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限りある医療資源をどう効率的に使うか(8月17日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年8月17日時点での情報を基にされています。※

2021年8月17日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健佑

吉村健佑
おはようございます。
本日のスペースは私、吉村が担当します。

新型コロナウイルス感染症に対応している医療現場がどのような状況になっているかを皆さんに共有したいと思います。

千葉県を含む1都3県、東京、神奈川、埼玉では現在、新型コロナウイルス感染症の患者さんが非常に増えています。

▼新型コロナウイルス感染症まとめ、都道府県感染者数など
https://news.yahoo.co.jp/pages/article/20200207
出典:Yahoo!ニュース

私は千葉県の病床調整本部に昨年の4月頃から1年以上関わっていますが、今はこれまでで最悪な状況、非常に厳しい状況です。どういったことが起きているかをお話しながら政府の対応などもレビューしたいと思います。

安川先生、アメリカではどのような状況でしょうか。一時期より落ち着いているとか?

安川康介
いえ、最近ものすごいペースで感染者が増えています。
8つの州くらいで、特にワクチン接種率の低い州で感染が爆発的に増えている状況です。

吉村健佑
病床調整で困ったり、入院先もなかなかないという状況なんでしょうか。

安川康介
フロリダ州やテキサス州の一部で病床が厳しいことになっています。

吉村健佑
ありがとうございます。

では千葉県はどういう状況なのかを説明します。
地域ごとでどのように評価したらよいかも考えてみます。

例えば千葉県は人口が約620万人で、新規陽性者は8月6日に1,000名を超え1,057名、8月14日が2,272名、8月15日が1,374名、そして昨日8月16日が1,609名です。

第3波と言われる1月15日前後の新規陽性者は500~600人くらいでしたが、その倍以上、3倍近くになっています。

千葉県が緊急状況フェーズ4(最も緊急な状況)をどのように定めていたかというと、1日の新規陽性者が700名を超えたらなんですね。昨日で約1,600名ですから、その2倍以上の新規陽性者が発生していることになります。

つまり緊急事態の上限値より上がってしまって、病床のシフトがうまくできない状況まで追い込まれています。

そこで何が起こるかを想像していただきたいんですが、入院調整が困難になります。
現在、ご自宅で待機されている方が新規陽性者の8~9割いらっしゃいまして、その方々が調子が悪くなると救急車を呼びます。

救急車で病院に受け入れていただければよいのですが、受け入れ病院がない場合には、救急車ないし病院から保健所に連絡をして保健所管区内で調整をし、そこでも調整がつかないと県庁の病床調整本部に連絡をして県内のどこかの管区に空きベッドがないかという調整を行います。

新規陽性者が増えすぎるとこの救急車、病院、保健所、県庁というチェーンが完全に破綻してしまうんですね。具体的にどういうことが起こるかというと……。例えば昨日一晩で最後の砦となる県庁に16件の連絡がありました。このうち夜のうちで入院先を決めることができたのは何件くらいだったと思いますか?

黑川先生いかがでしょうか?

黑川友哉
16件のうちですか?
私はいま大学病院にいまして昨日も当直だったんですが、そこで入院患者さんを診ていて、ベッドがもう満床なんですよね。私は耳鼻咽喉科でもともと COVID-19 病棟ではないんですが、COVID-19 病棟を作るために他科の患者さんをその病棟に入れるなどの工夫をしています。全国の大学病院で同じように対応していると思うんですが、それでもやはり満床で100%を超えているような状況です。

16件も調整依頼があったとしても、調整できたのは0件かもしれないなと思ってるんですがいかがでしょうか。

吉村健佑
おお、さすがの現場感覚、その通りでですね。

実は0ではないんですが、何とか調整がついたのは4件と聞きました。
ということは12件は、入院要請があり最後の砦の県庁まで連絡がきても、結局入院できずに在宅などにいらっしゃるわけです。

どこにいらっしゃるかというと、実はこの瞬間も救急車で待機している件数が2件あると聞いています。昨晩を例にとると、調整依頼16件のうち4件は入院できても12件は入院調整がつかず、そのうち2件は救急車を呼んでいるものの行き先がないという状況が起こっているわけです。

その間ずっと、救急隊は患者さんに救急車の酸素などを使いながら、受け入れ先の検索をしています。これは相当なことで、現場の病床調整が回っておらず、十分稼働していないことがわかります。

黑川先生が仰った、病床がいっぱいだということについて詳しくみていきます。
まず今日現在、千葉県内全体で何人が療養しているかを考えてみます。

毎日新規陽性者が1,000~1,600人ほど発生しています。COVID-19 の療養期間を10日~10日弱だと考えると、1日の新規陽性者数を単純に10倍すれば全療養者数になります。

実際に現時点で10,300名が療養中で、そのうち入院している方が1,022名、つまり10%が入院しています。(※当時の数字)

残りの9割は在宅や、県が準備したホテル療養施設で療養していることになります。
この方たちも重症化することがあり、具体的には酸素投与が必要な中等症Ⅱになります。そうすると入院という手続きを取ろうとするわけですが、病床では既に1,022名が療養中で空きは無い状況です。

そして入院している方1,022名の中でも、重症の方の割合が増えています。
例えば8月8日のデータですと、全入院者数のちょうど50%が酸素投与をされており、50%が酸素不要となっています。酸素不要な方の中には、重症化リスクがある方や非常に高齢でもともと体力がなく自宅では難しいという方もいらっしゃいます。

約1か月前の7月5日データでは、全入院者数のうち25%しか酸素投与していなかったんですね。それがいま半分まできているということで、入院している方の重症者の割合がすごく上がっています。

さらに言うと、ワクチンを接種している高齢者は重症者が増えておらず、横ばいか若干減ってきています。重症者が増えているのは圧倒的に40代から50代、もっと若い30代、その年齢の方がどっと増えて、重症者としてベッドを埋めている状況です。

ワクチン接種が間に合っていない世代の重症者が増えて、病床逼迫している状況がずっと続いているわけですね。

その重症の内容は、
・ECMOを使っている方が11名程度
・人工呼吸器を使っている方が83名程度
・ネーザルハイフローが126台稼働
です。

▼コロナ新療法『ネーザルハイフロー』現場の医師解説
https://news.yahoo.co.jp/articles/47247a9586c740e496e5ac9775e273e5cdfd7201
出典:Yahooニュース、テレ朝ニュース 2021/08/11

重症者1,022名のうち、これらの機器を使用している220人がいわゆる重症で、呼吸器の状態が非常に悪く、治療に医療資源がかかる状況にあります。

いかがでしょうか。
病床逼迫についてコメントのある方、いらっしゃいますか。

安川康介
以前、患者さんが増えると中等症の方は入院できなくなるという話がメディアでも話題になりましたが、酸素が必要でない方が5割くらいいるんだったら、また入院している人が比較的若いんだったら、酸素投与が必要なくなった時点でどんどん退院させていかないと危ないと思います。

8月2日に厚労省から事務連絡があり、今までの退院基準を満たさなくても退院可能となっているはずなので、上手く出来ないのかなと思っています。

▼入院から自宅療養・宿泊療養への移行等について(周知)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000815737.pdf
出典:厚生労働省 2021/08/02

COVID-19患者さんを診ているインヴェスドクター先生のツイートによりますと、後方支援病院への搬送手配ができないということで、後方をもう少しうまく回していかないと、さきほどのお話のように16名のうち12名の受け入れ先が見つからず2名が救急車で待っているような状況となり、これは本当に危険で多分亡くなる方も出てきてしまいます。なんとかして病床の回転を速くしていただきたいなと思っています。

▼Twitter インヴェスドクター @Invesdoctor 2021/08/05
https://twitter.com/Invesdoctor/status/1423272556895752195?s=20

吉村健佑
仰る通りですね。
少し補足します。
厚生労働省が8月5日に中等症の考え方を追記しました。

▼現下の感染拡大を踏まえた患者療養の考え方について(要請)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000817011.pdf
出典:厚生労働省 2021/08/03

▼新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関について(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000818370.pdf
出典:厚生労働省 2021/08/06

▼新型コロナウイルス感染症 診療の手引き第5.2版(最新)
https://www.mhlw.go.jp/content/000815065.pdf
出典:厚生労働省 2021/07/30

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表1 新型コロナウイルス感染症 重症度分類 (出典:診療の手引き第5.2版)

まず入院について。
現在分類されている重症、中等症Ⅱ、中等症Ⅰ、軽症のうち、
・重症と中等症Ⅱでは入院を必要とする
・中等症Ⅰより軽い場合は必ずしも入院を必要としない
となっています。

最終的には医師の判断ではありますが、8月3日と5日の事務連絡の中でこの点に触れており、自治体は柔軟に判断してよいと菅総理も言っています。

それに対して全国知事会などが8月6日に、地域の裁量で決めるんだよということで、国に念押しする形でコメントしています。国が一律に基準を発表することに対して警戒心を示したり、地域の事情にあった言い方にしてほしいといったような国と自治体のやりとりが発生しています。

そういった上層部の政策的なやり取りがある一方で、現場では50%に酸素投与されているのに対し残りの50%は酸素不要であり、念のためないしは重症化した時の備えとして入院している場合もあるので、それをどんどん退院させていく、在宅療養や高齢者施設などに切り替えていくことも必要であろうとなっているわけです。

さきほど安川先生が紹介してくださったインヴェスドクター先生の仰る通り、PCR検査陽性でまだ療養期間が浅い方だと、受け取り側にかなりの抵抗がある場合もあります。

PCR検査陽性者を搬送するには当然、PPE(Personal Protective Equipment、個人防護具)などの医療資源が必要となり、ゾーニングなどの問題もありますし、入院したばかりなのにもう帰ってくるのかとなると、受け入れる施設側の抵抗があったり、家族が在宅の場合に容易に帰ってきてくださいと受け入れられず、重症化した時にどうするのかという問いも出てくるわけです。その調整が非常に困難を極めています。

医療資源の有効活用の観点ではこのような調整を丁寧に行って進めていくという考えがある一方で、現場的には1人1人説得して合意形成するのが非常に困難な状況にあって、それをどのように進めるのかという問題になっています。

神奈川県などの関係者は、こういったことを個別に調整するのはほぼ不可能ではないかと仰っていたり、平時の合意形成のような丁寧な手続きはもはや取れないのではないかと仰る方もいらっしゃいます。

確かに、災害時と同じようにトリアージしていく、そして一度入院しても申し訳ないんですがこのベッドは重症や中等症Ⅱ以上の方のためのものということで何とかして動いていただく、ということを現場でやっていかなければならない非常に厳しい状況だと思っています。

安川先生、あまり答えになってないんですが、いかがでしょうか。

安川康介
申し訳ないといった気持ちの問題ではなく、医学的に必要な患者さんに資源を配分していくことにしないと、本当に危険な状況だと思います。

峰宗太郎
安川先生、吉村先生の解説を聞いて、僕も非常に納得しているところです。
医療資源を重症化した方に重点的に充てるということを効率的に行えなければ、結局人の命を救えないことになるので、ぜひやってほしいところです。

もう1つ、感染症診療の原則の1つは、検査して隔離なんですよね。
この隔離の機能を病院が担っています。有症状者ということはウイルスの排出があることはおそらくほぼ確実で、変異ウイルスデルタは(従来のウイルスと比較して)ウイルスの排出期間が長くなっている可能性が結構あると言われています。

そうなると、重症化していない患者さんを自宅や施設に帰すのではなく、後方でホテルなどの借り上げをもっと行って1箇所に患者さんを集めることが重要だと思うんですよね。

そこまで手が回らないと思いますが、それをやらないと結局、民間の中で新たなクラスターを産むマッチポンプになってしまって、医療が民間に感染者を送り返したせいで重症者が増えて医療に戻ってくることもありうることです。

特に訪問診療みたいになると医療資源をすごく浪費しますので、酸素ステーションを作るよりは、酸素を一括供給できるホテルなどを病院の後方として設置しなければならない気がします。

吉村健佑
峰先生の仰る通り、デルタと呼ばれる変異ウイルスのまん延が千葉県でも深刻で、7月26日~8月1日の観察によると76.5%がデルタであったという報告もあります。

つまり8割がデルタに置き換わっており、ウイルスの排出期間が長い、ないしは感染が強いという状況です。

また後方の施設として、ホテルや体育館・公民館などの公的施設を借り上げて、べッドを並べて療養するための場所を作るというアイディアは、当然、全国の都道府県で出ています。

実際に私も昨年、千葉県の中でそういった施設設置について検討する機会がありました。そこで結構強いのは、従来の法律の規制なんですね。

新型インフルエンザ特別措置法という法律がありまして、それに基づいてさまざまな法的な緩和はされているものの、人をそこに集めて管理をするということについては、医師法、医療法、消防法などの様々な法律の規制を受けていて、それらを1個1個突破するのが非常に大変という現状でした。

実際は、特別緊急事態であるのでさまざまな法的規制の一部緩和もされているものの、例えば食品衛生法などを含めた厚生労働省所管外の法律も存在していて、それを突破するには自治体の首長のリーダーシップが求められています。

いわゆる官僚・公務員だけではそういった規制をうまく突破できなかったり、整理しきれなくて現実的にそれが実施できないという、若干「シン・ゴジラ」めいた状況なんです。

そういう法律の規制の中で、なんとか後方の施設を作って患者さんを安全にお預かりするにはどうしたらよいのか、その基準をどの程度設けたらよいのか、どの程度の高さで設けたらよいのかは、現場でもかなり悩ましい現状です。

私も現場で見ていると、緊急事態といいながら平時の法律規制が広くかかっていて、身動きがなかなか取れないのが、自治体や行政のつらいところです。

法律を緩和しろといっても、それは立法でないとできないので、仮にその法律を緩和せずにそこには目をつぶるという判断した場合、それもそれで後で行政側の責任が大きく問われることになって、その辺がもう身動きが取れないんですよね。
いかがでしょうか。

内田舞
まずはいま日本で頑張ってくださっているお医者さま、ナース、医療者の皆様、本当にありがとうございます。

吉村先生の現状の話を聞いて、私が思ったことが何点かあります。
まずはステップダウンの種類を増やさなければならないということです。

アメリカでは、酸素が必要な人は酸素がもらえるような病棟にいき、もっと緊急性の高い治療が必要な方はその病棟にいき、状況が改善したら、1日も経たないうちにその下のステップダウンした病棟に戻ってくることもあるんですよね。例えば6時間だけそちらに行って、状態が変わったからこちらに戻ってきて、そのリソースはもっと必要な人にいくというシステムです。

自宅か、普通病棟か、ICUかだけではなく、病院の中でもいろんな必要段階があり、その患者さんが必要なものを届けるようなシステムがあるという感じですね。

もう1つはスタッフに関して、日本では、医師や看護師が多くの責任を請負わされすぎている状況なのかなと感じています。吉村先生が、入院したばかりなのに退院することを説得しなければならないのが大変だと仰っていましたが、確かに患者さんの状態がよくない中で退院してくださいと説得するのが医者の責任だったら本当に大変だろうなと思います。

ちなみにアメリカで、昨年の春頃の私が住んでいるニューイングランド地方でひどい状況だった時は、病院の中のスタッフ総動員でやれることをやってくださいということでした。

感染症内科の先生たちが感染症にフォーカスしてる間に、私や吉村先生のような精神科医が家族への説明を担ったり、その患者さんへの病状の説明を担ったりと、いろんな役割分担がされて、状況をよくするために各スタッフが得意なことをやるという体制がとられたんですね。

それをどうやって日本で実現させるかといわれると、解決策が私には浮かばないんですが、そんな例を紹介させていただけたらと思いました。

吉村健佑
スタッフ総動員で自分の出来る事をやるというのは、まさに仰る通りだと思います。

例えば千葉県内だと約290の病院がありますが必ずしも COVID-19 の入院に関わっているわけではありません。実際に国や分科会は、これまで COVID-19 非対応で日常診療を行うと決めていた医療機関にも COVID-19 対策に関与して欲しいと提言しています。

ですので、施設ごと、そして個人のスキルを活かした対策が総動員でできればいいのかなと思いますし、日常診療をある程度止めてでもその方向にシフトしていくことが、いまのような災害の状況では必要なのかなとも思っています。

残り5分ほどですが、現場の状況を2点ほど付け加えます。

最近気になるのが薬剤の不足です。
COVIDー19 の治療、特に人工呼吸器以上の方には、プロポフォール、ケタラール、ミダゾラムなどの鎮静剤やヘパリンなどが必要なんですね。その在庫が地域によっては不足しているという話があります。

第1波、第2波では PPE が不足しましたが、現在の第5波では重症者に対して常に必要とされる薬剤の供給が底をつきそう、地域によってはつき始めるのではないかということで、これまた非常に頭の痛い話です。そうなると重症者は、資源がないから治療を継続できないということになり、非常に深刻です。

もう1つ、自治体で指揮を執っている方々と話すと、もうそろそろ自衛隊出動も本格的に考えなければならないのではないかという意見が聞かれます。

さきほどの話のように、後方支援ベッド施設が様々な法的規制や人的資源の問題で設置できず、しかし前方の病院ではどんどん詰まっていて重症者への資源供給が足りない状況であれば、これはもう災害です。ある意味で災害出動のような感じで、自衛隊の登場についての整理を始める必要があるのではないかということです。

かなり厳しい流行地域の自治体の対策本部の、端っこのスペースを借りてこびスペをお送りしていますが、その中で一応できることを昨日の夜から考えています。

皆さんにお伝えできるメッセージは、新規陽性者が増えていますので感染予防しましょう、COVID-19 以外の怪我や病気にも気をつけましょう、今は医療にかからないような生活を心がけましょう、ということです。

当然ワクチン接種もです。非常に重要な身を守る手段として順番が来たらワクチン接種を、以前にも増して必要性があるのではないかと思っています。

そしてもし仮に COVID-19 にかかったとしても、冷静に医療を使ってほしいということです。自分や家族の命を大切にしたい気持ちはよく分かるんですが、念のために病院に入れてほしい、何とかここにおいてほしい、というのは、他の方の順番もあるなど、いまの状況だと難しい場合もあります。

いかがでしょうか。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
僕たちのように普段日本で国民皆保険で医療を受けていると、医療資源が有限であることを自覚しにくいところがあると思います。限られた医療リソース、例えば COVID-19 用のベッドは、少し軽症になったら明け渡さないといけないよ、ということをみんなで共有する必要があるのかなと思います。現在のように医療崩壊寸前ということをマスコミに報道していただくよりは、そもそも医療資源は有限なんだよということをみんなで共有する段階なのかなと思います。

吉村健佑
前田先生ありがとうございます。

安川康介
1点質問があります。
自衛隊が入るというのは、具体的にどのように入ってどのように役に立つのでしょうか。

また、僕の病院でも患者さんが急増していた去年、この地域の感染者数がこれ以上増えたらコンベンションセンターに仮の病院を設置する計画があって、実際にベッドが運ばれたんですね。そこで僕も働こうかなとは思っていたんですが、そこの基準として考えられたのが、酸素が必要だけれども鼻カニューレで2リットルなど少量の場合にそちらに移動してもらい退院するまでそこにいていただく、ということでした。

日本では幸い65歳以上の方はかなりワクチンを打っていて、入院されている方も40~50代が中心になると思うので、新型コロナウイルス感染症のマネージメントしてはそんなに複雑ではない方が多いと思います。

ただ、酸素がとにかく何日も何日も必要になる方がたくさんいらっしゃいます。
ある程度安定したらずっと酸素だけ必要な方も多く、一旦悪くなってよくなってきたけれども酸素が必要だから時間がかかっているという方は、最悪そういう施設でも医学的には診れると思います。

法的にたくさん制限があるのはわかるんですが、症状が悪化しているのに酸素がないから亡くなるのは本当に悔しいので、なんとか対処して1人でも多くの方が生き延びられたらいいなと思います。

吉村健佑
自衛隊に対して期待する行動はいくつかあると思うんですが、自己完結できる組織として非常に貴重な国全体の余力であり、それを医療に投入して欲しいと思っています。

さきほどの後方ベッドの役割ないしは酸素投与ができる中等症を担当できる病院や医療施設を設置して、そこに自衛隊の余力を投入すれば、例えば冒頭で話した搬送先の見つからない救急車については自衛隊が設置した医療機関で一旦診ていただくこともできるのかなと思っています。

今千葉県も臨時の医療施設を設置しまして、現在20~30名の方が入院されているような状況で稼動はしていますが、自治体の設置ですのでマンパワーの収集の上限ができてしまうんですよね。仮に自立した組織が幕張地区にあるとすれば、千葉県全体としては非常によいのかなと思っています。

どのような形で自衛隊に出動要請が出るか出せるかなどは国全体の話ですが、そろそろ自治体だけで対応できる状況ではなくなってきていると思っています。

まだ先が見えず、昨日1日で過去最高の1,609名の新規陽性者を出した千葉県です。同じような状況が埼玉、神奈川、そして東京でも起こっているように思います。

しかもまだピークアウトしてないんですよね。
何とか早くピークを終えて収まってほしいんですが、いまの新規陽性者数は1週間~10日前くらいのアクティビティが反映されているわけで、まだ2~3週間はかかりそうです。

関係者もなんとか潰れずに生き延びなきゃいけませんし、1人でも多くの感染者が生き延びれるようにと考えて、現場でなんとかやっていきたいと思っています。

私はもう1つ、成田空港検疫所という現場も持っていて、明日朝10時から24時間検疫に行きます。

先週の NHKニュースで知って呆れてしまったんですが。
日本政府の方針によっていままで入国者数を全国で1日2,000人程度に抑えていたんですが、日本の検疫に余裕が出てきたという政府の認識があるようで、入国者数を1日3,500人まで引き上げるという政府方針が出されたようです。

これは現場の状況を全く反映してない政策で、今後は検疫の現場もご報告できればよいかなと思っています。

若干緊迫した回になりましたが、何かコメントがあればどうぞ。

内田舞
吉村先生のお話しを聞いて、やりたいことはあるし、こうしたらもう少し扱える患者さんの数が増えるかもしれないけれども、行政的に、法的にこれはできないというハードルがあることがわかりました。

患者さんを救うために行政的には前例がないことでも、医師が「患者さんを救うためにはこれしかない」と判断をした時に、その後どのような対応が待ってるんだろうと考えていました。罰則があるんだろうか、どんなことがあるんだろうかと考えているんですが、今の状況ではその場その場での瞬時の判断が必要な時期だと思うので、そこに行政的・法的なハードルがあったとしても、その瞬時の判断をした人を罰しないような対応ができればよいなと思います。

そういった前例が2つ3つくらいで出てきたら、もう少しお医者さんたちもやりやすくなるんのではないかと思います。

やはり行政側、法律側という観点からこの状況をわかっていただいた上で、個人の判断をリスペクトする対応をしていただきたいなと思いました。

吉村健佑
非常に大事な指摘だと思います。

実際にそれが出来るのは自治体のトップ、首長だと思います。
部下の判断について、最後は俺が面倒見る、責任を取ると仰っている知事がいらっしゃる都道府県は動きが早いんですよね。例えば大阪府、神奈川県などのこれまでの動きを見ても、それなりの批判はあるにせよ、これでいこうと示すような、トップの責任感ある態度は大きなメッセージだと思います。

千葉県は熊谷知事を擁しており着任されて数ヶ月で大変だと思いますが、トップの決断を尊重し、いたずらに揚げ足をとって責めないという態度も重要だと思っています。

9時8分となりました。
本日は千葉県のコロナウイルス感染症対策本部の端っこの一角からお送りしましたが、感染流行地域では実際にどういったことが起こっているかを皆さんと共有しました。ディスカッションも非常に勉強になりました。ありがとうございました。

ということで仕事に戻りたいと思います。

日本のみなさん、今日は大雨の地域もあり、千葉県は少々曇っていますが、まだ先はあります。なんとかめげずに前に進んでいきたいと思っていますので、皆さんも一緒に頑張っていきましょう。ご静聴ありがとうございました。

内田舞
ありがとうございました。明日は私です。皆さんよろしくお願いします。

吉村健佑
私も聞きます。
じゃあねーばいばい👋

内田舞
See You💖

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