大分トリニータ戦マッチレビュー?〜夏にやってきた友だち〜
ミンミンミンミン…
外から聞こえるセミの鳴き声が、夏の到来を伝えるかのようにベッドの上の僕を叩き起こす。
異様なまでに長かった梅雨の期間を終え、やっと夏がやってきたことを日差しの強さと耳から入ってくるセミの鳴き声が教えてくれる。
何だか寝付けずに深夜3時頃に眠りについた僕は、セミの賛美歌で6時半に目が覚めてしまった。
二度寝をしようにも、まるで三次会でカラオケに行った時の深夜4時くらいに歌うORANGE RANGEのイケナイ太陽くらいノリノリでセミが鳴いているので、寝付けなかった。
仕方がないので僕はまるで倒された後、ノーファール判定だった時のレアンドロダミアンのようにゆっくりとベッドから起き上がり、カーテンを開け、窓を開けて室内の空気を入れ替えようとした。
ガラガラガラ…
ゆっくりと窓をあける。すると、網戸に生きる防犯ブザーがぶら下がっていた。
…!!!ミーンミンミンミンミン!!!!!!
防犯ブザーは1ミリの隔たりの向こう側にいる僕に向かって突然鳴きだした。
うぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
言い忘れていたが、僕は世界レベルのビビリだ。
セミの5倍くらいの声量で鳴いた。
防犯ブザーは、隔たりの向こう側の不審者(僕)を見つけてしまったので警戒心MAX
周囲に僕の存在を知らしめるかのように音を出し続ける。
先ほど僕は世界レベルのビビリだと説明したが、同時に世界レベルの負けず嫌いなのである。
本来であればセミが鳴き止むまでこちらも鳴き続けたいところなのだが、隣人に迷惑なのでセミが鳴き止むまで見続けることにした。そして、心の中で会話を始めた。
僕「おい、いつまで鳴いてんだよ。ここ、僕の家。不審者はお前だろ。」
セミ「ミーンミンミンミンミン(和訳:いや、俺がいるの外だよね。お前の家の外。ここは俺の領地。)」
僕「お前、めちゃくちゃ性格悪いな。友だちいないだろ。」
セミ「ミーンミンミンミンミン!!(和訳:いねーよ!だいたい、セミ同士で群れてるところとか見たことあるか?セミ同士で映画見てたり、飲み行ったりしてるところみたことあるか?そういうことするのって人間だけなんだよ!)」
僕「言われてみれば…ってか、お前やけに人の事情詳しいな。まだ生まれて2日とかそこらでしょ?」
セミ「ミーンミンミンミンミン、ミンミンミンミン…(和訳:前世が人だったんだ。それなりに詳しいぞ。人はいいよな。考えることができる。楽しんだり、喜んだり、傷ついたり。その時々で感情を揺れ動かして誰かと想いを共有したり、時にはぶつかったり。幸せな生き物だよな。人間として生まれてきた今を、現世を、大切にしろよ!)」
僕「お前…そうだったのか。セミってさ、楽しいの?ずっと鳴いてるだけじゃん。」
セミ「ミーン、ミンミンミンミン!!(和訳:んー、そうだな。"命"については人時代より考えるようになった。ってかさ、お前「楽しいの?」っていや分かるんだけどさー、なんて言うかさー、デリカシーなく無い?wow wow)」
ガラガラガラガラ
セミ「ミーン、ミンミンミンミン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(和訳:わっ!おまっ、急に網戸開けんなよ!ビビるわ!!ごめん!ごめんて!)」
僕が網戸を開けた瞬間、そう言わんばかりにセミはどこかへ飛んでいってしまった。
夏が、僕に1匹の友だちを与えてくれた。
サプライズと中盤の負荷
そんなセミが鳴く季節、8月恒例のリミテッドユニで臨んだ世界最高ファンタスティックフットボールクラブ川崎フロンターレのスタメンは
GK ソンリョン DF ノボリ 谷口 ジェジエウ ジオゴ MF 碧 大島 脇坂 FW三笘 悠 ダミアン
俺たちのジオゴがまさかこのタイミングで初スタメン。ルヴァンではなく、リーグでのお披露目となった。
今年のリミユニ、とてもカッコいい。
大きな声では絶対に言えないが、我が軍のユニフォームはシャツ青黒比率5:5〜3:7、パンツ黒ベース、ソックス黒ベースだったらいかなる事があっても心をひとつにし、互いに助け合い、 明るく幸せなユニフォームであることをここに誓いたい。
個人的に水色ガン推しより黒ベースの方が好みである。
おっと、2017年のユニフォームは水色ガン推しだが初優勝の思い出補正が入っているのでとても好みだ。
結局、良いシーズンを送れたらその年のユニフォームは好きになる。人間の性。
前半5分、いきなり試合が動く。
ダミアン→悠→脇坂とショートパスを繋ぐと三笘がダイレクトショット。
足の角度と入り方的に狙いはファーっぽかったが、見事ニアをぶち抜き先制。結果が全て。
ゴール後には舌を出してそのイケメンぶりを発揮していた。
これは余談であるが、筆者も高校の頃写真では必ず舌をペコちゃんみたいに出していた。カッコいいと思っていた。今思えばゾッとするほどの勘違いである。
舌を出していいのはイケメンだけ。
引き続き肝に銘じて行きたいと思う。
開始5分で得点を奪えたが、我が軍と大分の繋ぎ合戦の構図は変わらない。
大分はGKも含めたビルドアップから我が軍右SBの裏で勝負をしたいようなボール運びであったが、そこは今日初先発のジオゴマテウスが突破を許さない。
9分のシーンに代表されるように、マテウスは攻撃時は内側に入ったり外側を回ったりと、変幻自在な攻撃センスを披露。
「何故、これほどまでに質の高い選手が今までベンチ外だったのか。。。」
と、筆者を困惑させたが、彼の加入発表は新体制発表会の中継内だったことを思い出し、シンプルにサプライズが好きな人なんだろうと感じる次第であった。
11分、ビルドアップからジェジエウが縦パスを供給すると、ジオゴの外側を突然のオーバーラップ。
縦パスを受けた悠のところでボールをロストしたことにより、ジェジエウはエウシーニョを彷彿とさせる全力帰陣を披露。
サイドバックの外側センターバックが回るという発想。
筆者の「センターバック」の概念がぶっ壊れた瞬間であった。
更に23分、大分のビルドアップを我が軍の左サイドに誘導。
三笘がボールホルダーの左側を切るように寄せたことで、相手の選択肢は縦or斜めのみとなった。
誘導されるように大分が1レーン中、斜めにボールを入れたところに碧がグッと寄せに行く。
碧に寄せられたことより、斜めでボールを受けた選手も「サイド」にもう一度出すしか選択肢が無くなった。
こうなってしまえばもう「ここにボールを出します」と事前申告しているようなものだ。
ノボリのところで攻守が入れ替わると、相手のバックパスを拾ったダミアンが落ち着いてゴール。
追加点を獲得した。
何だがよく分からんが楽しそうでなにより。
ダミアンと愉快な仲間たち。
30分以降もGKからのビルドアップという狙いを変えない大分。
我が軍は最終ラインの回しに対して大島が執拗なほど深追い。
更に大島が深追いをした出先をアンカーの碧が飛び出してチャレンジに行くという突貫守備を披露。
3トップを敷いているのに中盤の選手が最終ラインに対してガンガンボールを奪いに行くという、ある種"アグレッシブ"な守備。
何かぱっと見は様になっているが、本来は前線の3枚が誘導をし、共有した「取りどころ」に中盤の選手が顔を出してボールを奪うのが理想。
現状は「ここで取るぞ!」という狙いが特に無いため、とりあえずボールホルダーが目に入ったら寄せておこうと言った具合。
中盤3枚の選手が飛び出すので、もちろん出た後ろのスペースはポッカリ空いた状態である。
さて、お馴染み「やる気を感じられない図」のお時間。
現在の我が軍の守備はこんな感じ。ボールホルダーに対して正面からFWが寄せに行き、左右のどちらかにボールが散らばると言った具合。
では、下の「更にやる気を感じられない図」を見てほしい。
例えば最終ラインでボールを保持した際にFWが正面ではなく相手の左側から寄せれば、図の上側、我が軍の左サイドにボールを誘導することが出来る。
そうすれば、図で表している赤い部分は実質"消す"ことが出来るわけである。
赤い部分に相手がパスを出すためには、左からやってきた我が軍のFWをかわす必要があり、この自陣ゴール前では流石のムーディー勝山ですら寄せてくるDFを受け流せないであろう。
あとはボールが出てくると予測される相手左SBのところにWGの選手が寄せれば、より相手のビルドアップを制限することが出来る。
賢明な読者の皆様はお分かりであろう。そう。上述した「ボールの取りどころ」は現場だとSBが指定されることが多いのである。
(ちなみに、去年は我が軍の右SBはほとんどのチームから取りどころとしてご指名をいただいていた。)
このようにして"ボールを取りに行くときの立ち位置"を少し変えるだけで我が軍の前線の守備はガラッと変わるだけの伸びしろを持っている。
(ここは早急に連動を落とし込んだほうがいいのでは…とも表現できる。)
前半はこのまま2-0で終了。勝敗の行方は後半に持ち越された。
目指すべきスタイル
後半、ギアを入れるようにして我が軍がまず攻撃を畳み掛ける。
コーナーから悠が2連発でシュートを撃つも、ゴールは捉えきれず。
大分は前半同様ブレずにビルドアップから攻撃の構築を狙っていく。
前半同様、ここで狙いをもって徹底したかったのだが51分のように我が軍のブロックを徐々に掻い潜られるシーンも増えてきた。
53分、前線でビルドアップを突いた悠がゴール前に入り込み、脇坂へパスもシュートまでは持ち込めず。
54分、大分がサイドにボールを出してチャンスを演出も、ここはジェジエウが高速で飛び出してチャレンジ。
この潰しには実況の下田さんも思わず「早めにジェジエウ」と表現。
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川崎坂という坂は横浜市に本当にあるらしい。何故横浜にあるのかは知らん。
この坂を歩けば川崎にたどり着くとか、そんな感じの由来であろうか。
再び試合に話を戻す。
62分、自陣でボールを奪うと守田から大きな展開。
一気に三笘が裏を取って決定機へ。
アウトにかけたクロスは相手DFに当たってゴールとはならなかったものの、今季開幕当初狙っていたような形からチャンスを作り出した。
66分、細かいパス回しから三笘→大島で最終ラインの裏を取る。大島のオシャレヒールを受けたのは更に後ろのアンカー碧。
惜しく碧のシュートはゴールとはならなかったがこれも細かいパス回し+大きな展開でチャンスクリエイト。
決まっていれば年間最優秀ゴール賞確実と言ったゴールではあったが、イメージの共有と目指す方向は間違っていないと筆者は感じた。
結局試合は2-0で我が軍が勝利。破竹のリーグ戦8連勝を飾った。
試合を振り返って
やったーーーーー!!!!!!!世界最高!!!!!!ファンタスティック!!!!!!スーパーファンタスティック!!!!!!!!!!!!スーパーかっけぇ!!!!!神!!!!マじ神!!!!!!!!川崎フロンターレすげぇぇぇぇええええええええええええええ!!!!!!
…と、手放しで喜びたいところではあるが、試合内容を見るに色々不安が残っているのも事実。
我が軍が今季目指していたスタイル、上積みを狙っていたものは「4-3-3での縦に速いサッカー」だったのだが、開幕戦以降の中断期間明け、負け無しでここまで来ているサッカーはその概念とは少しズレているのも事実。
事実、今節は意図的なのか定かでは無いが、昨季同様の4-2-3-1のような形で進んでいる時間帯も見受けられた。
わかりやすく例えるならば「オムレツ」を目指して料理をしていたら「スクランブルエッグ」になってしまったが、まぁこれはこれで美味しいので良いかといった感じである。
守田が入って三笘にパスを送ったような、縦に速い攻撃のアドオンを狙っていくシーンを今後増やしていけるか。
そのチャレンジが出来るかどうかが"来季"の結果に直結してくると僕は思っている。
今季は交代枠5枠という特殊レギュレーション。
中盤にクオリティの高い選手が揃っている我が軍は、一番負荷のかかる4-3-3の真ん中3枚を常にフレッシュな選手を起用しながら戦うことが出来る。
来季、交代枠が3枠に戻った時に同じようなゲームプランで試合を運ぶことは現実味に欠ける。
ある種、フロンターレがJ1全18チームの中で1番"交代枠5"の恩恵を受けていると僕は思っている。
だからこそ、今後求められていくことはこれまで通り勝ち続けながら、交代枠5枚の変則レギュレーションの中で"本当にやりたい形"から逃げずにトライしていくことなのではなかろうか。
勝ち続ける中でこんな思いを抱ける幸福感を覚えつつ家に着くと、家の前で一匹のセミが仰向けになって一生を終えていた。
「あれ、あのセミはもしかして今朝の…」
セミは地上に出てから約1〜2週間でその生命を終えると言われている。
鳴き続けるセミはオスのセミであり、その鳴き声に惹かれたメスのセミと後尾をし、メスのセミが産卵を終えるとセミはその一生を終えるようにプログラムされているらしい。
仰向けになった目の前のセミは、精一杯生き続け、その命を全うした誇らしいセミだ。同じ"生命"を持つ者として目の前のセミを僕は友だちとして誇らしく思った。
「やっぱりお前か。よく頑張ったね。」
心の中でそうセミに声をかけ、土の中に埋めてあげようとセミを拾ったその瞬間だった。
…!!!ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミン!!!!!!!!!(羽バチバチバチ!!!!!!)
…!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!てめぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!!!(手のひらブルブルブルブルブルブルブルブル!!!!!)
僕と友だちの夏はまだ終わらない。
おまけ
試合中、ピッチに入ってきたセミをそっとピッチ外に逃すソンリョン。
僕の友だちが失礼いたしました。
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