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賛成派も反対派も、読んでみてほしい 『赤ちゃんポストの真実』

いわゆる「赤ちゃんポスト」について、私は強い意見を持たない。なんとなく「大丈夫かな?」という気持ちがありつつも、「ハームリダクション」という観点からは意義がありそうだ、という想いもある。

本書は、どちらかというと反対に近い視点で語られる。
ただ、一方的に負の側面を書き連ねるというようなスタンスではないので、読者も一定の冷静さを保ちつつ読み進めることができると思う。
とはいえ、涙が出るような話も多い。

赤ちゃんポストでは、実の親のことがまったく分からないということもある。実の親を知っていることと、分からないままでいることの違いについて、ある福祉関係者の話。

「養親のもとで育てられ、実親をずっと捜し続けていた男性がいました。あるとき、念願かなってやっと会うことができました。『これで安心した。もう親に会わなくてもいい』と言ったんです。 彼は実親の状況を知り、子どもを育てられる状況ではなかったと知った。そのとき初めて養親に託してくれてよかった、自分にとっての親は養親だ、自分の人生はこれでよかったと心から思ったといいます」
その上で、こう強調した。
「実親の情報は、子どもにとって自分の人生を肯定するために必要なんです。あなたにとって養親に育てられたことは幸せだったと、周りの人がいくら言い聞かせても本人は納得できません。判断するのはあくまで本人です」

また、赤ちゃんポストではないが、ある産婦人科医院の前に置き去りにされた女性はこう語る。

「子どもの立場から言いたいのは、養子縁組で幸せな家庭に入り、愛されればそれで幸せじゃないか、というのは違うということです。それは全然違うんです。どんなに養親に愛されても、実親が分からないことで子どもはどれほどの苦しみを味わわなければならないのか。 生まれてきてよかったのか、生まれてきたらいけなかったんじゃないかと悩むんです。親が分かっている人には理解してもらえないかもしれませんが、深く悩み、不安を抱え続けます。養親に愛されればオッケーじゃない。全然オッケーじゃない。ずっとずっと苦しみ続けるんです」
味樹は力を込めてそう訴えた。
「私はバスタオルにくるまれていましたが、せめて服を着せてくれていたら、と思います。せめて実母が名前だけでもつけてくれていたら。ひと言でいいから、ごめんねとわびる手紙があったら。それだけでも子どもにとって少しは救いになります。うそでもいいから、ごめんねと言ってほしい。事情があって子どもを手放すとしても、大切な存在だと伝えてほしい」
2児の母となった味樹は、「うそでもいいから」と叫ぶように繰り返して、大粒の涙をこぼした。

赤ちゃんが預けられる理由はさまざまで、中には「え……?」と思うようなものもあるが、ほとんどのケースで「無責任な男性」の存在がありそうだ。

「赤ちゃんポストの背景には、男性が逃げ得しているケースも少なくありません。相手の女性が妊娠したことをほとんどの男性が知っています。知っていてもあえて関与せず、逃げているんです。しかし、女性は、自らの身の中に育まれる命からは逃げられません。結果として一方的に背負い込まされています」


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