哀れなるものたち ネタバレ感想

赤ん坊と動物は本能だけで生きている点で大した変わりはない。
では人間を人間たらしめるものは何か。
知性と理性を獲得した者が、獣から人間へと変じるのだ。

という文脈が好き。私はたまに衝動性をコントロールできず本能だけで他害をする障害者は人間ではなく、動物なのではないかと考えることがある。

これを表明してしまうと、優生思想がどうとか差別だとか叩かれてしまうので、人前では決して口に出さない。
けれど胸の内で考えることはある。

だから哀れなるものたちの、性欲や食欲に支配されていた赤ん坊が、知性と理性を獲得し、人間になるのはすごく好きだった。
あとはちょっとグロテスクではあるけれど、異性愛、親子愛にあふれたストーリーなのも好き。

ちょっと不穏だな……と思ったのが、最後の「フェリシティお水を持ってきなさい」で、フェリシティの顔面がドアップになるところ。

女王陛下のお気に入りでも、ラストは主人公が自分は凌辱されるだけの下等生物扱いに成り下がったと察したであろうシーンで終わる。

あの家ではヤギ人間が最下層の人間になり、フェリシティが召し使いになり、ベラが支配者となった。
スラム街の貧民に同情をして慈悲を見せても、フェリシティを使役することに迷いがない。
人間はどこまで行っても自分の下にいる存在を欲しがる生き物。
みたいな思想が示唆されたのかなあと思った。

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