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「紙が好き」 世界の民話

 「○みが好き~ 僕が生きる~ 上でこれ以上の意味は 無いくらい」
 表題を見て、そんな歌が思い浮かんだら、あなたはそこそこのミスチル通です。
 「月」「自販機」「缶コーヒー」そんな言葉が浮かんだら、あなたは相当なミスチル通です。

 ミスチルも好きですが、紙の本が好きな私です。
 最近はこの本を愛しています。

 矢崎源九郎 編 「子どもに聞かせる 世界の民話」 実業之日本社

 81の国から民話が集められています。一版一刷が1961年。中古絵本マーケットで手にとったこの本が2006年の39刷。重みがあるなと感じていたら、編者の矢崎源九郎氏の紹介欄に、1921年生まれ、1967年没と記載されており、若くして亡くなったことに気付きました。40歳でこの本を編さんし、享年46歳。

 装幀、口絵は、藤城清治氏の影絵。あの「しずくの首飾り」と同じですよ!さばくの駅ではたらく駅員たちが旅に出る「三人の旅人」を、光村の国語教科書で5年生の時に学んだ人もいると思います。それが含まれた本です。懐かしい。ジョーン・エイキン 作。

 あとがきを見ると、藤城氏は矢崎氏の長年の親友と書いてあり、そこにも「文化」「芸術」を感じたのでありました。

 この本の面白いところの1つが、合間合間に「母のページ」というコーナーがあって、母親や教師の座談会の記録があるのです。もう60年も前の様子だからいかにも昭和な写真が載っているのですが、「成績を上げることにしか目を向けていない」とか「漫画ばかりで他の本を読まない」とか、今の時代にも言えることが書いてあって思わずニヤリとしてしまいました。

 400ページもあるこの本。字も小さいです。80編のうち読んだのはまだ10編ほど。2日に1編ほど、寝床で娘に読み聞かせています。

 絵がなくても引き込まれるのですね。むしろ絵がないから想像が膨らむし、「言葉」に一層耳を研ぎ澄ますのかもしれません。

 簡単な感想をメモしていっています。そうでもしないと、どれを読んだのか、どんな話だったか、すぐ忘れてしまうんですよね。

 前任校で、年に1回、「語り」を聞く機会がありました。その時に聞いたお話が、この本に載っていました。「ひなどりとネコ」です。くしゃみにまつわる、ユーモラスだけれどハラハラするお話。ミャンマーのお話だそうです。懐かしく思い出しました。

 「語り」といえば、うちの近くの図書館で隔週で開かれている読み聞かせ会でも「語り」がある時があります。実は私は「語り」を楽しみに行っています。

 「語り」とは、文章を読まずにソラで語るものです。
 録画、編集すれば覚えなくても動画はできます。コンピュータに読ませれば最近ではかなり自然に読んでくれます。動画サイトで探せば、民話はいくらでもでてきます。人気の動画がおすすめで出てきます。
 しかし、それらにはないものが「語り」にはあります。その人が、これはと思って選んだお話を、時間を書けて覚えて、目の前で、こちらを見ながら語る・・・
 たくさん読んで選び、「覚える」。何と非効率でしょう。しかし、感性が揺さぶられるのです。デジタルには代えられないものです。

 紙の本で、作者や人物に思いを馳せてページをめくる。装幀に酔う。
 「語り」で、心を研ぎ澄ます。

 ・・・デジタルに触れれば触れるほど、私は、「生」の価値に惹かれます。

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