ドーナツ・ピーナツ「コンビ結成8年で初受賞。新人賞をもらえたことで、ますます漫才が好きになった」
——『上方漫才協会大賞』新人賞受賞おめでとうございます! これをきっかけに心境の変化などはありましたか?
ドーナツ:ありがとうございます! 漫才はこれまでずっと取り組んできたことですし、新人賞をいただけたことで漫才がもっと好きになりましたね。
ピーナツ:新人賞をいただけたということは、新人の中では“王様”なので……。
ドーナツ:おまえ、イタいぞ!(笑)。
ピーナツ:“王様”、ヤバいですかね?(笑)。でも、まだまだ足りないところはたくさんあるので、これからもがんばっていかないとな、と。
——にじみ出る自信と、まだまだ……という謙虚さも感じます。では、おふたりの素顔にも迫ります。福岡ご出身ということですが、幼い頃はどんな子どもでしたか?
ピーナツ:うちは貧しめ、というかおもちゃを買ってもらえない家でした。当時住んでいたのはアパートで、僕より年下の子どもがたくさん住んでいたんですけど、僕だけおもちゃを持っていないのがイヤだったので、ほかの子たちがおもちゃで遊ばないように、僕が考えた遊びをやらせていました。
——たとえばどんな遊びを考えたんですか?
ピーナツ:切ったリンゴを自転車のカゴに入れて、みんなで町内を自転車で走り回り、一番先にカゴに入ったリンゴが乾いたヤツが勝ち、というレースとか。
ドーナツ:なんやねん、そのレース! 戦後ニッポンの遊びやん。
——昭和感がありますね(笑)。ドーナツさんはどんな子どもだったんですか?
ドーナツ:けっこう目立ちたがり屋やったかもしれません。保育園の頃、ただの石を拾って「ティラノサウルスの化石や!」と言い張って保育園の英雄みたいになったことがあります。
——ふたりとも、独創的な幼少時代です。そんなふたりが、お笑いに興味を持ったきっかけは?
ピーナツ:志村けんさんのバカ殿です。そこから『でんじゃらすじーさん』、『ピューと吹く!ジャガー』とかギャグマンガが好きになり、おもしろいことに興味を持つようになりました。
ドーナツ:僕もバカ殿は観てましたね。でも、一番衝撃を受けたのは中学生の頃に観た『ダウンタウンのごっええ感じ』です。当時つき合っていた彼女の家に、DVDが全巻あったんですよ。それこそ、彼女に会いに行くためじゃなく、『ダウンタウンのごっつええ感じ』を観るために彼女の家に通ってました。
ピーナツ:高2でドーナツと仲良くなった時に、「『ごっつええ感じ』ってめっちゃおもろいよ」って教えてもらったな。まだ観たことなかったから、食い入るように観て「芸人っていいな」と思ったのを覚えてます。
——芸人になろうと決めたのも、高校時代ですか?
ドーナツ:そうです。コンビを組むきっかけでもあるんですけど、高2の時、放課後にピーナツと当時の友だちの“ラッキョ”というあだ名のヤツと3人でしゃべっている時、突然ラッキョが「お前ら、コンビ組んでお笑いやってみりゃいいやん」と言ってきたんです。「えっ!?」てびっくりしたんですけど、そこから「お笑い芸人になりたい」という気持ちが芽生えて、という感じです。でも、なんでラッキョが僕たちにそう言ったのかは……なんでやったかな?
ピーナツ:いや、覚えてない。
ドーナツ:最後に会ったのは10年前くらいか……。
——“ラッキョ”さん、何かを見抜いていたんでしょうか。高校卒業後、ふたりそろって東京NSCに入りますが、卒業後は大阪に拠点を移されたんですね。
ドーナツ:『M-1グランプリ』に憧れていたこともあって、NSC時代も漫才をやっていたんですが、数カ月に一度くらいのペースで中田カウス師匠が講師として東京のNSCに来られていたんです。授業でネタを見ていただいたり、お話させてもらったりするうち、カウス師匠から「漫才をやるなら大阪やで」という言葉をいただいて。それでNSCを卒業したあと、2014年からカウス師匠の弟子にならせてもらうことになり、大阪に拠点を移しました。僕も漫才といえば大阪だと思っていたので「そんなふうに言っていただけるのなら」と。
ピーナツ:僕は東京を離れるのはちょっとさみしかったです。同期でめちゃくちゃ仲いいヤツもできたし、僕らふたり、EXITの兼近とルームシェアしていたので同居を解消するのがさみしかった。
——そんな別れもあったんですね。そんななか、移り住んだ大阪はいかがでしたか。
ドーナツ:はじめは「ガツガツしてるなぁ!」という印象ですね(笑)。会話していてもいちいちツッコまれるし、「一生会話終わらんで!」ってなってました。ほかにもNGKでザ・ぼんちのおさむ師匠とお会いした時、楽屋でずっと奇声を発したり、踊ったりされているので「楽屋もテーマパークやん!」とびっくりしました。
ピーナツ:僕は街に面食らうことが多かったな。大阪って、どこかゆるい感じというか、ちょっと悪いことをしても許されそうなイメージがあるじゃないですか。
ドーナツ:笑って許してくれそうな雰囲気はあるわな(笑)。
ピーナツ:初めて新世界に行った時、大阪に台風が近づいていた日だったんですが、おっちゃんが空を手で仰ぎながら「あっち行けー!!」と叫んでいたり、天気のいい日に自転車を漕いでいたら、路上にいたおっちゃんから「兄ちゃん! この雨、いつ止むんや?」って尋ねられたり……。勉強になるなぁって。
ドーナツ:なんの勉強になるねん!
ピーナツ:常識を打ち破っていく感じが(笑)。
——序盤からディープな大阪を体験されていると思います(笑)。ちなみにおふたりは高校の同級生ですが、今の関係を相方以外の言葉で例えると?
ドーナツ:「友だち以上、相方未満」ですかね。8年以上やってきて、友だちに寄り過ぎると馴れ合いになってしまうし、相方と意識しすぎたら同級生の持ち味がなくなるというのもあって。友だちと相方のちょうど真ん中くらいがいいのかなと。
ピーナツ:がっつり仲がいい、とまでいかない。休みの日に遊ぶわけじゃないけど、めちゃくちゃ仲がいい「塾の友だち」みたいな関係かな。
——わかりやすい例えをありがとうございます! ちなみに、ドーナツさんから見たピーナツさんってどんな方ですか?
ドーナツ:知り合って15年くらいになりますが、ミステリアス。まだつかめないです。ピーナツって、世間のことにあまり興味がないんですよ。ちょっと前まで嵐のメンバーも言えなかったし、ニュースも見ない。「何が楽しくて生きとんやろう?」と。感情を表に出さないし、「これ好き!」とかあんまり言わんよな。
ピーナツ:好きもキライもめちゃくちゃあるわ! それこそ女の子は大好きですよ。
ドーナツ:女の子はみんな好きやねん! どんなタイプがいいか、もっと絞れよ。
ピーナツ:それはもう、時期によるから。
ドーナツ:「時期による」とか言い出すから面倒くさくなるんです。だから一生つかめないままなんです。
ピーナツ:だって、おまえはずっと身長高い女の子が好きか? 身長低い子がいいって思う時期もあるやろう? 時期ってそういうことを言うとるんよ。でも、基本ショートカットです。
ドーナツ:それを最初から言え! それを聞いとるんよ!
——ショートカットの女の子がお好きなんですね(笑)。では、ピーナツさんから見たドーナツさんは?
ピーナツ:わかりやすくて人間味があるところがいいですね。内弁慶で、主人公っぽくないというか。上の人にはペコペコして、下の子には「おい!」とフランクに行くところとか。
ドーナツ:言い方が悪すぎるやろ(笑)。
ピーナツ:でもそれがイヤな感じじゃない。見ていたら、(『ONE PIECE』の)ウソップを見ている気分になるんです。ネタを書く時も、「どういうネタにしよう?」って考えた時、ドーナツのイメージはめちゃウソップに近い気がします。僕の母ちゃんも「平沢くん(ドーナツの本名)はウソップみたいでおもしろいね」って言っていました。
ドーナツ:ウソップで記憶されてしまうやん!
——ちゃんとイメージが伝わっているんですね(笑)。では、お互い直してほしいところは?
ドーナツ:ピーナツは、昔から前髪を整えるクセがあるんです。もうこれは直らんやろうと諦めてはいますけど、いくら触っても髪型なんも変わってないぞ。ネタ合わせの時も前髪を触り始めたら「あ゛ぁ〜! はじまったはじまった!」って思いながら見てます……。
ピーナツ:髪型を整えようとしているんじゃなくて、考えごとをするときに出るクセなんですよ。
——自覚されているんですね。ではピーナツさんは、ドーナツさんに直してほしいところはありますか?
ピーナツ:うーん、ないかも。このまま変わらないでいてほしい。ドーナツは普段の生活でも、MCでも「ちゃんとしよう」とする時があるんですけど、「ちゃんとしよう」とせんでほしい。これからもドーナツはドーナツのままで。
ドーナツ:それはありがたいなぁ。
ピーナツ:ドーナツは「ちゃんとしない」ほうがおもしろいと思うんです。例えば遅刻とか絶対してはダメですけど、「うんうん、ドーナツならありえるよな」って思われるくらいでいいのかな、と。
ドーナツ:……おまえ、やっぱり俺をどんどんウソップに近づけようとしてる? やめてくれ!
■撮影協力
FLY BOY BURGER & COFFEE
大阪府大阪市福島区鷺洲1-3-6
ドーナツ・ピーナツ INFO
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取材/中野 純子
撮影/渡邉一生
企画・編集/いとう
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