「キン肉マン」騒動:Twitterのファンはもう、ゆでたまご嶋田氏が息の根を止めた

 先にひとつ結論を言っておくと、今回の「キン肉マン」ネタバレ騒動は原作者・ゆでたまご嶋田氏に全ての原因があり、結果がこれからついてくるだろうということだ。


 まず、騒動の発端となったツイートはこれである。このツイート単体での訴えはもう散々言われてるように支持されている。『自己顕示欲を満たすためやバズり狙いで漫画の画像録ってSNSにアップっていうのはまあ、正直行儀悪いし怒られたら止めなよって行為だし、ぶっちゃけ犯罪と言われても文句言えないくらいだよね』くらいのものとして受け止められていた。

問題はそこから先である。

これ。このやり取りが騒動の様相を変えたのだ。

 というのも、ネット社会が発達し『漫画』というものの形態も公式Webサイトで0時の日付が変わって即配信され、電子データの形で本屋も開かない時間のうちから読むことはもうスタンダードになってきている。
特にTwitterなんてSNSバリバリ使いこなしている層にとっては【同好の士と読んだ直後の熱量を持ち寄って、深夜SNS上で語り合う】のはもはや生活サイクルの一部に組み込まれるような楽しみであるわけだ。
その生き方を否定されたような形になるわけで、ショックを受けたのは熱心な『Web媒体勢の』ファンだ。熱心であればあるほど、このかけられた冷や水は肌に刺さる威力になってしまった。
この『3日』というラインはどうやら紙媒体の週刊プレイボーイを購入して「キン肉マン」を読んでくれるファンを意識してのこと、らしかった。最初のツイートでも、
"週プレでの紙の本をたのしみにしているんです。"
という1文がある。

 これがいけなかった。というのも、この「キン肉マン」、長年Webサイトでのみ連載の期間が続いていたが今年8月というごく最近の時期に紙媒体での漫画掲載が復活した作品である。

嶋田氏ご本人もこのようにツイートされている。
 前段として、9年の間そもそも『紙媒体勢の』ファンは……これ9年間のWeb連載分は単行本になってるのか?なってればその単行本勢しか物理的に存在しないし、単行本化していないのであれば9年の間そもそも『紙媒体勢の』ファンは存在しようがない期間があった、ということだ。
これは逆説的に、9年間の「キン肉マン」の表立ったアクティブなファン層は、0時になってWebサイトの更新を即見に行ってSNS上で感想を語り合う層ばかりに自然となっていったという事でもあるのだ。
その人達が9年の間「キン肉マン」の魅力を喧伝し続け熱量を支え続けてきたから紙媒体の掲載に返り咲いたと考えるのもまた自然な流れだろう。
「いや全然そんな事ないよ、週間プレイボーイ側がでたまご先生の作品に魅力を感じたからそうしたんだよ、ファンの反応は一切関係無いよ」という発言をきっぱりしたのであればこの点に限っては間違いということになるので引っ込めるが、ほぼほぼそうではないはずだ。

 ファンがショックを受けているのは、この9年はゆでたまご嶋田氏にとっては紙媒体に戻るための一時的な腰掛け、悪く言えば踏み台であり不本意な期間であったかのように見えたからで、Webの熱心なファン層は「紙雑誌に載せて貰えなかった頃は我慢してやってたけど、もう迷惑だから紙媒体のファンに配慮して大人しくしてわきまえてね」と、もう用済みだと言わんばかりに突き放されたような心地になったから、その落差に痛み苦しんでいるからなのである。

この公式サイトで発表された声明においても、

公開されると同時に、ネット上には感想を述べあうという必要性以上に作品内容がわかってしまう文章や画像を含んだものがたくさん見受けられ、とても悲しくなりました。

……とある。
重ねて言うがネタバレスクショを止めろという言説の時点では支持されていた。それを感想・文章の範囲にまで広げて「悲しい」と述べた上で、「公開されると同時に」の文言でファストに熱量を保って語りたいファン勢を刺し、「紙媒体に配慮して譲れ、3日は我慢して欲しい」と紙媒体掲載に返り咲いてすぐのタイミングで、Web勢のアクティブファン層全体というところにまで「悲しい」のお気持ちの対象を拡大させたのが良くなかったのではないか?
……というのがまず第一の問題だったのかな、というのが私個人の見解である。


 これだけでも結構「ファン可哀想だな……」という気分になってお通夜かというような暗い雰囲気が漂うが、まだ終わらない。

はい。
この発言が意味するところはわかるし気持ちは理解できるが、正直これが嫌で完全排除したいと言うのならば、Twitterのトレンドに入るくらいの盛り上がりそのものの否定と同義である事を嶋田氏はよくよく理解した方がいい。

 世にコンテンツが溢れに溢れ、なのにヒトの時間は昔から今に至るまで1日24時間なのは変わっていない。興味を持っても今楽しんでいるコンテンツで精一杯なところをそれでもなんとか……と増やしたいならば、コンテンツに費やすリソースを少なくして浅くするしか解決策は無いのである。
 本当にもう悲しいかな今はそういう時代である。上辺だけ撫でてインスタントにコンテンツを消費する消費者に対して嫌な気持ちになる事自体は「心中お察し申し上げます」と言いたくはなる。なるが、バズり・ネットミームパワーワード・トレンドといったネット上の盛り上がりはその「たった5分で消費」する者たちが「たった5分で消費した後拡散する」から成り立っている面もある事に考えが及んでいるとは言いがたいツイートだったのが良くなかった。「レオパルドン」がトレンドに入った事を喜んでいなければまだ、態度が一貫していると言えたのだが。

 このツイートに関して「ここで批判しているのはファンでもないただ『消費』している奴に対してなんだからファンが傷つくのはお門違い、被害妄想だ」という意見もあるが、違うのだ。
何故ならその"たった5分で消費"する者たちは何処から消費対象を知るのか?を考えたら―――熱心なファンの、応援する気持ちで拡散した行為で知ったルートだってあるに決まっているからだ。
だから個人的にはこの発言の時点でまあまあ問題だと思っている。ファンが良かれと思って、広く人々に「キン肉マン」はまだ続いていると知って欲しくて盛り上げてトレンド入りさせて、Twitter上の人々も「へーまだ描いてるんだ」とうっすらとした興味が湧いていたものが、"たった5分で消費され"るのは嫌だ、浅い奴らは要らないと門前払いで塩を撒かれた様を見たもんだからファンからしたら「自分達の行いは貢献どころか迷惑行為だったんだ……!」とショックを受けておかしくないのだから。

 なので、騒動後初の更新となった9月14日の回において「キン肉マン」関連のトレンドがただ【第321話】とだけ載ったのも、むべなるかなというものである。
SNSという、不特定多数の人間の発言を見たり見られたりするような場において、何がしかの存在を言及して宣伝し拡散するという行為はもはやインスタントに『消費』する層の人間を避けては通れない。
ゆでたまご嶋田氏の「悲しい」にファンが最大限配慮するのであれば一切口を噤むか、「読みました!面白かった!」程度の内容に触れない当り障り無く人を惹きつけない感想に留めるようにするより他に無いのである。
「キン肉マン」のファンは原作者を大切にする暖かいファンなのがよく解る動きである。嶋田氏もそのファンの心遣いをありたがいと感謝しているだろう。その気持ちに応えより完璧に"たった5分で消費"する輩をシャットアウトするために、公式の宣伝ツイートも一切廃するようお願いするのが良いだろう。もちろん、自身の宣伝ツイートなどもってのほかだ。
"たった5分で消費"する嶋田氏にとって「悲しい」思いをさせる人間は公式という一番表面上で取得できる情報にも簡単に寄ってくるからだ。今すぐ今までの宣伝ツイートを全て消去してアカウントに鍵をかけて『消費』する人間の目に触れないようにすればかなり改善できることでしょう!嶋田氏の思い通りの反応だけ貰うのはSNSというものの構造上不可能です!!理想を叶えたいならオススメの対処法ですよ!!!


……とまあ、ここまでの話だけでも「キン肉マン」の感想はもはや内容にわずかでも触れるのがはばかられるものになったのだが、見事に静かになった原因はこれだけではない。むしろこれからの話が致命的に「もう何も言えんなこれ」とファンを黙らせる事態になったと言っても過言ではない。

  公式でもなんでもない、ただの1アカウントによる自治取り締まり宣言が出てきた上に、島田氏がそのアカウントのツイートに対し『いいね』をつけるという肯定的な反応を示した。

これが最も最も最も最もやってはいけないマズいやらかしであり、これにより「キン肉マン」のファン全てが【ファンであること】そのものにリスクを背負わされる事となったのだ。嶋田氏の行いによってだ。

これより前の段階で物議をかもし問題になった「で、これどこからがネタバレになっちゃうの?」というラインも固まらない嶋田氏の言動の中にあって、更にただの1個人の胸先三寸で何処へかはわからないが何処かへ『通報』されかねない、とんでもない私刑行為を嶋田氏が容認してしまった形になったのを嶋田氏は理解していないだろう。
これがまかり通るならSNS上における「キン肉マン」ファンはすなわち死である。
私刑のお墨付きがついた作品なんて"たった5分で消費"どころではない、「作者が許した、取り締まりの名の下に発言を抑制させてもいい作品」という恰好の玩具に集まって、5分どころか『秒単位で消費』し良心も痛まず適当にファンでもファンでなくても攻撃する愉快犯が出ておかしくない可能性をこの一発で発生させたのだ。
ほんの少し本誌の内容に言及した感想を言おうものなら、

「今ネタバレしましたね!!!!ゆでたまご先生は止めろって言ったのに!!!!!あなたはゆでたまご先生の敵です!!!!!!通報しました!!!!」

と縁もゆかりも無い他人に因縁をつけられるリスクを、この騒動に対して危惧している人は心配している。このリスクを避けた結果が『第321話』だけトレンド入りした理由のひとつと考えていいだろう。「キン肉マン」以外の作品であれば起こらないのが当たり前のリスクが起こるのだからたまったものではない。
「キン肉マン」に対してそこそこの愛着で接していたそこそこのファンは「いちいちリスク管理を考えなきゃいけない作品より、もっと安全で面白い作品はいっぱいあるんだからそっちに行くわ」と簡単に流れるし、そのリスクがあってもなお感想は言いたい熱心なファンはひとつひとつのツイートを「大丈夫かな?」と慎重にならなければいつ誰から攻撃されるかわからない状況になった。なったのである。きっぱりとなったと言えるほどの事であるのを直視せねばならないのだ。

 そして私刑・取り締まり・通報を考え無しに歓迎するのは歓迎する作者及び編集部にも累が及ぶのを理解できているのだろうか?
『通報』するぞと息巻いている自治・私刑アカウントはどこに『通報』するのか。当然なんらかの公式へアクセスし「ご注進」するだろうよということだ。

「あのアカウントがこんなこと言ってましたよ!!ネタバレしましたよ!!」
「これはネタバレじゃないんですか!?法的措置に訴えなくていいんですか!?」
「これくらいの感想はセーフですよね!!判断してください!!」

……こういった発言がお構いなしに公式になだれ込んで来ても文句が言えないような事をしているんである。私刑取り締まりを拒絶しないというのは、こういった行為でファンを傷つけ、コンテンツ提供側の時間と手間を取らせてコンテンツひとつ疲弊させ潰すのが楽しくてしょうがない愉快犯に大義名分を与える悪手なのである。


 というところまで書いていたのが2020年9月15日の時点のことだったわけだが、書きながらこの「キン肉マンネタバレ通報」氏のアカウントも追っていたらどうもこちらの想像していた人物と違っていたようなのだ。

このやり取りでもなんとなく察せられるように、ゆでたまご嶋田氏が今のSNSをわからないのと同じように、少なくともこの「キン肉マンネタバレ通報」氏もネットでの言動ひとつで界隈がどうなっちゃうかをわからないでファンとして義憤に駆られてやった節があったようだ。
この点に限っては、その可能性を考慮せずに愉快犯か全肯定過激派かの2択という偏見の目で見ていたのは否定できない。
わからないがわからないなりに「ネタバレに配慮するとはなんだろう」と考えているツイートも見受けられ、それは理解している側からしたら拙くてイライラもする発言もあるものの、自分にも非があるのでは?と省みることができているだけまだ希望はあるな、と思っていたんである。

というか嶋田氏のためにと取り締まりを出しゃばりとはいえかって出てネタバレ抑制に協力しようとしていたのに、当の嶋田氏にブロックされたという事実もあったのでそれだけでも普通にちょっと可哀想である。
やってしまった事はしょうがないとしてこれからわかってもらえれば―――

なんで??????????


私刑取り締まりを拒絶しないというのは、こういった行為でファンを傷つけ、コンテンツ提供側の時間と手間を取らせてコンテンツひとつ疲弊させ潰すのが楽しくてしょうがない愉快犯に大義名分を与える悪手なのである。(2回目)

『いいね』どころか『Twitterフォロー』というのはもう、縁を繋ぎたい意思表示に他ならないわけで、「ネタバレを通報します!」というアカウントを承認していると取られてもおかしくない行為なのはさすがにわかってもらえるだろう。


 いやなんで……?本当になんで……?ホットな話題を扱う場合書いてる最中に事態が動くってあるけど、こんな「そんなことある?」って転がり方するの……?「キン肉マン」のファンってよく今まで作者と作品についてこれてたな……などと困惑しながら情報を追っていたのだが、今までのこの長い文章ってそんなに意味無かったな、とおじゃんになるような情報が出て来た。


 薄々、薄々気付いてはいました。正直。
あれだけ節々に紙媒体を大事にしたいという気持ちを滲ませていたのだから、逆を言えばそういう事ではあったがそれでも嶋田氏のファンに対する恩義、義理というものはさすがに無いということはないだろうと善性を信じてこれまでの文章は書いていたのだ。

そんなもの無かった。
嶋田氏にとってTwitterで活動する「キン肉マン」読者は"たった5分で消費"する層もネタバレに気を付けてなんとか感想を出そうと試みた層も自分のイエスマンとしてついてきてくれた層も全て等しく【大事にする価値など無い相手】として見ていたとすれば発言の辻褄が合うものだったのが、可視化された発言と言えないだろうか?
嶋田氏にとってWeb連載の9年間の間ついてきたファンというのは、不義理という気にもなっていない程度の勝手に盛り上がっていたうるさい人間どもに過ぎなかったということだったのではないだろうか?どう考えても好意的であったとは解釈しがたい。

 この発言を受けて当初の予定したタイトルも変えた。間違いなく『Twitterの』ファン層を嶋田氏は尊重する態度を取らなかったのだ。捨てたと言ってもいい。

であればもうこの話は土台から論じる意味も無くなった。Twitterを主としてSNSを楽しむ「キン肉マン」読者はどのような想いであってももう今後のベターな振る舞いは変わらない共通したものになる。
2度と作品の名前など出さず内容にも触れず、Twitter上からは「キン肉マン」の存在などなかったことにするのが嶋田氏のためになる、ということだ。
"Twitterは便所の落書き"
嶋田氏がこう言った事実があるのだから、「キン肉マン」関係の公式Twitterアカウントも嶋田氏のTwitterアカウントも早急に削除して存在していた痕跡を一切合切無くすべきだろう。"便所の落書き"といつまでも同レベルに落ちていては「キン肉マン」の品位が下がると嶋田氏の期限がいつ悪くなるとも限らないのだから。
週刊プレイボーイは発行部数17万5千部らしい(※ウィキペディアより)ので、それだけの人数の読者がいれば十分ということなのだろう。有象無象は要らない、増えるなという嶋田氏のお達しなのだから、【作者の言うことは絶対】なのは前提として当たり前なのだから、もうそうした方が全方位みんなのため、である。


 私は「キン肉マン」のファンではない。今回の話は完全な外野の立場で騒動を見ていた。その立場からきっぱりと言いたい。

「キン肉マン」のファンは【可哀想】だ。

少し上にリンクを貼ったブログの執筆者はファンの立場でこの騒動に対する想いを語っていたが、それを拝見して本当に本当に、ファンとして想いを寄せて応援した結果がこれというのは【可哀想】と言うしかない。それくらいひどいと思った。
だから外野の立場でも「ファンがショックを受けたり傷ついたりファンをやめようと思ったその感情はわかるよ」という気持ちを、きちんと自分の発言に責任を持つという覚悟で表に出したかった。
言う事をコロコロ変えたり、言った事を消して誤魔化そうとする気持ちを抱かず、行わない覚悟でこの文章に臨んだ。

 それが、騒動を受けて悲しみ傷ついた「キン肉マン」ファンに対する手向けであり、敬意であり、"分かり合うための戦い"だと思ったからだ。
どうか傷ついたファンの人達が、Twitter上で想いを寄せ感想を言い合って盛り上がることで作者が喜んでくれるような、報われる作品とファンコミュニティを別の作品で見つけ、築き上げられますように。
祈りを込めて、願ってやまない。

えっサポートしていただけるんですか?ほんとぉ?いいの? いただいたサポートはものを書くための燃料として何かしらの物体になります。多分。