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髪を伸ばし始める女

どうも〜こんばんは。渋谷冴絵理です。
うわ、一気に3桁。すごいですね皆さん。ちゃんと寝た方がいいですよ??

一杯飲んで眠るので、それまでお付き合い下さい。暇なんですよ……ははは。

えーと、なんの話しましょうかね。うーん……あっ、やっと、髪を伸ばせます。何故なら、夏が終わるから。

なんてかしこまってお話を始めても、私のファンの方達はご存知ですよね。夏に短い私の髪を。別にかしこまってもいないか。

新規の方もいらっしゃるでしょうから、細かくお話しましょう。今日の議題はそれにします。ちゃんと話すの初めてかも……最初の頃はやれ失恋だのなんだのと、うるさかったですよね、皆さん。

まぁ冗談はこれくらいにして……。
首筋に熱がこもって暑いので、夏の間は髪を短くしています。5月31日に、美容院を予約するようになったのは、大学生の頃からです。
友人からは「冴絵理が髪を切ると、夏の到来を感じるね」と、よく言われます。

この間の5月31日は、思い切って後ろを刈り上げました。久々に観た映画に出ていた、襟足を刈り上げている女の子が、とても可愛かったからです。驚いたでしょう?たくさんメッセージ貰えて、嬉しかったです。ここまで短くしたのは初めてなので、緊張していました。実は。

しかし、それは高校生の頃には、出来なかった挑戦でした。単純に勇気が無かっただけなんですけどね。それに、私はクラスで1番人気だったチサトちゃんに憧れていましたので。あ、流石に仮名ですよ??

チサトちゃんは、胸のあたりまで伸びた、綺麗な、そして真っ直ぐな黒い髪を、惜しげもなく晒していました。

だから、チサトちゃんに憧れる私は、同じように髪を伸ばしていました。いわゆる真似っこです。

それに、刈り上げをしなかった理由はもう一つありました。

チサトちゃんと仲良しだった、ユウキちゃん。これも仮名です。周りからはユウキ様と呼ばれているような、女子校の王子様。襟足を刈り込んだ、ベリーショートの彼女。背も高く美しいユウキ様と、小さくて可愛らしいチサトちゃんのコンビは、全校生徒の憧れの的でした。

私はさっき話したように、チサトちゃん派でしたけれどね。そこは譲りません。ふふふっ。

ユウキちゃん派の女の子達は、こぞってユウキちゃんの髪型を真似していました。チサトちゃん派の急先鋒だった、私の仲良しの友達であるユリが、ある日突然襟足を刈り上げて来て、「あたし、今日からユウキちゃん派に寝返るから」と言ってきたときは、驚きました。

私はユリに「どうして?」と聞きました。そうしたらユリから、根も葉も無いチサトちゃんの嫌な噂話が返ってきました。

「他の男子校に彼氏が居るらしくて、そいつが不良っぽい」
「彼氏が居るだけじゃなくて、取っ替え引っ替えしている」
「ユウキちゃんは本当にチサトちゃんのことが好きなのに、チサトちゃんはその気持ちに気付いているのに、明確な答えを出さない。チサトちゃんはユウキちゃんを弄んでいる」

そして、私はそれがショックでした。
チサトちゃんに対して、ではありません。
仲良しだったユリが、つまらない話に踊らされていたことに、です。

あんなに一緒になって、チサトちゃんの好きなところを夜通し話していたのに。
あんなに一緒になって、チサトちゃんへ憧れの視線を送ることを楽しんだのに。
あんなに一緒になって、チサトちゃんが発する一挙手一投足を愛でていたのに。

その根も葉も無い噂話が、少しずつ広まり、チサトちゃんは少しずつ孤立していきました。
可愛らしかったチサトちゃんの顔に、どこか翳りが目立つようになりました。それでも可愛かったですけどね。

そしてユウキちゃんも、距離を置き始めました。

一方的な愛でしょう?ただ、裏切りたくはなかったのです。自分勝手に、他者の気持ちなんて慮る気持ちも持たず、「私は味方だよ」っていうことを体現したかったのです。

その気持ちが強かったから、高校時代の私は決して襟足を刈り上げるような真似を、しませんでした。

それで、更に驚きなんですけど、大学がチサトちゃんと一緒になりました。なんと学部も。通ってたとこもバレてますしね…そうです、あの大学です。

高校生時代の私のアイドルと、進学先までも一緒で、そしてその大学に行くことになったのは、学内でも私とチサトちゃんだけでした。

さっき、大学生の頃に私は夏に髪を切るようになった、とお話しましたね。そうです。それも、チサトちゃんの影響です。

進学先が同じになった私とチサトちゃんとは、高校卒業直前に仲良しになりました。今まで遠くから眺めるだけだった彼女と、休み時間にお話したり、一緒に下校したり、休みの日にデートと称して映画を観に行ったり。

卒業式まで、私だけがチサトちゃんに寄り添って生きていました。

あ、待ってて。お酒忘れてた。飲みながら話すつもりだったのに……取ってきます。


ふぃ〜、今日は一本だけ。おビールを。
どこまで話したっけ……あぁ、大学ですね…………うぁ〜美味しい〜〜!!やっぱりこれが一番ですね〜。


はい、戻ります。

大学に入ってビックリしたのは、人の多さでした。それに、校内に男子生徒がいるという違和感。小さな女子校上がりとしては驚きの連続でした。

そんな中、やっぱり私の憧れるチサトちゃんは早くから人気が出ました。クラスが離れてしまっても聞こえてくる声が、私は誇らしかったのを覚えています。私のクラスの男子に「渋谷さんって、シイナさんと同じ学校だったんでしょ?合コン開こうよ〜」っていう男の子の情けなくも響く懇願の声も、「N組のシイナさん超可愛いよね」っていう女の子の嫉妬と羨望にまみれた噂話の声も。

それでも、やっぱり少しずつ、距離は離れて行きました。

チサトちゃんは、持ち前の愛嬌と可愛らしさで、友達を増やし、一方私は、それらの声に鼻を膨らませて、勝手に周りの人を下に見て、友達は出来ませんでした。今はちゃんと居ますけどね、あはは。

だって、ちゃんと反省しましたから。金魚のフンは、金魚のフンとしか見られていないし、そんな生き方しか出来ないって、反省しましたから。

最後にチサトちゃんと会った日、私の自慢の彼女の髪が、ばっさりと、切られていました。
「夏って、暑いじゃん。だから切っちゃった、てへ。高校時代は切れなかったからな〜」って、言いました。笑って、そう言いました。それでも可愛かったです。

で、彼女が、少し悲しそうに、哀しそうに笑って言った「高校時代は切れなかったから」という言葉に、私は打ちのめされました。

彼女は、大学生になって、誰かのアイドルでいることを辞めたのです。それは逆を言えば、高校生の頃は、誰かのアイドルでいた、ということ。

そして、それを自覚していて、それでもなお、彼女はアイドルとして居続けていてくれたということ。

寂しく鳴った彼女の喉は、可愛らしい声を発して、私の脳裏に響き続けました。

今でも、鳴り続けています。もう、頭を揺さぶられる程ではありませんが、小さく響き続けています。


だから、私はアイドルになりました。


大学を卒業してからなので、一般的には遅いかもしれません。大学四年生のときに応募したあのコンテストで、「アンニュイ賞」を貰って、事務所に入りました。「アンニュイ賞」ってなんだよ、って思いますよね?ふふふ、私も思います。

ただ、チサトちゃんが居なければ、私はいまこうして話せていません。
皆さんに声を届けることも、顔を晒すこともなく、ただ普通の女の子として生きていたでしょう。

でも、チサトちゃんが居た。居てくれた。私のアイドルで居てくれた。
そう考えたら……アイドルだって普通の女の子なんですよね。
チサトちゃんの存在の有無しか、私の人生には関係無いのですから。
憧れの人の存在なんて、ごく普通のありふれたお話ですから。

最初はチサトちゃんの真似っこで夏に切り始めたのに、それが今や実用的なものになりました。自分でもビックリしています。今はもう夏にロングなんて考えられない……

ここからは、皆さんご存知の通りです。
活躍している、って言えますかね……どうでしょう?こんな時間に、うわ、五百人近くもいるんですね……そんな方々が観てくれているので、私は果報者ですね。なんかババくさいですね。まぁいいです。この業界ではババアかもしれません。自分で言ったら本当にそうなっちゃうので、死んでも言いませんけど。

ちなみに、ユウキちゃん派に寝返ったユリは、今私のマネージャーをしてくれています。画面には見えていませんけど、私の向かい側で恥ずかしそうな顔をしています。映る?あ、映らない。そっか。別にそんな文字通りに、苦虫を噛み潰したような顔をしなくても。あはは。

えっと……どこまで話しましたっけ……忘れちゃった。

まぁ、ほら。あれです。ユリみたいに推し変するも良いでしょう。今の私にはそれが言えます。だって、この世には魅力的な人が溢れすぎているから。それを、私はアイドルになるまで知らなかったのですから。

「ロングが好きだったのに」って言って、離れて行ったファンの方も戻ってきてくれるでしょう。
逆に「ショートが良かった」って言って離れて行く人もいるでしょう。

だって、夏が終わるんですもの。

季節が変われば推しも変わる。良いじゃないですか。私の髪型で、季節を感じてもらえれば何よりです。

私は秋が好きです。食欲の秋、読者の秋、スポーツの秋。秋になるための準備を、最近はじめました。秋冬は食べ過ぎるので、夏のうちにダイエットするはずだったんですけどね……ほら、暑かったので…-なので新しいランニングシューズも買いました。食べすぎているだけだと、なんか勿体ないですし、何より大好きな秋の空気を味わいながら走ろうかと……走る予定です……つもり…たぶん……へへへ。
あと、好きな作家さんの小説を買い漁りました。積みっぱなしにならないようにしないと……。

と、話したところで、今日はお開きにしましょうか。
明日も撮影です。朝早いんですよ……その詳細も、決まったらお伝えしますね。オフショットくらいあげさせてもらえるかな……


まぁ、とにかく、私の髪型を眺めると共に、皆さんも小さい秋を見つけたりなんなり、お好きな時間をお過ごし下さい。

秋の夜長に、また配信しようかと思います。
それでは、おやすみなさい。

あ、推し変上等、渋谷冴絵理でした〜!!

ほんとのほんとにおやすみ!!


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