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ベーコンへ愛を込めて

 ベーコンが好きだ。

 と言ってもただのベーコンではない。アメリカのドラマや映画に出てくるようなカリカリベーコンが好きだ。

 あの素晴らしいカリカリ体験をくれるベーコンが好きだ。いや、愛していると言っても過言ではない。


ベーコンとの出会い

 私がはじめてアメリカに旅行に行ったときに最も衝撃を受けたのがこのカリカリベーコンです。

 しかし渡米前からアメリカ人のベーコン好きについては知っていたのだが『舐めていた』と言えます。

 彼らがベーコンを愛するあまり、ベーコン味のチップスは当然のこと、ベーコンにチョコレートを掛けたものや、果てはベーコン味のサイダーやベーコンの匂いがする香水を作るなどの狂信的なベーコン愛を見ても、私の脳裏に浮かぶのは「バカか?」だけでした。


 そんな認識だったので、ホテルのモーニングビュッフェでそれを取ってきたときになんらかの期待をしていたわけではありません。

 「しょせんベーコンでしょ?日本人の繊細な味覚からすると大したことない食べ物だよね。これだからアメップはさぁ・・・・・・・」

 だが『それ』を口に入れ、二、三度咀嚼した瞬間、まさにあの時から私の世界ははっきりと「変わった」のです。




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「めしぬま。」 / あみだむく


カリカリサクサクとした食感!

にじみ出る脂のジューシーな旨味!

スモークの薫り高い風味!

なにこれ!おいしい!おいしい!おいしい!


 私は回心し、偉大なるアメリカ、そして偉大なるベーコンの信徒になったのでした。

 




 そんな私が日本に帰った後に真っ先にやったことは、もちろんベーコンを買って家でカリカリのを作ること。

 しかしこれがなぜかうまくいかない。

 レシピで調べた調理法通りに弱火でじっくり長時間焼いていっても、変な焦げができる程度でカリカリにならない。

 「どうしたらいいんだ・・・」

 記憶の中にあるベーコンへの愛は膨らむ一方、しかしまったくあの味には近づけずに途方に暮れる毎日。

 そんな失意の日々を送る中で私はあるひとつの真理にたどり着いたのでした。

 それは・・・




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 「日本のベーコンは出来そこないだ、食べられないよ。」





お前らが食っているベーコンはベーコンではない

 「一体何を言っているんだ?」と思われた方もおられるでしょうが、実は日本のスーパー等で一般的に売られているベーコンは厳密にはベーコンとは呼べない代物が多いのです。

 これについてはいろんなご意見があると思われますが、本来のベーコンを信奉する真ベーコン教の信徒としては、皆様の感情を損ねる可能性を承知で、これらを「似非ベーコン」「自称ベーコン」と呼ばせていただきたい。(※あくまで筆者の脳内における区別です)

 そもそもベーコンとは本来、塩漬けにした生の豚肉を燻煙して作る燻製食品ですが、日本のスーパーで売られているような一般的なベーコンとは、加熱処理した肉を燻製液に漬けて燻製風にしたもので、「加熱食肉製品」というカテゴリなのです。

手作りベーコンの作り方
①豚バラ肉を、塩や香辛料で着ける
②塩抜きする
③加熱(しない場合もある)
④乾燥させる
⑤燻製にする
完成までに、約10日ほどかかります。
一般的に販売されている工業的な作り方
①豚肉に調味液をインジェクション処理する
②加熱する
③くん液をかける(燻製する場合もある)
④乾燥
⑤殺菌、包装
手作りより、短時間で作ることができます。


 だからスーパーで売られているような似非ベーコンは加熱処理されているのでそのままでも食べられますが、真のベーコンは生肉ベースなので基本的に食べるときには火を通さなければいけません。しかしだからこそたっぷりの脂身が残っており、その脂が旨味の素になるのです。


 また、水分の含有量も大きな違いになります。似非ベーコンの原材料の欄を見てください。

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画像は https://tsukusan.com/2399/ より引用

 「還元水あめ」「卵たんぱく」「大豆たんぱく」などと書かれていますよね?

 これは調味液の一種で、工場で加工される際に「インジェクション」と呼ばれる手法によって水とともに肉の中に針で注射されているのです。

 なぜこのようなことをするかといえば、主に増量のためで、特に糖類(還元水あめ)は水分を蓄えるので肉に大量の水分を含ませることができ、一説では一般に販売されているものは1.5倍程度かさ増しされているとまで言われます。

 もし個人が本物のベーコンを手作りするとしたら、わざわざ水分をかさ増しするような者はいないでしょう。多くの日本人は大量生産のために生み出された工業製品のような似非ベーコンを食べているのです。



失われたベーコンを求めて

 では本物のベーコン、つまり真ベーコンはどこで手に入れればいいのか?

 確実に手に入れるのなら「JONES DRY-AGED CENTER-CUT SLICED BACON(CHERRYWOOD SMOKED)」がおすすめです。

厳選した豚バラベーコン本来の味を最大限に引き立たせる為、チェリーウッドチップで最大12時間燻製、その後乾燥熟成させ旨味を凝縮。 1ヶ月近くかけて作るからこそできる芳醇で甘いスモークの味わい。これぞ本場アメリカのベーコン!
厚切りで濃厚な味わいのベーコンはメインディッシュとしてもピッタリ。
https://jonesdairyfarm.jp/ より)

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(画像は https://costco-blog.com/archives/9657.html より引用)

 ドライエイジドセンターカットスライスドベーコンチェリーウッドスモークド、つまり桜のチップでスモークした肉を乾燥熟成させスライスしたベーコン。

 原材料名を見てもわかるとおり、水あめや卵たんぱくなどは入っていない。これが真ベーコンの証です。

 これはコストコのレギュラー商品に入っているのでコストコに行けばほぼ確実に手に入ります(成城石井でも取り扱っていたとの情報があるが、こっちは未確認)。価格は1200円しないくらい。一見高いように思えますが、450gとたっぷり入っているので重量あたりではそこまででもありません。

 あとは燻製食品の専門店でハンドメイド品が作られていることもあるので、こだわる方は地元の良いお店を探してみるのもいいかと思います。


カリカリベーコンへの道

 御託が多くなってしまいました。やはり論より証拠ということで、ベーコンをカリカリに仕上げていきましょう。

 使うのはさきほど挙げたコストコで買えるベーコン。

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 まずはベーコンをフライパンに並べて弱火にかけます。

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 火が通り始めると脂身が透き通ってきてジュワジュワと脂が滲み出して来ます。

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 焦げ付かないように気をつけながら何度か裏返す。端が丸まりやすいので均一に火を通すようにしたいところです。

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 脂が出すぎてたらキッチンペーパーに吸わせて・・・。

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 いい感じに仕上がってきた。ジューシーさを求めるならもう食べてもいいんですが、今日はハードスタイルに仕上げていきましょう。

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 だいたいこれくらいかな?焼き始める前に比べると、脂や水分が抜けてかなり薄く小さくなっているのがわかると思います。

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 完成!

 写真からは分かりづらいですが、香ばしい焼けた脂の匂いとスモークウッドの薫りがたまらなく、むしゃぶりつきたくなります。

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 さて、すでに賢明な読者の方はお気づきになられたかと思いますが、フライパンには油を引いていないし味付けもしていません。ただひたすら焼いているだけです。

 そもそも油を引く必要はありません。なぜならベーコンから出る脂だけで十分だからです。味付けも肉にしっかりと塩味がついているので必要ありません(好みではあるが)。

 余計なものは要らない。ほんの少しの火さえあれば、ベーコンがその脂と塩気でベーコン自身を仕上げてくれる。

 本物のベーコンはそれだけでもう完成しているのです。



 この日は目玉焼きトーストをお供にいただきます。

 え?「ベーコンがお供じゃないのか」って?

 ベーコン様が主役に決まってるだろ!人が何を楽しみにしてると思っているんだ!

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 では実食。






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「めしぬま。」 / あみだむく


カリカリサクサクとした食感!

にじみ出る脂のジューシーな旨味!

スモークの薫り高い風味!

なにこれ!おいしい!おいしい!おいしい!


 あの時の幸せが蘇ってきます。

 もうこれで邪悪な似非ベーコンに惑わされ、当て所もなくさまよっていた日々から解放され、ベーコンから得られるカリカリの幸福を好きなときに楽しむことができる。本物のベーコンが救いに来てくれたのです。

 しかもベーコンの恵みはこれだけではありません。

 ベーコンを炒めたあとにフライパンに残された油。これは極上の炒め油になります。野菜を炒めてもパスタを炒めてもまさに絶品。

 人間をこれほどまでに幸せにしてくれるのだから、肉にうるさいアメリカンガイズがベーコンを狂信的に愛し続ける理由がわかります。




「ベーコンは我らの神」?

 そんなアメリカ人のベーコン信仰はとうとうベーコン教を生み出しました。

 2010年にネバダ州ラスベガスにベーコンを神とする「ベーコン合同教会」が誕生したのです。

 公式サイトもちゃんとあります。

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画像出典:https://metro.co.uk/2015/09/13/church-of-bacon-sees-rush-of-new-members-after-free-wedding-offer-5389265/


 おふざけのように思えますが、無神論者に対する差別に抗議する目的のもとに作られたものであり、実際に無神論者向けに結婚式や葬式を無料で提供しているんだとか。

 そんなベーコン合同教会のスローガンは

 Bacon is our God! Because Bacon is real! (ベーコンは神!だってベーコンは本物なんだから!)

 今はコロナ禍で海外旅行も難しくなっていますが、渡航制限が解除された暁には私もベーコン信徒の一人としてぜひベーコン合同教会を訪ねてみたいと思っています!(入信するかは考え中)


 ベーコンへの愛さえあれば世界は一つ!だってベーコンは本物なんだから!

 というわけで、未体験の方はぜひ一度味わってみてください!


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