の「写真歌謡」試論が面白かったです。
「写真歌謡」とは筆者が作った造語で、「歌詞の中にカメラや写真に関する言葉が登場する楽曲を指すもの」のことで、「歌謡」と言っても狭義での歌謡曲、すなわち昭和時代に作られた懐メロ的なものだけではなく、ポピュラーソング全般を指し、近年の作品では歌詞だけではなく、MVなどの映像作品の中で写真やカメラ、映像機器が登場するのも含みます。

フィルム写真の時代から現代のデジタルに至るまでの間に、写真についての歌詞の描写もだんだんと変わってきていることを知りました。

ポラロイド写真が流行した1970年代は、写真を撮るという行為が趣味としても、また職業としても、男性の領分に置かれていて、写真を撮ることは特別な出来事を記念として残す感覚だったそうです。1990年代になると安価なカメラやプリクラの流行で、日常の場面を撮影することが一般化しました。

フィルムからデジタルへ時代が流れるにつれて、歌詞の表現も変わってきているのが面白いです。
「泣きながらちぎった写真(荒井由実)」
「写真はセピア色に(松田聖子)」
「机の端のポラロイド(大滝詠一)」
「年賀状は写真付きかな(宇多田ヒカル)」
こういう歌詞は当時ならではの表現だと思いました。

ソーシャルメディアを通して写真や映像を見る・見られることが常態化した現代では、気軽に自撮りをしたり、お互いを撮り合ったりする描写の歌詞が増えました。一方で、SNSによる自己顕示欲や承認欲求、感情疲労や孤独感を表現した歌詞も増えてきています。またKPOPアイドルのMVにおいては、他者の視線に晒されたり、監視されたり、つきまとわれたりと、アイドルがいかに見られる存在であるかということ、アイドルに注がれる視線を通して何が消費されているのかというメッセージを、曲の世界観の中で表現する作品も出てきました。

これから5年後、10年後には、歌詞における写真の表現はどう変わっていくのか、そこに注目してポピュラーソングを聴いていくのも面白そうだと思いました!


この本を読んだことで、ジェンダーについて考える機会を持てて良かったです。
推し活マーケティングやKPOPなど、自分が好きなジャンルについても触れてあったので、楽しみながら読み進められました。本文中に取り上げられていたMVは、最後にリンクをまとめておきます!

これから広告を見てモヤっとしたときには「なんか嫌だな」だけではなくて、どこが嫌だと感じたのかも考えていこうと思いました。

そしてこの本を手に取ったのは、素敵な表紙のイラストに惹かれたのがきっかけでした。
カバー画の題名は《The Parade of Colors》
ジョン・ナファンさんという韓国のアーティストの作品です。

ジョン・ナファンさんは、韓国、ソウルを拠点にクィアとしての自身の性的アイデンティティに根差したグラフィック、絵画、映像作品を制作されていて、青少年の性的少数者、同性間の性的関係を犯罪とする韓国軍刑法第92条6、HIV/AIDS、ドラァグアーティストなどをテーマとして、LGBTQ+コミュニティのために精力的に活動されていたそうです。

ジョン・ナファンさんの作品は、公式サイトやInstagramから見ることができます。

以上、小林美香さんの「ジェンダー目線の広告観察」を読んだ感想でした!
最後まで読んでくださってありがとうございます!


・ジョン・ナファンさんについて

▼전나환(Jeon Nahwan) 公式サイト

▼전나환(Jeon Nahwan) Instagram

▼GENXY インタビュー記事


・本文中に取り上げられていたKPOP作品

▼DEAN instagram

▼SEVENTEEN(세븐틴) Snap Shoot

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▼BLACKPINK 뚜두뚜두(DDU-DU DDU-DU)

▼(G)I-DLE(여자)아이들 Nxde


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読書感想文

最後まで読んでいただけて嬉しいです‪‪。 ありがとうございます! GWはどう過ごされましたか? 私は図書館に行ったり公園で散歩したりと、のんびり過ごしました。 5月は疲れが出やすい時期でもあるので、どうぞご自愛ください‪‪☺︎‬