あまくち物語⑤

ゲーム音楽をエレクトーンで弾いている
超ニッチなYouTuber
【あまくち / amakuchi Electone】
この物語は、彼女が誕生し
成長していく軌跡を描いた
フィクションとノンフィクションが
混ざった物語である。



人生には重要な分岐点がいくつかある。

進学、就職、結婚、出産、離婚、転職、独立

あの時、違う選択をしていれば
どうなっていたんだろう。

想像してみても答えは決して分からない。
人生は一本道で引き返すことができないから。


あまくちにとって重要な分岐点があった。

【ひょっこりはん】

当時、大ブレイクしたお笑い芸人の印象的なBGM

この曲を動画としてアップしたことによって
あまくちのYouTuber人生は大きく変わった。



2018年1月1日

MGは年末年始の特番を一人で見ていた。
あまくちはもう眠っている。

テレビ番組で年越しをして、なんとなく深夜の
お笑い番組を見ている。

【おもしろ荘2018】

ナインティナインがMCの
若手お笑い芸人を発掘する番組。

毎年、この番組からお笑い芸人がブレイク
しているのでテレビ越しでも
若手芸人達の気合いが伝わってくる。

昨年はこの番組から
ブルゾンちえみが大ブレイクした。

もう1年経ったのか。

時の流れの速さを実感する。

半分眠りながら見ていると、なんともいえない
おもしろBGMに乗って
真顔が面白い芸人が現れた。

その芸人こそが
あまくちの運命を変えるお笑い芸人
【ひょっこりはん】だった。

番組を見ていたMGの頭の中に残ったものは
【ひょっこりはんの真顔と、おもしろBGM】
だけだった。



【2018年2月20日からYouTubeの収益化の条件が難しくなる】

MGは、そのニュースを知った時
ショックを受けていた。

収益化できなければ、YouTubeは続けられない。

MGはそう直感した。

あまくちは命の次に大切な膨大な時間と
情熱を使って動画を投稿している。
そして、いつか必ず、その情熱は下火になる。
時間も有限だ。
仕事も忙しくなり
投稿の頻度は限りなく少なくなる。
動画のクオリティーは、たぶん向上しない。

収益化できなければ
時間もお金も、近い将来
YouTubeに投資できなくなる。

その時が、あまくちの終わりの始まり。

だが逆も然り。

収益化できれば
時間もお金も、少しずつだがYouTubeに
投資できるようになる。

そうなれば、あまくち物語は再開される。




【チャンネル登録者数1000人以上】
【直近12ヶ月の視聴時間が4000時間以上】

この2つが厳しくなった収益化の条件。

1つ目はクリアできそうだったが
2つ目の直近12ヶ月の視聴時間4000時間以上
というのが絶望的に難しい条件だった。

あまくちチャンネルの視聴時間は
800時間程度だった。

短い動画が多いし、再生回数も少ない。
しかも累計視聴時間ではなく
過去1年の視聴時間なので余計に厳しい。

一発当てるしかない。
一曲でも動画がバズれば
たとえ短い動画でも
4000時間は超えることができる。

そう思ったMGは
ひょっこりはんのBGMを思い出した。

MG
「ひょっこりはんのBGM、弾いてみてよ。
動画にアップしよう」

あまくち
「良いよー!面白そう!」

あまくちは、あっという間に耳コピをしながら
音を作っていき、同時にエレクトーンで演奏を始めた。

ひょっこりはんの、脱力系のおもしろBGMが
部屋に響き渡る。
あまくちとMGは思わず笑った。
二人の頭の中に、間違いなく
ひょっこりはんの真顔が浮かんでいたから。



ひょっこりはんの動画をアップしてみたが
特に変化は無かった。

いつも通りの再生回数。

そんなに甘いものじゃないな

分かっていたことだが
改めて現実を突きつけられるMG



【ひょっこりはん】のことはすっかり忘れて
日々を忙しく送っていると、YouTubeを見ていた
あまくちが叫んだ。

あまくち
「ひょっこりはんが、凄いことになってる!」

あまくちの声に驚いて
MGはすぐにスマホを覗き込んだ。
再生回数が見たこともない数字になっている。

バズっている。
ひょっこりはんBGMがバズっている。

再生回数はどんどん伸びていく。

何が起きたのか調べてみると
乃木坂46の白石麻衣が、自身のアイドル番組で
ひょっこりはんとコントをしていた。
【白石はん】として、ひょっこりはんと
ダブルひょっこりをするコント。

ひょっこりはんの動画は
白石麻衣のファン達のコメントで溢れかえった。
いつもの視聴者とは全く違う層の人達が
動画を見てくれている。

動画の再生回数は70万回を超えて
視聴時間も4000時間を軽く超えた。

奇跡が起きた。

MGは心底、そう思った。
チャンネル登録者数は全然増えていないけど。


【ひょっこりはん】と【白石はん】
二人は、あまくちチャンネルにとって
救世主となった。


本人達は全く知らないことだけどね。



あまくち物語⑥に続く
作 あまくちのマネージャー(MG)



















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