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国語5年「大造じいさんとガン」光村 中高学年でExcelを使う例 個別+共有 単元通しての個々人の足跡

 低学年を数年受け持つと、どうしても文字入力以外の実践例に偏ります。振り返ると、算数科が多いです。それだけ、教師と児童、どちらも困り感が大きかったのが算数です。GIGA端末活用アイデアが湧きやすかったのも算数です。
 そこで、あえて、高学年国語の物語文の学習での使用例を考えてみました。

 国語で最近参考にさせていただいているのは、新潟大学附属新潟小の中野裕己氏の実践です。この著書は光村の実践例がどの学年のものも多数載っていて大変参考になります。オンライン研究大会も拝見しました。授業も協議会も「面白い」!

 ただ活用例が載っているだけでなく、従来の学習過程の課題意識がまずあり、「確かに!」と共感した上で、ICTでどう解決したかが読めるのです。課題意識。目指す子どもの姿。これがあってのICT活用であり授業改善だと再確認しました。(今後の研修では私も「課題意識」を先に述べようと思います。)
 国語教育専門の教師がどこに課題意識を感じているのかも勉強になります。

 この著書のP106に、東京書籍掲載「注文の多い料理店」で、繰り返しを全て一斉授業で取り上げると膨大な時間がかかるという問題、一部を取り上げると繰り返しの面白さが見えにくくなる問題について書かれており、Googleスプレッドシート(Excelのようなもの)を使用した例がありました。
 「個人用ファイル」で1人学びをし、8つの扉のメッセージを整理。その後、問い「自分だったら、山猫のたくらみにどこで気付くか」について、個人用ファイルの★欄に書きます。これが「共有用ファイル」にリンクされていて、児童は「共有用ファイル」を見て交流するのです。(Googleの場合は、「IMPORTRANGE関数」を使うそうです。検索してみてください。)

 リンクと言いましたが、正しくは「セルの参照」です。仕方は、例えばこちらが参考になります。要は、=を使うのです。


 共有用ファイルに個人用ファイルをリンクさせなくても、jamboardやパワポ、ホワイトボードアプリ、Excel等で、同様のことはできます。多くの方がしています。しかし、それだと、個人用ファイルには個々人の記述が残りません。これは例えば算数でも同じで、共同編集用のパワポに個々人が書き込んだものは自分用のファイルには残らず、単元通しての個人の学びの足跡の閲覧性がかなり悪いのです。ノートに別途書き写すのも、印刷してノートに貼るのも、時間が惜しいです。

 Excelはこれを解決するものですね。手描きの描画はリンクで表示できませんが、
 文字ならば、「セルの参照」をすることで、個人用ファイルに記述したものが同時に共有用ファイルに表示され、交流できるのです。

 早速、試しに作ろうとしました。

・・・しかし、

「共有ファイル」のセルに=を入れ、「個人ファイル」の特定のセルを選択し、・・・それを人数分、項目分、リンクを貼るのが大変で大変で、頓挫しました。私は時間をかければできますが、この作業を全国の教員がしようとするとは思えません。

 ・・・ふと私は、リンクを貼らなくても、

児童が自分でコピペすればよいのでは?

と思いました。

 とりあえず個人用ファイルに書く。そしてそれをコピーして、共有ファイルなり、Teamsのスレッドの投稿欄なりに貼り付ければよいのです。

 ちなみに、左手のショートカットを使えば、コピーは【Ctrl+C】、ペーストは【Ctrl+V】です。速い!

 作業の途中経過は互いに見られませんが、ペーストし合ったものは見合えます。「途中経過を見てそれをマネする子がいるのが気になる。」「そうさせたくない。」そんな時に、この方法はうってつけではないでしょうか。

 しかも、「コメント」の機能も使えます。「校閲」タブから。子ども同士でも可。教師からももちろん可。


 とりあえず、今の教科書の手引きにそって単元を計画した場合のワークシートを作ってみました。ダウンロードもできます。

 まだまだリモート授業やハイブリッド授業も行われていることと思います。ファイルをTeamsで送って、1人学びでこれを使うのもよいと思います。(Teamsの「ファイル」に入れ、「・・・」からリンクを取得し、リンクを投稿して児童に知らせます。)
 ノートに書いて写真で見せ合うよりは、「ファイルを送れる」「コピペできる」というデジタルの利点を感じることができるのではないでしょうか。
 大人も毎日使っていますものね。手書きで表を作ることって、黒板に書く時くらいです。

1 個人用ファイル
 これを学級のTeamの「ファイル」に入れ、児童個々人にダウンロードさせて作業します。しかしこれだと進捗を教師PCから見ることができないので、見たい場合は、全員分のExcelファイルを作成し、「ファイル」に入れておきます。ただし、教師からだけでなく、他の児童同士でも開けます。「わざと他人のファイルを編集しないこと」「編集すると足跡が残ること」を伝えておくとよいと思います。編集履歴は「バージョン履歴」から見ることができます。

画像1

画像2


2 共同編集用ファイル(1つのファイルを全員で同時編集。途中経過を見合えるもの)

3 コピペする共有用ファイル


 これが、ねらいである「優れた表現に着目」「魅力を伝え合う」が主体的に達成できるための一助となることを願っています。

 あくまで一助です。これを元に、個々人の考えを把握し、意図的指名をしたり、問い返しを用意したり、比べて「同じ・似ている・違う」に気付かせ「どういうこと?」等と学び合いが生まれるようにしたり、どうファシリテートするかはT1次第だと思います。

[2022年2月13日追記]

追記1

 ちなみに、中野氏はP132~で「大造じいさんとガン」の実践を掲載しています。これは「対面✖オンライン」の項で、教師が児童の入力したシートを見て把握し、考えの交流プランを事前に構想することで、考えと根拠を整理でき、叙述と叙述を結びつけることができる等、交流が充実する例です。
 発問は「残雪を逃したのはどうしてか」です。

追記2

 附属小金井小のYouTubeに、デジタル教科書を使用した「大造じいさんとガン」の授業がありました。

 
 これによれば、デジタル教科書をなぞるだけでコピーとなり、表にすぐペーストできるのです。
 鈴木氏の解説を整理すると、
①引用が簡単なので、思考の時間が増えた。
②対話、発言を引き出すことができた。
③児童の学びの選択肢が増やせた。 とのことです。

 ③については、読むのが「紙の教科書」の子もいれば、「デジタル教科書」の子もいて、さらには「読み上げ」を使う子もいたようです。
 アウトプットの際も、デジタルな「マイ黒板」を選ぶ子もいれば、「紙のノート」を選ぶ子もいました。
 ①については、引用文の札、枠、矢印、デジタル付箋を自由に使う方が、ルールにとらわれず課題に集中できるようです。
 また、②については、アイデアを出さざるを得ず、そうして作ったものは説明したくなるものなので、意欲的に対話をしていたということです。

 他にも、
④段落番号を一瞬で入れてくれる。
⑤傍線を引いたり消したりが自由にできる。試行錯誤ができる。
思考、作業に没頭するので、個別に支援が必要な子への支援がしやすい。
というメリットもあるようです。もちろん、デメリットもあり、それについても述べておられますので、気になる方は動画をご覧ください。

 ・・・デジタル教科書がない本校の現状ですが、パワポ等に教科書本文を貼り付け(OCRを使う等工夫するか、画像を貼り付ける)、段落番号も入れれば、似たようなものができるわけですよね。上の①~⑥のほとんどに当てはまるのではないでしょうか。パワポやjamboardがまさに「マイ黒板」なのではと思います。

追記3

 奈須正裕氏も「大造じいさんとガン」に著書で触れていました。ある子が文学的な見方・考え方ではなく生物学的な見方・考え方で読んだとのこと。すると、大きさや餌からして、ガンではなくカルガモであるとの結論に達した、とのことです!そしてこの子は「生物学的に見ればおかしいこの作品になぜここまで引き込まれるのか」という問いをもち、この後、読者論的なアプローチ、作品論、作家論的な読みを展開し、まさに探究と言える学びを行った、という印象的なエピソード。「見方・考え方」を働かせて学ぶとはどういうことかについて書かれた項です。


こちらのP51です。


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