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ワクチン接種の際のオンライン予診について解説しました(6月22日こびナビTwitter spacesまとめ)

2021年6月22日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健佑

吉村健佑
皆さんおはようございます

黑川友哉
おはようございます

木下喬弘、黑川友哉、前田陽平先生
✊✊✊

吉村健佑
こびナビの医師が解説する医療ニュース、6月22日ですね。
今日は吉村が担当します。よろしくお願いします。
何の話をしようかなと思ったんですけど、6月の半ばに取材を受けて、先週の水曜日に TOKYO_FM で8分ぐらい放送されました。「集団接種会場どうなってますかね」といった内容の取材を受けて話をしました。
6月7日の週辺りに取材を受けて、集団接種会場スムーズでしたよとか、予診表の作成とか、医師の署名が結構大変ですよという話を TOKYO_FM 中で紹介させてもらいました。
その後、集団接種会場の中で、実はいろいろ生かせる事務連絡が出ているということを後から知りまして、その場で明確に紹介できなかったのは残念だったのですが、集団接種会場で電話や情報通信機器を使って予診や予防接種の実施ができるという事務連絡を5月25日に厚生労働省が発出してたんですね。
ラジオでは紹介できなかったので、その事務連絡を紹介したいと思います。


【規制改革実施計画、医師の予診をオンラインで行うことを時限的特例的に認める通達】

吉村健佑
こびナビの医師が解説する医療ニュース、今日はこびナビ代表の吉村がお届けしています。
今日最初の話題は、集団接種会場などにおいて、医師の予診を電話や情報通信機器を用いて行うと、どういう枠組みでどういう状況であれば行っていいかということの事務連絡の内容を紹介してそのそのコメントもぜひもらいたいなと思っています。
これは令和3年5月25日に発出されたものです。

背景から説明しますと、これに先立ち日本で新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、電話や情報通信機器を用いた診療を時限的特例的に認めるという通知が令和2年4月10日に出されました。
この通知の内容はかなり衝撃的でして、現場の医療にも相当影響を与えた通知でした。どんな通知かというと、これまでは、医師の診察を受ける際は基本的には対面で受けなきゃいけないっていうのが原則でしたが、それが昨年4月のその通知を出してから、大幅に規制緩和しまして、電話ないしは情報通信機器(タブレットなどを用いたテレビ電話などのこと)を用いて、初診から遠隔診療をやってもいいよということにしたんですね。
これは時限的・特例的な取り扱いということで、コロナが感染拡大している際なので対面での治療は難しい、ないしは患者さんも感染拡大が起こってしまうので医療機関に来るとか外出もそんなに望ましくないという理由で認めた内容です。

私も実際に電話での初診を何度か経験しましたが、「もしもし」「初めまして」ですよね。
それで初診ですので、状況を聞いて、簡単な評価をして、普段飲んでるお薬は何ですかとか、そういったやりとりから一応診療ですので診断を下して処方するという行為を電話で行うわけです。
医師から見たら相手の顔が見えない状況なので結構不安の多い診療ですよね。
実際には、かなり現場で運用されており、現在まで1年以上になりますが、何とかそれで診療が維持されてるという側面があります。
例えば生活習慣病の方でなかなか病院に来られないという場合はかかりつけの先生であれば電話診療というのもある程度できるかもしれませんけれど、初診の医師であってもいろんな理由でかかりつけにかかれない、かかりつけと連絡が取れないという方に対して電話での初診を認めていたというのが背景です。
それからいきなり飛んで今年の5月になるわけですけど、今回はそのワクチン接種が拡大してきたので、そこでの電話やオンライン診療の活用の考え方っていうのが、事務連絡の中で示されています。

厚生労働省健康局健康課予防接種室と医政局医事課の連名で出ています。
医政局医事課は医師法を所掌していますので、どういうやり方をすれば医師法にそって電話やオンライン診療で予防接種ができるかが書かれています。
まず考え方で面白いのは、予診というのは服薬とか疾患の全てを明らかにするものではないという前提から始まるんですよね。
なので全てのお薬の内容や過去の疾患を全て明らかにしなくても良くて、電話や情報通信機器での判断が可能であれば、それを活用していいよと書かれています。
なので医師が電話やオンラインで問診を行い、そんなにややこしい基礎疾患やこれまでの経緯がないことを判断すれば、これはもうワクチン接種可能ということが書かれています。
医師の予診のところは、予診の会場にいけばタブレットを置いてあってそこで医師と会話をして、接種可能ということが判断できます。
その後医師の署名欄については、これは医師じゃなくても、明確に指示を受けた人であれば、医師の代わりに署名して構わないということも同時に通知で出されました。
なので、必ずしもそこに医師がいなくても判断をして署名することは問題ないという通知ですね。
これは具体的にいうと、予診医から接種の指示の伝達を受けた事実および予診医の氏名を記入し、指示の伝達を受けた者が署名することができることが通知に書かれてますね。
なので、署名というものは医師が直筆ではなくてもいいという内容で、規制が緩和された内容と思います。

一方で気をつけなければいけないのは副反応が発生した場合です。
そのときはさすがに医師が対応しなくてはならないと書かれてますので、少なくとも集団接種会場にも1人の医師は必要でして、その方が副反応の発生には対応すべきだという考え方を示しています。
現在、集団接種会場で医師の確保が非常に難しいという声が上がっていますが、1名以上の医師を何とか確保すれば、大きな会場であっても運用できる可能性があるということを示しています。
この通知は参考として具体的な場面を3つ活用例として示しています。


【活用例1、集団接種会場での接種】

吉村健佑
まずは今説明したような集団接種会場ですね。
1名以上の医師がいれば情報通信機器を用いての予診を合わせて実施する可能性があるということを示しています。


【活用例2、要介護者等への在宅での接種】

吉村健佑
あと2つの事例が結構興味深くて、1つは個別の要介護者等への在宅での接種をこの電話やオンラインでの実施ということを想定しています。
具体的には看護師さんが在宅に赴いて、オンラインで医師が予診をして了解と伝えたらその場で看護師さんが接種を行います。
そして医師が副反応の発生時等の緊急時に対応できる範囲にとどまる体制をとると書かれていて、万一副反応が起こって体調の変化などがあったらその周り看護師さんなどからかかりつけの病院に電話してそれで医師が駆けつけることができれば在宅での接種が可能だと示しています。

またちょっと今日の通知からずれますけど別の通知で「接種後の健康管理については、医療専門職でなくても構わない」とも出ていますので家族などと連携しながら、困ったときにはかかりつけ医にすぐに電話してねというふうな体制も想定できます。


【活用例3、僻地や離島などでの接種】

吉村健佑
具体例が出てるのは僻地や離島などです。僻地や離島では、医師が1人しかいないという地域も少なからずありますので、その1人の医師が一般の診療をやりながらワクチンの予診を行うのは無理ということで、ワクチン接種の予診については遠隔地の医師が電話や情報通信機器を用いてサポートして、医師1人しかいない僻地や離島においても、ワクチン接種ができるといいということを具体例として出しています。
こんな内容を、5月25日に事務連絡を出して運用はしているという状況です。
こびナビの皆さん、何かコメントとかありますでしょうか。

木下喬弘
これはこの前厚労省に行ったときに話したやつですね。

吉村健佑
そうですそうです。これ熟読しましたよ。

木下喬弘
大事だと思います本当に。やっぱり何がボトルネックなのかっていう部分は大規模接種会場に行ってないんでちょっとまだ把握しきれてないところもあるんですけど。やっぱりタスクシフトは業務の効率化のためにすごく大事ですよね。

吉村健佑
いくつかの自治体はこれを導入して、実際にオンラインで予診をやってるようですね。
その手応えまではちょっと聞けてないですけれど、私も機会があればぜひオンラインでの予診を経験したいと思いました。


【アメリカと日本での予診の行われ方の違い】

安川康介
安川ですよろしくお願いします
その遠隔医療のことと、その予診医のことについて2つ質問があるんですけれども、アメリカだと予診っていうのは、医者じゃなくても全然いい…というかですね、多くの場合オンラインで患者さんがチェックリストをクリックしていけばいいだけなんです。

吉村健佑
なるほど。

安川康介
接種するときに薬剤師の方が接種することが多いので、もう1回確認してそれで打つっていう流れで、新型コロナウイルスのワクチンに関して言えば、医者が予診をする必要がそもそもないというのが、アメリカで働いてる医師として感じることです。ここはもうわざわざ遠隔医療まで用いて医者が予診をする必要があるんでしょうかということがまず1つ。

吉村健佑
はい、何か答弁みたいになっちゃうんですけど、やっぱりワクチン接種っていうのが日本だと医行為なんですよね。
医行為つまり医科診療の範囲になっていて、これが要は医科診療は医師でなければしてはならないという医師法の解釈があるので、これは医師が行うことであるっていう整理から始まっちゃってるんですよね。
むしろアメリカではワクチン接種そのものが医科診療とか、医療行為ではないっていう整理なんでしょうか。
接種そのものは薬剤師さんとかコメディカルができることとして、接種の可否とか判断とかっていうものは医師が行う必要はないというそういったスタートの違いがあるんだろうなと思います。
日本では現行の法律ではワクチン接種そのものが医科診療の一部なので、それは実施は他の職種にお願いできても、判断は医師がしなくてはならないというところからまだ脱せられないって状況なんですよね。
安川先生、あんまり答えになってないかもしれませんけど。

安川康介
いやわかります。
なのでその医師がいて、その指示のもとに看護師さんとかが接種するってことじゃないですか。
ただ問診予診に関しては、医者がやらなければいけないのかなっていう疑問があったのでちょっと聞いてみました。
遠隔医療は本当にすごくホットピックで、アメリカでも新型コロナウイルスの感染症が広がり始めてから去年の3月の初めぐらいに遠隔医療(テレメディスン)がかなり広まりました。それまではかなり田舎の方に住んでいて医療施設になかなか関われないような人たちが使っていましたが、例えば、メディケアという保険の仕組みがin-person、直接診療する時と同じくらい報酬を払うというように変えました。精神科や内科でも、パンデミック中はほとんどテレメディスンになった時期がありますね。
実際その点、遠隔医療になって、患者さんのその治療成績とかそういうものが変わったのかっていうのが、今後いろいろ調べられていくのでそこはすごく関心が高い領域です。
遠隔医療が爆発的に広がったっていうのはあります。

吉村健佑
なるほど、ありがとうございます。
安川先生コメント2ついただきました。

池田早希
遠隔診療に関して、安川先生はリモートでも遠隔診療でも、通常の 外来受診と同じくらいの診療報酬になったとおっしゃってましたけど、私の周りではそうではないみたいでしたね。
やっぱり保険会社がカルテとかで診療報酬をチェックしてるんですけど、そこに身体所見の記載がないとその分の収入が病院的には減ってしまうんですよね。
私は小児ですのでちょっと状況が違うかもしれないのですが、新型コロナウイルスの感染流行のピーク時には遠隔診療を中心にしていましたが、だんだん余力が出てきたら、病院もすごく赤字になってしまったので、できるだけ患者さんに来てもらうようにとの通達が出ましたね。
ただ遠隔診療自体はとても便利で、お子さんの感染症ですと例えばトキソカラ症のような寄生虫とか、長期的に内服薬が必要な疾患のフォローのときに、物によりますけど特に身体所見が重要ではない場合は、患者さんとか保護者の方は携帯電話を使って診療ができるのでとても便利でしたね。

吉村健佑
なるほど。コメントありがとうございます。
日本では診療報酬の話が出ましたけれど、遠隔診療、オンライン診療を実施した場合は対面で診療する場合よりも、やはり診療報酬は安くなるというのが通常です。
ただ昨年4月に出た時限的特例的なオンライン診療の取り扱いについての通知を受けて、昨年5月に、診療報酬はオンライン診療で行った場合も、一部上乗せで請求できるようになっており、対面診療に近づけたという経緯はあります。
おそらくアメリカの診療報酬ってその保険者によって設定が違うんじゃないかなと思っていています。安川先生のお話も池田先生の話も多分それぞれの患者さんが入ってらっしゃる保険のタイプによって診療報酬が異なって設定されるかと思うんですけど、違いますでしょうか。

安川康介
そうです、そういうことだと思います。
メディケアではなく、多くの方が民間の保険に入っているので、そこによってだいぶ変わってきて、池田先生の言うようにその身体所見の記載がなければポイントを落として払うっていうことはあると思います。
例えば内科ですと、僕たち普段手技をするわけではないので、入院カルテを見て、それが何か総合点ではないですけど、どれぐらい情報が載っているかで診療報酬が変わってきたりします。
例えば社会歴っていって、タバコを吸っているか、アルコールを飲んでいるか、あとはドラッグですね、結構ドラッグやってる方もいらっしゃるんで、この3つのどれか抜けてるとポイントを落とされて支払う額が減るとかですね。
家族歴っていうご家族の中に何かよくされてる方がいたかっていうのを聞かないとぐんとポイントが下がったりとか、載っている情報によって支払われる額が変わってきます。

吉村健佑
そうなんですね。いやそれちょっとびっくりですね。そんなに細かく、カルテ記載の内容によって、診療報酬が変わるんですね。
それはちょっと日本では考えにくくて、初診で幾らとか再診で幾らとか言ってまとめた額になってるので、そこがかなり細かく設定されてるんだなと思いました。

安川康介
だから例えば研修医の方とかが働く時に、100歳のおばあちゃんでも家族歴聞いてくださいみたいに教えなきゃいけないんですよね。

吉村健佑
なるほど。
これは病院の経営のためにという側面もあるということですね。
わかりましたありがとうございます。
先ほど安川先生がオンライン診療遠隔医療(テレメディスン)についてお話も一般的にされてました。
私自身も厚労省にいたときにオンライン診療・遠隔医療の担当を2年ぐらいしていたので、おっしゃるような精神科、皮膚科、あと放射線科の画像診断とか病理診断とかはもう世界的にオンライン診療が当たり前になってると言われていて、日本もだいぶ遅れてたんですけど、今回の COVID-19 の経験を踏まえてオンライン診療が少し拡大しそうです。
具体的には昨年4月に時限付き特例的にオンライン診療や電話診療を認めたのですが、今の議論としては、電話診療ではさすがに情報量が少なすぎるので一時的なものに留めようといわれています。ただテレビ電話を使った診療についてはそれなりに情報量も取れるし安全に行えるよねって意見も出てきまして、これをオンライン診療の部分については時限的特例ではなく恒久的に運用しようという議論が具体的に進んでいます。
毎年閣議決定されて世に出てくる「規制改革実施計画」の中でもついに初診からオンライン診療を実施することを恒久化しようという議論が具体的に記載されています。
コロナ前の世界は初診のときは対面でとやっていたわけですけど、これから先は初診からオンラインで実施して薬の処方を受けるとか、そのまま初診から再診までオンラインでずっと診療を継続するのも可能になりそうな世の中になってきたかなと思います。
今日はオンライン診療、遠隔医療の活用に関して、コロナ周りのことについて少しご紹介しました。


【成長戦略実行計画、研究開発生産体制などの政策について】

吉村健佑
最近もう1つちょっとトピックス的に出すと、先ほど紹介した規制改革実施計画とちょっと名前が似ているんですけど成長戦略実行計画ってのも閣議決定されるのですが、今日は時間の都合で詳しくは紹介できないんですけど、この中でワクチンを国内で開発生産すると、速やかな供給ができる。
研究開発生産体制を構築するために研究開発拠点の形成などの政策を盛り込んでいると報じられてます。
今回の COVID-19 に対するワクチンの開発生産は間に合わないとしても、今後国内でこういった供給ができる研究開発生産体制を構築しましょうということが閣議決定されてますので、今後そういった体制をどうやって作るかとか、どういった研究者をそこで養成していったり雇用していくかなども、具体的に議論されると思います。これはかなり大きな話になりますね。

こんな感じで今日はまとめたいと思います。
今日は遠隔やオンライン診療の活用そして集団接種会場などで、医師がオンラインで実施して少しでも負担軽減をしながら進めていこうという話をご紹介させていただきました。
よろしいですか。

木下喬弘、安川康介、池田早希、前田陽平先生
👏👏👏

吉村健佑
ありがとうございます、👏もらえますと嬉しいっすね。
ちょっと今日早めになりますけれど、これでまとめたいと思います。
こびナビの医師が解説する医療ニュース、今日は吉村が担当しました。
6月22日ですね、今はこれで締めたいと思います。
日本は天気いいですけれど、皆さん良い1日をお過ごしください。
皆さんどうもありがとうございました。


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