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選手の顔を上げさせるオーガナイズ【コーチングログ#19】

今シーズンはなかなかコーチングログの方も更新できなかったなと反省しつつ、久しぶりにコーチングログを書いていく。

今回は『選手たちの顔を上げさせるオーガナイズ』について。

「顔を上げろ」で顔を上げられれば苦労しない

よく指導者が試合や練習の中で「顔を上げろ」と指示を出している。これは私も良く言うコーチングである。しかし、ただ「顔を上げろ」と言われただけで、選手たちの顔が上がるようになるのであれば誰だって苦労はしない。指導者の言われたことを言われただけで実行することができる選手はごく稀で、練習や学習を通じて選手ができるようにさせる必要がある。

おそらく選手たちは言われたことをやろうとはしているはずだが、選手たちからすると「わかってるけどできない」というのが本音だろう。「顔を上げろ」というコーチングで顔が上がらないのであれば指導者としては"工夫"が必要になってくる。

私がいつも練習のオーガナイズを考える時に考えていることは「どうやったらその状況、状態、アクション、スキル、動き、判断を引き出せるか?」である。

今回の例で言うと、

①選手の顔を上げさせたい
②選手の顔が上がる状況を作る
③選手が顔を上げないとプレーできない練習にする
④コーチングをしなくても無意識に顔が上がる(上げないと上手くプレーできない)

というような思考回路でオーガナイズをしていく。というわけで練習メニューとそのメニューについて。

練習内容

カラーゴールゲーム

左上の黒がコーチ。コーチが示している色のゴールにシュートを放つ。

オーガナイズ
・2チーム(6vs6程度※変更可)
・4〜6ミニゴール、コーン、ビブス(4〜6色)
・30m×30m(人数によって変更)
・各ミニゴールにそれぞれ違う色のビブスを括り付けておく

ルール
・コーチが掲げているビブスの色と同じ色のミニゴールにシュートを決めたら1点
・慣れてきたら選手たちにサイレントでプレーさせてみる
・コーチが移動することで尚効果的になる

コメント
この練習は『認知』できないと得点することができない練習となっている。味方同士のコーチングや指示があれば認知しなくてもゴールをすることは可能だが、サイレントプレーではそれが不可能になるため、常に自分が決めるゴールを理解するためにビブスの色をコンスタントに確認するようになる。特に選手がオンザボールの時にビブスの色を変えたりすると余計に選手たちは認知することに徹するようになり、ボールを保持しながらでも顔を上げるようになる。

コンディショントランスファーゲーム

真ん中(黄色のライン間)がディフェンスゾーン

オーガナイズ
・3チーム(6vs6vs6※変更可)
・コーン、ビブス

ルール
・各サイドに1チームずつ入り、真ん中のディフェンスゾーンに残りの1チームが入る。
・オフェンスチームはパスを6本繋ぎ、反対のエンドへとパスすることができたら1点
・ディフェンスチームは3人がプレスに行き、残りの3人はディフェンスゾーンでインターセプトを狙う
・ディフェンスチームはボールを奪ったら逆のエンドへとパスをしてオフェンスになる。ボールを奪われたチームはディフェンスに。
・ディフェンスチームは3人のプレッサーに加えてもう1人プレッサーを送ることが可能。その場合オフェンスチームは6本パスを回さずに逆のエンドへとパスすることが可能。

コメント
1番最後のルールがこのゲームのミソで、ディフェンスがもう1人追加でプレッサーを投入してきた場合にはハマる前に逆のエンドへとボールを逃がしてあげることが重要。つまり、ボールを保持している状態で相手のプレスの状況を認知しておく必要があり、自然と顔を上げざるおえない状況になる。

また認知の部分だけでなく状況判断の部分も鍛えられるのがこの練習の美味しいところ。いつ逆のエンドへとボールを送るのか、どのタイミングで追加プレスに行くのか、ボールを受ける位置やボールを放すタイミング、数的不利でのハメ方など様々な判断が必要になってくる。

オフサイドラインゲーム

フラッグとフラッグの間がオフサイドライン

オーガナイズ
・2チーム
・ゴール×2、コーン、ビブス、コーナーフラッグなどの目印になるもの×4

ルール
・条件付きゲーム
・フラッグが置かれた場所がオフサイドラインとなり、オフサイドラインは固定。
・守備をしているチームはオフサイドラインよりも高い位置でディフェンスしなければならない。
・背後を取られた時のディフェンスのプレスバックは禁止(プログレッションで○人まで可と変更する)。
・始めはオフサイドラインとオフサイドラインの間のみディフェンス可能(攻撃側にボールを運ばせてミドルゾーンでの攻撃にフォーカスさせるため)。慣れてきたらハイプレス可能にする。

コメント
このゲームはより実践的な練習で、オフサイドライン上での駆け引きにフォーカスした練習。ピッチの両脇にフラッグなどの目印になるものを置いて、ピッチ内にはコーンなどは置かない。そうすることでFWやDFの選手はオフサイドラインを確認するためにフラッグを見ようとするため、自然と顔が上がるようになる。コーンをピッチ内に置いてしまうと、コーンを見るために顔が下がり視野が狭くなってしまう恐れがあるため、敢えてフラッグなどでオフサイドラインを作る。

オフサイドラインが固定されているため、攻撃チームは比較的簡単に背後を取ることができる。従って、守備チームは1発で背後を取られないようにボールホルダーにプレスをかけることや、局面的にハメることが重要となる。また、攻撃チームのFWはオフサイドライン上に立って背後に出るのではなく、プルアウェイからの背後や2列目からの背後など動きのバリエーションを出したい。コーチはオフサイドは厳密に取るとゲームが締まる。プレスバックをありにすることで、より実践よりの練習になるため、選手たちが慣れてきたらプレスバックをありにすると良い。

最後に

今回は3つの"顔が上がる"練習を紹介した。冒頭で話したが、コーチングだけでは身に付かないスキルはあるので、いかに練習のオーガナイズで選手にスキル習得させられるかがカギになる。

しかし、間違って欲しくないのはオーガナイズにだけ頼ることもできないということである。良いオーガナイズとともに良いコーチングがデモンストレーションなどがあれば、相乗効果によって練習の効果もより高まる。指導者がどのように振る舞い、何をいつ言うか、どのように伝えるかなどは指導者の力が試される部分でもある。オーガナイズは真似することができるが、コーチングはなかなか真似ができない分野なので、自分にあったベストなコーチングをチームに還元することが大切だ。

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