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2022年、買ってよかった本とモノ

12月になると、「あー『買ってよかった』の季節だなあ」と地味に思いながら過ごす。書こう書こうと思いながらも、人の買ってよかったを参考にポチりまくっていると「あれ、こんなに買い物してたらまだ『買ってよかった』書けねーじゃん」とか考えだしいつの間にか大晦日。2022年に買ったものだもの、12月31日まで待たなきゃわからないでしょうとうそぶきつつ、元旦になってしまいました。あけまして、おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

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歴史的名著の新訳

「歴史は現在と過去のあいだの対話である」という有名な句を含む名著の新訳。大昔に読んだきりだったが、今回の新訳を読んで新鮮な驚きがあった。冗談を飛ばした部分には(笑)を文末に置いたり、多数の補註で可能な限りの文脈の復元を試みるなど口語を活かした手厚い訳と編集で、「話したままでまるで編集されていない」という悪い意味ではなく、「講演録のライブ感を保った勢いある編集」という、いい意味で書き起こしのような味わいがある。カー先生、こんなに皮肉っぽく、ウィットに富んだ口調だったのか。音楽も文学も美術も、一定期間ごとに「古典の洗い直し」という現象が起こるが、これは復刻モノ、今年のベストではないかと思う。

ソーシャル離れの気分

Twitterを始めたのは2007年だった。もう15年になる。「世界中の誰とでも瞬時に繋がれる」というのは、インターネットが夢見た空間だ。良い意味でも悪い意味でもその夢がかたちになったのがTwitterであり、今や、無名の個人のおやつから、国家のプロパガンダまでをひとつのプラットフォームで飲み込む、とんでもない存在になった。22年末現在、「そこでしか会えない人たち」がいるので、自分がやめることはないが、かつてのように積極的に使うことも今のままではないだろう。……と自分語りはどうでもよくて……ずっとオンラインを活動の場にしてきた宇野常寛が、ソーシャルメディアから距離を置いて描いたのがこの本だ。単なるネット論ではなく、あの賛否渦巻く人物、「アラビアのロレンス」にいまを読み解くカギを求める点が鮮やかだ。

不人気の英傑が「プラットフォーム」だった論

幕末モノは歴史ドラマの定番。維新三傑に数えられながら、大久保利通は、情に厚い盟友・西郷隆盛を死に追いやる、「冷徹な合理主義者」、いわばヒールとして描かれるのが定番だ。そうしたイメージを覆すのが本書だ。この本によれば、大久保自身が切れ者であったわけではないようだ。ではなんであったか。「知を結ぶ」指導者だったというのである。大久保自身が論争の場そのものであり、プラットフォームとしてアジェンダをセッティングし、様々な対立軸を作りそしてそれを乗り越えていく。価値観が激変する世の中で、下級とはいえ武士出身の大久保がなぜ、廃藩置県や廃刀令といった時代を越える政策を実現できたのか。毀誉褒貶の激しい英雄に新たな角度から光を当てる一冊だった。

ネトフリの一気見のように一気読みすべき一冊

2016年に亡くなった博覧強記の才人、ウンベルト・エーコの死後に刊行された講演録。中世の版画から、20世紀の映画やウォーホルまでを素材に、美醜や陰謀、パラドックスとアフォリズム、聖なるものの表象といった西洋文明を形作ってきた概念について、文明論の角度から語り尽くす。豊富な図表を読み解き、大きな流れについて語ったかと思えば、また具体的な表象の話へと戻り自在に行き来する。エーコの本を読んだ時に誰もが感じる絶望、「こんなこと、どんなふうに考えたらかけるのだろう?」を存分に味わえる。スキマ時間に電子書籍で読んでも、よく飲み込めないまま終わるだろう。紙の本でじっくり時間をかけるべき作品。

史料による実証主義「以外」の歴史の捉え方

現代歴史学の祖、ランケは19世紀、史料批判を重ね歴史的な事実に迫る実証歴史学を提唱した。一方で、実証歴史学は政治史や事件史に偏っており、それは歴史の一側面にしかすぎないという、20世紀以降のランケを乗り越える試みもある。この本は、ランケ「以降」から現在に至る、「歴史の捉え方」の多様性やその潮流をざっくり捉えるのに最適な導入書になっている。経済史を重視するマルクス主義、国家を超えた繋がりや、庶民の習慣や心性に迫るアナール派、個々人の日記に歴史を求めるミクロヒストリア。「思考法」と書名にあるが、これはいわゆるビジネス書的な意味での「思考法」を教えてくれる本ではない。先人が模索した、歴史を把握する際の道具箱、切り口集といった方が適当なように思う。……と枝葉の話ばかりしたが、この本、実は創作やストーリーに関わる仕事をしている人が読むといいのではないかと思っている。

「ナラティブ」至上主義に投じる一石

そしてそんなことを言っていながら、「ストーリーこそがヤバいよ」と警鐘を鳴らすのがこの本。「物語の目的は感情である」という内容を著者はさまざまなデータを引きながら繰り返す。簡単に因果などわからない複雑系な世界を、対立、復讐、勧善懲悪といった紋切り型のストーリーに落とし込み、単純化することで、人々の感情に訴えかける。そこに、エビデンスの力は及ばない。誰もがスマホひとつでストーリーを発信できる今、無関係の人間などいない。やや話があちこちして散漫な印象はあるけれども、「ナラティブ最強」と言われる今こそ、押さえておきたい一冊。

え?そうだったの?と思う一冊

ダーウィンの進化論は20世紀以降の社会をある意味で、方向づけた重要な著作だ。しかしみなさんがダーウィニズムとして知っている「適者生存」は、もはや今は学術的には支持されていませんよ……という衝撃的な本。では、どういうものなのか。短い文章で綴るにはちょっと私の能力では厳しい…のでぜひ本書にあたってほしい。

意外と知らない中世史

ヨーロッパの中世というと、「宗教が支配し、個人の自由がなかった時代」「暗黒時代」というイメージじゃないだろうか。その後に来る「人間中心時代」としてのルネサンスや啓蒙主義の時代と対比して捉えられがち。では、当時の庶民の生活は実際どうだっただろうかというと……やっぱり庶民は大変そう、という生活史についてもちゃんと章を設けて説明されている。アリエスの『<子供>の誕生』(1960)に詳しいが、中世においては、新生児の多くが病気によって成人前に死亡してしまうこともあって、いわゆる現代における、愛すべき、守るべき家族としての「子供」という概念は乏しかったという。親子家族の情愛は古今東西の普遍……ではないということについても触れられている。

電子書籍派が推す「絶対、紙で読むべき本」

2019年に話題になった本なのでいまさらと言われればそうなのだがこれは本当にエンタメとして面白かった。1を読んですぐ2を買った。3も出たらすぐ買うだろう。私は書籍に関して、電子版があれば電子版を最初に買い、よほどよければ紙版を買う。しかし、このシリーズだけは紙で買って欲しい。なぜなら、紙で読む体験を想定して物語が作られているからだ。濡らしてしまうのを覚悟で、紙書籍のこれで長風呂するのが楽しくてしょうがなかった。ページの行ったり戻ったりがしやすい紙だからこそのミステリ。

落ち込んだ時に良い本

ヴォネガットの講演録。卒業する学生へ贈る言葉なのだが、ヴォネガット的なクスリとさせるようなひねりがあるかというと、実はそんなにない。わりに普通に若者を励ましている(もちろん、何もないわけではない。読めばわかるけど)。

自らの体験を静かに振り返りつつも卒業式にありがちな熱い言葉を排し、自分がなしえなかった大学卒業を迎えた若者たちに贈る言葉はしみじみとした味わいがある。講演録という設定も中身も「甘め」な作品に、「これで駄目なら」と表題につけるひねりかた、バランス感が絶妙で最高なのだがたぶんこれはヴォネガットファンにしか伝わらない気がする。

どうしても気に入らないのが、「ヴォネガットは目と心にしみる。」「公園のような講演なのだ」という糸井重里によるうますぎてやさしすぎる帯文。これのせいでプロダクト全体がヴォネガットらしからぬ甘いぼやけた印象になり、いかにも贈り物によさそうな本になってしまっている。そのほうが多くの人に届くのだと言われるとこれもまた、ヴォネガット的に「そういうものか」と思わざるを得ないのだけど。

短歌界の「ロックスター」が放つ決定版

2000年ごろだったか。学生の頃、たまに顔を出していたポエトリー・リーディング(詩歌朗読会)において圧倒的な存在感を誇っていたのが、歌人の枡野浩一だ。ハイカルチャーな歌壇や文壇とは距離を置き、作詞やエッセイで活躍する「ロックスター」であると同時に、Twitterでも短歌を発表し、一般人へ作品の投稿を促し添削しと口語短歌の世界を圧倒的に身近に、そして豊かにした第一人者である。『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』(いずれも1997年)、『ますの。』(1999年)など絶版になっていた歌集などから作品をまとめた、これまでの活動の集大成ともいうべき決定版が本書だ。私は昔から大好きで全部持っているので感覚がぼやけてしまっているのは差し引くとしても、枡野がすごいのは魔法が使えるからだ。言葉を尽くしてしまったら圧倒的に平凡でありがちな感情を、言葉を削って選び抜くことで、どこにでもある塩が結晶になり、ダイアモンドのように見える。しかしそのダイアモンドは、誰にでもどこにでもある「しょっぱい」感情からできている。だから、たった31文字が、読み手おのおのの心の中で「映画化」される。上手いのではなく強いのだ、表現が。描かれる男とその心はいつも弱かったとしても。

スピードの速い現代。でも「今」が異常なだけなのかも?

この100年が異常だっただけだ、世界はこれからスローダウンする、という未来予測本。資本主義の行き過ぎを背景とした脱成長主義ではなくて、歴史をマクロで捉えて、「加速は続かないのでは?」とする点が面白い。

「今が異常なのでは?」というのは、少なくとも人口動態からははっきりしている。以下のグラフに明らかだが、紀元前1万年には400万人だった世界の人口は、1万年かけても2億弱しか増えていない。しかし1900年からの2011年までのたった111年で、人口は16.5億から70億と53億以上増えている。

だとすると、日本は「スローダウン」の先進国となるが、どうなるのだろうか。未来予測は当たらないのが定番とはいえ、この「スローダウン」の視点は知っておいて損はない……というか、単純に読み物として面白い。

https://ourworldindata.org/world-population-growth CC-BY-SA by Max Roser

私と世界を結ぶ言葉とは

現代思想の源流を、ニーチェ、マルクス、フロイトに求める手順を踏まえつつ、そこから先のポストモダン思想へと誘う入門書。力点は「そこから先」にあり、デリダ、ドゥルーズ、フーコーの哲学を「人間を自由にする」「多様性」という点から説明しているところに感銘を受けた。この点はあとがきでも筆者が強調している。

本書は、「こうでなければならない」という枠から外れていくエネルギーを自分に感じ、それゆえこの世界において孤独を感じている人たちに、それを芸術的に展開してみよう、と励ますために書かれたのでしょう。

千葉雅也. 現代思想入門 (Japanese Edition) (p. 195). Kindle Edition.

今すぐ慌てて読む本ではない。買っておいて、ふと手に取る出会い方が一番いいのではないかと思う。

ホントに「ゼロからイチ」を作ったことある???

よく、「俺、ゼロイチタイプだからさ〜〜〜。ある程度できあがっちゃうと飽きちゃうんだよね〜」という人がいる。ゼロから作るって、なんだろう。会社や事業ではなく、トースターをゼロから作ってみた、というのがこの本。めっっちゃバカで面白い。そして、これを読むと気安く「俺はゼロイチ」とか言えなくなる。クレジットカード一枚で工業製品をなんでも買ってこれる世界ってすごいんだなという当たり前を実感させてくれる一冊。

手を動かしながら学ぶタイプに

因果推論については基礎文献が近年、立て続いて邦訳されており、J.パール(2019)P.R.ローゼンバウム(2021)あたりが定番となっている。が、さらっと読んだだけではどうにも「なんとなくわかったようなわからないような」という感じだった。そこで出版されたがこれ。Rのコードを使いながら学べるのと、原著が日本語なこともあってとっつきやすい。自分の場合は、これでコードをさらってから先述の基本書に戻った時の方が100倍理解が深まった。基本的な統計の知識は必要なので注意。

テキストマイニング入門の決定版

これは、テキストマイニングに興味を持った記者にも勧めている一冊。数式などは一切不要。Windows向けテキストマイニングアプリ「KH Coder」の使用法と、各分析の意味合いをアカデミックな観点から解説したもので、卒論を書く学生から、実務に使いたいビジネスマンまで、幅広く勧められる。RやPythonはマウス操作でなんとかなるGUIアプリではなく、プログラムを打ち込まなければいけない。しかし、この本で解説される「KH Coder」はマウス操作だけなの、各分析の意味や専門用語を押さえるだけでいい。今時の記者教育の必修科目にしても良いのでは?と思う出来だ。

30gの超軽量キーボードが長文打鍵にラク

待望といっても過言ではなかった、ワイヤレス対応のRealforce。本当にこのキーボード、打ちやすいだけでなくて10年平気で使えてしまうので、3万を超える価格も気にならない。打鍵重量やキー配列など様々なバリエーションがあるのだが、私が絶対的に気に入っているのは一番、打鍵重量が軽い「30g」モデル。キーを撫でるかのような動作でサクサク入力できる。それだと誤入力も増えるのでは?と思われるだろうが、このキーボード、どこまでキーを押し込めば入力判定されるかもカスタマイズできるので、誤入力が多ければその設定を深い位置にすればいいだけ。一日、キーボードを使って入力するような仕事をする人にはぜひ試してほしい。

ミニマムなキーホルダーでありカラビナ

何気に愛用しているのがこの、NITEIZEの「Gリング式カラビナ」。普通のカラビナと違って二重にゲートがある。この二重ゲートがミソで、二重ゲートの奥にカギなど大事なものを収納しておくと、1個目のゲートを使ってカバンやヒモにくくり付けたときに、大事なものが落ちる心配がない。いや、実際問題、普通のカラビナで滅多に落ちることはない。ないのだが、「落ちる心配をしなくていい」のがとにかく楽。サイズは複数あるのでご注意ください。

こんなプロテインあるんだ! な驚き

プロテインがずっと嫌いだった。甘ったるくて、なんかミルクっぽくて。甘いものも牛乳も嫌いな自分にとっては、「どんなに身体に良くても飲みたくないもの」だったプロテインに対してのイメージがこのアクアプロテインシリーズで一変した。フツーにレモンやグレープフルーツ味のスポーツドリンクのよう。酸味でスッキリ飲める。「コスパがいいよ」とMyProteinのものも勧められたりしましたが、自分は多少高くてもウマいこっちを選ぶと思う。レモンはけっこう酸っぱい。グルフレは飲みやすい。お好みで。

なんとも言えぬ「焼酎風味」。しかしノンアル

リピ買いした購入でいえばこれが2022年一番だったと思う。実際問題、22回買ってた。ノンアルなのに、なんともいえぬ焼酎独特の風味がする。アルコールが入っていないのでいくらでも飲めてしまって逆に飲みすぎてしまうのだがそれくらい美味しい。甘くないので食事にも合います。

22回も買っていた

セルフマッサージで癒される

今年は本当にYouTubeばかり見てた。スポーツとか、料理とか、ストレッチとか。30を超えてからもう十余年。肩こり腰痛に悩まされてきたが、セルフマッサージの道具として買ったのがこれ。筒状のアイテムを、凝っている箇所にコロコロと押し付けて凝りをほぐす。激安マッサージ1時間分くらいの値段だが、毎日寝る前に首をゴリゴリしたり、ふくらはぎをゴリゴリしたりしているので、十分元はとったと思う。どのように使うかはYouTubeで「フォームローラー」と検索すればたくさん出てきます。

家焼肉がちょっと楽になる専用コンロ

もう定番グッズになっているのであまり語ることはないのだが、煙が少なくなる焼肉専用コンロ。やきまるには1と2とがあるが、違いは本体カラーと表面のコーティング。2はシルバーのような色で、表面を掃除しやすい加工がされているという。新し物好きなので2を買ってしまったが、価格差もあるのでよほどこだわりがなければ1でもよい。ちなみに、「煙が出ない」のがやきまるのウリだが、サシの入った肉を焼くとやっぱり煙は出る。「煙が少ない」というのが正しい理解で、過度な期待は禁物だ。ちなみに、煙はちょっとも出したくない派がコンロの下で焼肉するだけなら、鉄板部分だけを購入すれば万事解決。これマメな。コンロの下なら煙出てもいいじゃんとか言わないように。

実写の「本格ミステリ」で夜が更ける

私はゲームは子どもの頃以来、まるで詳しくなくて、ほとんど語る資格がない。それでもこのゲームは面白かった。いわゆる殺人ミステリなのだが、実写ドラマなので、当然のように臨場感がある。暴かれるトリックに関しては、「それはアリなのか〜〜〜」みたいなこともないことはないが、一応、本格ミステリのお作法は踏まえている。こういうのなら一年に一回くらいやってもいいなーと思えるゲームでした。

ずいぶん長くなってしまった。
2023年もよい本、よいモノに出会えますように。

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