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【cotreeカレッジ】トラウマカウンセリング基礎講座 〜トラウマを優しく治す身体指向性アプローチを学ぶ〜

トラウマはその人の性格や人生に多くの影響を与えます。また、対応の仕方次第でトラウマが悪化してしまうこともあります。

今回は、精神科医・産業医である前田佳宏先生に、「トラウマカウンセリング基礎講座〜トラウマを優しく治す身体志向性アプローチを学ぶ〜」をテーマにお話しいただきました。

※この記事は、過去に行われた講演内容を要約したものです。
【講演会を全編公開している動画はこちら】


トラウマの理解

トラウマには大きく分けて2つの種類があります。
まず1つは単回性です。例えば地震などの災害は1回の経験からくるトラウマです。2つ目は複雑性で、長期間いろんなシーンで思い起こされるトラウマのことです。例えば虐待の経験などが挙げられます。特に複雑性の場合は、人間関係の構築に影響が出ることがあります。

また、トラウマが悪化した心的外傷後ストレス(PTSD)は、フラッシュバックや悪夢などの侵入症状が長期間続く状態です。
通常のトラウマは自然に良くなっていきますが、それが長引くと心的外傷後ストレス(PTSD)として治療が必要になります。

トラウマの治療

エビデンスが確立されている治療方法では以下が挙げられます。

・持続暴露法
怖かった体験や感覚を繰り返し思い出していくことで、トラウマの反応を落ち着かせていく治療方法です。
ただしこの方法は辛く感じる人が多いため、なかなか耐えられず悪化してしまい、治療が中断になったりそもそも治療できないパターンも多くあります。

・認知処理療法
持続暴露法の考え方とは逆に、直接トラウマを思い出さないアプローチがあります。認知処理療法という方法ですが、これは認知行動療法の発展のような考え方です。
トラウマの原因となる事象が起きる前の考え方に戻してみようというアプローチで、トラウマによって植えつけられた価値観や考え方の影響を減らしていきます。

・EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)
眼球を動かしながらトラウマ体験を思い出していくことで改善を目指す方法です。
通常、トラウマが起きる場面では眼球は硬直しがちなので、あえて動かしながら思い出していきます。
これによって、少し距離を置いてトラウマになった記憶を思い出すことができ、少し楽に思い出すことで反応を落ち着かせていくという治療方法です。

・トラウマ焦点化認知行動療法
前述の3つは成人のクライアント向けに効果的な方法でしたが、子どものクライアントに効果的な方法として、トラウマ焦点化認知行動療法があります。
これは、持続暴露療法と認知症医療法を組み合わせ、家族療法を合わせたような治療法です。

治療のステップを示しながら進めていく方法で、まずプログラムの説明をします。トラウマ克服に対して「こういう風に良くしていこう」と説明をして、見通しをつけていきます。
トラウマはいきなり改善することが難しいので、少しずつよくしていくという認識合わせをすることが重要です。

その上で、認知行動療法の技法を用いて、クライアントの感情や考えを調整するスキルを身に着けていきます。この方法で、日常的なトリガーがあっても何とか対処できる状態を目指します。
その後、トラウマの体験について扱っていきます。持続暴露法に近い方法で、苦しいことを少しずつ思い出していきます。感情や緊張に対して筋弛緩法で落ち着かせて考え方を変化させていきます。日常的に起こるトリガーへの反応をしっかりと落ち着かせることを徹底的に行います。
最後に、大切な人と共有するという方法を取ります。特に子どもにとっては、親などの身近な人がそのトラウマ体験のことをどう捉えて受け取ったかが重要です。

トラウマの支援

・「トラウマが治る」とは?
よく「トラウマの記憶消せますか?」と聞かれますが、記憶を完全に消すことは難しいので、記憶を思い出してもトラウマ反応は出てこないようにしていきます。そして、思い出しても大丈夫という状態を作っていきます。記憶に伴っている感情を落ち着かせていくことで、思い出しても他人事のように客観的に向き合えるようになります。
そうして、「もう終わったことなんだ」と身体に思わせることがゴールです。そのために、体を芯から緩ませていくことが重要です。

・セラピストが意識したい3つのポイント
1つ目が、セラピストとクライアントの治療関係です。ありのままの気持ちを受け止めてくれる、セラピストが安心を与える存在であるかが大事です。

2つ目が、クライアントが、セラピストはトラウマのことを理解してくれるという感覚を持つことです。
セラピストに理解してもらえないとより辛くなってしまうし、本人にも分からない反応もあるので、それを含めた理解があると克服に繋がります。

3つ目が、セラピストがクライアントとどう克服するか一緒に考えることです。改善するまでの見通しを伝えて、ゴールの状態を共有することが重要です。

本講演の詳細は、講演会の動画をご覧ください。

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