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医療従事者の応召義務、公的機関の情報発信、因果関係の評価の問題点について(7月15日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年7月15日時点での情報を基にされています。※

2021年7月15日(木)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:峰宗太郎

峰宗太郎
おはようございます。
さて、今日は何の話をして欲しいですか、黑川先生?

黑川友哉
(笑)「何の話して欲しい?」は新しいパターンですね😂
いつもは「最近ニュースどうですか?」みたいなフリじゃないですか。

峰宗太郎
そうですね。
これはもう何の話をするかを皆さんに聞いてしまおうということです。
私の回は毎週雑談じゃないですか。
さっき安川先生と電話していたんですが、その時に「峰先生の回は毎回雑談ですよね🥦」って言われたんです。
「そうなんですけどね!」って言ったんですが、ネタを考えるのって難しくて。
皆さんにお伝えしなきゃいけない基本事項は、いつもお伝えしてますよね。
こういう新しい論文が出たよ、とかマニアックなネタいくらでも出てくるんですよ。
それ以外で何か目を引くものってあるかなっていうとですね……
モデルナの新型コロナウイルスワクチンが12歳から打てるようになりそうですね、黑川先生。

黑川友哉
そうですね。
これから部会で審議かなっていう段階だと思いますが、まあ間違いなく12歳以上に拡大されますね。

峰宗太郎
他にコロナ関係でいうと、やはり東京の人数がサージしている(感染者数が増えている)ことですよね、木下先生。

木下喬弘
おっしゃる通りですね。
東京まあ、やっぱり明らかに今回、最悪の緊急事態宣言の実効性みたいな感じの雰囲気をバリバリ感じるので、まぁ、感染者が増えるでしょうね。

峰宗太郎
ここは木下先生もっと AbemaTV に出まくって、みんなに、特に若い人に呼びかけないとダメじゃないですか。

木下喬弘
結構厳しいと思うんです。
AbemaTV も、出てる人が「政府が悪いから、制限守らなくていいでしょ」みたいな感じなんです。

峰宗太郎
あーなるほどね、うーん。

木下喬弘
まあ気持ちも分かるんです。
結局政府のやり方が悪いから飲食店ばかり責任を押し付けられて、みたいな主張するのはいいと思うんです。
ただ、結局それって自分の健康がリスクにさらされているっていう事なんだよっていうことは分かっておいて欲しいです。
そういうことすら言いにくい空気になってますよね。

峰宗太郎
なってますね。
あと、ワクチンが普及してきたっていうのも一因でしょうけれども、やはりコロナを軽視してる人が増えてますよね。

木下喬弘
明らかに増えていますね。
なんかもう若年者は重症化しない、といったリスク認知になっちゃっていますね。

峰宗太郎
それはよくないですね。
ここはやっぱり AbemaTV に出まくって頂いて、宣伝していただけると嬉しいですけどね👶(笑)
まあ AbemaTV じゃなくてももちろんいいですが。

谷口先生は最近どうですか?
やはり東京につられて千葉県も患者さんが増えていますか?

谷口俊文
千葉県は横ばいという感じですね。
実はホテル療養とか自宅療養の方がすごく増えていて、病院に入ってくる重症の患者さんは少ないですね。
ホテル療養で働いている看護師の方は、「大変だ。大変だ」って物凄い悲鳴をあげていますが、病院の方は割と楽なのが今の状況になっていますね。

峰宗太郎
僕も埼玉と東京の先生からも同じようなことを聞きます。
やはりホテル療養のようなところで薬も出さないで診られてる方がすごい増えてるっていう話なんですかね。

谷口俊文
そうですね。
その中で若い方で例えば肥満の方の中にはどんどん悪くなっていって、酸素が必要になるかならないかギリギリのところになっていく方もいます。そういう方をホテルに置いておくことに不安を感じて、なるべく入院させたいところがあって、もめてるみたいですね。

峰宗太郎
なるほど。
一時療養のホテルで見ている方が、急激に悪化したり、亡くなってしまったりというニュースもありましたし、少しでも防衛的に行くならば入院させちゃいたいっていうこともありますよね。

谷口俊文
そうですね。
今は病院のベッドは比較的空いているので割とホテルから病院への搬送はスムーズにできますが、もっと患者さん増えてきた場合にはどうなるのか心配しています。

※編集注:
2021年8月5日現在は、全国各地で感染者数が非常に増加しており各地の病院の病床もかなり逼迫しています。引き続き、感染対策の徹底を宜しくお願いします。

峰宗太郎
やはり心配ですね。
しっかり抑えてかなきゃいけないなっていうところは重要ですね。
東京に限って言えば、こういうサージをしてくるのであれば、もう第5波が来てしまったと言っちゃっていいんでしょうね。
そういう状況にある中、オリンピックをやるそうですね。
オリンピックの水際対策とか、選手団とか世界中から入ってくることによって変異ウイルスが増えるとか、そういうナンセンスなことを言う人はいないと思いますが、安川先生、オリンピックについてなんか聞いてます?

安川康介
オリンピックについてなんか聞いてるかっていうのはどういう質問ですか?

峰宗太郎
質問を変えますと、要はアメリカではオリンピックについて報道されている印象ですか?

安川康介
あまりニュース見ていないですが、そんなにオリンピックのことが報道されていないように思います。

峰宗太郎
そうなんですよね。
実は僕も結構熱心にこっちのニュースも見るようにしてるんですが(Fox ニュースの見過ぎで頭おかしくなってきてるんですが)、アメリカでオリンピックの話題無いんですよね。

安川康介
そうですね、あまり盛り上がってないですよね。

峰宗太郎
これはどうしたらいいんでしょうね。
盛り上げて行った方が良いんですかね。
それとも流していった方がいいですかね。

安川康介
いや、やはり新型コロナウイルスの感染症が日本で増えてきているので、なかなか他の国がどうこう言うことが難しい状況があると思います。

峰宗太郎
ありがとうございます。
まあ、そんな中、今週は WHO(世界保健機関)の事務局長がワクチンを変異とワクチンのレースに例えた話をしちゃったり、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が政治的な発言をしてしまったりと色々ありましたけど。


【応召義務と、医療従事者に対するワクチン接種の義務化の可能性】

峰宗太郎
今日は基本的に、いつも通り雑談で行こうと思ってたんですが、1つ、ニューヨーク・タイムズにちょっとコラムが出ていて、面白いなと思ったので紹介します。

As a Doctor, May I Refuse to See Unvaccinated Patients?
https://www.nytimes.com/2021/07/13/magazine/vaccination-patients-ethics.html
出典:New York Times 2021/7/13

あるお医者さんが「ワクチンを打ってない患者さんを診る義務があるんだろうか」という疑問を投げかけています。
誰か見られた方います?
安川先生、見てないですか?

安川康介
見てないです。

峰宗太郎
あ、そうですか。
要は今、まだ新型コロナウイルス感染症の患者さんもいるわけですが、だんだん患者さん減っているわけですね。(※2021/7/15時点)
しかし、ワクチンを受けていない患者さん、まあ、多くの場合、原因は躊躇というより拒否で、アメリカはもう既にワクチンを拒否されている方が多いという状況にあるようですね。
私は「ワクチンを打つことを拒否しているが、あなたの診療にかかりたい」と言う、発熱とか明らかに症状のある患者さんを診ることを拒否できるんだろうか?って、そういうような話題が投稿されていて。
それに対して、いつも倫理の観点からコメントするコラムニストが解答を書いています。

このコラムの回答自体は漠然としていて、ワクチンを拒否する人は、たった1人の妄想ではなくて、その人が情報を取得するネットワーク(いろんな人とのつながり)全体の共同妄想のようなものだから、なかなか説得しようとしても、彼らをまっすぐにすることは出来ないし、現実的な対処をするしかないよね、みたいなことが書いてあるんですね。
基本的には貴方(つまり開業医さんや勤務医さん)の選択肢として、可能であればオンライン診療をオファーするとか、まあうまくやるしかないんじゃないだろうか? みたいなごまかしが書いてあるんです。
安川先生に、お伺いしたんですけど、アメリカのお医者さんって応召義務ってあるんですか?

※応召義務・・・診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではいけないこと(医師法第19条)

安川康介
まあ、そうですね。
例えばこっちだと保険がいっぱいあるんですよね。
そして、この保険は受け付けないっていうクリニック等があって、その場合は特定の保険を持った患者さんは診ないという選択肢があります。
保険の請求が出来ないので、診療してもお金が貰えないという問題があります。
ただ、救急外来に来た場合は「緊急医療処置及び分娩に関する法律」(EMTALA、The Emergency Medical Treatment and Active Labor Act)という法律があって、拒否できないんです。
全員診なければいけないということがあります。

峰宗太郎
そうすると先生、例えば無保険の人はどうなるんでしょうか?

安川康介
無保険の人も全員診ますね。
よく「アメリカでは保険がないといい医療が受けれない」と言われるんですが、急性の疾患にかかって救急外来に来た場合は、そんなに扱いは変わらないです。
無保険の人だからこの薬はあげないとか、そういう判断をする医者は本当に少なくて、みんなプロフェッショナルに同じような診療をしています。
ただ、退院した後に、例えばリハビリを受けられないとか、特定の薬が使えないとか、そういう問題は生じてくると思います。
保険によっても何がカバーされているのかが違って、この保険を持っているとこっちの薬が使えるけど、この保険だと使えない、みたいに、保険によって受けられる医療に少しずつ差が出てくることは確かにあります。

峰宗太郎
面白いですね。
COVID-19 の話からは外れますが、安川先生や谷口先生にアメリカの医療の実態を分かりやすく比較しながらお話してくれるコーナーをやっていただけると嬉しいですね。
EMTALA にかからないような一般診療で、拒否することはできるんですか?
無保険の方とか、何か理由がある方とか。

安川康介
外来をやっている場合に、保険がないと受診できないということはありますが、それも普通の病院だと基本的にはどんな方でも診療することになると思います。

峰宗太郎
例えば、今のコラムにあったように、お医者さんが拒否をしたいという時に、拒否すると罰則があったりするんでしょうか?

安川康介
診療しているセッティングにもよると思うんですが、外来で自分で開業している場合に、理由をつけて「あなたはもうこれ以上診ません」というのは見たことがあります。
そういう場合はおそらく罰則はないと思います。

峰宗太郎
なるほど。
まあ、そういうわけで、今回のコラムは、おそらく開業医さん、診療をしている医師からのお手紙という形で始まってるんですけど、ワクチンを私は受けたくないんだと、そういう信念を持っちゃった人が、実際にコロナに感染してるリスクはあるんですね。
特に本人、つまり診療してる医師はしっかり防御していけばいいわけですが、他の患者さんにうつすリスクや、病院に来る間にうつしてくるリスクだとか、色々あるということで、非常に困惑している人がいるということなんですよね。

日本の場合は診療拒否ってできないですよね?
ばりすた先生、診療って拒否できませんよね?

ばりすた先生
ええ、基本的にそういうことは出来ないですね。

峰宗太郎
ばりすた先生、やはり患者さんにはワクチン打ってきてほしいと思いますか?

ばりすた先生
(苦笑)もちろん希望としては打って来ていただきたいという思いはあります。

峰宗太郎
そうなんですよね。

ばりすた先生
もちろん実際に来てしまったときにはやはり診なきゃいけないっていう思いはもちろんあります。

峰宗太郎
日本の場合は、応召義務がしっかりありますので、基本的に正当な事由なく拒否することは当然できないわけです。

※参考:
応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf
出典:令和元年12月25日付医政発1225 第4号

ただ、やはりこういう提起が出てくるぐらいワクチンの効果は明白で、逆にワクチンをしてない人のリスクの高さが明確・明快な状況がアメリカでも続いているということから、そういう視点も出てくるということもあります。
そういう訳で、別にこのコラムを深ーく掘り下げて紹介しようと思っていなかったんですが、こういう動きがあるということです。

もう1つは、コロワくんサポーターズ代表の山田先生が紹介していましたが、アメリカでは医療従事者についてはワクチン接種をすることを採用の原則とすることを推奨するという話が出たようですね。
安川先生、これ聞き及んでいますか?

安川康介
はい、IDSA(米国感染症学会)は基本的に推奨していますね。
私の施設でももう義務化されるんです。
色々な病院で義務化されるので、おそらくもう今後多くの医療施設でそういう方向に進んでいくと思います。

峰宗太郎
ここら辺は木下先生のご意見も聞きたいんですけど日本においてはどうでしょう?
義務化はされないと思いますが、こういう議論って起こると思われます?

木下喬弘
うーーーん……
議論をすることはできると思いますが、義務化されるかされないかというと、義務化されないと思います。

峰宗太郎
冷静な判断ですね。やっぱりそうですよね。やっぱりこれを義務化するっていうのは、日本ではハードルが相当高いですよね。

木下喬弘
まあ、そうですね。
どう言ったらいいんでしょう。
やはり医療に対する一種の「神聖な感じ」と言いますか、「体が悪くなったら、どんな時でも病気を診てくれるのが医師」みたいな、そういうイメージ。
別に間違ったことは言ってないんですが、なんというか、難しいですね。
これを説明することも含めて、難しいと思います。

峰宗太郎
そうなんですよね。
ただ、いわゆる同調圧力じゃないですが、医療現場で働く者として、やはり仲間はみんなワクチンしていて欲しいかなと思うんですけど。

谷口先生、そういうところで、例えば看護師さんの中でワクチンを拒否される方とか、促さなきゃいけない状況とかってございますか?

谷口俊文
やはり看護師の中でもワクチンを打ちたくないという方がいらっしゃって。
今のところはまだ「なるべく受けてください。まあでも任意ですよ」というようなスタンスでやってはいるんですけれども、なるべく打って欲しいなあと思います。

ちょっと話変わるんですが、実は千葉県の病院で学生実習が原因だと思われるような病院内のクラスターが起きて、ワクチン未接種の職員と、患者さんも何人か罹られて亡くなりました。
高齢化が進んでる地域で広がってしまったという非常に心が痛むようなクラスターの案件があったので、やはり本来であれば、患者さんと接するような人は、ワクチンを打っておいて欲しいという希望はあります。
ただ、木下先生がおっしゃったように、やはりハードルは非常に高いと考えています。

木下喬弘
こういうところに対して真正面から議論することから逃げますよね。

峰宗太郎
そうなんですよ。
まあ、木下先生とか僕は議論好きなので(笑)いいんですが、多くの方は「触れたくない」っていうのを出しますよね。

木下喬弘
要は打ちたくない人は打たなくても良いし、クラスターの発生も防げばいいじゃないみたいな。
打たない人から感染が波及かもしれないです、拡大するかもしれないですよね、と言うのはやめよう、みたいな、そういう空気を感じますよね。


【ワクチン推進に関する議論と、公的機関からの情報発信】

峰宗太郎
実はその話もいつかしようと思ってたんですが、今ちょうどいい機会なので話します。
我々はもちろん、科学的エビデンスに基づいて、偏ってると言われようが何しようが、ワクチンは打っていいものだと知っているわけで、推めるわけですが、ワクチンを推進していると捉えられている人たちの間でもやはり隔たりがあります。議論をするところまで行ってかき乱したり、刺激したくない、という空気を出す方が最近増えているように感じませんか?
どうですかね、木下先生?

木下喬弘
一時期に比べたらコロナのインパクトがかなり大きくなってきたので、こういう話をしやすくなった空気感を感じますが、でもやはりアメリカに比べると、法的な拘束力という話はやりにくいと思いますね。

峰宗太郎
ああ!
なるほど、それはそうですね。
そうですね、確かに、話はしやすいですよね。
ただ、やっぱり真剣に向き合うというところで、何かこう腰が引けてるところはありますよね。
ただ、まあ進展してきたとして、やはり厚生労働省なんかもはっきり物を言うようになりつつあるように感じるんですが、どうですか?

木下喬弘
それはおっしゃる通りだと思います。
ずっと「ワクチンを受けるか受けないかは貴方の判断です」という姿勢だったのが、少なくとも科学的なエビデンスはできる限り伝えようという意思を感じますよね。

峰宗太郎
僕も常々言ってたんですが、日本の行政ってその自分たちが正しいこと、無謬である、公平公正、中立であるということを結構意識するがあまり、いきすぎちゃって全ての判断を消費者(国民)に委ねて押し付けているように思うんですよ。
最近ちょっと変わってきて、国としては、とか、行政としては推奨に傾いているんだよ、ということを匂わせるようになってますよね。

木下喬弘
そこ、本当に今回全然違うなと思います。

峰宗太郎
これも木下先生が大臣に働きかけたり、色々やってくれたっていうのも、大きいです。
谷口先生も実は、この前、木下先生といっしょにまた霞ヶ関に行っていただいたということもあります。

さて、霞ヶ関といえば、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)で働いておられた、今も関係しておられる黑川先生にお伺いしたいんですが、PMDA の情報発信は、最近何か変わったようなところってありますか?

黑川友哉
変わってないですねー(笑)

峰宗太郎
あ、変わってない👶(笑)

黑川友哉
PMDA ってツイッターのアカウントも持ってるんですが(もし中の人がリスナーの中いたらもうすごく申し訳ないというか、耳塞いで欲しいんですが)全然発信してくれないんですよね。
厚生労働省が最近本当に積極的な発言をしてくれるようになってきているので、それに合わせて PMDA もなんかもっとこう……PMDA と厚生労働省がセッションをするような形で、お互いにリツイートしちゃうとか、なんかいろいろやり方はあるんだろうなと思うんです。
ただ、今はなかなかそういう動きを PMDA がやる余裕もないんだと思うんですよね。
PMDA の中に情報発信をする部署が無く、そういう専門家が所属していない点が、アメリカと大きく違うところです。
また、現在、全国国民に向けて一気にワクチン、つまり新しいお薬の接種を進めているという背景から、PMDA に副反応の報告が未だかつてないレベルで集まっているんです。
通常は医薬品の開発相談であったり、承認審査という業務に集中できていた部署も多くの人員がワクチン関連の業務に割かれています。副反応報告の情報整理や、データが FAX で送られてくることもまだまだ非常に多くて、それをデータベースに登録するためにパソコンに打ち直さなければならなかったりするので、こういう作業に非常に労力をとられているという背景があるのかなと思います。

峰宗太郎
変えるべきところがたくさんあるのは現実ですけど、今は忙殺されているという状態ですかね?

黑川友哉
そうですね。
実際に今 PMDA で働いている方とお話しする機会もあるんですが、やはり非常に大変という声を聞きますね。
せっかく4月の頭からパソコンから入力してそのまま PMDA に副反応報告できるシステムが整ったのですが、やはりまだ認知が広がっていなくて、FAX による報告が多い状態が続いているようです。
もちろん FAX での報告も間違ったものではないのですが、それが結構大変みたいです。


【副反応検討部会における死亡事例に対してラベリングを実施する問題点】

木下喬弘
黒ちゃん、死亡事例の α の基準ってどうなってるんですか?

峰宗太郎
あ!それ大事な話題!!
本当にこれ大事な話なので分けてやるべきなんですが、リスナーの方は突然「α」が出てきてびっくりしていると思いますので、木下先生、残り10分あるので、前振りとしてどこに問題意識を持っているか教えていただけないでしょうか?
これ大事だわ。

木下喬弘
これめちゃくちゃセンシティブな問題なんですけどね。

※編集注:
詳細はカットしますが、以下、新型コロナウイルスワクチンの副反応検討部会で、副反応疑い報告制度に基づいて報告されてきた死亡事例に関する議論が続きます。
副反応検討部会に上がる前に、死亡例に対して、
α(アルファ)=因果関係が否定できない
β(ベータ)=因果関係が認められない
γ(ガンマ)=情報が不足しているために、現時点では因果関係を評価できない
という分類がされています。(下記表参考)
この分け方の解釈が難しく、かつ情報の透明性が低いため、特に α の事例に対して誤った解釈・報道をされたしまうリスクや、基準がよく分からない評価を続けているように受け止められてしまうのではないか、もう少し良い方法があるのではないか、という問題提起でした。

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峰宗太郎
そうですね。
なんかちょっと文字起こしにするには、もうちょっと前提を詰めて進めていかないといけないですね。
ただ、なかなか短い時間だと、例えばテレビとかでも尺の都合で話しにくいですよね。
結構しっかりした文章に起こして、読める人に理解してもらいながら読んでもらわないと、誤解を招くこともいっぱいあります。
兎に角じゃあなんだ基準の α、β、γ ってどう違うんだ?っていうところから入っちゃいますよね、黑川先生。

黑川友哉
この件については、先週、私も少しだけお話させてもらったんですが、急に α が1例出てきて、私も資料を読んでみたんですが、なんで α なのかよく分からんっていうのが、正直なところなんですよ。
実はこれ、α、β、γ という評価、公表されているのはもちろんこの評価なんですが、そこに至るまでに、情報の量(どういった情報が足りないとか)はかなり細かく評価されていて、非常に細かい分類で、評価に必要な情報が揃っているか、他の疾患によることを疑うか、死亡なのかそうじゃないのか、既知なのか未知なのか、色々な分類が有害事象報告を評価する中であるんです。
ところが、反応検討部会を経て国民向けに広く情報提供するっていう時に、いきなり α、β、γ の3つにざっくりと一気に分けられているんです。
私もこの α、β、γ というものがどういう線引きなのかはもちろん分からないです。
木下先生がいつもおっしゃっているように、因果関係の評価は実際はグラデーションで、ワクチンとの因果関係がありそうだっていうものと、全然関係ないだろうっていうものの区別が非常に難しい中で、これに対して何かしらラベルを貼らなきゃいけないっていう中で、こういう作業が出ているので、情報発信の仕方って本当に難しいと思うのです。
一方で全く情報発信しないってなると、今度はまた隠蔽とかって言われちゃうし、さすがにそれも気持ち悪いですよね。
どういう形で報告すべきなのか、もはや α、β、γ とかっていうことを言わずに、症例報告をすべて公開するみたいな(もちろん個人情報がありますので、そういったところは伏せた上でですが)そういった方法もアリなのかなと思います。
アメリカとかもそうやって α、β、γ みたいな人為的なラベリングっていうのはされてないんですよね?
そういうその情報発信の仕方を日本もやってもいいのかなと思うんですね。
変に3つに分けちゃうと、「よく分からない」という議論が出てしまって、それにより、また変な疑義が生じてしまっているのが現状だと思います。
このやり方そのものを検討しなきゃいけないというのは、木下先生がおっしゃる通り、課題かなと。

木下喬弘
そうなんですよ。
アメリカではどういう発表しているかご紹介します。
僕はブックマークしてるんちゃうかって言うくらい、定期的に確認しているページがあります。

※参考:
Selected Adverse Events Reported after COVID-19 Vaccination
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/safety/adverse-events.html
出典:CDC(アメリカ疾病予防管理センター)

だいたい週に1回ぐらいこのページは更新されるんです。
今のところ VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)という、有害事象報告制度に上がってきた有害事象の中で、剖検したり、診療録を見たり、色々な角度からの評価を FDA(アメリカ食品医薬品局)と CDC の医師が行った結果、ワクチンと因果関係がリンクされている死亡はない、ということが常に書かれているんですよ。
ただし、ジョンソン・エンド・ジョンソンの TTS(血小板減少を伴う血栓症)があって、その後に亡くなった症例が一応あると書いてあります。
これをまとめると、mRNAワクチンでは、今のところワクチンが原因で死亡したと考えられている症例がないという解釈を僕は常に書いているんです。
めっちゃシンプルなんですよね。
ワクチンが原因といえる事例はない。
否定できるかというと、そんなことはできるわけないので、そういうことはもちろん書かれていないわけなんですが、公的機関としての立ち位置は明確ですよね。
こういう出し方の方が、すごくシンプルでいいんじゃないかなって僕は思っています。

黑川友哉
私もそっちの方が非常に分かりやすいと思いますね。
ただ、これ、もはや α、β、γ と振り分けて今までいってきたものを、いきなり「因果関係が認められていない」だけで報告してしまうのも難しいです。
今度は「なんでいきなりこんなにざっくりとした分け方になっちゃったんだ」(まあ、もともとざっくりなんですけど)そういう議論も巻き起こりそうで、なんか嫌だなと思いつつ、まあ私の推奨としてはいいと思いますけどね。

木下喬弘
臭い物に蓋をするよりはよっぽど良いですよね。
厚労省のページにも、接種後の死亡と接種による死亡というのは全く違います、ということは書いてあるんですけどね。

黑川友哉
あくまでもご理解いただきたいのは、厚労省も PMDA も、別に見てないわけではないんですよね。
むしろ、しっかり見ようとして、なにかしらグラデーションの中の位置づけを一生懸命つけようとした結果、α、β、γ になったと思うんです。

木下喬弘
おっしゃる通りなんですが、それが伝わらないと、本当に逆効果ですよね。

黑川友哉
そう、これね、かわいそうなんですよ。
全国の専門員っていう先生方と PMDA が、何千件もの副反応報告を一緒に1例1例丁寧に評価しながら、専門医のコメントも出してるんですよね。
1例1例全て出さなきゃいけないわけではないんですが、特に死亡例とか非常に注目しておかなければいけないような事例に関しては、本当に丁寧にコメントを出しています(コメントについてはすべて公開されています)。
そういったものをざっくり α、β、γ に落とし込もうとすること自体がまあなかなか難しいことなので、まあやっぱり見直しは必要なのかなとは思いますね。

峰宗太郎
白熱した議論をありがとうございました。
いや、本当にこういうことって、日本の行政(公)を中心とする情報発信や、そもそも評価の仕方が、世界のスタンダードから外れていたり、まあスタンダードより良い場合もあるのかもしれませんが、それでうまく伝えようとしたところが、報道や国民の誤解を招いているとか、問題点がいっぱいありますよね。
こういうところをやっぱり今後しっかり整備して行くことが課題であるということが、COVID-19 とこのワクチンのオペレーションによって明確に浮き彫りになったかなと僕は思っています。
今回の COVID-19 とかの情報発信に携わった人、広い知見を持っている専門家たち、それから行政の方を集めて、国民からも広く声を募って、こういうのを整備していくことが今後の課題なんだろうな、なんて思ったりしています。

黑川友哉
ラッキーなことに明日ちょうど、PMDA のすごい偉い人とお話をする機会があるので、その辺ちょっとディスカッションして、また木下先生……あの、こびナビの中で共有したいと思います(笑)。

峰宗太郎
黑ちゃん、今、木下先生だけに共有しようとしましたね!👶

黑川友哉
いやいや、皆さんと共有します(笑)。
今後の方向性はなかなか、一気に変わるってのは難しいと思うんですが、問題提起をして、PMDA のハンドル握ってる人とディスカッションしてこようと思いますので、まあぜひぜひ今少しずつでも良い方向に動いていければなと思いますね。

安川康介
黑川先生が偉くなって変えてください。

黑川友哉
そんなに偉くなることやってないんですよね。
今、こびナビのことを色々やってるんですが、これって全然業績にならなくて、偉くなる要素が全くないので、そこは期待できないかなと思います。

峰宗太郎
はぁ(溜息)👶
偉くなってください(笑)。


【こびナビの活動、宣伝】

こびナビってスタートしたのが1月、2月で、まぁ今年いっぱいの活動を目指している訳ですが、半分も過ぎてくるという状況です。
ここからはもうワクチンがどんどん、全部の世代の方に進んでいくわけです。
これまでも対象をどんどん変えてきました。
最初の優先接種であった医療従事者の方への情報を提供しました。次の優先接種の高齢者の方、リスクがある方、さらに今はもう一般の方に広がりつつあって、今度はお子さんにも広がるでしょうし、ワクチンが充分行き届いたら、今度は流行状況がどうなるのかを見ながら、コロナとどう向き合っていくか考えていく必要がありますし、収束させた後のことなんかも、色々情報発信して行く必要があるんだろうと私もぼんやりと考えています。
ただ、まだどういう局面になるかも正確には予測はできない中で、コロナワクチンに対する情報提供と周知というのは、依然価値がある、しなければいけない大事なミッションですね。

大きなプロジェクト1つ2つ今動いてますので、1つずつ最後に宣伝をさせてもらって、今日は締めたいと思います。
まず安川先生、ガイドブックについて、しつこいですがもう一度紹介していただいてもよろしいでしょうか?

安川康介
こびナビは、クラウドファンディングでかなり多くの方に寄付していただきました。
当初は高齢者、特にネットにあまりアクセスしない高齢者を中心に情報提供できるように、紙媒体の冊子を作ろうという目的があったんですが、高齢者の方の接種率が高い、接種希望者が多いという現状を受けて、対象年齢を広げることにしました。
あまりワクチンに興味がないような、比較的若い層の方もターゲットにし、情報を盛り込んだ小冊子を作ることにしました。
もう最終入稿して、あと2週間ぐらいで複数の自治体に届けられることになっています。
内容はこびナビをフォローしてる方には少し情報が物足りないかもしれないですが、可愛らしいデザインで、左側にイラスト、右側に文章が載ってるような、60ページぐらいの小冊子をつくりました。
実は峰先生と岡田先生がインスタライブをして、おそらく記者会見ではないところでは初めて公開しているので、もし興味がある人は峰先生と岡田先生の昨日のインスタライブを見てみてください。

画像2

こびナビブックレット表紙

峰宗太郎
ありがとうございます。
お手に取る機会のある方は是非、それから我々も上手く届けられるようにしたいと思いますので、そういうことに対する方法や、アイデアがあるようでしたら、私のマシュマロでもいいですし、こびナビのお問い合わせでもいいので、ぜひご連絡いただきたいです。
もう1件は漫画企画です。
木下先生、プロモーションお願いします。

木下喬弘
はい、ありがとうございます。
こびナビでは、コロナマンガ大賞と題しまして、コロナワクチンの仕組みであるとか、コロナ後の生活に対する期待、といったテーマでの漫画、そしてイラストを募集しています。
部門は3つありまして、新型コロナワクチンの仕組みを漫画で書きましょう、コロナ禍での生活、コロナ後の生活に対する期待に対する漫画、イラストそれぞれの部門に対して応募を受け付けています。

審査員が豪華で、
「N‘s あおい」のこしのりょう先生、ホリエモンさん、ゆうこすさん、宇宙兄弟やドラゴン桜、バガボンドと言った漫画を編集された佐渡島さん、NARUTO や鬼滅の刃のゲームを製作されている松山さん、そういったメンバーに入っていただいて、漫画コンテストを行います。
8月7日まで応募を受け付けております。
メディアの方にもかなりご協力をいただいておりまして、日刊SPA!、女子SPA!、メディカルノートっていう医療系のメディア、TOKYO MX が運営してる MedPeer Channel という医療従事者向けのメディアにも、集まってきた漫画をぜひ公開したいと言っていただいてますので、そういったところに漫画やイラストが掲載される可能性が十分あると思って頂いていいと思います。
今もう既に7件応募が来ているんですが、特に一枚絵のイラストとかであればハードル低いと思いますので、ぜひ皆さんにも応募していただきたいと思っています。
よろしくお願いします。

峰宗太郎
はい、ありがとうございます。
で、安川先生は応募する作品書きましたか?

安川康介
僕は「ワクワクチン太郎」っていう桃太郎みたいな話をストーリー作っていまして。

木下喬弘
はい、却下!

峰宗太郎
リスナーにうろんちゃんがいる。

安川康介
うろん先生いますね!

峰宗太郎
うろんちゃんがいるところでこういうことを言うと、またこれ調子に乗って、タイムラインでうろんちゃんが著作権とパブリシティ権を無視したエロい画像に安川先生のコメントを乗せますので、これ楽しみに。

安川康介
僕、うろん先生のツイート、とても注目して見てます。

峰宗太郎
まあ、うろん先生も足骨折してるようなんで、お大事にという感じですね。
はい、締まりがおかしくなりましたが、結構時間もオーバーしています。
今日は、僕のテンションが本当に低くてすみません。
今日はまだ1食も食べてなくて結構ヘロヘロしてたり、喉が乾燥してたり、そういうのは言い訳なんですが、雑談の日も1週間のうち1回ぐらいあっていいかなというノリでいつもやっています。
今日は盛り上がるというよりは、静かに聴いていただく回になりまして、話題はとっ散らかりましたが、色々な話題があるということを再確認して頂いて、こびナビの活動にも注目を続けていただけると、とても有難いと思っています。

特に何もないですね?
なければ、今日はここまでとしたいと思います。
日本の皆さん、特に東京にいる皆さん、予防をしっかり、今は接触を減らす時です。
もうバカな政治家のことは放っておいて、とにかく国民は自衛しなければいけない状況です。
だから皆さん感染しないように、またワクチンを打てる機会があればすみやかに、淡々と準備していただいて、そのチャンスに臨んでいただければいいなと思っています。
引き続き基本を守ってください、よろしくお願いします。
皆さんぜひ健康で、うろんちゃんは足をお大事に、日本の皆さん、良い1日をお過ごしください。
ありがとうございました。

登壇者一同
ありがとうございました。

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