第4回:『ゲームジャンル』 音ゲーとリズムゲーの違いについて

 現代のゲームセンターにある筐体といえば、大別するとプライズゲーム(いわゆるクレーンゲーム)・メダルゲーム系と、体感型ゲーム・音楽ゲームに分けられるだろう。家庭用ゲーム機の性能が向上し続けているので、ゲームセンターでしか体験できないものが生き残った結果だ。その中でも、より家庭用に近い後者、中でも音ゲーを中心について語ろうと思う。


1.音楽ゲームとは

 はじめに、音楽ゲームとは何かを確認しておく。画面外からマーク、いわゆるノーツと呼ばれるものが流れてきて、BGMに特定のタイミングでボタンを押す。現在は音ゲーも多様化しているのでボタンを押す以外のアクションも多いのだが、ともかくこの記事では「ノーツを拾うもの」を音ゲーの定義としたい。

 音ゲーの先駆けは、おそらくPSで発売された「パラッパラッパー」だろう。当時はそういうジャンルがなかったので荒削りではあるが、音楽に合わせて画面上部のノーツと同じボタンを押すという基礎は確立している。その後、似た性質を持った「ビブリボン」が登場する。レーンの存在やビブリの位置などがパラッパより今の音ゲーに近いが、ノーツを障害物に置き換えているので、こちらは後のリズムゲームの源流だろう。
 そしてゲーセンでは「ビートマニア」がブレイクしたのを切っ掛けにして、「ダンスダンスレボリューション」「ポップンミュージック」「太鼓の達人」…とさまざまな客層、遊び方にアプローチした独自路線を歩み続けている。

2.リズムゲームという小ジャンルの誕生

 しかしアーケードゲームの性か、難易度のインフレが進み、「音楽にノッて遊ぶゲーム」から「ノーツを暗記して正確に捌くゲーム」に変貌してしまった。これ自体に善し悪しはなく仕方がないことなのだが、ここで本来の「音楽にノる楽しさ」を再提唱した人物がいた。その人物とは「つんく♂」であり、彼と任天堂が創り出したのが「リズム天国」である。
 決まったタイミングで決まった操作をするという点では従来の音ゲーと同じなのだが、ノーツをキャラクターに置き換えることで取っ付きやすさや雰囲気・世界観を高めた、いかにも任天堂らしい作品である。

 これ以降、「音楽ゲームというジャンルの中でも、ノーツがあまり目立たないもの」を指して「リズムゲーム」と呼ぶようになったように感じる。

3.曲の性質の違い

 小ジャンルなので当たり前といえば当たり前だが、音ゲーとリズムゲーは本質的にはあまり変わらない。区別する要素は音楽の性質と難易度、そして先に少し述べた世界観の演出方法だろう。いずれも、カギとなるのはやはりノーツの有無である。

 ノーツが全てである音ゲーは、基本的にどんな音楽でも作ることができる。元がどんな曲であれ、音ゲーが曲の方に合わせられるからだ。著作権の切れたクラシックから最新のポップス、全く別のゲームの曲と、本当に幅広い。ゲームシステム上の発展を目指しづらいので、どれだけ人気の曲を大量に用意できるかが勝負になっている部分はある。

 一方リズムゲーは、ノーツという視覚記号以外の情報を拠り所にするため、ビートやインパクトの強い曲調になりやすい。曲の方をゲームに合わせてもらわなくてはならないのだ。ビートやリズムを刻む操作がメインになるので、「リズムゲーム」という表現はなかなかに的を射ていると言えよう。

4.難易度の差

 音ゲーはノーツを弄るだけで難易度がコロッと変わってしまう。同じ曲で難易度が複数ある、いわゆる譜面で難易度を調整できるのだ。それに対してリズムゲーは、基本的に1曲に対して1難易度だ。難易度を上げようとすると、BGMをそのままスピードアップさせるか、アレンジとして別の曲を用意するしかない。
 良くも悪くもノーツ次第な音ゲーは、難易度のバリエーションを広げやすいが、その分匙加減が難しい。一定間隔で刻むリズムゲーはハードルは低いものの操作が単調でヌルいものになりやすい。
 大まかには音ゲーはコア向け、リズムゲーはカジュアル向けになりやすい傾向にあるだろう。

5.演出のアプローチ方面

 音ゲーにはノーツが必須なので、それに付随するオブジェクト(スコア、ゲージ、レーンなど)も含めて、どうしても画面がごちゃつく。スキンなどで見た目を変えることは可能だが、オブジェクト自体を全て消すのは難しく、音ゲーの多くが音ゲー然としたHUD表示になってしまう。
 リズムゲーは基本的にどのような画面表示でも成立するため、演出面の自由度は高いように思う。RPGなどのミニゲームとして実装するのであれば、難易度などの観点から見てもリズムゲーの方が適している。
 ただ、音ゲーが演出的に劣っているかというとそうではなく、「グルーヴコースター」「初音ミク PROJECT◯◯」「アイドルマスター」など、華やかに見せる手段はいくらでもある。あくまで「どうしても似てしまう」だけであって、差別化ができないわけではないのだ。

 個人的な好みの話になるが、「DEEMO」という作品内の「SUNSET」という楽曲がとても美しいノーツの形をしているので是非一度ご覧いただきたい。

結びに

 歴史語りが長くなってしまったのはご愛嬌いただきたい。音ゲーとリズムゲーには明確な境界線が存在しないが、今回のようにしっかり定義づけしてやると、レビューを見た時などに自分の好きな作品に出会いやすくなるかもしれない。

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