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オープンアクセスに関する用語の整理


学術雑誌のビジネスモデルについて

そもそもとして、出版社の学術雑誌購読のビジネスモデルに関しては、以下のモデルがあります。

講読モデル(subscription, または、READ model)

出版社が雑誌を売るという従来のモデル。雑誌の購読者が料金を支払う。論文投稿など、著者には費用は原則かからないモデル。
 講読モデルにおいては、著作権・出版の権利は、著者ではなく、出版社が持つ/移譲する。そのため、出版した論文の図表すらも、著者自ら使うときでも、出版社の許可が必要となる。

出版モデル(PUBLISH model)

電子ジャーナルが増えてくることでこちらのモデルが成立してきた。電子ジャーナルでは雑誌を売るとか買うという概念がなくなるため、読む側は雑誌購読という形での費用の負担はせず、むしろ、論文を出す側(著者側)が費用を負担するモデル(APC, Article Processing Chargeを支払う)。
 この出版モデルでは、著作権は、著者が保持することができるため(ある種、著者が、著作権を費用を出して保持するともいえる)、「出版稿」(その図表も含めて)をどのように扱うか(後述のライセンスの扱い)は、著者が決めることができる。

ハイブリッド

講読モデルと出版モデルのあいのこ。出版社は、冊子も売りながら、同じ内容で電子ジャーナルとしてOAも進めるという、あいのこのモデル。この場合、同じ雑誌でも、講読モデルとして、雑誌購読に対して、読む側が費用を払い、出版モデルとして、論文を出す側(著者側)がOA化の費用を負担することになる。その点は、「二重取り」とも揶揄される。
 なお、ハイブリッドモデルによって出版される雑誌でOAになる場合は、ハイブリッド・ゴールドOAと言われる。一方で、すべて出版モデル(上述)でOAとなる学術雑誌は、フル・ゴールドOA雑誌ともいわれる。

OAのタイプ

ゴールドOA

上記、2)の出版モデルまたは、3)のハイブリッドモデルにおいて、著者側がOAの費用を負担する(APC)ことにより、論文そのものをOAにする手法。論文の著作権は、著者が持つ。著者の判断でOAにできるため、即時OAが可能。

グリーンOA

従来のグリーンOAは、1)の購読モデルをベースとし、出版社との出版契約に基づき、著作権は出版社に移譲した上で、著者が「著者最終稿」を機関のレポジトリーに上げることを許す。ただし、出版契約(License to publish agreement)によっては、機関レポジトリーへの掲載は、出版から1年後から許可などのembargoがかかることが多い。即時OAは、実質的に(出版社との契約条件に依存するため)著作権の保持ができない限り、不可能。
 講読モデルがベースなため、著作権・出版の権利は、出版社が持つ/移譲することになるため、出版した論文の図表すらも、著者自ら使うときでも、出版社の許可が必要となる。
 現在は、上記のグリーンOAの定義以外にも、APCを支払わずにOA化するものを、グリーンOAと広義で呼ぶことがある。
 なお、査読前論文であるプレプリントをグリーンOAと呼ぶこともあるが、査読前論文と査読後については分けて考えるべきであろう。

ダイアモンドOA

著者でもなく、雑誌購読者でもなく、第三者が資金を確保し、OA出版を行うモデル。つまり、購読者も著者も料金を支払う必要がない。NPOが資金を持つ場合もあれば、なんらかの企業スポンサーによる場合など、資金確保の方法は多様。

ブロンズOA

出版社が、なんからの理由(新型コロナとか)で、一時的に論文をOA化しているもの。出版社の判断によるものであり、永続的なOAでない場合が多い。

ライセンスについて

論文がOA化された場合には、購読者がその論文を利用する際のライセンスも定義される。クリエイティブ・コモンズによる場合が多い。
たとえば、
1)CC-BY: 誰でも自由に読め、ダウンロードし、改編し、利用することが可能とするもの。OAの基本と言われる。
2)CC-BYーNC-ND: 上記の条件に加えて、商用利用は不許可(NC)、また、改編も不許可(ND)とするもの。
などがある。

パブリックアクセスとオープンアクセスの違い

1)パブリックアクセスとは、市民等が、発表された論文を「読む」ことができるが、ダウンロードしたり、利用したり、改編したりを許さないもの。
2)オープンアクセスは、とくにCC-BYのライセンスが付与されていれば、市民等が、発表された論文を「読む」だけでなく、ダウンロードし、改編し、「利用」することが可能となるもの。

ちなみに、アメリカのOSTPは、パブリックアクセスをうたっているが、日本のOA方針は、オープンアクセスをうたっている。

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