デザイン会社が、ベトナムを拠点にアートカフェを作った理由とその経緯
カイエンは、昨年ベトナムにアートカフェcasaneというカフェを開店しました。今回はなぜデザイン制作をメインにしていた私たちが、ベトナムでカフェを運営することにしたのか? そのきっかけや開店までにコンセプトやブランディングなど色々と試行錯誤した経緯をご紹介したいと思います。
1.WEB制作をしていたデザイン会社が、なぜアートカフェcasaneを企画したのか?
元々、カイエンを創設した際はWEB制作会社として作ったわけではく、「デザイン」を包括的に行なっていく会社として考えていたそうです。社長の前職がWEB制作であったこともあり、その経緯からWEB事業の方がメインになってはいましたが、WEBではなくてリアルなものに対してのアプローチを実験的にでも行なっていきたかったというのが、発端です。
WEB事業が安定し始め、社内事業にも注力できる体制を作ってこれたので、新しい事業起ち上げに興味ありそうな人に声かけてやってみよう!ということでこのプロジェクトは始動しました。
2019年〜ベトナムにもWEB事業としての拠点を持っていたので、コスト的にもチャレンジしやすかったという面から、拠点はベトナムを軸に展開して行くことになりました。
元々はカフェをやりたいという訳ではなく、「どういう場所を作っていくか、どういう器を作っていくか」からのブレストを重ねました。
単に物を売る場所ではなく、ビジネスとコミュニケーションの器として機能するスペースを、「デザインのアプローチ」を通して作りたかったので、その実践として、なぜつくるのか欲求の発露となるシード(種)の部分から遡って体験デザインを試行錯誤し行いました。
2.カフェのコンセプトをどう決めていったのか
カフェのコンセプトは、現代の社会課題からニーズを汲み取るようにして決めていきました。
デジタルを仕事にしている会社が、あえて「Switch」〜デジタルから離れてほっと一息〜をコンセプトにしたのは、世の中癒しのはずのカフェでさえも仕事をしている方がたくさんいたり、仕事と休息の境目がなくなりつつある社会現象に対して、頭をクリアにして休ませることを提案したかったからです。
「デザイン会社だからこそできる新しい事業はなんだろう?」という視点から、アイデア出しを行なって決めていきました。
3.立地選びや内装、ロゴづくりなど、形にするまでのプロセス
当初はオフィスと併設ではなくギャラリー&カフェ単体の物件を探していましたが、カイエンベトナムのメンバーにも間接的でも良いので関わって欲しいという思いから、オフィスとしても機能するような一棟丸ごと借りられる物件を探す方向に変更しました。
内装で意識したことは「日本とベトナムの文化の重ね合い」。
のれんを取り入れてみたり、ベトナムの特有のレンガを採用したり、座椅子のような少し低めの席などはベトナムでの習慣と合わせて内装作りをしました。
Switchというコンセプトから体験をデザインし、上の階に登って行くことで心理的に自分と向き合うような、自分に潜っていくような内装の構造を意識しました。
ロゴに関しては、店の名前でもある「重ね」からイメージするモチーフを複数回試行錯誤しながら丁寧に練り上げていきました。最終的には、ベトナムの蓮の花や日本の桜の花びらがふわりと重なったようなモチーフを採用し、さまざまな受け取り方ができるよう余地を残しました。
4.2022年冬のOPENから2023年秋現在までの試行錯誤
OPEN当初はドリンクやフードメニューなども限られた種類しかなく、逆にそれを売りに専門店的な取り扱いで行こうという戦略もあったのですが、現地では日本や韓国のように1つのメニューで専門店のようなカフェはあまりメジャーではないことが分かり、ある程度一般的なカフェのようにドリンクのラインナップを設けることにしました。
また、ベトナムのカフェは日本のようにフードメニューがメジャーではありません。皆さんコーヒーやお茶のみ注文するためにご飯を食べた後に訪れるのがカフェの役割だそうです。
とはいえ、今までにないものを作るといった観点で、日本のように「軽食+ドリンク」の楽しみ方を敢えて突き通すことも、新しい提案としてチャレンジしてみたい気持ちもあります。
現在、カフェは現地の経営マネージャーと店長をメンバーに加え、アルバイト数名と社内メンバーで経営を支えています。
casaneは現段階ではカフェとしてOPENしていますが、当初からただのカフェを作るつもりではなく、さまざまな活動に発展させていくための「器」として設けた場所でした。
現地の産物を集めてセレクトショップ的な商いをしてみる
ライブイベントやワークショップなどで地域を盛り上げていく
現地の忘れられた伝統素材を発掘して、日常に根ざしたプロダクトを開発する
地域の活性化、若いクリエイターに向けた情報発信の場として
などなど、デザイン会社が作ったお店だからこそできることを展開していく場として、余白を楽しみながら、現地の方々を巻き込んで盛り上げていければ良いなと思います。
ベトナムハノイにお越しの際は、是非立ち寄ってみてください。オリジナルドリンクがとても美味しいですよ。