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すき焼きを食べるための5カウント


土曜日の夜、数年ぶりにすき焼きを作った。
出来立てのすき焼きを前に、むすめが眠くなりギャン泣き。0.5秒で身体が動き、寝かしつけるために寝室にいった。

5秒間心の中で数えて待つことができたら、夫がむすめを抱っこして、その間にすき焼きを食べることができたのかもしれない。

すき焼きを食べるための5カウント。

いまのわたしに足りないことだ。


****



近所のスーパーは、肉も魚も野菜もめちゃくちゃに安い。
レジはいつも大混雑なので、週に1回の買い出しに留めている。
かごいっぱいに買って4,000円程度。
食費は、月2万円程度でやりくりができている。
5人家族にしては相当安いだろう。

夫は早朝に出勤するので、朝と昼の弁当を持っていく。
平日は弁当も夕飯も全て手作り。
その代わり土日に外食をしたり、少し離れたスーパーにお惣菜を買いに行き、楽をする。
土日に楽ができる分、平日家事を頑張ることができている。


****


土曜日の夕方。
その日は30℃近くまで気温が上がり、さっぱりしたものを食べたい気分だった。
加えて、三女が風邪をひき、水曜日の夜から毎晩夜泣きをしていた。
ご飯をつくる気力などない。

アニメが終わってからスーパーにお弁当を買いに行こうと約束をして、出かける準備をしていた。
しかし、この作戦は大失敗だった。

アニメに映るすき焼きをみて、むすめたちが
「すき焼きたべたい!」
と言い出したのだ。

アニメを見せないで出発すればよかった…と後悔した。
しかし三女の体調不良で、その日むすめたちを公園に連れて行くことができなかったので、自分で自分の尻を叩き、気合いをいれてすき焼きを作ることにした。


****


わたしは、近所のスーパーに走った。
水菜、舞茸、えのき、ネギ、焼き豆腐、白滝、牛肉、すき焼きのタレを買い、長い列を作るレジに並ぶ。会計は3,000円。
いつもは豚肉だが、奮発して牛肉にした。牛肉を買ったのにこの値段はすごく安い。

急いで帰ってすき焼きを作る。
三女の離乳食も用意し、夫が食べさせる。
その間にわたしはお風呂に入る。


全ての用意が整った。

俗にいう"関東風"のすき焼き


すき焼きを前にむすめたちは目を輝かせている。
しかし、このタイミングで三女が大声で泣き始めた。お腹いっぱいになり眠くなったようだ。
おんぶをしてみたがダメだった。

出来立てのすき焼きを横目に、わたしは三女の寝かしつけにいった。
いつもなら15分くらいでおわる寝かしつけ。
今日に限って1時間30分もかかってしまった。
リビングに戻って時計をみると、時刻は21時。
すき焼きはタッパに詰められ、冷蔵庫に入っていた。

悲しみにくれながら、布団に入った。
牛肉のすき焼き、出来立てで食べたかった。
この3日、夜泣き続きで寝不足だったことも相まって相当に落ち込んだ。

たかがすき焼き、されどすき焼き。
すき焼きでこんなに落ち込んだのは、はじめてだ。


****


なんでいつも犠牲になるのは"お母さん"なのか。

すき焼きの材料を仕入れ、作ったのに食べられないのはお母さん。
夜泣きをして寝不足になるのはお母さん。

子どもの半分はお父さんの遺伝子でできているはずなのに、なんで犠牲になるのはいつもお母さんなのか。


わたしの夫はとても優しいし、協力的だ。
だが、反射的に0.5秒で身体が動いてしまう。
わたしが先に動くから、夫がそれ以外の家事をやる流れにいつもなる。


5秒で良い。
5秒で良いから動くのを待つことができたら、その間に夫が動けたのではないだろうか。

夫が動くことができたら、交代で出来立てのすき焼きを食べられたのかもしれない。
お互いに歩み寄ることができたら、その5秒が4秒、3秒と縮まるのかもしれない。



心の中で5カウント。


その5秒で、世のお母さんの負担は少しだけ軽くなるのではないだろうか。

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