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堺市親族連続殺人事件公判傍聴記・2022年8月22日(被告人:足立朱美)

2022年8月22日

大阪地裁14刑事部

201号法廷

事件番号:平成30年(わ)第2447号等

罪名:殺人、名誉棄損、器物損壊

被告人:足立朱美

裁判長:坂口裕俊

書記官:小砂見渉


77枚の傍聴券に、150人以上の希望者が並んだ。締め切り時間は9時30分だったが、9時10分には既に40数人が並んでいた。私は外れてしまったが、親切な方に譲っていただいた。どうもありがとうございます。

記者席は14席指定されており、満席となる。

法廷画家も3~4人在廷しており、一般席に座っている人もいた。

遺族席らしき席が、検察側の最前列左端に二席設けられる。丸坊主の中年男性と、3~40代ぐらいに見える男性が座る。

弁護人は、眼鏡をかけた青年、眼鏡をかけた太り気味の中年男性、眼鏡をかけたオールバックの中年男性の三人。開廷前、書類に目を通していた。

検察官は、痩せた浅黒い3~40代ぐらいの男性と、髪の短い2~30代の男性。

裁判長は、髪の後退した初老の男性。裁判官は、痩せた短髪の40代ぐらいの男性と、痩せた前髪の長い青年。

法曹三者が在廷した状態で、開廷前、2分間の撮影が行われた。

法廷内は満席に近く、冷房が効いていても暑苦しく、息苦しかった。撮影前は若干の空席があったが、撮影後にさらに傍聴人が入廷し、空席は1,2席となる。

撮影が終わり、被告人が入廷する。被告人は、大人しそうに見える中年女性だった。さばさばした性格と報道されていたが、4年の未決期間が性格に影響を与えたのか、あるいは法廷に立って緊張しているのか。それとも、自らの運命に悲嘆を感じているのか。写真に比べればややふっくらしていたが、それでも痩せていた。日に当たらなかったこともあってか、色白である。前髪を後ろになでつけ、長い髪を後ろで束ねている。その髪には、やや白いものが混じっている。白い長袖のワイシャツに、黒い長ズボンという出で立ちだ。白いマスクが顔の大半を覆っている。入廷し、弁護人に礼をしていた。被告席に座ってからは、何か書類を書いていた。

続いて、裁判員が入廷する。裁判員は、眼鏡をかけた中年女性、がっしりした30代の男性、中年女性二人、眼鏡をかけた青年、髪の短い30代ぐらいの女性の6名である。

こうして役者はすべて出そろい、足立朱美の初公判は、10時より開廷した。


裁判長『開廷する。証言台の椅子に座って』

被告人は、下を向いて立ち、証言台の椅子に座る。職員によって、マイクが口の近くに移動される。

裁判長『名前は』

被告人『足立朱美です』

か細い、小さな声だった。

裁判長『生年月日は』

被告人『昭和49年5月25日です』

裁判長『仕事は』

被告人『無職です』

裁判長『本籍、住所、この通り』

被告人『はい』

裁判長『これから、事件の審理を行う。まず最初に、検察官が起訴状を朗読します』


<平成30年10月7日付公訴事実>

被告人は、父親であるA当時67歳を殺害しようと企て、平成30年1月19日午後10時43分ごろから同月20日午前2時5分ごろまでの間に、同人方住宅において同人に対し、殺意をもってその身体に多量のインスリン製剤を注射して投与し、同人を低血糖状態に陥らせたものの、同人が治療を受けて回復したため、同月25日午後0時44分頃から26日午前10時6分頃までの間に、同所において、同人に対し殺意をもってその身体に多量のインスリン製剤を注射して投与し、同人を低栄養脳症による遷延性意識障害に陥らせ、前記転移性肺癌等の適切な治療を妨げるとともに、適切な栄養の摂取を困難にして衰弱させ、誤嚥性肺炎を惹起させるなどして、同年6月28日、同市内の病院において、同人を全身状態の悪化により死亡させて殺害したものである。

罪名及び罰条・殺人、刑法199条


<平成30年7月11日付公訴事実>

被告人は、弟であるB当時40歳を殺害しようと企て、平成30年3月27日、午後2時56分から午後6時41分頃までの間に、殺意をもって睡眠薬等を服用させて睡眠状態に陥らせた上、同住宅の二階トイレ内において、練炭を燃焼させて発生させた一酸化炭素を同人に吸引させ、よってその頃同所において、同人を一酸化炭素中毒により死亡させて殺害したものである。

罪名及び罰条・殺人、刑法199条


<平成30年8月2日付公訴事実>

被告人は

第一、名誉を棄損しようと企て、平成30年4月27日、午前2時10分ごろからまでの間、堺市南区内のD宅その周辺において、フリーライターによる取材結果の報告の形式で、Bが死亡した当時の、別紙1記載の文言を、車両のワイパーに挟むなどし、公然と事実を適示し、名誉を棄損した。

第二、D方自宅前の路上において、同人方住宅、塗料を吹き付けて汚損し、電動自転車時価5万円に塗料を吹き付けて汚損した。

第三、Bが死亡、公然と事実を適示し、D、Eの名誉を棄損したものである。


検察官『別紙を示します』

検察官は、被告人に、別紙1、別紙2と示した。また、別表を示す。「大丈夫ですかね」と被告人に確認していた。

裁判長『審理に先立ち、注意します。貴方には黙秘権があります。この裁判で、ずっと黙っていても良い。いろいろ質問されることがありますが、質問に答えることも、個別的に答えることもできる。証言は有利不利を問わず全て証拠になる。解りましたか?検察官が読み上げた三つの起訴状に、違いは』

被告人『私には、特に何も申し上げることはございません』

裁判長『黙秘するという事ですか』

被告人『申し上げることはございません』

より一層小さい声だった。

裁判長『申し上げることはございませんと?弁護人は?』

弁護人『すべて争います』

裁判長『もう少し詳しく』

弁護人『すべて争います』

裁判長『被告人、元の席に戻って』

被告人は、被告席へと戻る。裁判員に、冒頭陳述らしき書類が配られる。そして、検察官の冒頭陳述が始まった。

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