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医療従事者へのワクチン接種を義務化すべきか?(5月28日こびナビTwitter spacesまとめ)

おことわり

いつもこびナビnote文字おこし投稿を読んでくださりありがとうございます。新型コロナウイルス感染症、ワクチンに関する情報は日々アップデートされています。今後、よりタイムリーな話題を文字おこしでも提供するため、本日の投稿より日程の順番が前後いたします。
更新日が近い投稿にもかかわらず一部古い情報が含まれている場合もございますが、Spacesが行われた当時の情報ですのでご了承ください。
                              編集担当


5月28日(金)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:岡田玲緒奈

岡田玲緒奈
峰先生、何かありますか?

峰宗太郎
僕ね、いま移動中なんですよ!

岡田玲緒奈
そうなんですね。

峰宗太郎
ちょっと特別に、弾丸旅行でですね、みんなでカブトガニの産卵を見に行くことになりまして。

池田早希
いいなあ〜!

峰宗太郎
すごいんですよ!
デラウェアってとこの海岸にカブトガニが大挙して押し寄せるのを、野郎6人で見に行こうという企画で。いま、これを聞きながら、野郎6人、医者5人でゲラゲラ笑いながら、カブトガニを見に向かっております!

岡田玲緒奈
なんだか全体的に、夏休み感がありますね〜(笑)

峰宗太郎
そうなんです。こちらメモリアルデーというのが月曜日にありまして、ちょっとした祝日週間なんですね。だから、こういう感じでやらせていただいております。

岡田玲緒奈
そうですよね。それに関連して、ワクチンを打っていたら何かを解禁だとか、そういうニュースも見かけました。
じゃあ、始めちゃいましょうかね。ということで……

(リバーブばりばりで)
. .。゚+。*゚+.*.。 こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニューーース♪ +..。*゚+..。゚
……いま入りました?

峰宗太郎
かっこいい!かっこいい!
すごい! 何のエフェクトですか?

岡田玲緒奈
(笑)
これ、普通に、リバーブです。
※ リバーブ(Reverb)…残響音を足して広がりのある音にするエフェクトのこと

峰宗太郎
かっこいい〜!


【「ワクチン受けた?」と聞いていいかどうか問題】

岡田玲緒奈
ということで、今日はニューヨーク・タイムズから1つ選んでおります。

Is It OK to Ask Health Care Providers if They’re Vaccinated?
https://www.nytimes.com/2021/05/25/magazine/health-care-vaccine-ethics.html
(The New York Times 2021/05/25)

ヘルスケアプロバイダーに「ワクチンを受けた?」と確認してもいいのだろうか、という記事です。医療従事者というとちょっとアレかと思ったので、ヘルスケアプロバイダーのまま説明していきます。ニューヨークタイムズの THE ETHICIST という、読者からの手紙に対して倫理的な観点でコメントするコーナーの記事です。

冒頭で、匿名さんからのお手紙として、カイロプラクティックに行き、術者の人に「ワクチンを打ちましたか?」と聞いたら、打ってないと言われた。数週間後また行った時にもう1回聞いたら、打つ気はない、あんなの効果がない、「自分も家族も健康だからあんなもの要らないんだ」と言われてしまった、と。
そこの他のスタッフにも聞いたら、その人も「打つ気はありません。個人の選択の自由です」。
こういう論理展開って世界共通なんだな、と感慨深く読みましたけれども。

それで、次の日にですね……この人は、家から電話を掛けて「ワクチンを受けない人から施術を受けるのは怖いから、もう行かない」という電話を入れたわけです。そうすると、後で今度は向こうから電話が掛かってきて「これはプライバシーの問題であって、他の人に自分がワクチンを受けないと決めていることを言わないでくれ」とそのカイロプラクターに言われたようです。
このハガキ職人さんは「パンデミック下のヘルスケアプロバイダーが、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨に反して、ワクチン接種を拒否して、患者を危険にさらす可能性がある上に、しかもそれを隠すっていうのは倫理に反するんじゃないかな?」。それに「このことを秘密にしてくれと頼まれたっていうのは、この人の裏表というか、二枚舌の共犯にされてしまうことなんじゃないでしょうか?」というお手紙があったわけです。

まずここまでが読者の実体験の部分ですね。
ここまでで何かコメントある方いらっしゃいますか?
安川先生どうですか?


【唐突な「カブトガニの青い血」お話】

安川康介
あの〜……カブトガニの話なんですけど。

岡田玲緒奈
(笑)

安川康介
カブトガニって面白くて。
グラム陰性桿菌という、人間だと敗血症っていうのを起こすばい菌があるんですね。
そのグラム陰性桿菌にエンドトキシンという重症化させる成分があるんですけど、何10年も前に、この成分があるとカブトガニの血液が固まったりすることが分かったんです。カブトガニと Sepsis、敗血症ですね、エンドトキシンの研究がすごく進んだ、ということがありまして。
峰先生がカブトガニを見に行くということで、まずその話を思い浮かべました。

岡田玲緒奈
んふふふふ……何の話ですか(笑)
カブトガニって実は、反医療というか、そういうのにかなり親和性が高いんですよね。カブトガニの血液ですかね、青いんですよね。それを何に使うんだったかちょっと忘れちゃいましたけど、何か医療に使うんですよね?

安川康介
あ、そうです。エンドトキシンの検出だとか、そういうのに使われるんだと思います。

岡田玲緒奈
ああ、はい。

安川康介
正直言うと、今回岡田先生にピックしていただいたお話って、今後すごく重要になると思っていて、この話をするのをすごく楽しみにしてます。


【「ワクチン受けた?」問題〜医療者の実感〜】

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
この辺りの話はまさに、私たちが情報発信していても、いろいろいわれる場面もあって。まあ、そういう理屈をいう方は、とくに日本では余計に多いというところもあるのかなあと思います。

それで、これに答える人(記者さんかな?)がお手紙に答えていくわけですけど。
アメリカほどワクチン接種が進んでいると、もうワクチン接種自体が当たり前、身近なものであって、なおかつこうした論争の種でもある。
実際にアメリカではいま、1日あたりの接種数が落ちてきているといわれてますよね。最初はすごいスピードがよくて、1日400万接種まで行けたんだけど……という話は、峰先生もしばしば触れてくださってると思いますけど。

そういった問題は、日本でも今後出てくるかなと思いますが、日本ではまだそういう当たり前の存在にまではなってないですよね。まだ高齢者が急いで予約を入れて、頑張ってるみたいな話で、それ以下の年齢の人たちにとってはまだまだ縁遠いものという感じがしているかもしれません。

アメリカでは、こうした問題がかなり現実的なものとしてあるわけです。
日本ではまだまだ、SNS で一部の人たちがこんなの打つのやだ〜! みたいなことを言ったり、本当か嘘かわからないけれども「私は看護学生で(ワクチン接種を)強制される」みたいな話に、”#強制反対”とつぶやいたりするようなレベルにとどまっているわけです。

この問題を考える上ですごく重要なことがあって、日本でも、こういう主張をする人の知識が古い、ということがまず根底にある。
ワクチンが自分を守るのはもちろんのことですけれども、伝播性、つまり他の人にうつすリスクも大きく下げてくれるってことが、もう分かっているわけです。ですから、周りの人も守られるということになりますよね。

これを(回答者は)「これはマスクの話にも似ているよ」というんですね。
すでにめちゃくちゃ懐かしいんですけど、1年ちょっと前は「マスクは人にうつさないためのものだ」といわれてました。これは医師でもそう思っていたと思います。あまり検証した人がいなかったということだと思うんですけど、今回のパンデミックで研究が進んで「うつされないためにも役立つ」という証拠が揃ってきました。そこで“ユニバーサルマスク”みたいな話になっていったわけです。

なので「ワクチンは個人的な選択だ」というようなクリニシャン(カイロプラクティックの臨床家のことですけれど)は、もう明らかに間違ってると。「ワクチンを受けないことは、他人にリスクを負わせることであって、個人的な選択だけにとどまらない」と、この記者さんはハッキリと言っております。

医学的禁忌(禁忌というのは「その治療を受けちゃいけない」とか、そういう人のこといいます。)は、一昨日の安川先生の回でみっちりやりましたけれども、今まさに高熱が出ているだとか具合が悪い人とか、このワクチンの成分自体でアナフィラキシーになった人だけです、基本的に。
そういう人以外にとっては、このワクチンは、今やった方がいいよというレベルではなくて、「私たち一人ひとりが、他の人に対してお互いに責任を負う者、市民としての責務だ」とまで言っています。

そして CDC がいろいろな(対策の)緩和策を打ち出してきていて、これもニュースになってますよね。マスクをこういう場面なら外していいだとか、けっこう出て来ていますけれども、打たない選択をする人は予防策、日本風に言えば自粛でしょうかね? これを続けることを前提としています。

もちろんアメリカほど接種が進めば、Breakthrough Infection(ワクチンを接種しているにも関わらず感染すること)も、絶対数としてかなりの数が発生しています。ですから「他の人への伝播性をワクチンによって下げていない人が好き勝手に行動することは、接種した人をもリスクに晒す行為だ」と。
この視点は僕にちょっとなかったので、これは接種が進んできて、実際 Breakthrough Infection も出てきているアメリカならではの視点かな、そういうことならなるほどと思ったところです。

あとはですね、アメリカにおけるカイロプラクティックは、成り立ちとして、ワクチンを否定するような人たちと親和性が高い、とあったり、このハガキ職人さんの最初の質問に戻って、そもそも「他の人に言わないっていうのはどうやねん?」という話でしたから、「それこそ個人の自由だろう」と答えています。

ちょっとだらだら話してしまいましたが、皆さんコメントいただけますか?

安川康介
僕が新型コロナウイルスのワクチンを受けた1つの大きな動機は、やっぱり、自分が感染して、自分は軽症とか無症状で済んでも、自分が患者さんにうつしてしまうリスクがあるというのは常々自覚してるので。それを下げたいっていう思いがすごくあったんですね。

いまは新型コロナウイルスワクチンの話をしてますけれども、元々、患者さんを守る意味でCDC が医療従事者に接種を推奨しているワクチンがいくつもあるんですね。B型肝炎とかインフルエンザとか、おたふく風邪とか麻疹とか……なので医療従事者に対する新型コロナウイルスのワクチンの話は、すごくホットなトピックですね。
例えば、、イタリアでは医療従事者は新型コロナワクチンの接種が義務になったんですね。医者がワクチンを接種するのは、自分自身だけでなく「患者さんを守る」という意味もあります。

アメリカでも意見がけっこう分かれていて、議論が行われていますが、アンケート調査によると6割から7割ぐらいの医者が「今回のコロナウイルスのワクチンは mandatory(強制的な、義務的な)にした方がいいんじゃないか」というアンケートもありましたね。

普通に考えていただいて、岡田先生が言ったように、今回のワクチンは非常に効果が高い。安全性もかなり高いこともあって、医療従事者として受けない理由はほとんどないと思います。私の施設でも、研修医がけっこういるんですけれども、最初の接種が始まってから2、3週間ぐらいでもう95%以上が受けたんです。新型コロナウイルスに関する知識を持ってる医者なら、ほとんど全員が受けるワクチンだっていうふうに考えていいと思うんです。

けれども、やはり、何らかの理由で受けてない医療従事者がいるとするならば、何か不正確な情報を持ってるのか? とちょっと怪しい感じがしますよね。患者さんとしては、やはり、そういう受けてない方からうつされる可能性があるので、そういう医療従事者に診てもらいたくない、という気持ちがあるのは当然だと思います。

医者だけじゃなくて、例えば、ベビーシッターの方を雇ったりするんですけれど、そういう人を雇うサイトにいくと「私は新型コロナウイルスのワクチンを受けています」みたいなのが、自分のセールスポイントみたいに書いてあったりとか。
あとは学校ですね。子どもの学校の先生は受けていますとか、そういう感じになっています。自分の子どもはワクチンを受けている先生に見てもらいたいだとか、ワクチンを受けた方から医療などのサービスを受けたいという気持ちが生まれるのは、当然なことだと思います。

岡田玲緒奈
おっしゃる通りで、受ける方としては、もちろんそういう感情になるっていうか、当たり前かなと思います。

ご存知ない方もいらっしゃるかと思うんですけれども、医療従事者は、入職時には麻疹風疹だとかおたふく風邪などの抗体価を測って、低い人はワクチンを打ってください、と言われます。院内で打つのか、よそで打つのか決めろと。よそで打ったら接種記録を持って来いよ、と言われるんです。元々そういう環境なんです。

ただ、その場合、基本的には「自分がもらわないための」っていうことですよね。職員の安全を守るためですけども、今回のワクチンに関しては、両方の意味があるわけです。「患者さんも守る」という意味合いがありますし、やはり無症状で感染伝播性を持つという特性からしても、ちょっとこれを避けることはできないのかなというふうに思っております。

木下喬弘
これね……いま EUA(緊急使用許可)じゃないですか?

岡田玲緒奈
はいはい。

木下喬弘
本承認にならないと、職場で義務化ってできないんですね、アメリカでは。

※編集注:当初本承認でなければ義務化できないとされていましたが、医療機関を中心に緊急使用許可の時点で義務化できるという判決も出ており、今後変わってくる可能性があります。
https://www.wkyc.com/article/news/health/coronavirus/vaccine/difference-between-emergency-use-authorization-and-full-fda-approval-coronavirus-vaccines/95-f2a7a6ba-eeee-4352-b3c7-8dce70cfba67
出典:3wkyc studios 2021/5/10

あえて反対の視点を持って議論するとしたら、例えば義務化、あるいはすごく可視化して、ワクチンを受けていないと実質働けないようにするという施策を取った時に、新たに分かってくる副反応ってゼロではないわけじゃないですか。その問題をどう考えるかだと思うんですよね。

岡田玲緒奈
そうですね。

木下喬弘
まず一番重要なことは、新たに起こってくる副反応が「ゼロではないとはいえ、ごく稀だ」ということは確実だということです。かつ、そのワクチンのメリットを上回るってことはありえない。これはまぁ、完璧に言い切っていいと僕は思うし、現時点で打つ打たないで、メリットの方が下回る人って基本的にはいないと思うんですね。

なので、接種を進めること自体に対しては問題ないと思います。とはいえ、義務化された時に「義務だから」とワクチンを接種した人が心筋炎になって、その時にはまだ分かってなかったけれど後から分かってきた、みたいなことになった時に、その非常に稀な副反応を経験した人って、どうなるんですかね? 問題提起とか訴訟とかに繋がりそうな気もするんですけど。

岡田玲緒奈
これは誰に対する質問?

木下喬弘
いや〜……世の中?(笑)

岡田玲緒奈
世の中に情報提供する私たちですか?(笑)

前田陽平先生(Twitterネーム「ひまみみ先生」)
要するに……木下先生が一番言いたいのは「最終的には個人の自由というのを“なしにする”のは、そういう点で大丈夫なのか」というのが一番気になるってことですか?

木下喬弘
そういうことですね。

前田陽平先生
いまの段階では、論理的に、打ったほうがいいということについては、もう誰も異論はない。医療従事者なら、普通に考えたら、自分のためにも職業倫理上も打つほうが正しいと思うんだけど、いつも「最終的には個人の判断ですよと最後につけているけど、これを“なし”にしちゃって大丈夫か」っていうことですよね?

木下喬弘
そうですね。
まあ、医療従事者ってなんだかんだいっても、ワクチンは義務じゃないですか。

前田陽平先生
そうなんですよね。僕は岡田先生がいった意見の方が、しっくりはくるんですけど。

木下喬弘
実際、今回は義務にしていないわけで。「その差はなんだろうか?」ってことを突き詰めていくと、「リスクの不確実性だ」と思うんですよね。

前田陽平先生
ああ、なるほどね。結局そういう話っていうことになるんで。

木下喬弘
そうそう……じゃあ「どこで線引きしたらいいんや」って話になるわけです。
1つの目安として“本承認”というのがあるんですけれど、それも法的な枠組みとして決められているので、半年ぐらいかかるといわれています。いまファイザーが出しているから10月ぐらいになるはずなんですけど。それまでの間に、法律上の義務化はできないにしても、非常に透明性高く可視化することで同調圧力的なことを加えて、何か問題が起こることはないのか? っていうことですね。
いやでも、止めろって言っているわけじゃないですよ?(笑)

前田陽平先生
制度上の強制力を持たせるには、やっぱり本承認になってからの方がいい、「そのタイミングの方が無難な感じもするけど、どうや?」っていうことが言いたい?

木下喬弘
そこまで言うつもりはないんですが、1つ逆の視点で問題意識は持っておいた方がいいように思います。
正直言って、アメリカもワクチン接種を勧めるために、インセンティブとしていろいろやってるわけじゃないですか。それが後々問題視されるとしたらどういうシナリオなのかという話です。

前田陽平先生
なるほど、そうだろうな。

岡田玲緒奈
峰先生、どうぞ。

峰宗太郎
すみません、1つだけいいですか。
考慮に入れといた方がいいのはですね、「職業選択の自由とはどこまでか?」という問題なんですよ。これってどんな職業でもってわけじゃなくて、とくに資格を得るような職業って適格要件というのはあるんですよね。例えば、日本でいえば、大麻を乱用していると医者にはなれないわけです。そういうのと一緒ですよね。

仮にワクチンを本当に受けたくないという医者がいたとして、もしワクチン接種が義務化されたとしても、ワクチンを受けたくないなら、医者を辞めればいいんですよ。他の仕事にはつけるわけですから。

ただ、その職業選択の際の要件が、一般的に、憲法にも触れるようなあり方であると、やっぱり問題になってくると思うので。
ヘルスケアプロフェッショナルである以上、最低限の職業規範だとか適格要件はあってもいいのかな、と私は思うので、そこも枠に含めて議論した方がいいのかな、と思いながら聴いていました。それだけです。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
Taka先生に、かなりバランスのあるコメントをいただいて、すごく助かっております。峰先生のおっしゃることも、その通りですね。

この1年間、コロナのことがあって、さらにこういう情報発信もしていて思うのは、医療従事者、とくに医師は余計にですけれど、非常に社会的な存在ですよね。そう簡単に人のことを言ったら大変な影響がありますし、それこそ今だっていろんな社会的影響を考えて、「もうワクチンを打ったけど、飲みに行ったりはできんなあ」みたいに考えることも、こういう社会的な視点によるものかなあ、と思ったりしているのを、いま思い出しています。
池田先生、何かありますか?

池田早希
はい、参考までに……私はヒューストンにあるメディカルセンターで働いているんですけれども、そこの病院群の1つでメソジスト病院っていうのがあります。そこではコロナワクチンの接種が Required(必須)にしていて、打たないといっている看護師をクビにしたということで、いま訴えられてますね。

岡田玲緒奈
なるほど、これもまた難しい問題ですよね。
実際には2つあると思っていて、あまりこういうことを言っていいのか分かりませんけれども……いまのアメリカの状況で、ワクチン接種を受けないっていう強固な信念を持っているということは、果たして、それが単独の事象なのか? ということですね。いろんなものに対して、そういった方向性の考え方を持っているかもしれませんね……って、めちゃくちゃ奥歯に物が挟まった言い方をしているわけですけれども(苦笑)

その本人が感染するとか、患者さんに感染するかもしれないっていうリスクとはまた別に、特定の信条をお持ちの方である可能性もあるということを考えると、雇用者としては若干警戒するところもあるのかな、と思ったりしておりました。
アメリカでもまだまだそういう訴訟になるようなレベルの、って言っていいのか分かりませんけども、段階の問題なのかな、というふうに思いました。

ばりすた先生
先生、よろしいですか?

岡田玲緒奈
ああ、先生どうぞどうぞ!

ばりすた先生
いろいろと幅広い項目にわたって議論していただいて、聞いている皆さん方からすると、こびナビでスピーカーになっているむちゃくちゃ優秀な方たちが、冷静に公平に判断をして、いろいろ考えて……理性的にやってるみたいな感じで、医者がみんなそうっていうふうに思われているかもしれないですけど。
一介の、普通の僕からすると、純粋に「このワクチンを打ってすごく安心した」いうことは、何て言うんですかね……そのまま感情的な部分で、というのかな? そういう視点で見てる人もいるよ、ってことも分かってもらえるといいかなと思うんです。

コロナって本当に、患者さんに接したり、診察したり治療に携わったりっていう一挙手一投足に、むちゃくちゃ慎重になって。「これ、患者さんにうつしたらどうしよう?」みたいなことを考えながら接していたんですね。
というのも、無症状の状態で感染を伝播することが分かっていましたからね。実際に、施設の中で誰か一人でもスタッフが陽性になれば、そこから接触歴を洗い出して、どの人たちまで陽性になるかもしれないし、検査を受けなきゃいけないかもしれない、みたいな感じで。じゃあ、いったん皆お休みさせて、検査に行ってもらわなきゃ、その間の代わりのシフトはどうしよう?みたいな議論がすぐに始まるわけです。

そういうストレスフルな状況でも、僕ら医療従事者って1年間やってきたわけなんですけれども……このワクチンを打つことで、無症状感染も90%以上抑制するという効果が分かっているワクチンです。もちろん、それで100%ではないにしても、通常の感染対策を行っていればまず患者さんにうつしたりしない。あるいは、スタッフが欠けることによって、普通なら提供できたはずの医療が提供できなくなる、例えば、心臓とか脳の病気の患者さんたちを受け入れることがまるっとできなくなる、みたいな状況がかなりの確率で回避できる。
そういうことができるということに、すごく安心をしてるわけなんですよね。

だから、医療従事者っていうのは「打つ責任がある」とか、義務化という話が出てきていて、いま皆さんも議論してくださったと思うんですけれども、その背景には、働いている側とか、医療を受ける患者さんの安心に繋がってるんだよ、ということを分かってくれるといいなと思って……ちょっと補足みたいな形でお話させていただきました。お時間いただきありがとうございます。

岡田玲緒奈
どうもありがとうございます。非常に重要な点ですね。
正直、理論上ではそういうリスクがなくなって安心するだろうな、とは思っていたんですけど、実際にワクチンを打って診療するときの安心感って、想像を超えてるんですよね。僕もコロナ病棟に出入りしていますけど、もうなんか余裕だった! みたいね、そういった感情的な部分でもすごく大事かなと思います。

そして、いまお聞きしていて思ったのですが、両論併記というか、打ちたくない人も打ちたい人も半々ぐらいのようにいわれたり、なんなら SNS では打ちたくない人がすごくいっぱいいるみたいにも見えたりもするんですけど。
実際の現場では、まあ多少は同調圧力みたいなものがあるのかもしれませんが、とくにコロナを診ている病院とかになりますと、基本的にはみんな打ちたがっているというのが、これはまあエビデンスもへったくれもありませんが、個人的な感覚としてはそうですね。

たま〜に、希望調査票とかで打ちに行く日の希望を出すんですけど、それに「打ちません」としている人がいると「おぉ…」みたいになると看護師さんに聞いたことがあります。

ということで時間にもなりますので、これで皆さん言いたいことは言い終わりましたか? 大丈夫ですか?


【エンディング】

峰宗太郎
カブトガニのですね、エンドトキシンのテストなんですけど。
いまはですね、合成品が使われるようになって、採血しなくてよくなったんで。

岡田玲緒奈
そうなんですね!

峰宗太郎
なので、カブトガニは無駄に殺されてたのも、ようやく減ってくるということでですね、この「生きた化石」であるカブトガニは大丈夫だろう! というような、そういう締めでよろしいですか?

岡田玲緒奈
お〜ありがとうございます。
いま裏方でも言ってたんですが、カブトガニの集団採血の画像って、それこそ反医療でよく使われるんですよね。「こんなことして!」みたいな感じで。
でもやっぱり、可哀想は可哀想だから、合成品が使えるようになってよかったです!

池田早希
でも、ヨーロッパではけっこう使われているけど、アメリカではそこまでではないっていうふうに聞いたんですけど、どうなんですか?

岡田玲緒奈
すげ〜マニアックな話しをしてますけど(笑)
そもそも、カブトガニの青い血の話とか、みんな知らんからな!

安川康介
僕は感染症のフェローで働いていた時に、必ずこの話、カブトガニと敗血症の話をする上司がいてですね、刷り込まれました(笑)

木下喬弘
カブトガニって英語で何ていうんですか?

安川康介
Horseshoe crabですね!(即答)

岡田玲緒奈
ああ〜〜〜(何かに納得した模様)
ということで、今日はカブトガニの情報提供させていただいたということで、ですね……最後に安川先生からのリクエストですね。「何かエモい英語のことを言え」といわれまして。僕はもう、お気に入りの、前に何回か話したやつがあるので、これで締めにしようと思います。
これはですね、Dr. Jonathan Reiner という、ジョージワシントン大学の外科の教授がおっしゃっていた言葉ですね。

Covid-19 doesn't have to kill you to wreck your life.
https://edition.cnn.com/2021/05/05/health/young-people-covid-vaccine/index.html
出典:edition.cnn.com 2021/5/5

「COVID-19 というのは、人を殺す、命を奪う、というところだけが怖いんじゃないよ」というお話ですね。
これを聴いていらっしゃる方ってきっと、比較的お若い方が多いと思いますので、「死なないからいいんだ」とか、そういったことではないんだよ、っていうことを最後に付け加えさせていただいて、おしまいにしたいと思います。よろしいでしょうか?
それでは皆さん、よい1日をお過ごしください。よい週末を!


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