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『一般の人でも宮中に参内できるかも?!「新年歌会始」とは?お題や応募方法などを詳しく解説。』

歌会の歴史や歌会始の概要

歌会の歴史

 歌会「うたかい」は「かかい」とも言われ、人々が集まって詠んだ歌を披露したり、集まった作品を批評する会です。
 歌会の歴史は長く、古くは「万葉集」のころの文献に歌会を行ったという記録が残っていて、平安時代には、年中行事として、観桜、観月や管絃、酒宴を伴う総合的遊宴儀式として行われるようになっていきます。
 歌会の中でも宮中で行われる公的なものは「公宴御会(こうえんごかい)」と呼ばれ、天皇により催される歌会は「歌御会(うたごかい)」と呼ばれます。

新年の行事としての歌会始


 宮中では年中行事としての歌会などのほかに、毎月の「月次歌会(つきなみのうたかい)」が催されるようにもなりました。
 これらの歌会の中で、天皇が年の始めの歌会としてお催しになる歌御会を「歌御会始(うたごかいはじめ)」と呼びます。
 明治7年に一般国民からの詠進が認められ、これまでのように皇族などだけでなく、一般の国民も宮中の歌会に参加できるようになりました。
 明治12年には一般の詠進歌のうち特に優れたものを選歌とし、歌御会始で披講されることとなり、今日の国民参加の歌会始の根幹が成立したものといえます。
 大正15年の皇室儀制令附式に歌会始の式次第が定められ、この式次第により古くから歌御会始といわれていたものが、以後は「歌会始」といわれることになりました。

出席者


 歌会始には天皇皇后両陛下をはじめとした皇族の方々と、歌を披露する召人(めしうど)や選者などのほか、詠進歌が選歌として選ばれた一般国民が皇居宮殿に招待されます。

日程


 歌会始は例年1月に開催されていて、令和5年は1月18日に開催されました。(令和2年は御代替のため5月に、令和3年は新型コロナ感染症拡大の影響で規模を縮小して3月に開催されました。)

詠進要領


 歌会始への応募方法は「歌会始の詠進要領」として宮内庁のウェブサイトで公表されます。(令和5年は1月18日に公表されています。)

お題


 歌会では「お題」が設定されていて、それぞれこの「お題」を読み込んだ作品を詠むことになります。
 令和6年の「お題」は『和』と定められています。歌に詠む場合は「和」の文字が詠み込まれていればよく、「平和」や「調和」、「和服」のような熟語でも良いとされています。また、「和(やはらぐ)」や「和(なごむ)」のように訓読みにしても良いとされています。
 
 ちなみに令和5年は「友」、令和4年は 「窓」、令和3年は 「実」が「お題」となっており、例年漢字一文字が「お題」として設定されますが、平成18年 の「笑み」や平成17年の 「歩み」のように送り仮名がついた「お題」が設定される年もあります。

作品形式


 詠進する作品には次の3点の条件があります。

  1. 「お題」が詠み込まれていること。

  2. 自分の作品であること。

  3. 「短歌」(五・七・五・七・七)の形式になっていること。

 上記の条件を満たした作品であって未発表のもの一人一首のみ詠進することができます。
 歌会始へ詠進する際には用紙などの書式にも決まりがありますので、詳しく確認してみましょう。

用紙と書式


 まず用紙は、「習字用の半紙」横長に用います。
右半分にお題と詠進歌を書きます。そして左半分には郵便番号、住所、電話番号、氏名(氏名は本名でふりがなをつけるようにします。)生年月日、性別、職業(職業はなるべく具体的に書き、無職の場合は「無職」と書きます。(ただし以前に職業に就いたことがある場合には、なるべく元の職業を書くようにします。また主婦の場合は「主婦」と書いても良いようです。)
 これらの必要事項を用紙(習字用の半紙)に
① 毛筆で  ② 縦書きで  ③ 自書します。

書式図:宮内庁ウェブサイト(https://www.kunaicho.go.jp/event/eishin.html)より

 ただし、海外から詠進する場合は、用紙は半紙でなくても半紙サイズ24㎝ × 33㎝の横長であればよく、毛筆でなくても大丈夫です。
 また自書が原則とされていますが、病気や身体障害のため毛筆にて自書することができない場合は代筆なども可能です。(以下の3パターン) 

 パターン(1)「墨書による代筆」の場合は、代筆の理由、代筆者の住所  
        及び氏名を別紙に書いて詠進歌に添えます。

 パターン(2)「本人がワープロやパソコンなどを使用して印字」する場
        合は、これらの機器を使用した理由を別紙に書いて詠進歌 
        に添えます。

 パターン(3)視覚障害の方は、点字で詠進しても良いとされています。

詠進の期間

 詠進は「お題」が発表された日から9月30日までとなっています。(令和5年の場合)郵送の場合は、締切日の当日消印有効とされています。

注意点


 次の場合には、詠進歌は失格となってしまいますので注意が必要です。

  1. 「お題」を詠み込んでいなかったり短歌の形式になっていないもの。

  2. 用紙が縦長になっているもの。

  3. 一人で二首以上詠進した場合や毛筆で書かれていないもの。

  4. 詠進歌が既に発表された短歌と同一または著しく類似している。

  5. 詠進歌を歌会始の行われる以前に、新聞、雑誌その他の出版物、年賀状等により発表した場合。(未発表でない場合)

  6. 代筆が認められた場合の理由書が添えられているときを除き、同筆と認められるすべての詠進歌であるもの。

  7. 住所、電話番号、氏名、生年月日、性別、職業を書いていないものその他公表された詠進要領により定められた様式を満たしていないもの。

入選から当日の流れ

入選の連絡

 一般入選者は例年12月25日前後に宮内庁から発表されます。発表前には宮内庁から入選内定の連絡と未発表の歌であるかの確認があるようです。

服装

 歌会始の選歌に入選した場合は、宮中に参内することになり入選者もそれなりの服装でのぞむ必要があります。男性であればモーニング女性であればロングドレスが参内のドレスコードとされています。
 和装で参内するのであれば五つ紋の色留袖がふさわしいとされていますが、最近は三つ紋だったり、紋無しの訪問着での参内もあるようです。
 学生の入選者であれば、学校の制服で参内することができます。

歌会始当日


 歌会始の当日には入選者に「名前を呼ばれたら立って礼、歌が詠まれる間は起立していて詠み終わったら着席」「天皇皇后両陛下の歌の間は全員が起立する」などの事前説明がなされるようです。
 歌は、一般の詠進歌の入選作品を年齢の低い者から順に披講されていき、選者の歌、召人の歌、皇族殿下のお歌、皇后陛下の御歌(みうた)と続き、最後に天皇陛下の御製が披講されます。

短歌を詠んでみよう!


 日常生活で歌を詠む機会はなかなかないかと思いますが、短歌の場合は季語を入れる必要もなく五・七・五・七・七の形になっていれば他は特別難しいルールにとらわれる必要はありません。普段ふと感じた何気ない日常を五・七・五・七・七にあてはめてみて気軽な感じで短歌を詠んでみてはいかがでしょうか?
 そこから次は「お題」を詠み込むようにしてみて、良い作品ができたら詠進してみるのはいかがでしょうか?もしかすると宮中への招待状が届くかもしれませんよ?

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