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「たかがアニメ」というなかれ

 今さら取り上げるまでもないのかもしれないですが、「地域ものがたるアンバサダー」が今年度フォーカスしている、富山・福井・鳥取の3県にまつわる話題を披露していきたいと思います。

❖  地方本社のアニメ企業は稀有

 地元の方、あるいはアニメ愛好家の方なら言わずもがなの知識ですが、富山県南砺市にP.A.WORKSというアニメ制作会社があります。

 地方のアニメ会社は、京都アニメーション(京アニ)など他にも有名な企業がいくつかあります。

 ですが、

 日本動画協会の調査(2020年)によると、アニメ制作に携わる企業(全国で811社)の85.3%(692社)が東京に立地しているのをみると、「ほぼ東京」の産業といえますね。

 それは裏を返せば、地方に本社を持つアニメ会社がいかにレアか、ということになります。ただし、最近ではデジタル化の進展や人材確保の観点から、アニメ会社の地方分散が進みつつあるそうです。


❖  仕事✖地方都市=アニメ

 さて、P.A.WORKS(以下「P.A.」)は、原作のないオリジナルアニメが得意なのに加え、地方都市が作品の舞台(=聖地)になっているものたくさんあります。私が「P.A.らしいなぁ…」と思うオススメの作品は、働く女の子 “お仕事シリーズ” といわれる次の3つです。

  1. 「花咲くいろは」:金沢市湯涌温泉が舞台

  2. 「SHIROBAKO(シロバコ)」:東京都武蔵野市が舞台

  3. 「サクラクエスト」:南砺市が舞台

 3作品のうち、SHIROBAKOはアニメ制作の現場が舞台なので地方色は薄いですが、「花咲くいろは(花いろ)」「サクラクエスト」はローカル色満載です。
 「花いろ」は、作中にある架空の神事「ぼんぼり祭り」が、本当に地元の祭りになってしまったという、聖地巡礼のパワーが地域を動かした有名な事例です。同様に、地元住民の意識を変えるほどの熱心なアニメファン、という括りでみれば、埼玉県久喜市(旧鷲宮町)の「らき☆すた」も有名です。こちらは、女子高生のまったりした日常生活を描く作品ですが、ファンたちの聖地巡礼の動きに注目した地元の商工会の職員らが、グッズの販売や地元メーカーとのコラボ商品の開発など、さまざまな経済活動やイベントにつなげていきました。
 こうした取り組みの成果が、地域活性化の成功事例としてコンテンツツーリズムの研究や卒業論文のテーマに取り上げられ、アニメを1つの学問領域に昇華させた先駆けになったといってよいでしょう。
 なお、「らき☆すた」などのコンテンツと地域活性化についての詳しい分析は、日本政策投資銀行のレポートがとても参考になります。

 https://www.dbj.jp/topics/region/industry/files/0000027774_file2.pdf


❖  まちおこしツウに「刺さる」逸品

 一方の「サクラクエスト」は、(南砺市と思しき)間野山市という田舎町にアルバイトで東京から派遣された大学生が、地元の観光協会・商業者・若者たちを巻き込んで町おこしに奮闘する物語です。
 映像のクオリティはさすがP.A.さん!なのですが、作品内容がまちづくりの「バイブル」の如く「あるある」の連続です。

 ミニ独立国、ご当地饅頭、野外フェス、間野山(井波?)彫刻、桜池(桜ヶ池?)の瑞池(みずち)祭り、商店街の仕舞屋、デマンドバス、高齢世帯へのタブレット配布…

 痛いほど刺さります…

 まさに、視聴率度外視か?と言えるほど「ツウ好み」な作品です。

❖  やはり「全国初」は注目されやすい

 サクラクエストも「花いろ」に負けておらず、ナンと(ダジャレじゃない!いや、やっぱダジャレだ…)、間野山市と南砺市が姉妹都市を締結したのです!

 こういう「アニメ」と「リアル」の都市による姉妹都市締結の例は、実は他にもありまして、地域ものがたるアンバサダーの対象県でもある、鳥取県の倉吉市と倉野川市(架空)が締結しています。

 倉吉市のケースは、「ひなびた♪」というキャラクターを介したインターネット上の音楽コンテンツサービスに関連があります。ある架空の都市「倉野川市」に住む5人の女の子が、地元の商店街が寂れていくのを、バンドの音楽で元気づけようとする設定です。舞台である倉野川市が、倉吉市に酷似しているとネットで話題となり、ついに姉妹都市締結にいたったというわけです。
 調べてみると、倉吉市の姉妹都市締結、こちらは全国初(2016年4月)の試みだったようで、やはり何でも初めては目立つものです。
 やはりこれからの時代は、SNSをはじめさまざまなメディアをいかにうまく活用するか、が集客の成否を決めると言えそうですね。