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金髪のエメラルド#13 チョコミン党に入ったきっかけ


早く生まれたはずなのに私は幼い頃から何かと人より遅れていた。いや、遅れていると周りに刷り込まれていたのかもしれない。早生まれは身体が小さい。10ヵ月近くも遅れをとっているのだから当然だ。思えば同学年に体力知力など常に劣等感を感じながら学校生活を過ごしていた。幼いころの経験は後の人生に大きく影響を与えるものだ。



うるせえ。また下の奴らが騒ぎ出した。低周波だすな。うるせえなあもう。うるさいうるさいうるさい。老いぼれじじいのヒステリー五月蠅すぎ。これがじじいになる前は穏やかで優しいかったのなら許せるが、若い時から口やかましかったから腹が立つ。じじいもばばあもヒス。左から右からダブルウーファー勘弁してよ。両方五月蠅いってレアなんじゃないのかな。大抵一方が口やかましいと、もう一方は控えめなのがスタンダードだと思うのだが。あーうるさ。たまらないもう嫌だタスケテチョコミント。


赤城乳業のチョコミントアイス箱買いした。ストレスたまるからチョコミント。働いたご褒美にチョコミント。ラジオのお供にチョコミント。やっぱりチョコミントは良いよなあ。


チョコミントは好き嫌い別れるけどチョコミン党ができるぐらいハマる人がいる。わかる人にはわかる味。それがチョコミント。な~んてな。



私は幼い頃から何かと人より遅れていた。

走りは小4まではビリだった。しかし高学年となり周りが第ニ次成長しはじめると、成長遅れのガリの私が次の年から走りで1位に躍り出るという逆転現象が起こった。だがその現象は一時的な物だった。栄光は2年ほどで収束した。



誤解ばかりされていた。

中学のジャージを着て買い物しているのに小学生と間違われ一人で買い物偉いねぇとレジのおばさんに言われたり、バスの運転手に小学生は半額でいいよとお金を返されたり、大人になって一人暮らしをしていてもあの部屋に家出の中学生が出入りしてると誰が吹き込んだのかしらんが、探偵らしき男が何度かチャイムを鳴らしマンション前の電信柱の影からこちらの部屋の様子を伺っていた事もあった。


トレンドにも疎かった。

高校になると周りがファッション誌などを学校で回し読み、おしゃれをしているというのに、バイト代は香港映画観てジャッキーチェンの写真集に費やし、帰宅すると裏山で側転倒立回転ばかりしていた。女子高生のバイブル「セブンティーン」を購読したのも17歳ではなく8年遅れの25歳になってからだった。都会の女子高生の持ち物やメイク、恋バナなど新鮮な情報が満載で夢中になり隅々の小さい文字一語一句まで読み込んだものだ。


初めてチョコミントを口にしたのは中学の頃だった。


中学では毎日カツアゲもどきをされていた。
一緒に通いたくなかったが、なぜかカツアゲ子と通学するハメになった。競争で負けたら100円ねと勝手にルールを決められ、通学路を爆走した。いつも負けた。その度に100円支払っていた。カツアゲ子の家で夏休みに宿題をしたり人生ゲームをしたりした。カツアゲ子は私が勝ちそうになると太ももにシャーペンを突き刺してきたりするから嫌だった。私は苦笑いするしかなかった。

カツアゲ子は上に姉がいたからトレンドを先取りしていた。私は何も知らなかった。濡れ髪のまま寝ると寝ぐせがひどくなるというシステムも知らず髪がいつもキャプテン翼のように跳ねていた。見かねたカツアゲ子の姉がある日髪につけるムースをくれた。アゲ子の姉はアゲ子と違って優しかった。


アゲ子と過ごした夏休み、教えてもらったのがセブンティーンのチョコミントアイスだった。宿題が終わるとカツアゲ子と公園に行った。公園の片隅にある自動販売機で「チョコミントアイスって知ってる?美味しいんじょ」と私が渡した100円玉で買った。縁石に腰掛けて一緒に食べた。こんな美味しい味があるなんて。大人の階段を昇った気になった。


噂ではカツアゲ子は外国人と結婚して5人の子供の親とのこと。外国で暮らしているらしい。どの面下げて子供を教育してるのやらとは思うけど、今さらどうでもいい。カツアゲしていたことは内緒にしといてやるよ。カツアゲ子さん。


あの夏以来、チョコミントとは長い付き合いだ。
私のイチオシは赤城乳業のチョコミントバー。クールなミントにチョコチップがパリパリと音を立てる、美味しい。
贅沢気分に浸りたい日は、サーティワンアイスかハーゲンダッツのチョコミントをチョイスする。風呂上がりにキャンドル焚いて、頭にターバン巻いて、好きな動画を見ながら食べるのがお気に入りのスタイル。モデルになれる。


セブンティーンアイスは久しく食べていない。
この週末に久しぶりに味わってみようと思う。
「カツアゲ子を思い出し青春時代を振り返る。」などということをするかどうかはわからないが。


「17とか31とか」


つづく


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