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【cotreeカレッジ】「共感」をアップデートするー“無難な共感的応答”から抜け出すために

※この記事は、過去に行われた講演内容を要約したものです。
【講演会を全編公開している動画はこちら】

カウンセリングを実践する中で、「つらいです」というクライエントに「つらいんですね」と応答するような「無難な共感的応答」で終わってしまっている場面はないでしょうか?

何と言っていいか分からないとき、フリーズしてしまい何も言えないとき、クライエントに素直に共感できないとき、言葉だけの「無難な共感的応答」でやり過ごしてはいないでしょうか?

今回は、京都大学 学生総合支援機構 学生相談部門 教授 杉原保史先生に、古くて新しい概念である「共感」についてお話しいただきました。共感に対する理解を深め、実践に活かす方法をお伝えします。



共感っぽい無難な応答に気づき、その場面を探索しよう

よく見かけるカウンセラーの対応方針として、「受容、共感、傾聴」、「寄り添う」、「丁寧に話を聴く」、「安心してお話ししてもらえるように聴く」などがあります。
しかし、それは本当に「共感」と言えるのでしょうか。
なぜ「共感っぽい応答」をしてしまうのか?また、「共感っぽい無難な応答」に気づき、その場面を探索するには、どうすれば良いのか?をお話していきます。

共感が円滑にいかない場面の治療的意義

受容や共感といったワードはカウンセラーにとってはとても馴染み深いキーワードです。相手の話を否定しないで受け止めたり、「つらかったですね」「~~なんですね」と受容的な表現をしたりすることは、クライエントと接する上で大事であることは間違いありません。

しかし、クライエントの話を率直に受け止められないときもあるはずです。
例えば、クライエントの話を聴いていて恐ろしく感じたり、反対にとても強い慈しみの感情が湧き上がってきたりするような場面。こういった場面では素直にクライエントに共感的な理解を示せないかもしれません。
しかし、そのような場面こそ、ただ通過させてしまわず、粘り強くそこにとどまろうと努力することが必要です。なぜなら、素直に共感できないような場面はクライエントの内面の理解を深め、治療関係を深めるチャンスだからです。

治療同盟の亀裂に気づき、修復する

上手く共感できないときに、「クライエントの気持ちや思いが分からないことは恥だ」「戸惑い・不安・反感などの気持ちを伝えてはいけない」と感じてしまうこともあるかもしれません。「共感っぽい応答」はカウンセラーがその場面で居心地悪く感じている「素の気持ち」を「専門家としての職業的仮面」の背後に隠すために生まれてくるものです。

「共感っぽい応答」は、カウンセラーとクライエントの治療同盟を表面的に良好に保とうとするなかで出てきてしまうものかもしれません。
しかし、治療同盟が常に良好に保たれていることは治療効果を高める上で必ずしも良いこととは言えません。むしろ、治療効果は、治療同盟に亀裂が入り、それが修復される場合に最も高くなります。
クライエントのためにこそ、「共感っぽい応答」によって治療同盟を保とうとするよりも、一度立ち止まって「さっきの〜の話ですけど、何と言っていいか分からず、そのまま流れてしまったんですけど~~」と話を戻してみることが大事になります。

クライエントとカウンセラーの相互共感:共感の現代的なモデル

20世紀的な心理療法の考え方では、セラピー場面は、それぞれに独立した個人という存在がまずあって、その個人と個人が関係する場所であるといった見方が優位だったと言えるでしょう。こういった見方とは対照的に、近年、個人の独立性はそれほど確かなものではなく、個人の境界は関係の中で曖昧になりうるという見方が強くなってきています。
関係に先立って独立した個人を措定せず、個人は関係の中に最初から埋め込まれていて、常に互いに影響を与え合いながら発展する関係の中の1つの中心だという見方です。

「共感」においてもこのような考え方のシフトが起こってきています。カウンセラーが主導して、カウンセラーがクライエントに共感するということばかりではなく、クライエントとカウンセラーが相互に共感し合いながら治療関係を発展させていくという見方がますます重要になってきています。


この記事の詳細については、講演会のアーカイブ動画をぜひご覧ください。
https://vimeo.com/ondemand/cotreecollege01


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