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【選挙ウォッチャー】 東京都知事選2020・ホリエモン新党の選挙戦略。

悲しいことに、世の中の9割の人たちは政治や選挙のことを真剣に考えていません。かくいう僕も「選挙ウォッチャー」なんていうものを仕事にするまで、あまり政治や選挙について真剣に考えていませんでした。だから、東京都知事選がバカとカルトで溢れていても、「面白い」ぐらいにしか思っていなかったのです。ところが、「選挙ウォッチャー」という仕事を通じて、政治や選挙に真剣に向き合い、世の中で何が起こっているのかを観察してみると、これはけっして笑える話ではなかったことを知りました。今回の東京都知事選も、うっかり反知性派カルト集団に騙され、絶対に投票してはいけないレベルのバカに投票してしまう人がいるかもしれないので、1人でも多くの方に「ホリエモン新党」のカルトぶりをご紹介したいと思います。


■ 3連ポスター戦略は、全然すごくない

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選挙のことをよく知らない人は、立花孝志だけ3枚のポスターを貼っていることを「すごい!」と思うかもしれません。実際、このように3枚貼ることは合法で、ちっとも公選法違反ではないからです。「こんな発想をするなんて天才だ!」と思うかもしれませんが、実際には天才でもなければ、ただのアホです。どうしてこんなことができるかと言えば、堀江貴文さんが写っているポスターにはそれぞれ服部修という人と、斉藤健一郎という人が立候補しています。選挙ポスターと言えば、顔写真と名前が書かれているものと相場が決まっていますが、べつに顔を出さなければならないというルールもなければ、名前を出さなければならないというルールもありません。では、どうして決まったように、みんなが顔写真と名前が書かれたポスターを貼るのかと言ったら、これが一番票を獲得できるからです。名前がわからなかったら投票できないし、顔がわからない奴に投票したいとは思いません。顔と名前を出すというのは、当選するためには絶対的に必要な条件なのです。ところが、最初から当選する気がなかったら話は別です。実のところ、服部修さんも斉藤健一郎さんも、立花孝志さんを引き立たせるために立候補しているだけなので、最初から当選するつもりはありません。だから、自分の名前や顔を出さず、みんなによく知られている堀江貴文さんの顔写真と「ホリエモン」という愛称を並べているのです。ちなみに、立花孝志代表自らが語っているところですが、「ホリエモン新党」と堀江貴文さんは名前を使わせてもらう許可こそ取っているものの、何の関係もないそうです。

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勘の良い人なら、もう一つ疑問に思うことがあるでしょう。それは、この方法がまかり通るなら「どうしてみんなこのやり方をしないのか」ということです。ホリエモン新党は3人ですが、いっそのこと20人ぐらい立候補させて、掲示板のほとんどをジャックしてしまうことだってできるだろうに、そんなことをする人はどこにもいません。熱烈な支持者をたくさん持つ日本第一党の桜井誠さんだったら、きっと、もっと多くのポスターを貼ることだってできたことでしょう。しかし、どうしてやらないのか。その答えはめちゃくちゃ簡単です。

「効果がないから」。

そうです、わざわざダミーの候補を立候補させてまでポスターを3枚貼ることに何の意味もないからです。東京都知事選に立候補するためには、1人300万円の供託金を支払わなければなりません。他の候補が300万円払っている中、立花孝志を中心としたホリエモン新党は900万円支払っているわけです。他の人の3倍の供託金を払ったからといって、他の人より3倍の票を獲得できるわけではありません。服部修さんに投票する人もいるだろうし、斉藤健一郎さんに投票する人もいることでしょう。そう考えると、票が3倍になるどころか、服部修さんや斉藤健一郎さんが立候補していなければまとめることができたであろう立花孝志さんに入るはずの票が分散し、立花孝志さんが獲得できる票は「むしろ減ってしまう」という効果を生むことになります。宝くじであれば、1枚買うより3枚買った方が「当たる可能性は3倍に増える」ことになるわけですが、選挙の場合は「目立つ」という効果こそあれど、票を増やすことにはならないので、「お金はかかるし、票は減るし」ということで、誰もそんなことをしないのです。つまり、これは頭にパンティーをかぶって渋谷のスクランブル交差点を全裸で走るのと同じで、そんなことをやる奴がいたら「スゴい!」とは思うけど、そんなことを誰もやりません。やったら逮捕されるし、人生を棒に振ることになりかねないので、想像することはあっても誰もやらないのです。つまり、立花孝志さんがやっていることは「天才」ではなく、「バカ」なのです。


■ 話題になるなら誰でも登壇させるカルト集団

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「ホリエモン新党」「NHKから国民を守る党」には、モラルなんていうものはありません。先日、新橋駅前で行われた「ホリエモン新党」の街頭演説には、炎上系YouTuber・へずまりゅう氏が登壇しました。へずまりゅう氏は、最近、沖縄の首里城再建を願う寄せ書きのボードに、大きく自分のサインをして問題になりました。沖縄の首里城が昨年10月31日に火事で焼失してしまったことは皆さんもご存知だと思います。首里城というのは、琉球王国の歴史的建造物で、琉球文化のシンボルとも言うべき建物。沖縄の人たちにとっては「聖地」であり、心の拠り所でもあります。東京で言えば「皇居」のような所だと思っていただければ分かりやすいと思います。そんな大切な場所が燃えてしまったのだから、みんなが再建を望むのは当然だし、今年6月の沖縄県議選でも多くの候補者が「首里城の再建」を公約に掲げていました。首里城再建のための基金も募集されていて、そうは言っても、みんな億万長者ではないので、お気持ち程度の金額になってはしまうかもしれないけれど、お財布から可能な限りのお金を出し、寄せ書きのボードにメッセージを書き込んだのです。首里城は有名な観光地でもあるので、たくさんの人の「思い出の場所」になっています。ある人は首里城で告白をしてフラれちゃったかもしれないし、ある人は新婚旅行で沖縄を訪れた際に首里城に立ち寄り、ステージの琉球舞踊に感動するピュアな横顔を見て「この人と結婚できてよかった」と感じたことでしょう。あれから25年、お互いにオジサンとオバサンになったけれど、あの時と変わらないぐらいにラブラブな夫婦生活を過ごしているので、また二人で首里城を訪れたいという人もいるかもしれないし、その人はもうこの世にいないかもしれません。いろんな人のいろんな思い出が、その寄せ書きボードには詰まっていたし、そこにはみんなの「首里城がもう一度見たい」という願いが詰まっていました。僕も首里城に行ったことがありますが、あんまり時間がなくて隅々まで見ることができなかったので、もう一度、首里城をゆっくり歩いて回りたいです。しかし、そんな寄せ書きボードに、へずまりゅう氏は何をしたのか。炎上して話題になるために、大きな文字でテメエの価値のないサインを書き、みんなの想いやメッセージを台無しにしたのです。

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こんな落書きをされてしまったら、みんなが傷つき、悲しい思いをするだけです。だから、首里城公園管理センターは、今年1月から設置されていたメッセージボードを撤去することを決めました。いくら迷惑系YouTuberとはいえ、やって良いことと悪いことの区別もつかない。そんな人間をホリエモン新党の立花孝志さんは、話題になるからと大々的に告知して、宣伝の材料にしていたのです。

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「はい、えー、NHKをぶっ壊す、からの行ってらっしゃい。ということで明日ですね、急遽、へずまりゅう君、あの迷惑系YouTuberのへずまりゅう君が、まあ、応援というか、選挙演説に来てくれることになりました。6月29日、月曜日、夕方の5時から8時ぐらいまで、新橋駅のSL広場前で、へずまりゅう君がやって来て、選挙演説をするということですので、へずまりゅう君のファンの方、そして、アンチの方、新橋SL広場にお越し下さい。以上です。NHKをぶっ壊す」

言っておきますけど、立花孝志代表がへずまりゅう氏を街頭演説のゲストに招いたのは、首里城の寄せ書きボードに落書きをして問題になった直後。この炎上さえ「おいしい」ものとして、アンチの人にまで新橋SL広場前に来いと言っているのです。これだけ見ても、どれだけ頭のイカれた人間なのかが分かると思います。人間性は下の下の下。こんな奴が政治家なんかになってはいけないのです。話題になれば何をしてもいいというのは「選挙戦略」とは呼びません。一言で言えば、「バカ」なのです。


■ いつまでも不倫路上カーセックスが面白いバカ

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そもそも立花孝志さんが「NHKから国民を守る党」を立ち上げたのは、NHKのスクランブル放送化を実現するためだったはずです。NHKを見ていない人にまで負担させられるNHKの受信料が高すぎる。この話に多くの人が共感したから、「NHKから国民を守る党」が本当は反知性派カルト団体であるにもかかわらず、多くの人が勘違いして票を入れてしまった結果、現在、参議院に1議席を持っているのです。しかし、今回の東京都知事選はあくまで「ホリエモン新党」の公認で立候補しており、その公約は堀江貴文さんが発売した「東京改造計画」という本に書かれていること、すなわち、大麻を解禁してハッピーな気分になったり、女性に働いてもらうためにピルを飲ませたり、会社で浮いている人をどんどんリストラしたりして、東京を改造するという主張だったはずです。ところがどっこい、立花孝志さんの政見放送は終始、NHKの番組キャスターの「不倫・路上・カーセックス」の話で、1年前の参院選でやった「NHKの政見放送で『セックス』を連呼してみる」というギャグを、さらに名誉棄損が成立するレベルにまで下品に落とし込んで、何度もこする始末です。「何度もこするのは、テメエのチンコだけで十分だ、ボケ! キャスター同士のカーセックスに妄想と股間を膨らませて、テメエの汚い右手でも動かしておけ、この犯罪野郎!」と言ってやらなければなりません。自分はちょっと批判記事を書かれたぐらいですぐに名誉棄損で訴えるくせに、自分はNHKの政見放送で思いっきり名誉棄損をかますというのは、一体、どういう了見なんでしょうか。きょうび、「カーセックス」という言葉を連呼して面白いのは小5の夏で終わりです。52歳のオッサンが喜んでテレビで連呼する言葉ではありません。どうしてこんなことになってしまうのかと言ったら、ただ一言、「バカだから」です。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

これまで政治や選挙に真正面から向き合ってこなかった人たちには、立花孝志さんの選挙戦略が斬新に見えてしまうことがあるかもしれません。これまで誰もやったことがない戦略を次々とやっているので、もしや「天才」なのではないかと勘違いしてしまう人もいるかもしれません。しかし、よく考えてみると、どうして今まで誰もやらなかったのかと言ったら、立花孝志さんが天才アイディアマンだからではありません。あまりにバカすぎるので、今日の今日まで誰もやらなかったことをやっているだけ。ここ最近の結果を見てもらえば一目瞭然です。ホリエモン新党は、これまで港区長選野田市議補選に候補者を擁立していますが、港区長選は供託金100万円没収。野田市議補選は一騎打ちだったのに、ダブルスコアやトリプルスコアどころではなく、実に6倍の差をつけられて落選しています。サッカーの結果で言うならば「12-2」みたいな数字です。立花孝志さんのことをよく知らない人たちは、立花孝志さんが自分で「選挙のプロ」を自称しているので、なんとなく選挙に強い人だと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。これまで全国各地の選挙を見てきて、選挙プランナーや選挙コンサルタントと呼ばれる人たちが関わっているような選挙もそれなりに見てきましたが、これだけは言えます。立花孝志さんは「無能」です。その証拠に、今回の東京都知事選ではゲロを吐くほど票を取れず、他の人の3倍払った900万円の供託金は見事に没収されることでしょう。ついでに、お色気作戦を使った東京都議補選もダントツの最下位で落選することでしょう。NHKから国民を守る党、及び、ホリエモン新党は完全にオワコンです。

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