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建設産業の未来を読み解く/FUNDINNO未来産業レポート

ベンチャー企業が創り出す新市場や産業の未来を考えるヒントをお伝えする「FUNDINNO未来産業レポート」の第10弾です。

今回は「建設業界」をテーマにお伝えしていきます。

建設業界のトレンドとして、「建設テック」「低炭素住宅・省エネ住宅」「リフォーム需要」などのキーワードが上がります。

とくに建設テックは、業界全体の人手不足の解消・業務効率化に役立つことで注目されています。

このレポートでは、「建設テック」に焦点をあてて解説をしていきます。

最新のベンチャー企業トレンドを理解するのに、ぜひご活用ください!

建設テックとは?

建設業界・建設テックについて理解するため、はじめに各種専門用語とそれぞれの違いについて確認していきます。

建設業界の用語として、「ゼネコン」ということばを聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

ゼネコン(General Contractorの略)とは、施工管理を担う会社のことです。

建設業界の構造

建設業界は、ゼネコンの下にサブゼネコンがあり、その下に中小企業があるといったピラミッド型の構造をしているのが特徴です。

下記の記事にて紹介されているよう、ピラミッド上に分かれる多重構造から発生する歪みが指摘されるケースが多くあります。

複雑すぎる多重構造により、職人が出した成果の把握や、人員の管理もおろそかになる。結果的に、利益が真っ当に配分されにくい仕組みになっているのです。
たとえば、このオフィスビルの施工の一部を、ゼネコンが下請企業に依頼するとしましょう。下請企業は本来、材料費や人件費をあらかじめ計算して、その上で利益を出せる金額を、見積もりとして提案するはずですよね。
ですが、ゼネコンが仕事を発注するのは、一番安い見積もりを提示した下請企業。数社に見積もりを提示させ、一番安い金額に揃えさせる、といった不健全な商習慣があるのも事実です。
下請企業に、交渉の余地はほとんどありません。情報も少ない中、コストに見合わない安い見積もりを提示して、仕事を請け負ってしまうケースが多いんです。

NewsPicks記事より引用

旧来のピラミッド構造で分かれる建設業界の中では、人材不足が大きな問題となっています。

建設業界は、納期を厳守する関係で長時間勤務になりやすいうえ「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが先行してしまい、若年層が敬遠する傾向にあります。

注目が集まる建設テック

その問題解決のため注目されているのが建設テックです。

建設テックの持つ生産性向上・効率化という特徴が、人材不足解消に役立つと期待されています。

建設業界は旧来の産業構造からの課題がある分に、課題解決を担うベンチャー企業に期待が集まる業界でもあります。

投資先として、今後の動向をチェックしておきたい業界のひとつと言えるでしょう。

建設業界の注目ポイントを整理します。

  1. 建設テックの活用による業務改革が推進され、問題解決が図られている

  2. 老朽化による建て替えや都市再開発による事業があり、仕事がなくならない

  3. 政府の支援により比較的安定している業界であり、倒産の危険性が少ない

建設テックの最新の動きを整理

ここから、建設テックのトレンドをチェックしていきます。

すでにご紹介したとおり、建設業界では生産性向上・効率化を狙い、建設テックの導入が進められています。

たとえば、「ドローンを活用して上空から施工状況を確認」「3次元データによる施工管理」「機械の自動運転化」などの取り組みが代表的です。

また企業では省人化を狙い、以下のような開発もされています。

大手のゼネコンが、テクノロジー活用を推進していることが注目ポイントです。

大成建設:遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」

清水建設…溶接ロボット「Robo-Welder」、多能工作業ロボット「Robo-Buddy」、自動搬送システム「Robo-Carrier」

くわえて企業だけではなく、国土交通省も「BIM/CIM」の取組を推進していることも、チェックしておきたいポイントです。

■BIM(Building Information Modeling、Management)
図面をデータ化して活用し、生産性の向上を狙う

■CIM (Construction Information Modeling、Management)
土木についての3Dデータ活用を狙う

BIMやCIMは、令和5年度には建築・建設ともにすべての施工で原則適用するとして推進されている事業です。

ゼネコン、国が中心となってテクノロジーを推進していることから、業界や社会全体に建設テックが普及すると考えられるでしょう。

建設テックの主要プレイヤー

ここでは具体的に、市場成長をけん引する主要プレイヤーを2社ご紹介します。

業界のDX化を推進する「アンドパッド」と「スパイダープラス」を取り上げますので、それぞれチェックしてみてください。

1.株式会社アンドパッド

株式会社アンドパッドは、施工管理アプリ「ANDPAD」を提供する企業です。総額約87億円の資金調達を行っています。

「ANDPAD」は現場の効率化から経営改善までを一元管理できる機能を備えており、リフォーム・ゼネコン・注文住宅・設備工事・塗装などさまざまな業界で活用されています。

搭載している機能は以下のとおりで、建設業界のDX化が注目されるなか、ますます注目度が高まる企業と考えられるでしょう。

  • クラウドで一元管理できる「施工管理」機能

  • 全員にリアルタイムで漏れのない情報共有ができる「チャット」機能

  • お客さまと細やかなコミュニケーションが取れる「施主報告」機能

  • 煩雑な業務を効率化する「受発注」機能

  • 営業進捗から売り上げ・原価まで経営を支える情報を集約できる「引合粗利管理」機能

2. スパイダープラス

株式会社スパイダープラスは、建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を提供する企業です。

「SPIDERPLUS」ではクラウドを活用しており、図面・写真の管理や帳票出力などをアプリで完了させられます。

これにより、1年以上利用しているユーザーの42.7%が、1か月で20時間以上の時間短縮を実現しています。

「SPIDERPLUS」に搭載されている機能には以下のものがあり、人手不足が深刻な建設業界において注目しておきたい企業のひとつといえるでしょう。

  • クラウドで会社や事務所のメンバーと簡単に進捗・情報共有できる

  • タブレットで情報を一括管理。事務所と現場の往復時間を大幅削減

  • データがクラウドにまとまっているから、デジタル図面への写真貼付・検査記録などの事務作業も、現場で完結できる

  • 電子小黒板機能を標準装備

  • 1クリックで記録帳票を作成できる

世界:建設業界の投資状況

続いて、アメリカの建設テックの状況をみていきましょう。
たとえば、資金調達を成功させているベンチャー企業として以下の会社が挙げられます。

アメリカの建設テックベンチャー

  • 住宅設計ソフト開発のスタートアップ「Higharc」

  • 土地選び・デザインカスタマイズから契約までオンライン上でできる「Welcome Homes」

  • 建設プロジェクトにおける財務管理用プロダクトを手掛ける「Briq」

とくに「Welcome Homes」は、2020年に創業し同年9月に5億円以上の調達を成功させるなど、とくに注目を集めているスタートアップ企業です。

また「Briq」も、シリーズBラウンドで3,000万ドル(約33億円)の調達を達成しており、今後の事業に注目が集まっています。

さらに、中国における建設テックの盛り上がりも見逃せません。

中国の建設テックベンチャー

中国企業も建設テックのベンチャー企業は盛り上がりを見せています。

代表的な中国のベンチャー企業をご紹介します。

  • 3Dモデリングやシミュレーションから完成後の建築物の管理までできるBIMソフトを開発する「迅威」

  • 建築をロボットで実現させる「One Build Technology」

  • 建設労働者の雇用に関するプロセスをデジタル化する「吉工家」

  • 人とロボットが連携可能な製造モデルに注力する「Fab-Union」

国内:建設業界の注目ベンチャー企業

最後に、国内で注目を集めているベンチャー企業2社についてご紹介します。

FUNDINNOで資金調達を成功させた「クェスタ株式会社」と「株式会社Minoru」の2社について、詳しくチェックしていきましょう。

クェスタ株式会社

クェスタ株式会社は、建設現場、作業現場のオンライン化により、作業員の高齢化や現場管理者の業務過多の課題解決に取り組むベンチャー企業です。

作業現場での朝礼をデジタル化した「“ご安全に”モニター」及び、現場監督レスを実現するクラウド型タッチパネルモニター「“遠隔指示”モニター」の開発・運営を行っています。

FUNDINNOプロジェクトページより引用

タッチパネルを活用してオンライン化を支援するサービスは他にも存在しておりますが、クェスタ株式会社は、複数の知財を保有して参入障壁を高める戦略をとっていることに注目です。

FUNDINNOプロジェクトページより引用
FUNDINNOプロジェクトページより引用

遠隔指示ニーズが高い戸建て作業現場への展開を中心に事業を展開しており、現在でもスーパーゼネコン、中堅ゼネコンを含む約450を超える現場に導入が進んでいます。
※導入数はFUNDINNOでの調達時に紹介をしている数字です。

株式会社Minoru

株式会社Minoruは、家賃を払い続けることで賃貸物件がマイホームになるサービス「家賃が実る家」を運営する企業です。

事業では、多様化する生き方に住宅ローン制度が対応していないことに着目。賃貸借契約をスタートとすることで、個人事業主や晩婚の方、LGBTの方も家を持ちやすくする仕組みを構築しました。

さらにコロナ禍におけるマイホーム需要をおさえることで、広告を打ち出さずにユーザーを獲得している注目企業です。


また「家賃が実る家」では「入居希望者と賃貸住宅オーナーをマッチングする」「建築施工管理をシステムによりデジタル化する」など、スムーズに事業を進行する仕組みも整えています。

FUNDINNOプロジェクトページより引用

まとめ

近年では人材不足のなか「新型コロナウイルス感染症によるリフォーム需要」「脱炭素社会・SDGsによる省エネ住宅の需要」が高まっていることもあり、ますます建設テックの活用が注目されています。

そのなかで、クェスタ株式会社や株式会社Minoruなどさまざまなベンチャー企業が登場し、新事業をはじめようとしています。

今後どのようにベンチャー企業が活躍していくのか、注視しておきたい業界といえるでしょう。

今回は建設業界・建設テックについてのレポートでした。

次回の未来産業レポートもお楽しみにお待ちください!

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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